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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
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ECBの量的緩和で追い詰められるドイツ銀行 + 『異次元大恐慌』の引金を引くのは中国か?それとも、欧州か? - 2016/03/23 (水) 12:01
米株押し上げた最大の推進力=「自社株買い」もそろそろ弾切れの模様 - 2016/03/14 (月) 12:25
欧州中央銀行“弾切れ”宣言で株価下落&金価格上昇 - 2016/03/11 (金) 11:52
アマゾンのレビュー:「毎年外す同志社の紫おばさんの著書と何ら中味は変わらない」→全然違います。私は毎年「暴落本」出してませんし、わざわざ事前に「心の準備」のための心理学本出してます。そこまで準備して本書いた人、他にいます? - 2016/03/08 (火) 22:55
国民の8割が15年も実質所得が減り続ける覇権国アメリカ。米国民にとってアメリカは、覇権国であり続ける意味があるのか、どうか - 2016/03/04 (金) 17:04
米大統領選が示唆する、公式経済統計と経済実感の乖離(かいり) - 2016/03/02 (水) 17:55
ないがしろにされているG20共同声明:「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」「我々は機動的に財政政策を実施する」という文言、実は半年前にも入っていたが、あまり履行されていない - 2016/02/29 (月) 17:37
「アベノミクス・プラス(金融緩和+財政出動+構造改革)」が世界経済に必要。だが、「決定的な財政出動」は政治的に困難。よって、景気後退はほぼ確定:シティのブイター氏 - 2016/02/26 (金) 19:07
トルコとロシアの直接衝突がシリア国境のリスクを増大させている - まるで戦国時代そのものと言える、複雑怪奇な中東情勢について、ひとまず整理を試みます - 2016/02/17 (水) 17:40
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トランプとサンダースの“政治革命”:共通点は「TPP反対」「イラク戦争は間違い」「国民皆保険の再整備」「ウォール街に厳しい」。相違点は不法入国者の扱い、銃規制、それに「ユダヤ人とお友達」か「本人がユダヤ人」か - 2016/02/10 (水) 18:29
中国。カネはないが金はある、か?――知りたくなくとも、知っておいたほうが良いかも知れない、中国の金準備について - 2016/02/09 (火) 17:05
資本主義の権化というべき、代表的超巨大金融機関、ゴールドマンサックスが資本主義に疑義 - 2016/02/04 (木) 16:07
新著『異次元大恐慌』の目次です--「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」 - 2016/02/01 (月) 15:34

707:トルコ:軍事クーデター失敗で皮肉にも「民主主義」が却って後退しそう――米覇権の世界戦略上、最重要な国というべきトルコで民主主義後退は何を意味するか?

2016/07/17 (Sun) 20:24
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ijigen-hyoushi.png


『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:

先週末は南仏ニースで起きたテロに引き続き、トルコの軍事クーデター未遂事件が起こるなどの大波乱でしたが、今回はトルコの件についてまとめておきたいと思います。

結論としては

「トルコは今回の軍事クーデター未遂事件で民主主義が却って後退しそう」

ということになります。

今回の件、日本語メディアでは日経が結構充実しているように思いましたので、とりあえず日経の記事を引用しておきます(日本語ソースがあると本当に楽です^^;):


トルコ首相「反乱制圧」 将校ら2800人拘束、260人死亡
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16HA5_W6A710C1000000/?n_cid=NMAIL003
2016/7/16 18:54 (2016/7/16 23:38更新)
日経新聞

【イスタンブール=シナン・タウシャン】トルコで軍の一部勢力が15日夜(日本時間16日未明)から16日にかけてクーデターを試み、最大都市イスタンブールや首都アンカラの主要道路や国営テレビ局を一時占拠した。クーデター勢力と治安部隊の交戦で、市民を含め260人以上が死亡した。ユルドゥルム首相は16日の記者会見で「反乱は鎮圧された」と宣言。関係した将校ら2839人を拘束したと明かした。

 エルドアン大統領は長期にわたり強い権限を握り、軍の弱体化を進めてきた。今回の反乱はその反発とみられる。事前に察知できなかった政権の打撃は大きい。トルコが内政問題に追われることになれば、隣国シリアの和平問題や、イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦にも影響が及ぶ可能性がある。

 首謀者は明らかではないが、現地メディアによると、空軍の司令官級が関与したとの情報もある。

 クーデター勢力はイスタンブールのボスポラス海峡にかかる2本のつり橋を封鎖した。アンカラで軍トップの参謀総長を一時人質にとり、国会議事堂をヘリコプターで空爆した。国営テレビを占拠し「国の権力を完全に掌握した」と宣言。戒厳令と外出禁止令を出した。

 地中海沿岸の保養地で休暇中だったエルドアン大統領の不在を狙った。エルドアン氏はスマートフォンの動画付き通話機能を使い、地元テレビ番組を通じて国民に街頭や空港に向かい軍事クーデターに抵抗するよう呼び掛け、多数の市民が呼応した。

 クーデター勢力は街頭に出ていた市民に向け発砲したとの報道もある。ユルドゥルム首相によると市民や警察官ら161人が犠牲となった。負傷者は1400人以上に上ったもようだ。軍の暫定参謀総長はクーデター勢力の104人を殺害し、市民の犠牲者は47人と明らかにした。


 ロイター通信によると、当局はクーデターを企てた疑いで司法関係者10人を逮捕。さらに140人を捜索中と報じた。

 イスタンブールのアタチュルク国際空港に着いたエルドアン氏は「(首謀者は)重い代償を支払う」と述べた。休暇先で自身を暗殺する企てがあったことも示唆した。

 アンカラでは軍の戦闘機がクーデター勢力側のヘリコプターを撃墜した。クーデターが失敗に終わる可能性が高まり、ギリシャ北部には16日、亡命を求める兵士8人の乗ったヘリコプターが着陸した。トルコ外務省は8人を送還するようギリシャに求めている。

 空港閉鎖によりトルコ発着の便は大幅に混乱をきたしたが、トルコ航空は16日午後にイスタンブールの定期便発着を再開すると表明した。停止していたボスポラス海峡の海上交通も再開した。イスタンブール市内では街頭に出ていた市民らが引き揚げ、日常生活を取り戻しつつあるという。国会も同日招集され、今後の対応の議論が始まった。

 政府内では事件をエルドアン氏の政敵である米国在住のイスラム教指導者、ギュレン師に近い軍幹部の仕業とする見方が出ている。ギュレン師はクーデターを非難し、関与を否定している。

-----

軍人が3千人近く逮捕されたのに加え、別の日経記事では「判事ら司法関係者2745人の拘束」をトルコ当局が命じたともあります。

クーデターに参加した将校や兵士らについては、ある程度容易に区別がつきそうなものですが、判事などの司法関係者3千人近くの身柄拘束というのは少々引っ掛かりを覚えます。

上記に引用した日経記事によれば、大統領側はクーデターを未然に察知できていなかったようです。それなのにたった一日で3千人もの司法関係者の身柄を拘束するだけの証拠をどうやったら揃えられるものなのか、と。

西側諸国の要人はこぞって「選挙で選ばれた政権を支持し、軍事力を使ったクーデターを非難する」という声明を出していましたが、たった一日で3千人もの司法関係者の身柄を拘束する政権は、民主主義的なのか、どうか。2014年にウクライナで選挙で選ばれた大統領がクーデターで追い出されたときの西側諸国要人の反応とは全く逆のような気もしますが、それは大人の事情・・・いや、政治的な理由があるから、ということでしょう。


そして今回、トルコ軍の一部が決起した理由の一つと見られるのが、「民主主義を守るため」という、ある意味、かなり逆説的なものであったようです。





トルコ、軍の非主流派が決起か 大統領に不満 排除を察知
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16HBP_W6A710C1NN1000/
2016/7/17 0:50
日経新聞

【ベイルート=岐部秀光】トルコ軍の一部はなぜ、このタイミングでクーデターを企てたのか。理由を読み解く鍵になるのが、8月に迫っていた軍の大佐クラス以上の人事を決定する「高等軍事評議会」の存在だ。

 シンクタンク「ジャーマン・マーシャル・ファンド」の研究者でトルコの外交安保政策に詳しいオズギュル・ウンルヒサルジュクル氏は今回のクーデター未遂劇を「ギュレン系の軍幹部が力を失う前に権力奪取を試みた可能性が高い」と指摘する。

 クーデターを試みた勢力は議会への爆撃や群衆への発砲など、従来の軍の行動規範からかけ離れた行動に出た。軍が一丸となった過去のクーデターとは異なり、非主流派による蜂起だったとの見方を裏付ける。

 一方、軍トップの参謀総長を拘束し、国際空港を閉鎖。戦闘機やヘリコプターを確保するなど、作戦は包括的で周到に準備されていた。高位の軍幹部の関与がなければ実現は難しかったとの見方も根強い。

 イスラムのカリフ制を敷く政教一致のオスマン帝国崩壊で建国したトルコは政教分離を国是としてきた。初代大統領のムスタファ・ケマル(注:ムスタファ・ケマル・アタテュルク。イスタンブールのアタテュルク空港の名前の由来になっています)はカリフ制を廃し世俗主義を推し進めた。軍はそうした体制の守護者を自任してきた。しかし近年はエルドアン大統領率いる与党の公正発展党(AKP)がイスラム主義色の色濃い政策を打ち出していた。


 軍の一部は不満を強めたが、エルドアン氏は欧州連合(EU)の外圧を使い意に沿わない軍幹部を追放し、軍の影響力を弱めてきた。

 テロ対策でもエルドアン氏の対応に軍の不満がくすぶっていたもようだ。政府は少数民族クルド人の非合法武装組織クルド労働者党(PKK)に対する掃討作戦を進めている。しかし、PKKに対する強硬な対応が支持者を追い込み、かえって激しい報復テロを招いているとの説がある。掃討作戦にともなう兵士の犠牲も膨らんでいた。

 エルドアン大統領の強権批判は軍以外にも広がる。2013年にはイスタンブールでエルドアン氏を批判する大規模なデモが発生した。その後、政府は与党の政策に批判的な人物への締め付けを強め、政府に批判的なメディアへの弾圧も強めた。エルドアン氏は5月には新憲法制定に慎重だったダウトオール首相を辞任表明に追い込んだ。

 クーデターを阻止したことで、エルドアン大統領は軍の影響力を弱める方針をさらに進め、反政府勢力に対しても一段と強硬な対応をするとみられる。大統領権限を強化する新憲法制定の必要性を訴えるのは確実で、強権的な統治手法に一段と傾斜する可能性がある。

-----

というわけで、トルコにおいては軍事クーデターの失敗が、却って民主主義の後退となりそうです。

それでも、何故に西側諸国の指導者がこぞってエルドアン大統領を支持するかという背景については、次のような話が参考になるでしょう:


「影のCIA」と呼ばれるシンクタンク「ストラトフォー」の代表、ジョージ・フリードマン氏(ユダヤ人)の2011年の著書、『続・100年予測』によれば、

・アメリカ大統領が取るべき基本方針は、世界の各地域において、アメリカの安全保障を脅かすような大国が出現しないよう、各地域における勢力均衡の維持を徹底すること。つまりラテンのことわざ、「分断して統治せよ(divide and conquer もしくは divide and rule)ですね。

・ブッシュ政権による「テロとの戦争」は間違い。テロは手段なのでテロと戦うというのはおかしい。本当はイスラム教スンニ派の過激派との戦いであり、テロはなくならないので、ほどよく抑制する程度が良い。全資源をテロとの戦いに注ぎ込むのはアメリカの安全を保障する、各地域における勢力均衡、「分断して統治せよ」に反する。

・この「テロとの戦い」の過程でイラクのサダム政権を崩壊させたのは痛恨の過ち。この地域の勢力均衡、イランとイラクのバランスが完全に崩れてしまった。仕方ないので、大統領は30年いがみ合ってきたイランと和解し米国にとって重荷であるイラク駐留米軍を撤退すべし(この本が書かれたのは2011年なので、イランとの和解については完全に予言的中、というわけです。というかオバマ政権はこの方針に沿って行動した、とも言えますが)。

・ブッシュの「テロとの戦い」の最大の間違いは、これによってロシアの復活を許してしまったこと。イラン、ロシアとの勢力均衡のためには、長期的に大国となりそうなトルコを取り込み、トルコを徹底的に支援してトルコの経済と軍事力を強化させるべし。


