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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
 お問い合わせは当ブログのメールフォーム(下の方にあります)やコメント欄(内緒設定もご利用ください)や、ツイッターのダイレクトメッセージをご利用ください。

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581:#TPP が「安全保障」という《言語明瞭、意味不明》な話の意味を、中東情勢とオバマ政権の外交方針から読み解いてみます

2013/03/23 (Sat) 23:41
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「国債を刷れ!新装版-これがアベノミクスの核心だ」







「TPPは安全保障だ!」


以前からチラホラと国内のTPP推進派の皆さんの一部の方が主張されていました。


「は?」

「ていうか、日米安保条約とか在日米軍基地とか、すでにあるし」

「TPPがポシャろうがくたばろうが、米軍が日本から出て行くわけでもあるまいし」

「何言ってくれちゃってんの?」

としか思っていませんでしたが、

先般の安倍総理のTPP交渉参加表明会見でもろに公的におっしゃっていたので、これにはやはり「安全保障」の意味合いがあるということなのかと少々見方を変えざるを得ない状況であります。

官邸HPからTPP交渉参加表明演説の文言を引用しておくと


――――

共通の経済秩序の下に、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、また、アジア・太平洋地域の安定にも大きく寄与することは間違いありません。

――――

とあります。

これを見てもとりあえずは「言語明瞭、意味不明」です。

正直なところ、日本国内の政治家なり評論家なりの皆さんの言うことを聞いているだけでは、本気で悲惨なくらい、さっぱり意味不明です。


なので、アメリカのそれなりの立場の人がどう考えるているのかを知らないとだめだと思いました。

いちいち英語の資料を見ないといけないというのは、実にめんどくさい話です。

まあ、というわけで、もう一度、
先般の米議会調査局のTPP報告書を見てみました。
「Military (軍事の)」という言葉が一箇所だけ出てきています。


―――――

The TPP could have implications beyond U.S. economic interests in the Asia-Pacific. The region has become increasingly viewed as of vital strategic importance to the United States.
TPPは、アジア太平洋地域における合衆国の経済的利益と密接な関係を持ち得る。この地域は合衆国の致命的な戦略的重要性とする見方をますます持たれるようになっている。


Throughout the post-World War II period, the region has served as an anchor of U.S. strategic relationships, first in the containment of communism and more recently as a counterweight to the rise of China.
第二次世界大戦後、この地域は、当初は共産主義の封じ込めのための、最近では中国の台頭に対する力の平衡のための、合衆国の戦略的関係の要の支えとなっている。


This trend has recently been accentuated by the Obama Administration’s “pivot to Asia” along with the perception that the center of gravity of U.S. foreign, economic, and military policy is shifting to the Asia-Pacific region. The TPP is viewed as an important element in the U.S. “rebalancing” toward Asia. [14]
この傾向は、最近の合衆国の外交、経済、軍事のアジア太平洋地域への重心のシフトとともに、オバマ政権の「アジア重視」路線によって強調されている。TPPは、アジアへの「回帰」の重要な要素と見られている。


―――――


で、

上記の米議会調査局の報告書で参考文献[14]が↓これ

Pivot to the Pacific? The Obama Administration’s “Rebalancing” Toward Asia
http://www.fas.org/sgp/crs/natsec/R42448.pdf
March 28, 2012

これもまた議会調査局の報告書で、オバマ政権のアジアシフトに関するものです。

なお、一年前のレポートになります。


さて、「Summary 要約」の一部を抜き出してみます:

―――

Areas of Continuity.
継続性の地域



Much of the “pivot” to the Asia-Pacific is a continuation and expansion of policies already undertaken by previous administrations, as well as earlier in President Obama’s term.
アジア太平洋地域への「旋回」の大部分は、従前の政権、そしてオバマ政権の第一期からすでに実施されていたことの継続と拡張である。


Since President Obama’s inauguration in 2009, the United States has given considerable time and emphasis to Southeast Asia and to regional multilateral institutions.
2009年のオバマ大統領の就任以来、合衆国はかなりの時間を、東南アジアに、そして、この地域における多国間制度のために割いてきたし、重点を置いてきた。