つまり、ロシアとイランを抑えるために、トルコの政治的安定はアメリカの世界戦略にとってとてつもなく重要である、ということになりそうです。

上記のフリードマン氏『続・100年予測』には、日本中国についてもかなり重要なことが書いています。アメリカ大統領が取るべき方針は、東アジアにおいては、日本と中国の勢力均衡を維持すべし、というものです。
弱すぎるほうは支援し、強すぎるほうは抑えることにより均衡させ、どちらか一方が強くなりすぎて東アジアの覇者となり、アメリカに挑戦して来るようなことのないように管理する、というわけです。
アメリカが、共産国であり、ある意味では明確に「敵」と言える中国に対し、これまで信じがたいほどに甘かった理由、同盟国日本に対しては、時としてことのほか厳しいこともあった理由、そして最近になってようやく中国に厳しくなってきた(ように見える)理由は、アメリカがこれまで、そのような地域勢力均衡策を多少の揺らぎを持ちつつも取り続けてきた、というところにありそうです。


さて、トルコに戻ります。


ロシアのRTの記事

Local authorities block access to air base in Turkey that houses US nukes

https://www.rt.com/news/351606-usa-incirlik-base-turkey-blocked/
Published time: 16 Jul, 2016 13:59
Edited time: 16 Jul, 2016 19:15

によれば、トルコの米空軍が駐留する基地には、米軍の核兵器が配備されているとのことです。今般のクーデター騒ぎによるトルコの混乱は、米国にとって、絶対に長引いてはならないものであったものと思われます。


なお、今回のクーデター騒ぎ、実はかなり際どかったのではないかと思わせるような記事がイギリスのサンデー・エクスプレス紙に出ています(もともとの情報ソースは米NBCテレビですが)。





Did Erdogan try to claim asylum in GERMANY? Claims Merkel REJECTED Turkey leader's plea
エルドアンはドイツに亡命しようとしたのか? メルケル独首相はトルコ指導者の懇願を拒否

http://www.express.co.uk/news/world/690120/Turkey-coup-claims-Erdogan-claimed-asylum-Germany-rejected-Merkel

PUBLISHED: 13:04, Sat, Jul 16, 2016 | UPDATED: 13:19, Sat, Jul 16, 2016
Sundy Express

TURKISH dictator Recep Tayyip Erdogan tried to claim asylum in Germany at the height of a military coup against his government but the request was REFUSED by Angela Merkel, it was claimed last night.
トルコの独裁者レジェップ・タイイップ・エルドアンは、彼の政権に対する軍事クーデターが最高潮にあった際、ドイツに亡命申請しようとしたが、アンジェラ・メルケル独首相に拒絶された。

※以下、全訳はあまりにも時間と労力がかかるので、記事の要約だけしておきます:

NBC Newsは、米軍の情報源によると、エルドアン大統領が登場していたプライベート・ジェット機からドイツに亡命申請したが拒否されたと報じた。同大統領はイスタンブール空港にたどり着く前、その次の亡命申請先としてイギリスを検討していたという。

警官隊と反乱軍が戦闘していたために着陸できず、イスタンブール上空で40分も待機していた間にそのような亡命申請をしていた可能性がある。その亡命申請は検証のしようがなかったため、数十分のあいだ懐疑的に扱われていた。

トルコの情報源は、この数ヶ月、エルドアン氏がクーデターの可能性にますます神経質になっており、最悪の事態に備えて詳細な脱出計画を練っていたことを示唆している。

反乱が起きているさなか、エルドアン氏はiPhoneのフェイスタイム(テレビ電話アプリ)を通じての風変わりなインタビューを受けていた。カーテンで仕切られた部屋にいる様子が写り込んでいたが、それはエルドアン氏がプライベート・ジェット機に搭乗中であった可能性を示している。

-----

このサンデー・エクスプレス紙の記事にある「iPhoneのフェイスタイム(テレビ電話アプリ)を通じての風変わりなインタビュー」というのが、冒頭に引用した日経記事

「エルドアン氏はスマートフォンの動画付き通話機能を使い、地元テレビ番組を通じて国民に街頭や空港に向かい軍事クーデターに抵抗するよう呼び掛け、多数の市民が呼応した」

ということになります。

日経は「地元テレビ番組」と書いてますが、実は米CNNのトルコ局の番組です。その際の動画は下記のCNN記事で見ることができます:

Turkey's beleaguered president addresses country on FaceTime
トルコの窮地に陥った大統領、フェイスタイムで国民に向けて演説

http://money.cnn.com/2016/07/15/technology/turkey-coup-facetime-interview/index.html
July 15, 2016: 7:04 PM ET
CNN


このCNNにおけるiPhoneで中継された演説によって、多数の民間人が反乱軍に立ち向かったことで、反乱軍は手足を縛られた格好になったことが、エルドアン大統領側の勝利にとって、かなり大きかったようです。

反乱軍は基本的には、民主主義を守るという大義名分で反乱を起こしたため、本気で民衆を攻撃するわけにもいかず(民間人から集団暴行を受けた反乱軍兵士もおり、仕方なく反撃することで民間人の死者も出てしまったのですが)、諦めて投降し、警察に逮捕されたようです。そうでなければ、3千人もの兵士がこうも簡単に諦めていなかったのではないかと思われます。


RTの記事によると、反乱軍が国営放送局を占領してニュースキャスターに読ませた宣言文は以下のようなものでした:

“Turkish Armed Forces have completely taken over the administration of the country to reinstate constitutional order, human rights and freedoms, the rule of law and the general security that was damaged,”
「トルコ軍は、憲法による秩序、人権、自由、法の支配、損傷している全般的な安全保障を回復するため、完全に政権を掌握した」






以上、今回のトルコ軍事クーデタ未遂事件についてまとめると、

・トルコ軍には初代大統領ムスタファ・ケマル・アタテュルク以来、世俗的(非宗教的)な民主主義体制の護持者を自負する伝統があった

・エルドアン政権は、「与党の政策に批判的な人物への締め付けを強め、政府に批判的なメディアへの弾圧も強め」るなど言論の自由を制限し、権力の集中と強化を図り、また政教分離からイスラム主義色の色濃い政策への回帰を進め、さらに軍部内の反政権的な勢力の排除を進めていた。

・それに対し、軍の一部が反発し、用意周到に今般のクーデターを実行に移した。

・不意を突かれたエルドアン大統領は一時はドイツやイギリスに亡命しなければならないというほどに追い詰められていた。が、ドイツに断られ、退路が断たれた形になったことで却って決意が固まったのか、米CNNのトルコ局の番組でiPhoneのフェイスタイムを通じて一般国民に対し、街に出て反乱軍に立ち向かうよう呼びかけた。

・多数の国民が大統領の呼びかけに応じた。一般国民が「独裁者エルドアン」を見捨てて、人権と自由の護持者である自分たちに味方に付いてくれると計算していた反乱軍にとって、それは想定外のことであり、このことが功を奏してエルドアン大統領側の起死回生の逆転勝利につながった。アメリカのテレビ局、アメリカ生まれのスマホとアプリがエルドアンを助けた、つまり、アメリカがエルドアン政権を助けたという格好。

・軍人3千人弱が逮捕されただけでなく、判事ら司法関係者3千人弱までもが一晩で身柄拘束という格好になった。反乱に加担したかどうかについては、軍人はその場にいて投降したのであれば区別が簡単につくが、司法関係者3千人弱の身柄拘束については、一体どんな証拠がこのような短時間にそろったのかという疑問がぬぐえない。

・西側諸国の指導者が異口同音に素早くエルドアン大統領支持を表明した背景には、対イラン、対ロシア戦略や、トルコに配備している米軍の核兵器の安全の確保など、アメリカの世界戦略が関係しているものと思われる。



というようなことで、軍事クーデターの失敗が却ってトルコの民主主義の後退に拍車をかけそう、というわけです。

さて、ここで
私が著書『異次元大恐慌』で提示した米覇権退潮の基準:

1.TPPが最終的に不成立となって立ち消えになる
2.タイの軍政が継続し、ほかにも民主体制から軍政に転換する国が増える
3.ロシアまたは中国など西側以外の国が主体となってシリアなど紛争地域の和平を実現させる
4.通貨当局の金準備が、世界全体で、あるいは、新興国+発展途上国の合計で増加傾向を続ける


について検討してみたいと思います。

上記の1.から4.は、いずれも進行中と言えます。

1.のTPPについては、アメリカの2大政党の大統領候補が両方ともいまのTPPに反対。ヒラリー・クリントン氏は「水準を満たさないTPPは拒否すべきだ」としており、軌道修正の余地があるようですが、ドナルド・トランプ氏は「米国の離脱」を主張しています。
TPPの最終的な消滅の可能性は高まっていると言えるでしょう。


2.の「タイの軍政が継続し、ほかにも民主体制から軍政に転換する国が増える」に関して、今回のトルコの件については、民主主義の後退が進みそうという点で強化材料であると言えます。


3.の「西側以外の国が主体となってシリアなど紛争地域の和平を実現」については、ロシアの存在感が高まる一方です。トルコが今般のクーデター騒ぎでしばらく混乱が続くなら、アメリカとしてはますますロシアに頼らざるを得なくなるでしょう。


4.については通貨当局の金準備が、世界全体で増加が続いています。

5日前の日経記事:

中銀の金保有、増勢続く 中ロ、通貨の信用力維持狙う 価格押し上げ要因にも
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO04722260R10C16A7QM8000/
2016/7/12付
日本経済新聞 朝刊

世界の中央銀行の金保有量が増え続けている。特に中国とロシアがドルとユーロに代わる外貨準備として大幅に積み増し、自国通貨の信認維持を狙っている。英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けて民間の投資意欲も高いなか、中銀の買いが価格の押し上げ要因となりそうだ。

 金の調査機関、ワールド・ゴールド・カウンシルが先週に公表した集計では、全中銀の金保有量は約3万2800トンと1年前に比べて2.7%多い。

-----


私の『異次元大恐慌』にける分析の要旨は、

・アメリカの覇権(アメリカ一極集中)が終わろうとしている。とはいえ、アメリカはこれからも世界の有力な国であり続けるが。

・各国で国家主権強化の方向性を持った権力構造の転換が起こりつつある。

・『異次元大恐慌』が起きるとすれば、それは政治的に起こるのであり、『異次元大恐慌』が起きたならば、上記のような権力構造の転換が進捗しやすくなる


ということになります。(決してほかの「暴落本」の著者のようにやみくもに毎年暴落が起きるという本を出したいとか、そんなことは一切ありません。こういうことをどなたかアマゾン等のレビューで書いていただけるとありがたいのですが^^;)


さて、先週後半は連日、ニューヨークのS&P500指数やダウ平均(DOW30)指数が史上最高値を更新しました。全然暴落しないじゃないか、と言われれば確かにそうですが、ニューヨークに上場しているすべての株式をカバーする指数であるNYSE Composite指数は昨年の最高値を更新していません。

これは、安全な大型株に買いが集中し、リスクの高い小型株は相対的に敬遠されていることの現れと思われます。

NYSE Composite指数には米国外の企業の株も入っていますので、米国の小型株指数であるRussell2000指数を見てみてもやはり、直近は最高値を更新できていません。

以下に、NYSE Composite指数が昨年に最高値を更新して以来、直近までのNYSE Composite、S&P500、DOW30、Russell2000のチャートを示します:

NYSE+SP500+DOW30+RUSSELL2000.png




最近の「株高」は、債券などの安全資産に買いが集中するような動き、つまり、不安定な政治経済情勢の反映という側面も見受けられるわけであります。

世界最大の投資信託会社であるブラックロックのラリー・フィンクCEOは先週のS&P500やDOW30の史上最高値につき、「株式市場が今、この水準になっていることを正当化するに十分な根拠はない」と述べています。

The market shouldn't be at record highs — CEO of world’s largest asset manager
http://www.cnbc.com/2016/07/14/blackrocks-fink-britain-still-faces-recession-despite-boe-holding-rates-steady.html
Thursday, 14 Jul 2016 | 9:12 AM ET
CNBC

フィンクCEOの発言の要旨をまとめておくと

・いま株を買っているのは個人ではなく機関投資家。英国のEU離脱投票後の空売りの買戻しが大きい。EU離脱投票後、ETFへの流入は続いているが、通常の投資信託からの流出が続いている
(ETFの主要な買手が機関投資家で、通常の投信の主要な買手が個人ということだと思われます)。

・投信解約の動きに加え、債券ファンドへの流入が続いている。これはリスク・オフ(リスク回避)の動きだ。10年物米国債の利回りが0.75%になっても私は驚かない(現在、同利回りは1.5%程度)。また、55兆ドル(5800兆円)もの現金が積み上がっていると見積もられる。

・中央銀行による異常な資産購入が株価にインフレを引き起こしている。「株価は新高値になるべきとは私は考えない」

・しかしながら、企業の利益水準が高まれば、この株価が裏付けられるかも知れない。

というようになります。

------


いま、大暴落を日米欧を始めとする各国の中央銀行が必至で止めている、というのが実態でしょう。しかし、これをいつまで続けるのでしょうか?それは政治的に永遠に続けられるのか、経済的に永遠に続けられるのか?

仮に「続けられる」とした場合に、各国政府がそれを本当に続けるつもりなら、とっくの昔にいわゆるヘリコプターマネー、つまり、中央銀行による直接貸し出しによる政府の財政出動による景気対策が行われているはずですが、それはいまだ実現に至っていません。
できるか、できないか、で言えば、私は「できる」と思います。
「できる」のであるが、それを実現する意思があるか、ないか、という問題になります。
これまでの流れを見ると、「意思がない」ものと私は見ます。
その動機は、「国家主権強化のための権力構造の転換を進めやすくするため」ということになります。


また、中国やロシアなどの中央銀行は金をせっせと買い込んでいます。世界の通貨当局の合計では08年以降、金を買い越す動きが続いており、それは米ドルへの信認が揺らいでいるということを意味します。アメリカの一極覇権構造を終わらせたいロシアや中国だけでなくアメリカ自身にも、基軸通貨であることで実力以上に強すぎるドル→製造業の弱体化→雇用構造の弱体化→格差拡大 という流れを転換するため、米ドルの基軸通貨からの「離脱」を望む動機づけを持ち得ると私は見ます。


ところが、トルコの今回の一件は、「アメリカが自国の覇権維持の世界戦略の必要性から、とりあえずエルドアン大統領を助けた」ようにも見えます。それを考えると、アメリカの覇権はまだまだ続く、ということかも知れません。

しかし一方で、民主主義の後退という面からはアメリカ一極覇権の揺らぎに拍車をかけたとも言えます。


ここで、もう一つアメリカの国民世論という要素も加えて考えてみましょう。

エルドアン政権がますます強権化し、民主主義から遠ざかっていったとき、これまでの米国のトルコとの密接な関係の維持、ロシアやイランを考えればトルコとの密接な関係の維持どころか関係のさらなる強化が必要ですが、米国民はそれを支持するでしょうか?反対するでしょうか?

アメリカが「自由な国」を標榜し続ける場合において、アメリカによる一極覇権構造を望まない勢力(例えば、ロシアや中国、イランなどの現政権)が、米国民の対トルコ感情を悪化させる宣伝工作を米国内で仕掛けてきたとしたら、アメリカはそれを防ぎ切れるでしょうか?


というように考えると、今回のトルコのクーデター未遂事件は、アメリカによる一極覇権構造を強める、あるいは維持につながる、というよりは、弱めることにつながる可能性が高いというのが私の意見であります。



逆に、アメリカが覇権を維持すべく、地域ごとの勢力均衡戦略を継続するため、自国における言論の自由を厳しく制限する、つまり、エルドアン政権のような強権体制に移行し、アメリカ自体が民主主義から遠ざかるという可能性もあります。
が、その場合、世界における民主主義の推進主体であるアメリカから民主主義が消滅することになります。このシナリオであれば、これはこれで私が『異次元大恐慌』で書いていた「この800年続いてきた個人の権利の増大という潮流が逆の潮流に転換する」という基本シナリオに一致することになります。





 軍事クーデター失敗が

 却って民主主義の後退につながるとすれば、

 何という皮肉だろうか?



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706:英EU離脱:「私の知る限り、今は最悪の時代」とグリーンスパン元FRB議長。「EU崩壊は事実上、不可逆的」とソロス氏

2016/06/26 (Sun) 18:13
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:




日本ではほとんど報じられない話

ですが、

昨年来、欧米の大手銀行は軒並み、世界経済はやばい状態と警鐘を鳴らしてきました。


































私の著書『2016年、異次元大恐慌が始まる』につき、超絶にトンチンカンで能天気で間の抜けたアマゾンのレビューを書いている人がいましたが、英語で情報を取らない限り、能天気になっていても、やむを無いかも知れませんね。

情報収集能力がないことは仕方ないにしても(能力があっても時間が無ければ情報収集・分析ができないわけですし)、一人の人間として当然持ち合わせているべき最低限の礼節すらも持ち併せていないというのであれば、この手の人物は一体何のために生きているんだろうか、と思ってしまわないでもない今日この頃。

犬や猫ですら、多少の礼節はわきまえているのですから、最低限の礼節をわきまえぬ人間というのは、一体何なのか…。

しかし、この貧弱な情報収集能力の人でも、先週の英国EU離脱国民投票の結果を受け、世界的に金融市場が大混乱を来したのを目の当たりにし、今では常人なら普通に持てるような水準のまっとうな危機感を少しは持てるようになっただろうか、どうだろうか…。


私自身は、『2016年、異次元大恐慌が始まる』という見通しを持ちつつも、今般の英国民投票でEU離脱派が勝利するとは見通していませんでした。
しかし、この件により、『2016年、異次元大恐慌が始まった』といってしまって良さそうな状況のようです。

(国民投票ではEU残留派が勝利。その後、移民問題でしっちゃかめっちゃかになり、結局はなし崩し的に民主主義が停止状態になり、その後、EU離脱になる、というのが私の個人的な見通しでしたが、それは私の見通しが甘かったというわけであります。)



とはいえ、私が『異次元大恐慌』で立てた、「恐慌が始まるとすれば、それは経済的な原因ではなく、政治的な原因」という見通しに関しては、完全にその通りに進行しているとも言えます。


そして、先月の伊勢G7における安倍総理の「リーマンショック前に似ている」という危機感に満ちた見通しは、やはり、先見の明があったということになりそうですね。



では以下、グリーンスパン元FRB議長の見方と、英国のユーロ通貨参加の機会を叩き潰した悪名高きジョージ・ソロス氏の見方につき、米CNBCの記事を、粗くですが、訳しておきます:





'This is the worst,' Alan Greenspan says of British break from EU
「最悪」とアラン・グリーンスパン氏が英国のEU離脱について述べた

http://www.cnbc.com/2016/06/24/alan-greenspan-says-british-break-from-eu-is-just-the-tip-of-the-iceberg.html
Friday, 24 Jun 2016 | 11:59 AM ET
CNBC

Former Fed Chairman Alan Greenspan told CNBC on Friday the U.K. vote to leave the European Union ushers in a period that's even worse than the darkest days of October 1987.
アラン・グリーンスパン元FRB議長は、金曜、英国のEU離脱投票結果が1987年10月の最悪の日々よりもさらに悪い時代のさきがけになるとCNBCに述べた。

Britons voted by 51.9 percent to quit the 28-country union, shocking markets that had priced in a win for the remain camp.
(略。要するに離脱派が51.9%で勝ったと。)

"This is the worst period, I recall since I've been in public service," Greenspan said on "Squawk on the Street."
「私が公務についていたときから知る限りにおいて、今は最悪の時代だ」と"Squawk on the Street"というCNBCの番組でグリーンスパン氏は述べた。

"There's nothing like it, including the crisis — remember October 19th, 1987, when the Dow went down by a record amount 23 percent? That I thought was the bottom of all potential problems. This has a corrosive effect that will not go away."
「1987年10月19日にNYダウが記録的な23%下落したときを含めて、こんなことは無かった。それは私が考えた、すべての可能性のある問題の底だった。今回の件は、去ることのない腐敗効果を持つだろう。」

The former Fed chairman said that the root of the "British problem is far more widespread." He said the result of the referendum will "almost surely" lead to the Scottish National Party trying to "resurrect Scottish Independence."
元FRB議長は英国問題の根っ子は「さらに広範囲に広がっている」と述べた。彼は、英国民投票の結果は、スコットランド民族党による「スコットランドの独立問題の復活」の試みに、「確実に」つながると述べた※。


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※実際、スコットランド議会が確実にそのための立法措置を進めています:



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Greenspan said the "euro currency is the immediate problem." While the euro and the euro zone were major steps in a movement toward European political integration, "it's failing," he said.
グリーンスパン氏は「ユーロ通貨は差し迫った問題」と述べた。また、ユーロとユーロ圏は欧州の政治統合に向けた動きの重要なステップであるが、「それは失敗しつつある」とも述べた。

"Brexit is not the end of the set of problems, which I always thought were going to start with the euro because the euro is a very serious problem in that the southern part of the euro zone is being funded by the northern part and the European Central Bank," Greenspan said.
「ブレグジット(英国のEU離脱)は問題の終わりではない。私は常に、ユーロとともに問題が始まると考えていた。なぜなら、ユーロはユーロ圏南部が北部と欧州中央銀行ECBによって資金調達されているという深刻な問題を抱えているからだ」とグリーンスパン氏は述べた。


Even with that in mind, the European Central Bank is limited in what it can do because these fundamental problems like the stagnation of real incomes don't have easy solutions, Greenspan told CNBC.
以上を踏まえても、ECBにできることは限られている。なぜなら実質所得の停滞のような基礎的な問題に対して、簡単な解決はないからだ、とグリーンスパン氏はCNBCに述べた。

"There's a certain amount that monetary policy can do, but our problem is fundamentally fiscal," he said, adding that this is true in the United States as well as "every major country in Europe."
「金融政策にはある程度のことはできるが、我々の抱えている問題は基本的には財政の問題である」と彼は述べ、これは米国においても、「欧州のすべての主要諸国」においても、同様であると付け加えた。

Part of the problem is that the "developed countries are all aging very rapidly," which is leading to a higher ratio of government spending in the form of entitlements, Greenspan said.
問題の一部は、「すべての先進諸国において、高齢化が極めて急速に進行している」ことにあり、それは政府支出のうち高い割合が福祉に回ることにつながっている、とグリーンスパン氏は述べた。

The 90-year-old Greenspan presided over the Federal Reserve for 19 years, starting with the administration of President Ronald Reagan through that of George W. Bush.
90歳のグリーンスパン氏は、ロナルド・レーガン大統領からジョージ・W・ブッシュ大統領の政権まで、19年を超える期間、FRB議長を務めた。
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グリーンスパン氏が正しければ、我々は「最悪の時代」を生きている、ということになります。

また、元FRB議長が中央銀行限界論を主張していることは非常に重い、と言えるでしょう。





Brexit wound: UK vote makes EU decline 'practically irreversible', Soros says
英EU離脱による傷害:英国民投票はEUの凋落を「事実上、不可逆的」にする、とソロス氏

http://www.cnbc.com/2016/06/25/brexit-makes-eus-dissolution-practically-inevitable-george-soros.html
24 Jun 2016
CNBC

The United Kingdom's fateful decision to break away from the European Union makes an eventual dissolution of the 28 member bloc "practically irreversible," billionaire financier George Soros wrote on Saturday.
英国のEU離脱という運命的な決定は、28か国からなる欧州連合EUの最終的な崩壊を「事実上、不可逆的」にしたと、億万長者の投資家ジョージ・ソロス氏は土曜日に書いた。


In a somber post at Project Syndicate, Soros, who rose to prominence by speculating against the British pound—immortalizing him as the man who broke the Bank of England—speculated that the U.K.'s referendum to split from the EU is likely to hasten the breakup of the entire EU.
英ポンドに対する投機で英国中央銀行を打ち破った男としてその名を不朽のものとしたソロス氏は、プロジェクト・シンジケート(国際的なNPOであり、各国の新聞をつなぐ組織である。専門家や活動家、ノーベル賞受賞者、政治家、経済学者、政治思想家、ビジネスから学者にいたる各界のリーダーによる論考や分析を会員の新聞および雑誌社に配信し、会員間のネットワークを組織している:ウィキペディア参照。安倍総理もメンバーだそうです)への陰鬱な投稿において、英国のEU離脱国民投票はEU全体の崩壊を早めそうだと推測している。

Brexit, combined with Europe's festering migrant crisis, has created a "catastrophic scenario" that has grave consequences for Britain and the world economy, Soros wrote, "making the disintegration of the EU practically irreversible."
欧州の悪化する移民危機と組み合わさることで、英国のEU離脱は、英国と世界の経済に重大な結果をもたらし、「EUを事実上、不可逆的に崩壊させる」という「壊滅的なシナリオ」を生み出したとソロス氏は書いた。

Noting that Scotland is agitating to leave the U.K., Soros said the county itself "may not survive" the decision to leave Europe.
スコットランドは英国からの離脱を煽っていることにふれ、ソロス氏は、欧州から離れる決定をスコットランドは「維持できないも知れない」と述べた※。

※スコットランドが2回目の独立投票に進むということを示唆か?