Under President George W. Bush, the United States emphasized the strengthening of relations with existing allies in Asia, began moving toward a more flexible and sustainable troop presence in the region, concluded a free trade agreement (FTA) with South Korea, brought the United States into the Trans-Pacific Partnership (TPP) FTA negotiations, and forged new partnerships with India and Vietnam.
ジョージ・W・ブッシュ大統領の下、アジアにおける既存の同盟国との関係強化に重点を置き、この地域における、より柔軟で維持可能な軍事プレゼンスの方向への動きを開始した。
それは、韓国とのFTAを結実させ、合衆国のTPP交渉への参加をもたらし、インドやベトナムとの新しい連携を徐々に進めさせた。


All of these steps have been furthered by the Obama Administration.
これらすべてのステップは、オバマ政権によってさらに進められた。



Transformational Elements.
トランスフォーメーションのいくつかの要素


That said, there are a number of new aspects of the shift.
これは、アジアシフトに、いくつかの新しい側面があるということを言っている。

The most dramatic lie in the military sphere.
最も劇的な部分は軍事面にある。

As part of a plan to expand the U.S. presence in the southwestern Pacific and make it more flexible, the Obama Administration has announced new deployments or rotations of troops and equipment to Australia and Singapore.
太平洋南西における合衆国のプレゼンス拡大と柔軟性拡大の計画の一部分として、オバマ政権は、オーストラリアとシンガポールへの、軍隊と装備の新しい配備あるいは配置転換を発表してきた。

U.S. officials have also pledged that planned and future reductions in defense spending will not come at the expense of the Asia-Pacific (nor of the Middle East).
合衆国高官たちは、将来における国防費の削減は、アジア太平洋(中東も)の経費削減につながらないと約束している。

Additionally, underlying the “pivot” is a broader geographic vision of the Asia-Pacific region that includes the Indian Ocean and many of its coastal states.
加えて、この(アジアへの)「旋回」の下敷きには、インド洋とその多くの沿岸諸国を含む、アジア太平洋地域における広範な地理的なビジョンがある。



Benefits, Costs, and Risks.
利益、コスト、そしてリスク


Underlying the “pivot” is a conviction that the center of gravity for U.S. foreign policy, national security, and economic interests is being realigned and shifting towards Asia, and that U.S. strategy and priorities need to be adjusted accordingly.
この「旋回」の下敷きには、合衆国の外国政策、安全保障、経済的利益の重心がアジアに再配置、シフトを始めているという確信と、合衆国の戦略と優先順位をそれに合わせて調整する必要があるという確信がある。


For many observers, it is imperative that the United States give more emphasis to the Asia-Pacific.
多くの観察者らにとって、合衆国は何としてもアジア太平洋地域にもっと重点を置くことは、必要不可欠のものとなっている。

Indeed, for years, many countries in the region have encouraged the United States to step up its activity to provide a balance to China’s rising influence.
実際のところ、この数年の間、その地域における多くの国々は合衆国に、増大する中国に対するバランスを提供する活動を進展するように急(せ)かしている。

――――

アメリカが急かしているのか、アジア諸国が急かしているのかはさておき。

安倍総理の演説内容は、まるまんまブッシュ政権やオバマ政権のアジアシフト戦略(軍事+経済)と一致しています。

アメリカが軍事と経済をセットで考えているから、日本にとってもTPPが安全保障とセットだということです。


一年前の報告書とはいえ、一応、TPPに関する記述も抜粋しておきます:

――――

The Importance of the TPP
TPPの重要性


...
Strategically, the potential risks associated with the transport of goods and services in the Asia-Pacific region would conceivably be reduced, as the TPP members would share a common interest in maintaining a reliable and safe flow of cargo across the Indian and Pacific Oceans.
戦略的に、TPP参加国がインド洋や太平洋における、信頼できる、安全な貨物の航行の維持を、共通の利益として共有するならば、アジア太平洋地域におけるモノやサービスの輸送に関連する潜在的リスクは、おそらく低減することとなろう。

While the potential benefits for the United States of a successful TPP and its expansion into a broader regional agreement are relatively clear, progress in the negotiations has been slowed by serious pressure from some of the negotiating parties.
TPPの成功、そしてその更なる広い地域協定への拡張による合衆国の潜在的な利益は、比較的はっきりしている。しかし、交渉の進展は、いくつかの交渉国からの重大な圧力により減速させられている。

The United States has encountered resistance to its proposals regarding intellectual property rights and investor-state disputes.
合衆国による知財権とISD条項に関する提案は、抵抗に遭ってきた。