"But the implications for Europe could be far worse," Soros cautioned. "Tensions among member states have reached a breaking point, not only over refugees, but also as a result of exceptional strains between creditor and debtor countries within the euro zone."
「しかし、欧州への影響はもっと悪いものとなり得る」とソロス氏は警告した。「難民の問題だけでなく、ユーロ圏における債権国と債務国のあいだの並外れた緊張の結果、EU加盟国間の緊張は臨界点に達している」

'We must not give up'
「我々は諦めてはいけない」


Soros, a polarizing figure who is known for financing left-wing causes, is an enthusiastic backer of European integration. In 1992, he dealt a fatal blow to Britain's participation in Europe's exchange rate mechanism—the precursor to the single currency.
左派運動への資金提供で知られるソロス氏は、欧州統合の熱狂的な支持者である。1992年、彼は英国の欧州為替相場メカニズム(単一通貨制度への準備制度)への参加に致命的な打撃を与えた。

"The consequences for the real economy [from Brexit] will be comparable only to the financial crisis of 2007-2008," wrote the billionaire, adding that a domino effect could potentially end decades of continental unification.
「(英国のEU離脱による)実体経済への影響は、07年-08年の金融危機以外には相当しない。」とソロス氏は述べ、数十年に及んだ欧州大陸の統合過程を終焉させる可能性のある、ドミノ効果を持ち得ると付け加えた。

Brexit "is sure to be fraught with further uncertainty and political risk, because what is at stake was never only some real or imaginary advantage for Britain, but the very survival of the European project," he added. "Brexit will open the floodgates for other anti-European forces within the Union."
英国のEU離脱は「さらなる不確実性と政治的リスクで満たされることは確実だ。なぜなら、英国のいくらかの実際のあるいは想像上の利益のみならず、欧州統合プロジェクトが生き残れるかどうかそのものがリスクにさらされているからだ」とも彼は述べた。「英国のEU離脱はEU圏内における他の反EU勢力のための水門を開くだろう」

Already, political opposition is mobilizing in other countries opposed to further European integration. Barely a day after the U.K. referendum, parties in places like the Netherlands and Austria suggested they might hold votes of their own.
すでに、さらなる欧州統合に反対する他の国々の政治的反対勢力が動き出している。英国民投票のわずか一日後において、オランダやオーストラリアでEU離脱の国民投票に向けた動きが出ている。

A report in the U.K. publication The Express said the German government was bracing itself for the possibility of at least 5 more countries threatening to leave the EU. In his article, Soros said a potential threat also comes from Italy, where the populist Five Star Movement may rise to power as a "full blown banking crisis" looms.
デイリー・エクスプレス紙は、ドイツ政府が5つ以上の国がEUを離脱する可能性があると警告していると報じた。ソロス氏は、ポピュリスト政党五つ星運動※が勢力を伸ばし、「完全なる銀行危機」が迫るイタリアにもその可能性があるとしている。

※EUに懐疑的な五つ星運動の候補が先日のローマ市長選に勝利していましたね。

The billionaire ended on a slightly optimistic note by saying that proponents of European integration "must not give up. Admittedly, the EU is a flawed construction."
ソロス氏は、欧州統合の支持者らは「諦めてはならない。確かに、EUは欠陥のある構造であるが」と述べることにより、わずかに楽観的な記述で投稿記事を締めくくっている。

However, he added, "all of us who believe in the values and principles that the EU was designed to uphold must band together to save it by thoroughly reconstructing it. I am convinced that as the consequences of Brexit unfold in the weeks and months ahead, more and more people will join us."
しかしながら彼は、「EUは理想に向けて設計されたという価値と原理を信ずる我々の全ては、徹底的にEUを再構築することでEUを救うために結束しなければならない。英国のEU離脱の影響は数週間から数ヶ月に明らかになるにつれ、より多くの人々が我々に賛同するであろうことを私は確信している」と付け加えた。





欧州統合を理想とするソロス氏がかつて、大規模な英ポンド売りで英中央銀行を打ち破り、それによって英国のユーロ通貨圏参加の機会を叩き潰したというのは何とも皮肉です。

また、ソロス氏は欧州統合を理想としつつも、いまのEUは一旦ご破算にせざるを得ないという考えのようですね。





さて、今般の英国の国民投票。

EU離脱派でなく、EU残留派が勝っていたとしても
・EU全体の移民/難民問題や南欧諸国の財政危機が解消されていたわけでは全くない
・米国の8割の世帯で2000年以降、実質所得が減り続けている問題が解消されていたわけでは全くない
・昨年の9月と今年の2月のG20共同声明で繰り返し述べられた
 「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらない」
 経済成長と雇用創出のため「我々は機動的に財政政策を実施する」
 という文言に表れているような、世界的な需要不足の状況が解消されていたわけでは全くない
わけです。


そして、今般の英国民投票のEU離脱派勝利で、こういった問題の解決がより困難を増し、よりリスクが高まったと言えます。



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705:G7:「通常の景気循環を上回るリスク。適切な政策対応しなければ危機に陥る」(共同声明草稿)--つまり、ヘタをすると「2016年、異次元大恐慌が始まる」というのが世界経済の現状

2016/05/27 (Fri) 11:38
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飛鳥新社 刊


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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:


安倍晋三首相「リーマン前と似てる」 消費税再増税の先送りを示唆
http://www.sankei.com/politics/news/160527/plt1605270006-n1.html
産経ニュース 2016.5.27

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が26日、三重県で開幕した。初日は「世界経済」について議論し、各国の事情を踏まえた機動的な財政出動と、構造改革を加速することで先進7カ国(G7)首脳が足並みをそろえた。安倍晋三首相は消費税再増税先送りの条件を「リーマン・ショック級」の状況としていたが、現在の経済情勢がリーマン前と似ていることを指摘し増税先送りを示唆した。



安倍首相は討議の冒頭、原油安やテロ、難民問題、新興国の不振を挙げて世界経済は不透明感が増しているとし、回復するか悪化に向かうかの「分岐点にある」と指摘した。

 原油、食料など商品価格の2014年以降の下落率が08年のリーマン・ショック前後と同じ55%に達し、新興国の投資の伸び率も低迷したとして強力な政策対応を呼び掛けた。







ただ、他国は安倍総理ほどの危機意識はないようで(とくにドイツは憲法で財政赤字が禁じられていますしね)…




伊勢志摩サミット:世界経済「クライシス」に異論も、表現調整へ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-05-25/O7QDMF6TTDTF01
ブルームバーグ 2016年5月26日

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は26日の会合で世界経済について討議した。日本政府の説明によると、議長の安倍晋三首相は機動的な財政戦略や構造改革を提案し、リーマン・ショックを引き合いに出して世界経済の危機(クライシス)に懸念を示したが、危機の度合いの表現をめぐって疑問も出たことから引き続き調整することになった。



世界経済の認識については、多くの首脳から新興国の現状に厳しい認識が示され、G7が連携して対処していくことを確認した。ただ安倍首相が世界経済のリスクが高いと発言したことに関しては、「クライシスとまで言うのはいかがなものかという意見も出た」という。世耕氏は「最後の要調整部分は現在の世界経済のリスク認識の表現の仕方」に絞られていると述べた。
  ブルームバーグ・ニュースが26日入手した英文の首脳宣言草案のコピーには、「時宜を得て適切な政策対応を取らなければ、世界経済が通常の景気サイクルを逸脱して、危機に陥るリスクがあることを認識している」という文言が盛り込まれている。

-----
※ブルームバーグ英語版の記事より該当箇所:

“We recognize the risk of the global economy exceeding the normal economic cycle and falling into a crisis if we did not take appropriate policy responses in a timely manner," reads the Japanese suggestion.

私なりに訳しておきます:
「我々は、世界経済のリスクが通常の経済循環の範囲を超えており、適切な政策対応をしなければ危機に陥ると認識している」とあり、日本の提案が盛り込まれている。


↑日本語版では、「日本の提案」というのが抜けていますね。
-----



「大きなリスクに直面」で一致

   安倍首相は、サミットで世界経済の状況がリーマン・ショック並みに悪化しかなねいとの懸念を示す複数の資料を提出した。例えば経済成長率に関する資料では、国際通貨基(IMF)の2016年世界経済見通しで先進国や途上国ともに下方修正が続いていることを示し、「リーマン・ショック時において、直前までプラス成長が予測されていたが、実際はマイナス成長に陥った」と説明。08年4月に3.8%だった世界の成長予測は09年実績で0.1%減に大幅に下方修正したことに言及している。
  別の資料では、新興国・途上国の投資伸び率が15年に実質2.5%と08年のリーマン・ショック後の3.8%を下回ったことを指摘。新興国・途上国の国内総生産(GDP)や輸入伸び率も同ショック以降、最も低い水準に陥っていると指摘するとともに、新興国への資金流入も15年に初めてマイナスに転じたことを示している。
  またエネルギー・食材・素材などの商品価格が14年以降55%下落しており、リーマン・ショック前後の下落幅と同じだとしている。




-----
※追記








あれま。結局、今回のG7の共同声明の最終文書では、世界経済はもはや危機を脱したことになっている模様でありますね…。

いずれにせよ、今後、実際に危機が起こった場合、安倍総理は先見の明があった、ということになるかな。

↑追記ここまで

-----
というわけで、

安倍総理の世界経済の現状認識は、

拙著『2016年、異次元大恐慌が始まる』の

第3章 「世界大恐慌2.0」前夜の世界経済

・世界経済の現状:2015年秋時点、既に停滞もしくは景気後退入り

・貿易:先進国は4年以上前に、新興国も1年以上前にピークアウト

・電力量、貨物輸送量で見ると中国のみならず日米欧も景気後退

辺りと認識は同様
のようです。


この危機認識に対応し、日本

・消費増税の延期

と、恐らくは

・10兆円規模の財政出動

ということになるのではないかと思われます。

しかし、他の国はどうかというと、やりたくても政治的に出来ない、あるいは、政治的にしない、というのが現状と思われます。

『異次元大恐慌が始まる』で取り上げた昨年9月トルコG20で「我々は機動的な財政出動をする」と共同声明に盛り込まれて以降、世界的に十分な財政出動が行われた、あるいは行われるという気配が特には感じられません。

日本だけ10兆円財政出動しても、それは日本のGDPに対しては10%ですが、世界の8000兆円のGDPからすれば0.1%強に過ぎません。これでリーマンショック級の危機を未然に防げるかというと、どうでしょうか?



ちなみに、中国はこんな感じアルよ:

中国指導部、経済巡り溝 金融・財政政策で食い違い
李首相ら、景気の安定重視/習氏周辺、構造改革を優先

http://www.nikkei.com/article/DGXKASGM22H37_S6A520C1FF8000/
2016/5/23付日本経済新聞 朝刊

中国の指導部内でマクロ経済政策を巡る温度差が目立ってきた。李克強首相ら政府高官が中国経済の現状を前向きに評価するのに対し、習近平国家主席に近いとみられる人物が反論。景気・雇用の安定重視か、構造改革優先かで意見が割れているもよう。異例の不協和音は、習氏への権力集中が進む中、来秋に開く共産党大会での最高指導部人事を巡る摩擦が背景にあるとみられる。






拙著『異次元大恐慌』では、恐らくは今年、大恐慌が起こるであろうことの背景には、

政治的に、権力構造を大転換させる

という動機づけが存在しているという仮説を立てました。


習近平主席がいう構造改革というのは、要はリストラですが、経済的に見れば、少なくとも短期的には需要減となるものと考えられます(長期的には供給増)。

ドイツのショイブレ財相もやたら「構造改革」と言っていますね。

-----
ドイツはG20による財政刺激には反対、構造改革に注力を-財務相
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-02-26/O350MA6JIJUP01
ブルームバーグ 2016年2月26日
-----

この世界的な需要不足の状況、また、世界経済の状況がリーマン・ショック並みに悪化しかなねいとの懸念があるような状況で構造改革に邁進したらどうなるかというと、それはまさに『異次元大恐慌』になりかねんわけであります。

で、それは経済的なものの見方です。

これを政治的な見方をするとどうなるかというと、『異次元大恐慌』でも示しましたように


構造改革=権力構造の転換

という話になります。

つまり、

構造改革の推進=権力構造の転換の推進

ということです。

今後起こりそうな大恐慌は

大恐慌の発生=構造の大改革の推進=権力構造の大転換の推進

という構図になるだろう、というわけです。


その先にありそうなことの一つが、

金本位制

です。

『異次元大恐慌』では、ハイパーインフレまで進んだ場合にそれを程よいところで止めるために金本位制を使うというところで止まっていましたが、最近読んだ本で、もっと大きな意義があり得ると気付きました。


いまなぜ金復活なのか―やがてドルも円も紙屑になる
フェルディナント・リップス著 大橋 貞信 訳
徳間書店 (2006年)

著者はロスチャイルド家の元金庫番で金鉱山の経営にも携わっていたという経歴の人物です。

「ロスチャイルド」に何かしらの引っ掛かりを覚える方もいらっしゃるかも知れませんが、この本の内容には非常に見るべきものがあります。

1970年代に金本位制が廃止され、為替変動制に移行したことの影響の最たるものとして

製造業企業が為替予約をしなければならなくなった

ということを挙げています。

それが、為替の先物市場の拡大、さらには他の商品の先物市場の拡大、引いてはデリバティブ市場全般の拡大につながった、というのがリップス氏の見解です。

リップス氏は金本位制最後の砦であった祖国スイスが1990年代、中央銀行が発行紙幣の40%の金を保有することを義務付けていた憲法を「改正」、ついに、普通の国に成り下がってしまったことを嘆いています。これにより、長期的にスイスの金融産業は凋落するしかないだろう、と。


拙著『異次元大恐慌』のp.232図表51に示した世界の通貨当局の金準備総重量の推移グラフを見ると、1960年代以降40年以上続いていた減少傾向がリーマンショックのあった08年まで続いています。
しかし一方、その08年を境にして、その減少傾向が増加に反転しているということもまた、このグラフで明確に分かります。

・リーマンショック前は世界の中央銀行の金保有量合計は減少していた

・現在は世界の中央銀行の金保有量合計は増加中である。

という意味で、今後起こり得る大恐慌は、リーマンショックとは違う
、ということになります。

そして仮に今後、金本位制が復活するとすれば、デリバティブや何やらであぶく銭を荒稼ぎしていた勢力は権力を失うこととなりそうです。これぞまさに権力構造の大転換というわけです。

そこにロスチャイルド家がどう関わるのか、関わらないのか、ということに関しては私は何らの情報も持ち合わせていないので、目下のところ言及することもありません。





『通常の景気循環を上回るリスク。

 何もしなければ危機に陥る』

というG7の共同声明(草稿)、

というか安倍総理の現状認識は正しいのであるが…



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703:ムーディーズやバンク・オブ・アメリカがこっそり公表している、リーマンショックを上回る危機のシナリオ

2016/04/07 (Thu) 14:07
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら





↑この『異次元大恐慌』のp.128に登場頂いた国際政治学者の藤井厳喜さんも、新著において『世界恐慌2.0』という結論に至っています:



世界恐慌2.0が中国とユーロから始まった』 徳間書店刊



私の本とはまた違う視点からの分析となっており、併せて読んで頂くと面白いのではないかと思います。

なお、藤井厳喜さんは1990年の日本の株式バブル崩壊、2008年の金融危機なども事前に予測しており、その点において私よりもずっと年季が入っていますが、この本の「まえがき」では以下のように書いていらっしゃいます:

「悪い見通しを声高に語りたくはない。しかし、我々が乗っている船が、大きな氷山に向かって突進しているのだとすれば、その予測される危険をより多くの人に知らせることは、言論人の責務であると考えている」



ちなみに、その藤井厳喜さんが私の『異次元大恐慌』についてラジオで紹介して下さっています:

KG Project@20160223
https://www.mixcloud.com/kennysuzuki18/kg-project20160223/



あと、私が以下のような見立て





…を立てるに至ったのも、最初のきっかけは藤井厳喜さんにアメリカでもTPP反対運動があるということを教わったことでした。





さて、本題です:

昨日ツイートした




に関連する話です。

ブルームバーグ(英語版)に興味深い記事があったので、大まかながら全訳しておきます。


-----

The Coming Default Wave Is Shaping Up to Be Among Most Painful
来るべき債務不履行の波は、過去最大級の苦痛に発展しつつある

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-04-05/the-coming-default-wave-is-shaping-up-to-be-among-most-painful
Bloomberg
April 6, 2016 — 8:25 AM JST Updated on April 7, 2016 — 6:43 AM JST


Losses on defaults are growing higher as leverage rises
借入れ倍率が上昇する中、債務不履行による損失が増大している

Bond prices may not reflect the trouble that's brewing
債券価格は醸成されつつある困難を反映していないかも知れない




When the next corporate default wave comes, it could hurt investors more than they expect.
次の企業破たんの波がやって来たとき、それは投資家らを想定以上に傷つけ得る。

Losses on bonds from defaulted companies are likely to be higher than in previous cycles, because U.S. issuers have more debt relative to their assets, according to Bank of America Corp. strategists. Those high levels of borrowings mean that if a company liquidates, the proceeds have to cover more liabilities.
破たん企業による債券に関する損失は、前回のサイクルよりも大きくなりそうだ。なぜなら、バンク・オブ・アメリカのストラテジストによれば、米国の債券発行体が資産に対して相対的により大きな債務を抱えているからだ。(後略)

"We’ve had more corporate debt than ever, and more leverage than ever, which increases the potential for greater pain," said Edwin Tai, a senior portfolio manager for distressed investments at Newfleet Asset Management.
「我々はかつてないほどの企業債務、かつてないほどの借入れ倍率を抱えており、それらはより大きな痛みの可能性を高めている」と、ニューフリート・アセット・マネジメントでディストレスト投資(破たん企業への投資)のシニア・ポートフォリオ・マネージャーを務めるエドウィン・タイは述べた。

Loss rates have already been rising. The potential for them to climb further may mean that in general junk bonds are not compensating investors enough for the risk they are taking, said Michael Contopoulos, high yield credit strategist at Bank of America Merrill Lynch. The average yield on a U.S. junk bond is now around 8.45 percent, according to Bank of America Merrill Lynch indexes, about the mean of the last 10 years.
損失率は既に上昇している。さらなる上昇の可能性は、一般的に、ジャンク債(の利回り)が、投資家が取るリスクに見合わなくなることを意味する、とバンク・オブ・アメリカの高利回り債ストラテジストのマイケル・コントポロスは言う。バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチ指数によれば、米国のジャンク債の平均利回りはいまや8.45%前後となっており、過去十年の平均に近い。

※ジャンク債:「通常、スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)の格付けで「BB」、ムーディーズ社(Moody's)の格付けで「Ba」、もしくはそれ以下の低格付けの債券のことを指します」(iFinance


In bad times, corporate bond investors on average lose about 70 cents on the dollar when a borrower goes bust. In this cycle, that figure could be closer to the mid-80s, Bank of America strategists said. Those losses would be the worst in decades, according to UBS Group AG’s analysis of data from Moody’s Investors Service.
不況時、借り手が破たんした場合には企業債の投資家は平均で1ドルあたり70セントの損失(つまり、70%の損失)を受ける(注:債券の発行企業が破綻しても、債券保有者が100%の損失となることは稀(まれ)です。その企業が保有資産を売却することで弁済するからです。好況時なら保有資産が高く売れるため損失率はもっと小さくなります)。今回のサイクル(景気サイクル)では、この数字は80%台半ばに近づき得ると、バンク・オブ・アメリカのストラテジストはいう。UBSによるムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータの分析によれば、そのような損失率は過去数十年で最悪となる。

Junk-rated companies have debt equal to about 48 percent of their assets now, up 7.5 percentage points in the last 7 years, according to Bank of America Merrill Lynch data. The ratio of debt to assets is one of the main factors in how big losses will be when a borrower defaults, and it could be headed higher than in previous cycles.
バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチのデータによれば、ジャンク級に格付けされている企業は、今や資産の48%に相当する債務を抱えている。これは、7年前の水準よりも7.5%高い。資産に対する債務の比率は、借り手の破たん時に生じる損失の大きさを決定する主要な要素の一つであるが、これが前の景気サイクルよりも高い水準へと向かっているのである。

Another factor is the rate of default, because when more companies are defaulting, more are looking to sell assets or otherwise restructure, leaving investors with lower recoveries. Default rates currently stand around 4 percent, according to Moody’s. The ratings company forecasts that the measure will rise to 5.05 percent by the end of the year in the best-case scenario, and could jump as high as 14.9 percent under the most pessimistic projection.
ほかの要素は破たん率である。というのは、より多くの企業が破たんした場合、より多くの資産が売りに出されるか、より大規模なリストラが進められ、投資家が回収できる資産がより小さくなるからだ。破たん率は現在、ムーディーズによれば4%前後である。ムーディーズの予測では今年(2016年)末にはその数値が最良のシナリオでも5.05%に上昇し、最悪のシナリオでは14.9%に上昇し得る。

※上のツイートで紹介しているCNBCの記事では、S&Pによる1991年からのジャンク債(投機的格付債)の破たん率(不履行率)のグラフが示されていますが、14.9%というムーディーズが想定している最悪のシナリオになるとすれば、それは1991年以降で最悪となり、リーマンショックを上回ることになります。


Default rates and debt-to-asset ratios explain 75 percent of the variation in observed recoveries, Bank of America strategists said.
破たん率と債務資産比率は、観察された資金回収における変化度合の75%を説明していると、バンク・オブ・アメリカのストラテジストはいう。


Shrinking Recoveries
目減りしている資金回収率


As debt-to-asset ratios and default rates have risen, recovery rates, or the percentage of principal that investors get back when a credit defaults, have already started falling. They stand at around 29 cents on the dollar, according to Bank of America Merrill Lynch data. Two years ago, that figure was closer to 44 cents. In other words, loss rates are already starting to rise.
債務資産比率と破たん率が上昇するにつれ、資金回収率、すなわち破たん時の投資元金の回収率は、すでに低下を始めている。バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチのデータによれば目下、1ドルにつき29セント(=29%)である。2年前、この数値は44セント(=44%)に近かった。言い換えれば、損失率はすでに上昇し始めている。

The long-term average recovery rate for senior unsecured debt across the entire credit cycle is around 40 cents on the dollar, a level that falls to around 30 cents when times get bad. In downturns going back to the 1980’s, the lowest recovery rate was around 22 cents in 2001, according to UBS strategists’ analysis of Moody’s data.
全ての景気サイクルにわたる無担保上位債務の長期平均資金回収率は1ドルあたり40セント(=40%)であるが、不況時にはそれが30セント(=30%)に落ちる。UBSのストラテジストによるムーディーズのデータ分析によると、1980年代以降の不況を振り返ると、最低の資金回収率は2001年の約22%であった。

Bank of America strategists see possible recovery rates in the mid-teens in this cycle. While holding a portfolio of speculative-grade bonds to maturity at current yields may still result in a positive return for investors, higher defaults and losses on the securities will likely weigh on prices in the coming months, Contopoulos said.
バンク・オブ・アメリカのストラテジストは、今回の景気サイクルにおいて、10%台半ばの資金回収率があり得ると見ている。現状の利回り水準からすれば、投機的格付債を満期まで保有すれば、投資家にとってプラスの利益率をもたらすかも知れないが、より高い破たん率と損失率が、今後数か月において債券価格の重しになりそうだと、(バンク・オブ・アメリカの)コントポロスはいう。

Taking steps including buying secured debt can help mitigate investors’ trouble, Newfleet’s Tai said. Newfleet had $11 billion under management as of December 31.
担保付き債の購入などは、投資家の困難を和らげる助けとなり得る、とニューフリートのタイはいう。ニューフリートは昨年12月末時点で110億ドル(約1.2兆円)の資金を管理している。


The low price of oil is another factor that will likely hamper recoveries. Crude now trades at around $36 a barrel, down about 65 percent from its level in mid-2014, a decline severe enough that a few drillers have started missing payments on their debt.
原油価格の低迷も、資金回収を阻害するもう一つの要因となりそうだ。原油は現在、1バレル36ドル前後で取引されているが、2014年半ばの水準から65%下落している。この下落は2、3の石油掘削会社が債務に関する支払いを滞らせ始めるに十分厳しいものである。