In addition, some of the countries are pushing the United States to offer greater access to U.S. markets—particularly agricultural markets, such as dairy products and sugar.
加えて、いくつかの国は、米国に対して、さらなる市場の開放――特に乳製品や砂糖など農産品市場の開放――を迫っている。

It remains to be seen if the negotiations can produce an agreement that is acceptable to the other nations while remaining politically viable to Congress.
この交渉が、(合衆国以外の)他の国々で受け入れられる合意を作り出せるかどうか、連邦議会に回すのに政治的に生き残れるものとなるかどうか、という見方が残ったままである。

The TPP’s prospect may also be harmed by the lack of trade promotion authority, complicating the U.S. Trade Representative’s task in forging an agreement that will eventually win congressional approval.
TPA(大統領貿易促進権限)の欠如は、USTRによる議会の承認を最終的に勝ち取り得る協定案の作成を錯綜させ、TPPの前途を傷つけることもあり得る。

If the TPP talks fail, it is uncertain how the Obama Administration will pursue U.S. economic interests in the region.
もしTPP交渉が失敗すれば、オバマ政権が、アジア太平洋地域における合衆国の経済的利益の追求をいかに行うかを、不確実なものとなる。

To date, the United States has shown little interest participating in any of the alternative regional integration fora, such as the ASEAN+3 or ASEAN+6.
今日まで、合衆国は、ASEAN+3やASEAN+6のような、この地域におけるほかのいかなる交渉に参加することにも、まったく興味を示さなかった。

The resumption of previous bilateral talks with Malaysia and Thailand, as well as new potential partners, such as Japan, are an option, but are unlikely to influence regional integration to the same extent as would the successful formation of the ASEAN Economic Community or the conclusion of an ASEAN+6 free trade agreement.
マレーシアやタイとの二国間協議の従前からの継続や、日本のような新しい潜在的相手国との二国間協議は、一つの選択肢である。しかし、こういったものは、ASEAN経済共同体やASEAN+6自由貿易協定のような影響力を持つ可能性は低い。

It is also unclear what impact the TPP will have on U.S. interest and participation in APEC.
TPPが合衆国の利益にどのような影響を与えるか、APECへの参加がどのような影響を与えるか、ということもまた、不明確である。

It appears that the Administration regards the former as the lead entity, with the latter a forum for exploring topics that traditionally have not been part of trade agreements.
オバマ政権は、前者(TPP)を主導的実体と見なし、後者(APEC)を貿易協定を扱わない探究的な会合と見なしているようだ。

Among other items, such a prioritization could have implications for the regional standing of Taiwan because APEC is one of the few regional groupings to which Taipei is a full member.
このような優先順位の付け方は、台湾のアジア太平洋地域における立場と密接な関係がある。APECは台湾政府が完全なメンバーとなっている数少ない地域グループの一つであるからだ。

――――

前半は「TPPは非常に重要なのよ」と書いてます。

しかし、後半は「TPPが成立するかまったく不透明」という感じの文言のオンパレードです。


そして、先ほどの軍事の話と合わせると、オバマ政権のアジアシフトは、軍事・経済の二本立て、ということになります。

何かこれを見ているとかつてローマ人が地中海を「我らが海 mare nostrum」と呼んでいたように、オバマ政権が太平洋を「我らが海」にしようとしているかのようなニュアンスです。環太平洋地域に軍隊を重点的に配備し、交易を自由にする。それによって新たなる「アメリカの平和 Pax Americana」を実現する。

ということは、安倍総理
こないだの会見

「今、地球表面の3分の1を占め、世界最大の海である太平洋がTPPにより、一つの巨大な経済圏の内海になろうとしています。…TPPが目指すものは、太平洋を自由に、モノやサービス、投資などが行き交う海とすることです」

という言葉は、まるまんま「アメリカの平和 Pax Americana」の理念ですね。



また、上記の議会調査局の報告書を見ると、議会はともかく、オバマ政権はアジアシフト戦略のため、本当に、かなりの本気でTPPを重視しているということになります。これと同時に軍隊だってアジア太平洋にシフトするんですから!