Some energy companies will be able to negotiate with their lenders to cut their debt loads. But a chunk of them have production costs that are too high even ignoring borrowing costs, giving their creditors few options apart from liquidating the company.
一部のエネルギー企業は債務負担の削減につき貸し手と交渉することができるだろう。しかし、かなり多くのエネルギー企業は、借入れコストを無視した場合ですら生産コストが高過ぎ、貸し手にはその企業を清算させる以外の選択肢がほとんど残っていない。

For many liquidated energy companies, "there’s not a whole lot to recover in terms of cash," said Leonard Klingbaum, a partner at law firm Willkie Farr & Gallagher.
多くの清算済みエネルギー企業において、「現金による回収余地はあまり多くない」、と弁護士事務所ウィルキー・ファー&ギャラガーのパートナー、レオナルド・クリングバウムはいう。





以上、まとめると、

・今年、ムーディーズの最良のシナリオでもジャンク債の破たん率は上昇に向かい、最悪のシナリオではリーマンショック直後の水準を上回る

・バンク・オブ・アメリカの想定では、次の不況サイクルにおいては無担保上位債務の長期平均資金回収率が過去数十年で最悪になりそう


ということになります。

つまり、

ムーディーズやバンク・オブ・アメリカ、淡々とかなりヤバい想定を出しています。


しかしながら、

日本のメディアではあまりこういった景気の悪い話、ほとんど報じられないですね。

何か特別な事情があるのか、特にこれといった事情はないのか、よく知りませんが…。




さて、

アメリカの景気が実はかなり悪い、となると…












というわけで、

トランプ氏が大統領になる確率が高まる

ことになります。



 『2016年、異次元大恐慌が始まる』

 『世界恐慌2.0』

 が、いよいよ現実味を帯びてきたか…


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702:積極財政派、世界で急激に増殖中:ヘリコプターマネー(中央銀行の国債直接引受け+財政出動)で『異次元大恐慌』は回避されるか?

2016/03/24 (Thu) 12:02
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


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さて、本題です:

最近、ブルームバーグ日本語版で興味深い記事が多く出ており、昨日に引き続き、ブログ更新です。


-----
空から金のヘリコプターマネーにわかに注目-中銀直接引き受け可能か
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-23/O4H16G6K50XV01
ブルームバーグ 2016年3月23日


・シティとHSBC、コメルツ銀が相次ぎリポート

・度重なる利下げと資産購入にもかかわらずインフレはなお弱い



度重なる利下げと12兆ドル(約1347兆円)の資産購入が世界的な金融危機以降に行われたにもかかわらず、インフレの針を十分前に進ませることができない中央銀行は、未踏の領域にさらに深く歩を進める必要があるかもしれない。

世界をディスインフレから脱却させる新たな手段は、中銀による政府の景気刺激策の直接ファイナンス、すなわちノーベル経済学受賞者のミルトン・フリードマン氏が1969年に提唱した「ヘリコプターマネー」と呼ばれる戦略が鍵を握っている可能性がある。

  シティグループとHSBCホールディングス、コメルツ銀行のエコノミストは、ヘリコプターマネーをテーマとする投資家向けリポートを過去2週間以内に相次いで公表した。世界最大規模のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツを率いるレイ・ダリオ氏もこのアイデアが可能性を秘めていると考える。さらに欧州中央銀行(ECB)当局者の間でも、ドラギ総裁が「非常に興味深い考え」と呼ぶコンセプトについて既に論争が行われている。

  オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、ガブリエル・スタイン氏(ロンドン在勤)は「『ヘリコプターマネー』が次に試みられる特効薬(シルバーブレット)かどうか確かなところは分からないが、このトピックは予想よりかなりの注目を集めている。どこかで何らかの形で実行される可能性はかなり高いのではないか」と指摘する。

新たな手段の発動余地がいずれもなくなりつつある金融・財政政策を融合するヘリコプターマネーの理論は、現代社会において主要国が試みた例はない。銀行が現在果たしているような制約を伴う通常の仲介機能を経由せず、財政事情が苦しい政府が中銀に短期国債を直接売却することで、減税または歳出プログラムを通じて実体経済に増発された貨幣を投入することが想定されている。

  ブリッジウォーターのダリオ氏も3日のブルームバーグとのテレビインタビューで、「われわれのリスクはインフレでも景気の過熱でもない。消費する人々にさらに直接的に働き掛ける必要が出てくるだろう」と語った。
原題:Billions From Heaven? ‘Helicopter Money’ Option Wins Fans(抜粋)

-----


おや、まあ。

世界的に積極財政派が急激に増殖中のようで、それは喜ばしい限りでありますね!

シティが国債直接引き受けに言及していたことについては、『異次元大恐慌』でも取り上げていました。それは、昨年9月ですね:





今回取り上げた記事には

金融・財政政策を融合するヘリコプターマネーの理論は、現代社会において主要国が試みた例はない。

とありますが、日本では第二次大戦直後、財政法で国債の直接引き受けが原則的に禁止されたあとでも、法の網をかいくぐって実質的に国債の直接引き受け&大規模財政出動が行われました。
それは『異次元大恐慌』でも書いたとおりであります(大元の出典は『日本銀行百年史』第5巻ですが、私の『異次元大恐慌』では関連記述をコンパクトにまとめてあります)。

財政法について少しだけ書きますと、第5条

「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」

「原則禁止」ですが、第7条

「国は、国庫金の出納上必要があるときは、財務省証券を発行し又は日本銀行から一時借入金をなすことができる。

というような抜け道があります。当時GHQはこの抜け道を日本政府に使わせたわけです。他にももう一つの抜け道、「復興基金の発行債券は国債ではない」という裏ワザを使わせています。

要するに、日銀直接引受&財政出動は、できんことはないわけです。


問題は『異次元大恐慌』が起きる前に、政治的に実施できる環境が整うかどうか、です。


それと、気を付けなければならないのは、『異次元大恐慌』でも繰り返し、繰り返し強調しましたように、

経済はカネではなく、モノが足りるかどうか

という大原則です。

カネは人やモノを適切なところに動かすための方便、道具に過ぎません。

カネが無限だからと言って野放図に使うことで却って生産能力を損なうようなことになり、物不足が起きてしまっては本末転倒です。

ヘリコプターマネーを使う場合には、その辺りをしっかり考えて、生産能力を損なわず、むしろ、少子高齢化で将来不足することが必至の生産能力を高めつつ、不足する需要を補う、という方向性が何よりも肝要です!




いずれにせよ、

積極財政派が世界的に絶賛増速中なことに関しては

喜ばしい限りでありますな


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701:ECBの量的緩和で追い詰められるドイツ銀行 + 『異次元大恐慌』の引金を引くのは中国か?それとも、欧州か?

2016/03/23 (Wed) 12:01
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さて、本題です:

表題の件。

まずは以下に引用したブルームバーグの興味深いコラムをどうぞ:

-----

【インサイト】ECB債券購入、銀行のトレーディング事業に打撃必至
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-21/O48N7O6K50XT01
Duncan Mavin
ブルームバーグ 2016年3月22日

欧州中央銀行(ECB)は量的緩和(QE)での月々の債券購入額を800億ユーロ(約10兆円)とこれまでの600億ユーロから増やすことや、銀行債以外の投資適格社債を購入対象に加える策を打ち出した。しかし、これがユーロ圏の投資銀行に打撃を与えることは必至だ。

  ECBの措置が景気回復に役立つかどうかはまだ分からないが、投資銀行の債券・通貨・商品(FICC)トレーディングデスクが苦労することだけは確実だ。ECBはこれまでのQEを通じて既に、ユーロ圏の国債の相当部分を保有。それを社債にまで拡大しようというのだ。

  バーンスティーン・リサーチ(ロンドン)のアナリスト、チランタン・バルア氏はユーロ圏の銀行債を除く投資適格社債市場の月次流動性を250億-350億ユーロと見積もる。仮に、ECBが購入増額分のうち100億ユーロを社債に回したとすると、ECBは流動性の約3割を吸い上げてしまうことになる。これは金融危機後一貫して収入が減っているFICCトレーディング部門をさらに圧迫する。

  理論的には、QEは合併・買収や株式の発行・売り出しなどを促すことで投資銀行業務の収入に寄与する。QEによって実際に景気がよくなれば銀行も恩恵を受ける。しかしFICCトレーディング収入への依存が依然として大きい銀行にとっては、あまり慰めにならない。HSBCホールディングスの見積もりによれば、ドイツ銀行ではこれが投資銀行全体の収入の57%を占めている。

  既にFICCトレーディング事業の縮小を決めている銀行は多いが、収入のさらなる急激な減少は全行の再編を難しくする。収入が想定以上のペースで減れば、計画しているコスト削減では追いつかなくなる。ECBの措置は欧州の成長を復活させるかもしれないが、域内の投資銀行の苦しみは増すばかりだ。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:ECB’s Bond-Purchase Plan Promises Pain for FICC Trading: Gadfly(抜粋)




これを執筆したDuncan Mavin氏の経歴は、元の英語版のほうに書いてありますが、

・元ウォール・ストリート・ジャーナル勤務
・公認会計士
・銀行業務や資金運用業務に従事経験

とのこと。

元の英語版のほうでは、ドイツ銀行、バークレイズ銀行、クレディ・スイス、UBSの固定収入(Fixed Income)における、債券・通貨・商品(FICC)トレーディングが占める割合のグラフが掲載されていますが、

ドイツ銀行 57%
バークレイズ銀行 43%
クレディ・スイス 36%
UBS 23%


となっています。ドイツ銀行は競合他社にくらべて、ECBの金融緩和で今後さらに減りそうなFICCへの依存度がかなり高いわけです。

元の英語版記事では、そのFICCによる収入の世界的な銀行13行の合計額の推移グラフも掲載されているのですが、

2009年   1340億ドル
2015年   710億ドル
2016年推計 580億ドル


のように今年は09年の半分以下、昨年の2割減になりそうとのことです。

関連して、先月、「『困難な』環境を理由に年内に4000人を削減する計画を加速させる考えを示していた」ばかりのクレディ・スイスは…

-----
クレディ・スイス、投資銀行の縮小を加速へ-関係者
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4GN2A6K50XS01
ブルームバーグ 2016年3月23日

-----

ちなみに、ドイツ銀行、バークレイズ銀行、クレディ・スイス、UBSの昨日の株価に基づくPBR(株価÷一株当たり簿価)はというと、

ドイツ銀行 0.34倍
バークレイズ 0.56倍
クレディ・スイス 0.64倍
UBS 1.11倍

となっています。FICC依存度が高いほど割安(売り込まれている)という具合です。つまり、世界的な金融緩和の影響を受けやすい収益構造になっているほど、売り込まれているという格好です。

ドイツ銀のPBR 0.34倍というのは、株価が簿価=解散価値(いま会社を解散して残存資産を清算した場合の価値)の0.34倍ということになります。つまり、解散価値の66%引きの値段でないと、誰もドイツ銀行の株を買わない状態であることを意味します。


Bigcharts.comで一株当たり利益(EPS)のデータを見てみますと、

ドイツ銀行はリーマンショック時、「ショック」の少し後になって初めて赤字決算になりました。危機直前まではむしろ増益でした。
一方、今般は、リーマンショックのような明確な「ショック」がないにもかかわらず、すでに赤字に陥っています。

ScreenShot_20160323111350.png


もっと言えば、前回ショック直前期は、増益のなかで株価が下落していました。市場は、意外と冷静に分析していたということかも知れません。今回も市場は冷静に分析したうえでドイツ銀行を売り込んでいるのかも知れません。そう考えれば、ドイツ銀行は現在、前回ショック時よりもヤバい状態なのかも知れませんね。


昨日か一昨日あたり、横綱白鵬による「ダメ押し」が物議を醸していましたが、ドイツ銀行に関してはムーディーズがダメ押し、いや、ダメ出しをしようとしているようです。

-----
ドイツ銀行を格下げ方向で見直し-ムーディーズ
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O4EQ7C6KLVRC01.html
ブルームバーグ 2016/03/22 05:57 JST

-----

もちろん、リーマンショック前に訳の分からない金融商品にAAAの格付けを出していたような大手格付け機関が信用できるのかどうか、という問題はあります。

ちなみに、ロシアはプーチン大統領肝煎りで独自の格付け機関を立ち上げました:





それはそれとして、上記の収益構造と金融緩和から受ける影響を考えれば、ムーディーズが「ドイツ銀、ヤバい」と判断して格下げしようとしていることは適切なものなのかも知れませんね。


昨年来、「中央銀行の中央銀行」というべき国際決済銀行BISが盛んに、金融緩和の限界を警告していましたが、ECBは意図的にドイツ銀行を追い詰めているのか、意図せずして追い詰めてしまっているのか…


さらには、昨日のベルギー首都ブリュッセルにおける連続爆破テロを受け、今後EUにおける人、物、カネの動きはますます制限を受けそうです。

-----
ブリュッセル孤立-テロで空港閉鎖、タリスやドイツ鉄道も運行停止
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4G0V06JIJUY01
ブルームバーグ 2016年3月22日

22日の爆弾テロを受けてブリュッセルへの航空および鉄道の運行が停止され、ベルギーの首都は孤立状態になっている。


-----

さらには、このテロで英国のEU離脱の可能性が高まったとの見方も…


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NY外為:ポンド下落、テロでEU脱退リスク強まる-円下落
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4FMXX6JIJUO01
ブルームバーグ 2016年3月22日

22日のニューヨーク外国為替市場ではポンドが主要通貨の中で最も下げた。ブリュッセルでのテロ攻撃を受け、英国の欧州連合(EU)離脱「Brexit」支持派が勢いづくとの見方からポンド売りが膨らんだ。


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欧州のみならず、中国もけっこうアレな感じです。











 『異次元大恐慌』の引金を引くのは、

 中国か?