こんなことをオバマさんから言われて、安倍総理が「でも、日本はTPP交渉なんぞに参加しましぇん」、とはやはり言いにくかったでのしょうね…。(ご本人がガチガチの自由貿易推進者なのか、保守的なのかということとは、まったく無関係に)

と考えると、TPPに関しては野田前首相に対しても多少の同情心も持たざるを得ないかも知れません。

とは言え、誰もこんな解説してくれなかったので、こっちとしては「TPP?は?」と思うしかなかったわけですが。






さて、TPPが実際に成立するためには、とにもかくにもTPA(大統領貿易促進権限)は非常に重要な、TPP成立のための絶対要件ということですね。


これに関して先日、アメリカ上院で公聴会が開かれました。


Momentum builds for "fast track" trade legislation
「ファースト・トラック(TPA)」法案の成立に向けて動き

http://www.reuters.com/article/2013/03/19/us-usa-congress-trade-idUSBRE92I0QW20130319
Reuters  Tue Mar 19, 2013

Congress last passed TPA legislation in 2002, following a bitter fight. Republicans, who generally favor free trade, passed the bill over the objections of Democrats, many of whom blame past trade agreements for U.S. job losses.
2002年のTPAは苦い戦いの末に可決。
自由貿易を好む共和党が、過去の貿易協定はアメリカの失業を増やしたと責め立てる民主党の反対を押し切った。


Baucus said he wanted to renew both TPA and trade adjustment assistance (TAA), a federal program that provides funding to help retrain workers that have lost their jobs because of import competition or factories moving overseas.
ボーカス議員(民主党モンタナ州選出)はTPATAAの両方を更新することを望むと語った。ここで、TAAとは輸入競争や工場の海外移転による失業者の再訓練を支援する資金を供給する連邦政府のプログラムのことだ。

"TPA and TAA are two sides of the same coin making trade work. We need to renew and extend both of them this year," the Montana Democrat said.
「TPAとTAAは通商政策を動かすコインの裏表である。我々は本年、TPAとTAAの両方を更新し延長する必要がある」とボーカスは語った。
―――


・ボーカス上院予算委員長はモンタナの牛肉を日本に輸出したいので前々からTPP推進でしたが、2011年のTPA法案は否決票を投じています


・また、上院は民主党が過半数であり、上記ロイター記事にもあるように
民主党は全体として自由貿易に懐疑的です。


そして、

TPAに関しては以下のようなことが今後の注目点になるでしょう:


・TPAが仮に通るとしても、ホワイトハウスやUSTRに相当な情報開示を要求することとなるでしょう。なお、以前の米議会調査局報告書でそんなニュアンスのことを書いていました:

Through TPA, or other vehicle, Congress may wish to make its views known about the architecture of the agreement.
TPA、あるいは他の手法を通じて、連邦議会は協定の構造について知りたいと思うだろう。

さて、TPAが議会で審議されるようになったならば、どんな情報が飛び出るでしょうか?



・また、このTPA審議プロセスで日本への要求が今まで以上に明確になって来ると思われます。これに日本側がどう反応するか?


・ボーカス議員の物言いからすると、TAAの予算もガッツリ請求することになると思われますが、これに共和党がどう反応するか。


・それが財政の崖問題とどう絡むか。








さて、ここでこの数日における中東情勢、そして北東アジア情勢について。

どうも中東の緊張が緩和され、アジアの緊張が高まっているような感じです。

―――

米、中東外交立て直し オバマ大統領 イスラエル初訪問
日経新聞 2013年3月21日朝刊4面

―――

シリアで化学兵器使用か イスラエル主張 米は「証拠ない」
日経新聞 2013年3月21日朝刊4面

―――

イラン核 外交解決探る 米・イスラエル首脳一致
日経新聞 2013年3月21日夕刊3面

…初のイスラエル訪問となったオバマ大統領は会談後の共同記者会見で
「イランの核問題を外交的に解決する時間はまだ残っているとの認識を共有した。
 核開発状況を巡る評価について、イスラエルとの間で大きな差はない」
と語った。
大統領は今月、イランの核兵器保有は「今後1年かかる」との見通しを示しており、ネタニヤフ首相はこうした見方に同調した形だ。

―――

イランの核開発のレッドラインは「あと○○か月」というのがどんどん先延ばしになってきていますね。
なんか、日本の財政破綻論者の「○○年に破綻」の予言がどんどん先延ばしになっているみたいな様相を呈してきています。