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700:米株押し上げた最大の推進力=「自社株買い」もそろそろ弾切れの模様

2016/03/14 (Mon) 12:25
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら





さて、本題です:

表題の件。
米国のビジネス・技術ニュース専門のネットメディア、ビジネス・インサイダーに興味深い記事があったので、大雑把に全訳しておきます:


The biggest force powering the stock market is starting to disappear, and it could be a huge problem
株式市場を押し上げていた最大の力が消えつつあり、それは大問題となり得る

Bob Bryan, Business Insider
Mar. 12, 2016

Since the beginning of the post-crisis bull-market run, the biggest buyer of equities hasn't been retail investors or institutions but companies themselves.
危機後の上げ相場が始まって以来、株式の最大の買手は個人投資家でも機関投資家でもなく、株を発行していた企業自身だった。

Companies have been supporting the stock market through buybacks for years.
この数年、企業は自社株買いを通じて株式市場を支えてきた。

But according to some analysts, the era of buybacks may be coming to a close.
しかし、一部の分析者によれば、この自社株買いの時代は終焉しそうだ。

And this could be terrible news for the stock market.
そしてこれは株式市場にとってひどく恐ろしいニュースになり得る。


[Companies have been their own best friends]
[企業は自分自身の最大の友だった]

According to a note from analysts at HSBC, buybacks have been the source of most of the demand for stocks since 2009.
HSBCの分析者らが書いたノートによれば、自社株買いは2009年以来、ほとんどの株式需要の資金源であった。

The note said that for each of the past two years, companies in the S&P 500 have bought back nearly $500 billion of their own stock and a total of $2.1 trillion since 2010.
そのHSBCのノートは、過去2年において毎年、S&P500構成企業は5千億ドル(1ドル=120円とすれば、60兆円)の自社株買いを実施しており、2010年以来の合計は2.1兆ドル(同252兆円)になる。

This huge amount of buying has been a massive source of upside for the stock market, said Liz Ann Sonders, chief investment strategist at Charles Schwab.
この巨額の買い入れは、株式相場上昇の巨大な資金源であったと、チャールズ・シュワブ(米国の大手格安証券会社)の主席投資ストラテジスト、リズ・アン・ソンダースはいう。

"There's no question that by far corporate buyback have been the source of most of the buying in the stock market," Sonders told Business Insider on Wednesday. "On a cumulative basis there has not been a dollar added to the US stock market since the end of the financial crisis by retail investors and pension funds."
「これまで、企業の自社株買いがほとんどの株式市場の買手の資金源であったことが疑いない」、ソンダースは水曜、ビジネス・インサイダーに述べた。「累積では、金融危機の終了後、個人投資家や年金基金から米国株式市場への資金流入は1ドルもなかった。」

Jonathan Glionna, equity strategist at Barclays, laid out just how important this has been to equity markets, comparing the boost from buybacks to the Fed boosting the bond market through quantitative easing.
バークレイズ銀行の株式ストラテジスト、ジョナサン・グリオナは、自社株買いによる刺激とFRBが量的緩和を通じて債券市場を刺激したことを比較しながら、このことが株式市場にいかに重要であったかという議論を展開している。


[The end of financial engineering?]
[金融工学の終焉か?]

For Glionna, the current problems is that many companies are financing buybacks through debt issuance, and so any tightening of credit conditions — which we've seen in the last several months — will lead to an inability for companies to finance and execute buybacks at the rate seen in the last few years.
グリオナにとって現在の問題は、多くの企業が社債発行によって自社株買いの資金調達をしており、いかなる金融環境の引き締まり――この数か月間において我々が目撃した金融環境――も、この2、3年に見られたような金利で企業が自社株買いのための資金調達をすることを不可能にするだろう、ということだ。

That would end the reign of buybacks as the biggest buyer in the market.
それは、市場における最大の買手としての自社株買いの大流行を終わらせる。

Omar Aguilar, chief investment office for equities at Charles Schwab Investment Management, said this is already coming to pass.
チャールズ・シュワブ・インベストメント・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、オマール・アギラーは、これが既に起こりつつあるとしている。

"The cycle for buybacks is nearing its end," Aguilar told Business Insider on Tuesday.
「自社株買いのサイクルは終わりに近づいている」とアギラーは火曜、ビジネス・インサイダーに述べた。

"Cheap financing has encouraged buybacks for some time. It's easier to do when you can simply ask for a loan to finance the buybacks and as the Fed tightens and interest rates increase, this isn't going to be as available."
「低金利による資金調達はしばらくの間、自社株買いを活性化させてきた。自社株買い資金の借入は容易であったが、FRBが金融を引き締め、金利が上がるにつれ、このような資金の調達は利用できなくなりつつある」


[The impact on the stock market]
[株式市場への影響]


The issue that should scare investors is what would happen if this corporate stimulus went away.
この投資家を震え上がらせるであろう問題は、企業による景気刺激が遠のけば起こることになるだろう。

"I have sympathy with the idea of increased risks if buybacks were to dry up," Sonders told us. "Certainly there's a possibility that if that were to happen it could cause a serious downside for equity markets."
「自社株買いが干上がればリスクが増大するという考えに、私は共感する」と(チャールズ・シュワブの)ソンダースは我々に述べた。「確かに、株式市場の重大な下落を引き起こす可能性はある」

According to Sonders and Aguilar, however, the end of buybacks dominating the stock market will see a shift both in the next round of stock market buying and in corporate behavior going forward.
ソンダースとアギラーによれば、しかしながら、株式市場を支配している自社株買いの終焉は、次の株式市場における買いの動きと、企業の前向きな振る舞いへの転換につながる。

Sonders thinks that buybacks could be replaced by other sources of demand, such as retail investors and pension funds. "You should start to see a pickup in demand from other sources increase as buybacks start to slow," said Sonders.
ソンダースは、自社株買いが、個人投資家や年金基金など、ほかの資金源と置き換えられ得ると考える。「自社株買いが減速するにつれ、ほかの資金源からの株式購入需要が回復すると考え始めたほうがいい」とソンダースはいう。

"Pension funds in particular are going to look at misses on their targets and eventually are going to have to step in to the market." And to Sonders, financing conditions for buybacks through investment-grade debt will likely last long enough for markets to find other sources of demand.
「特に、年金基金は彼らの目標達成の不首尾を見据え、最後には市場に踏み入れる必要があるだろう」。そしてソンダースは、投資適格債の発行を通じた自社株買いが行われるための金融環境が、株式市場にほかの資金源が入ってくるまでの間、十分に長続きしそうだとしている。

Aguilar said that the end of buybacks could simply force companies to shift to another type of investment.
アギラーは自社株買いの終焉は単純に、企業にほかの種類の投資に向かわせ得るという。

"Without the ability to do buybacks, I think companies are going to shift that to capital expenditures," Aguilar told us. "Companies are going to look for a return on their capital and investing in growth is going to be the best way going forward."
「自社株買いができなくなり、企業は資本支出(生産財への投資支出)に向かうと私は考えている」とアギラーは我々に述べた。「企業は彼らの資本の運用益を求めており、前に進むための最も良い方法として成長への投資を行うだろう」

Buybacks, said Aguilar, are done because that's the way companies think they can get the best return on their investment, so with a more volatile stock market and harder access to credit, spending cash on long-term growth becomes the best option.
自社株買いは投資利益率が最も高いと企業が考えることによって行われた、とアギラーはいう。だから、株式相場の変動がより激しくなり、借入れによる資金調達がより厳しくなるなか、現金を長期成長のために使うことが最良の選択肢になる。

In this scenario, said Aguilar, capex investment will spur economic and earnings growth, supporting not only the broader economy but stock prices as well.
このシナリオにおいて、資本支出投資が経済と利益の成長に拍車をかけ、広範な経済だけでなく、株価も支えることになる、とアギラーはいう。

Sonders also agreed an uptick in capex was on its way calling it "overdue."
ソンダースももまた、資本支出の増加の「機運が熟している」としている。

On the other hand, profit margins are on the decline, and it may be hard for companies to stomach larger capital expenses, especially with labor costs already putting pressure on bottom lines.
一方、特に、人件費が企業の損益を圧迫しつつあり、企業の利益幅は減少していることが、企業の資本支出拡大意欲を削ぐかもしれない。




上記の記事の要点を簡単にまとめると

・09年以降の米株上昇を支えたのは企業の自社株買い。この間、個人や年金基金は累積では株式市場に資金を投入していなかった。

・危機以降の一連のFRBの金融緩和策によって、企業による実体経済における需要期待は持ち上がらず、企業は低金利を利用して生産財の投資よりも簡単に儲かる自社株買いに走った(となると、危機以降の一連のFRBの金融緩和策はむしろ、企業の生産財への投資意欲を削ぎ、長期的な経済成長を損なった可能性すらありますね…)。

・FRBの量的緩和終了、金利引き上げによって株式市場が不安定化したことで、企業は「生産財への投資のほうが儲かる」と判断し、生産財への投資を増やす可能性がある。

・しかし、人件費の上昇などにより利益幅、利益率が減少しており、企業が生産財への投資を増やさない可能性もある。

という具合でしょうか。



チャールズ・シュワブのCIOやストラテジストの「株式市場が不安定化したことで、企業は「生産財への投資のほうが儲かる」と判断し、生産財への投資を増やす可能性がある」というシナリオ、あり得ないわけではないですが、株式市場が不安定化する中で、企業が資本支出(生産財への投資支出)を増やすというのは少々考えにくいのではないかと思います。

というのは、株価が停滞または下落すれば、これまでたっぷり買い込んでいた自社株の評価額が下落し、場合によっては評価損もでるわけです。そうなると、企業のバランスシート、財政状態が悪化し、生産財への投資のための資金借り入れコストが上昇し、よって、生産財への投資意欲がそがれることになります。それに、自社株買いのために借りた借金、どないしまんねんという問題も加わります。

そもそも、「生産財への投資よりも株式投資への投資のほうが儲かるので、生産財への投資をせずに、株式投資に走ります」って、思いっきり株式バブルじゃないか、とも思う今日この頃であります。
「FRBの金融緩和で実体経済の成長は期待できないが、株式はバブルになりそうなので、借金してでもガンガン株を買います」ってなことですから。

個人的には、↓このHSBCのいう「過剰債務の世界においては現金が王様」に一票です。企業は「生産財の投資に回す」以外にも、「世界的な過剰債務、特に民間の過剰債務のことを勘案すれば、リスクを取らず現金をため込んでおく」という選択肢があるわけですので…。







一方、

日本の株式市場は「マイナス金利では株が上がらないからだめだ。だから、日銀がETFをもっと買うことになるだろう。だから、今のうちに株を買おう」という動きになっているようです。なんのこっちゃやら…。

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日銀マイナス金利に限界論、株高が進む異例の展開
http://jp.reuters.com/article/boj-ecb-idJPKCN0WD0I3?pageNumber=3
2016年03月11日
ロイター