―――

米、ヨルダンに189億円 シリア難民対応へ支援 連携を強化
日経新聞 2013年3月23日夕刊3面

―――

トルコと関係修復 イスラエル 10年の射殺事件謝罪
日経新聞 2013年3月23日夕刊3面

…イスラエル軍は10年5月、パレスチナ自治区ガザに向けて航行中のトルコの人道支援船を急襲し、トルコ人乗組員9人を射殺した。

…イスラエルはこの事件を巡ってトルコへの謝罪を一切拒否してきた。両国はかつて軍事協力協定を結ぶなど同盟に近い関係にあったが、事件をきっかけに休息に関係が悪化していた。

イスラエルが強硬姿勢を翻した背景には、20日にイスラエルを訪問したオバマ米大統領の働きかけがあった。電話会談にはオバマ大統領も参加。オバマ氏はイスラエルに対し、トルコ政府との関係改善を強く促していた。


―――


中東はとりあえず、緊張緩和の方向に「シフト」しているようです。



一方、朝鮮半島情勢。

―――

北との全面戦争にも備えるべき=韓国国防部長官内定者
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2013/03/08/0200000000AJP20130308004000882.HTML
聯合ニュース 2013/03/08

―――

北朝鮮「全面対決戦に突入した」と宣言 米韓合同軍事演習に反発
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130311/kor13031123270008-n1.htm
MSN産経ニュース 2013.3.11

―――

韓国でサイバー攻撃 銀行や放送局 サーバー一斉ダウン 韓国政府 北朝鮮の関与調査
日経新聞 2013年3月21日朝刊4面

―――

韓国へサーバー攻撃 「北朝鮮、年1000人ハッカー養成」
日経新聞 2013年3月21日朝刊4面


▼「北朝鮮は1980年代からサイバー攻撃態勢を本格化」
▼「大学教育などで年に1000人のハッカーを養成」
▼「現在の要因は3万人超」――。
韓国紙、朝鮮日報は北朝鮮が以前からサイバー攻撃の準備を進めていたと大きく報じた。

―――

「滅亡の運命にあるのは日本だ」 北朝鮮、安倍氏発言に反発
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130323/kor13032312370004-n1.htm
MSN産経ニュース 2013.3.23

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞は23日、安倍晋三首相が「このままでは北朝鮮は間違いなく滅亡への道へと進む」と発言したことを受け、「滅亡の運命にあるのは定見もなく米国に従う日本だ」と非難する記事を掲載した。

 同紙は日本はわが革命武力の標的になっている。日本が(北朝鮮)敵視を続ければ、到来するのは破滅だけだ」と主張し、植民地支配に関する「過去の清算」を重ねて求めた。拉致問題には触れていない。



―――

中東は、オバマ大統領の積極的な外交活動もあり、とりあえずの軍事的緊張の緩和に向かいつつあります。

一方で、朝鮮半島に関しては「全面戦争」だとか、「サイバー攻撃」だとか、「滅亡の運命」だとか「革命武力の標的」だとか、ちょっと前までの中東に関する報道のような物騒な文言(イスラエル首脳やイラン首脳の発言のような文言)が躍っています。


オバマ大統領の中東の積極和平の動きとアジア情勢の緊迫化はもちろん、連動したものと考えて良いでしょう(アジアが緊張しているので、中東は勘弁して、というような具合に)。

TPPに関してはこういう視点を持つ必要があります。


このような情勢ですから、オバマ大統領は軍事と経済のアジアシフトを成功させる必要性はいやが上にも増します。
よって、オバマ政権もTPPがさっさとうまく行かないと、しんどいところです。


安倍政権としては、協力する姿勢を見せつつも、「だからTPPではここを譲ってちょ」という余地も出来るやもしれません。




3月18日の衆議院予算委員会で、自民党の小里泰弘 衆院議員(鹿児島4区)は

「TPPは貸し切りバス。日本という最大の客が乗らなければ発車しません」

「だから安易に譲歩しないで下さい」


というようにおっしゃっていました。また以下のようなことも:

「相手はあの手この手で攻めて参ります。こっちも二重三重に防衛線を張って、日本の国益を守っていく必要があります。細心の注意を払う必要があると思います」

「害のない協定にする必要があります」

「関税、薬価問題、ISDなど、国益を守れない場合は撤退すべき」

韓国の二の舞を演じてはならない」

アメリカは社会保障の後進国。無理に合わせる必要ない」


――――

安倍内閣には、交渉に当って、何としても毒抜きをしてもらわなければなりません。

安倍首相いわく、TPPは「その先にある東アジア地域包括的経済連携/RCEPや、もっと大きな構想であるアジア太平洋自由貿易圏/FTAAPにおいて、ルールづくりのたたき台となるはず」ですので、絶対に毒抜きしてもらわなければなりません。

また、自民党の慎重・反対派の議員の皆さんも、このことには積極的に関与し、6項目が守られるようなTPPにするか、そうでなければ決議文にあるように脱退するように政府を監視すべきでしょう。


まあ、出来ればアメリカ連邦議会でぶっ潰してくれるのが一番良いのですが。

上に挙げた上院の公聴会で、財政委員会の共和党側のトップ、ハッチ上院議員(ユタ州)は、ボーカス議員(財政委員長)の次に、このような発言をしています:

http://www.finance.senate.gov/hearings/hearing/?id=bf63ffa8-5056-a032-5283-bd347de7362c

Today, morale at USTR is at an all-time low.
今日、USTRの士気は、かつてないほどに低い。

Ill-conceived proposals by this administration to have the agency subsumed into the Department of Commerce reveal a complete lack of understanding regarding both the structure and purpose of the agency.
この政権(オバマ政権)による、USTRを商務省に併合させるというよく練られていない提案は、USTRの構造と目的の両方に関する理解の完全な欠如を、暴露している。

Sadly, rumors persist that the President may nominate as his next Trade Representative
the chief architect of this proposal to end USTR as we know it.
悲しいことに、大統領がこの提案によって次のUSTR代表にしようとしている候補は、我々の知るようなUSTRを終わらせようとしている、と噂されている。


―――

現在USTR代表は空席で来週決まるらしいですが、まあ、ハッチ上院議員(共和党)の辛辣なこと。かなり、ボロカスです。


また、こんな記事も。

―――

米暫定予算 延長成立へ 動かぬ議会なおも続く 共和、世論意識し「徹底抗戦」
日経新聞 2013年3月23日 朝刊6面

なぜ共和党はこうまで突っ張るのか。国益を考えればどこかで妥協点を見いだせる努力をしても良さそうなものだ。

共和党は過去2回の大統領選で連敗。16年の大統領選では民主党候補に人気の高いクリントン前国務長官がいるが、共和党には本命候補がいない。態勢の立て直しには世論に強く訴える必要性に迫られている。

しかも世論は極端な保守からリベラルまで分裂傾向を強めている。選挙を意識すれば共和党議員は保守層への働き掛けが過激になってしまう。

今月6~7日。共和党のポール上院議員は米中央情報局(CIA)長官にブレナン氏を承認する本会議で、約13時間にわたって演説を続けるフィリバスター(議事妨害)で対抗した。直後から共和党への政治献金額が急増した。

先週の保守政治活動会議(GPAC)年次総会では共和党のクルス上院議員がポール氏のフィリバスターを挙げて「この3週間、保守派はワシントンでの政治活動で勝利し続けている」と強調。「銃規制や財政支出、憲法を巡る議論で我々は降伏するのか、立ち上がるのか」と、民主党への徹底抗戦を呼び掛けた。

共和党の実力者、マケイン上院議員はポール、クルス両氏の言動を批判するが、共和党内ではこうした「良識派」の意見は通りにくくなっているのが実情だ。14年の中間選挙に向けてオバマ大統領が強硬なことも共和党が逆に極論に走りやすい背景となっている。

―――

米議会、日本以上に大変そうです。


自民党の議員の過半数がTPP反対なのに安倍内閣の交渉参加表明を止められなかった、という見方は確かにできます。

しかし、交渉参加自体は内閣の専権事項です。そして、自民党は条件次第では脱退を辞さないという決議文を内閣に示しています。

よって、安倍内閣と自民党は、少なくとも見た目にはねじれ状態です。

オバマさんも同じです。

オバマ政権はTPP推進。しかし、与党民主党は必ずしも推進ではありません。2011年、オバマ大統領に交渉権限を与えるTPA法案は、当の民主党の反対で否決されました。

つまり、日本同様、米政権も与党とねじれ状態です。

さらにアメリカは上院と下院もねじれ状態で、しかも、もうすでに来年11月の中間選挙に向けた「選挙モード」です。

民主党の自動車票の議員たち(サンダー・レヴィン下院議員など)ももちろん「選挙モード」です。


というわけで、TPPに関してはオバマさんも安倍さんも、同様のしんどい立場てなわけです。

オバマさんはもっとしんどい立場だと思いますが。


長くなりましたが、今回のまとめ:


・TPP問題に関しては、中東情勢と北東アジア情勢も見ながら検討する必要がある

・安倍政権はオバマ政権の立場を理解し、協力すべきは協力しつつも、
 TPP交渉では毒抜きに集中すべき

・自民党の慎重派・反対派議員はその安倍政権を支えつつも厳しく監視すべき


ほんでもって、

・他力本願ながら、できればTPPはアメリカ議会でぶっ潰れて欲しい

という具合です。





1.アベノミクス支持

2.オバマ-安倍の良好な関係構築を支持

3.ただし、TPPはぶっ壊す!

  (最低でも「徹底した毒抜き」が必須)

  (あるいは、ぶっ壊れて欲しい!)



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コメント

1250:

「対中包囲網」という絵空事
http://wondrousjapanforever.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-f97c.html

【ワシントン=中島健太郎】2014年に米ハワイ沖で米海軍が主催する「環太平洋合同演習(リムパック)」に、中国海軍が初参加を決めたことが21日わかった。

関係筋が読売新聞に明らかにした。オバマ米政権は、太平洋での権益拡大の動きを強める中国との軍事交流を拡大させて軍レベルでの信頼関係を築き、アジア・太平洋の安全保障環境の安定化につなげたい考えだ。

リムパックは2年に1度行われる世界最大規模の海上演習で、パネッタ前国防長官が昨年9月に訪中した際、中国側に参加を呼びかけていた。米海軍が今年に入って正式に招待状を出したところ、中国側から参加の意向が伝えられた。中国は前回までリムパックに招待されず、米国などによる「中国包囲網」だとして演習に反発していた。(2013年3月22日14時32分 読売新聞)

2013/03/24 10:20 | TPPに反対 #- URL [ 編集 ]
1251:

廣宮さん解説ありがとうございます。とにかく全てが混沌としてて何が何だか…といった状況なので、とても助かります。

また更新期待しています!

2013/03/24 20:49 | おれんじ #- URL [ 編集 ]
1253:

廣宮先生、はじめまして。10年前の高校の政治・経済の河合塾の参考書の最後のページに「1994年 APEC によるボゴール宣言」なるものが書いてあったのですが、APEC加盟の先進諸国は2010迄に資本・貿易の自由化、発展途上国は2020迄に自由化を達成することを目標とすることに日本は合意しています。これを根拠に官僚が血眼になってやってる面もあるのではないかと勘繰っていますが、根本は新自由主義が正義と盲信してることにあるのでしょうか?

2013/04/02 23:32 | 垣内耕一郎 #- URL [ 編集 ]
1254:Re: タイトルなし

垣内耕一郎さん、
> APEC加盟の先進諸国は2010迄に資本・貿易の自由化、発展途上国は2020迄に自由化を達成することを目標とすることに日本は合意しています。

なんと、そんなことがあったのですか!

> これを根拠に官僚が血眼になってやってる面もあるのではないかと勘繰っていますが、根本は新自由主義が正義と盲信してることにあるのでしょうか?

これはどうも人間のもつ本能的で根源的な欲求のようです。フロイト風にいうと「エロスの本能」、ユング風にいうと「結合の元型」ということになります。なお、フロイトの「エロス」というのは性愛的なものも含まれますが、どちらかというともっと普遍的な愛とか親和性のことを指すようです。

とにかく、根源的で本能的な欲求でくっつきたがるというわけです。
しかし、ユングが1943年に執筆した著書で、心の深奥が安定していない状態での安易な国際化は極めて危険、という趣旨のことを書いています。もちろん、執筆時期からして第二次世界大戦を念頭に。

くっつきたがる傾向によってくっつき、くっつき過ぎて摩擦を起こす。そしてやり過ぎを是正、調整して、徐々により良い状態になって行く、というのが人類の歴史の潮流のようです。
とりあえず、今般の「くっつき過ぎ」はすでに世界各地で様々な摩擦を引き起こしていますし、もっとさらなる摩擦に発展しそうな気配があるような気がする今日この頃です。

なお、この辺の詳細はまた新しい本にて、参考文献リスト付きで発表する予定であります。

2013/04/03 10:28 | 廣宮孝信 ひろみやよしのぶ #- URL [ 編集 ]

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