個人投資家の保有が多い銀行株の上昇は市場のムードも明るくする。

JPモルガン・アセット・マネジメント、グローバル・マーケット・ストラテジスト の重見吉徳氏は「日本株市場は、金融機関の収益き損への警戒感に支配されているようだ。日銀のマイナス金利拡大が遠のいたとすればプラスに働く」とみる。

さらに金利・量・質の「3次元緩和」のうち、量に比重がかかってくれば、ETF(指数連動型上場投資信託)の購入枠拡大への期待も高まる。「効果がわからないマイナス金利の拡大より、ETF拡大の方が需給に直接的に影響を与えるだけに、株価にはインパクトがある」(国内銀行エコノミスト)という。

とはいえ、金融緩和に「限界論」が強まれば、一般的には株安材料だ。それにもかかわらず、11日の日本株が上昇したのは、マイナス金利に対する市場の「嫌悪感」を表しているともいえる。

今後、日銀がマイナス金利幅を拡大させる追加緩和策を実施する場合は、株安リスクを警戒する必要がありそうだ。





もちろん、日銀が株式ETFを買うなかで、企業が新株を発行し、それを生産財への投資に使う、ということであれば実体経済にもプラスです。しかし、実体経済における需要増大への確たる期待がなければ、わざわざ株を増発してもそれで儲かる保証がなく、将来の利益見通しが改善しないなかでは、増益の見通しも立たず、また、配当を増やせませんから既存株主の利益を損ないかねません。よって、実体経済への波及効果はほぼ期待できないと言うべきでしょう。


本来なら、ここでガツンと財政出動すれば良いという話になります。もちろん日本だけでなく、世界的に

ちなみに、IMFのWEOデータベース(2015年10月版)によると、世界全体の名目GDP

2014年       77.2兆ドル(1ドル=120円で 9272兆円)
2015年(推計値) 73.5兆ドル(同 8821兆円)

2014年から2015年にかけて
3.8兆ドル (同 451兆円)
の減少と推計されます。

単純に言えば世界全体で、この451兆円くらいの規模の財政出動すれば、かなり確実に景気は持ち直すでしょう。

451兆円は、2015年世界GDPの5.1%に相当します。

が、こんな規模の財政出動は期待できないでしょうし、そもそも政府が全部このGDPの落ち込みをカバーしなければならないということもないとは思います。では、とりあえず半分で良いとしましょう。それでも

250兆円、世界GDP比2.5%

ということになります。これだけの財政出動ができるか、というと、まあ、政治的になさそうです。

では90兆円、世界GDP比1.0%ならば?

それもありそうにありません。

9兆円、世界GDP比0.1%ならば?

それくらいなら政治的にあり得るでしょう。でも、まあ、焼け石に水でしょう…





 それにしても、

 リーマンショック後の一連のFRBの緩和策が、

 単に企業の借金による自社株買いを促しただけ

 という分析には驚いた!

 これでは、

 『FRBは、単に株式バブルを招いただけ』

 てなことになるような気がしてならないのだが…


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699:欧州中央銀行“弾切れ”宣言で株価下落&金価格上昇

2016/03/11 (Fri) 11:52
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さて、本題です:

昨年あたりから、「中央銀行の中央銀行」というべき国際決済銀行BISが盛んに、金融緩和の限界を警告していました。




上記ビル・グロス氏の見解の正確なリンクはこちら:
Say A Little Prayer
https://www.janus.com/bill-gross-investment-outlook/august
Monthly Investment Outlook from Bill Gross
July 30, 2015


当該のBIS年報はこちら:
85th Annual Report, 2014/15
https://www.bis.org/publ/arpdf/ar2015e.htm
28 June 2015



さらに、BISのほかの報告書も:





また、最近のBISの見解:





アメリカの企業が外貨建ての借金を増やしているとのこと。ヤバいんじゃないかしら。

「国の借金ガー」は多くの場合、黙殺してもそれほど差し支えありませんが、「外貨建て借金ガー」は大いに傾聴に値します。


で、日本時間昨夜22時ごろに発表された欧州中央銀行ECBの追加緩和策:






このECB追加緩和策の発表を受けて、世界的に株価(指数先物)は上昇、ユーロや金は下落しました(昨夜、英ガーディアン紙の速報を見て、その状況を確認しました)。


ということは、まだまだ金融緩和の魔力は解けていなかったか。でも、BISの警告通り、過剰な金融緩和によって世界的に銀行の業績が悪化し、世界的に銀行株がかなり下げているし、これはいかがなものか。

世界的に大規模な財政出動がない限り、いずれ魔法が解けて相場が逆転するだろう。日銀のマイナス金利の市場に与えた効果が数日で切れたように…。

と思っていたらその後、ECBのドラギ総裁が日本時間22:30に記者会見で「これで打ち止め」と受け止められる発言をしました。


ECB's Draghi signals end to rate cuts, overshadows stimulus
ECBのドラギ、金利引き下げの終了を示唆。刺激を見劣りさせる

http://uk.reuters.com/article/uk-ecb-policy-idUKKCN0WC0RU
Reuters (UK)
Thu Mar 10, 2016


22:00ごろの紙資料による発表から22:30の記者会見までのわずか30分で相場は見事に逆転しています。





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出典:Investing.com



株は一旦上げた後、下げに転じ、日欧はむしろECB追加緩和発表前より下がりました。
ユーロ/円はユーロ安になったあと、むしろユーロ高に。
金(ドル建て)は急落後、一時今年の最高値を更新するほどに上昇。



1週間前、JPモルガンのストラテジストもこんなことを言っていましたね:




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 アメリカじゃあ、毎日尽きることなく

 どこかで誰かが銃をぶっ放しているが、

 こと経済政策に関しては

 世界的に弾丸が尽きつつあるらしい


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698:アマゾンのレビュー:「毎年外す同志社の紫おばさんの著書と何ら中味は変わらない」→全然違います。私は毎年「暴落本」出してませんし、わざわざ事前に「心の準備」のための心理学本出してます。そこまで準備して本書いた人、他にいます?

2016/03/08 (Tue) 22:55
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さて、本題です:


根拠のある批判。

中身のある批判。

アンチテーゼとして、参考になる批判。

こういったものは建設的な意味のある批判となり得るでしょう。

しかし、何らの根拠のない批判というのは単なる嫌がらせ以上のものではないことが多いのではないでしょうか。


昔、私の著書『国債を刷れ!』の中で8回以上書いていることを、書いてないとして批判するレビューがアマゾンで書かれたことがありました。

『日本破綻教団は超能力者集団?』
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-392.html
2011/06/28


今回ご紹介する『異次元大恐慌』に対する星★一つレビューはというと・・・

http://www.amazon.co.jp/review/R2VCHQ1GTQPKCO/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8&ASIN=486410462X&channel=detail-glance&nodeID=465392&store=books


同志社の紫おばさんと程度は同じ, 2016/2/29

この手の本は悲観論大好きの日本人向けに、毎年手を替え品を替え発刊される。フィクションとしては面白いが、毎年外す同志社の紫おばさんの著書と何ら中味は変わらない。
これだけのお金を払って読む価値があるか?
その程度の本である。



私はその「同志社の紫おばさん」の著書を読んだことがありませんが、私が今年、『2016年、異次元大恐慌が始まる』というタイトルの本を出したのは、

「カトリックの権勢が強まりつつある」

ということが最も重要な要素でした。

本の中でも書きましたが、昨年2015年9月、プロテスタント教徒によって建国された、資本主義の覇権国アメリカにおいて、建国以来初めて、カトリック法王が両院合同会議で演説を行った、という歴史的大事件がありました。

これは、一つ、大きな要素です。

他に、本の中で、なぜ2016年に歴史的大暴落が起きそうなのかということの根拠としては、

・物流量でみた日、米、欧の経済活動は、リーマンショック前のピークを越えられていないこと

・その状況の中で、2014年くらいまでは電力量の伸び方や貨物量などで見ると中国が世界経済を引っ張ったが、2015年には減速または停滞が見受けられること

・原油などコモディティー価格が2014年前後にひとまずピークアウトし、2015年は暴落していること

・グリーンスパン元FRB議長が2015年夏に、FOX、ブルームバーグ、CNBCのテレビ番組で「経済は長期停滞している」「債券はバブル」「信用は心理学の問題。信用は一晩で消滅することもある」と立て続けに発言したこと。

・2015年9月のG20共同声明で「金融緩和だけでは均衡ある成長は達成できない」、「我々は…財政出動する」との文言が盛り込まれた。つまり、需要不足の認識が共有されたが、日、米、欧、中といった主要国で本格的な財政出動がなされる気配がないこと。

・ロシアが2015年、ソ連崩壊後初めて旧ソ連域外で軍事行動を取ったこと

・世界的に通貨当局の金に対する姿勢が08年以降、一変していること


などなどの経済的、政治的な出来事を挙げています。


私は、こういった根拠があるから2016年の確率が高いと考えたわけです。


なお、「2016年になりそう」という追加情報としては、以下のようなものがあります:














欧米の巨大金融機関がこぞって、7年ぶりに世界の株価が、あるいは景気が下降局面に入ったという見解を出しまくっているわけです。


そして、
ゴールドマンサックスに至っては…




でしたね。

また、政治的には、こんな大事件もありました:





↑こんな歴史的大事件のあとで、毎年のように「〇〇年、大恐慌が始まる」というタイトルの本を私が書く意味は全くないと思う次第であります。


私は、こういった情報の収集には膨大な時間と労力を費やしていますし、これを本にまとめるにも膨大な時間と労力を費やしています。

一方、上記の失礼極まりないレビューを書かれた方は、いったい何をもって「毎年外す同志社の紫おばさんの著書と何ら中味は変わらない。」としているのでしょうか?根拠らしきことを一切、提示していません。


私の、半年くらいのフルタイムの労働時間、何回かは徹夜の作業もした、その労力を否定するだけの、ほんの少しでも理にかなった根拠が示されているとは全く思われません。

また、「同志社の紫おばさん」が毎年のように『世界大暴落』という本を出しているのかどうか知りませんが、少なくとも私は毎年のように出していません。その点でもまるで違いますね。

私は、本を書くとき、本当に時間とエネルギーを使います。だから、毎年のようにこのような『暴落本』を出すつもりはありません。物理的に出せません。



更には、私はこのような、社会的な不安を強めるリスクのある内容の本を出す前に、これまた膨大な時間と労力を費やして
↓この本を出しました。この本を書くために、何冊の心理学や脳科学、さらには医学生が読むような本まで読んだか!


『日本経済のミステリーは心理学で解ける』




私は、2012年ころから、どうも世界的に、日本も含めて、世の中が不安定になりそうだと考えていました。かなり直感的でしたが。

そして、2013年9月、オバマ大統領が「国連など役に立たない。シリアのアサド政権を倒す!」と宣言したわずか10日後にシリア攻撃を撤回した事件でその直感がほぼ確信に変わりました。この当時、私は4ヶ月くらいブログもツイッターも書きませんでした。それだけ衝撃的だったわけであります。

だから、不安定な時代をやり過ごす、あるいは、生き抜くには、心理学や脳科学が致命的に重要になると考えました。

当時、いずれ世界的暴落になるとは思っていました。
しかし、その根拠は私の中では薄弱でした。
よって、どうしても先にこの心理学をテーマにした本を出したかったわけです。
一社目では出版を断られましたが、それでもあきらめず二社目の徳間出版さんに持ち込み、担当者の方の並々ならぬ努力のおかげで、それから半年くらいしてようやくOKが出て出版に至りました。この本は本当に難産でしたが、どうしても出しておきたかったのです。

この『日本経済のミステリーは心理学で解ける』を出していなかったら、今回の『異次元大恐慌』は出していなかったと思います。私の中では、それでは肝心な部分が抜けていると、どうしても感じるからです。

『日本経済のミステリーは心理学で解ける』は2年かかりました。

『異次元大恐慌』も下調べなど含めたら1年かかっています。

少なくとも3年がかりの仕事です。

こういった苦労も何も、ほんの少しも評価されることなく、

「毎年外す同志社の紫おばさんの著書と何ら中味は変わらない。これだけのお金を払って読む価値があるか?その程度の本である。」

などという、本のタイトルだけみれば書けそうな、これ以上くだらないレビューはないだろうというようなレビューを書かれなければならないほど、私の人生は安くありません。


「こんなしょうもない、想像力のかけらも感じられんレビューを書く暇があったら、その時間を使って、限られた人生、一回しかない人生の中で本当にやりたいことは何なのか、もっと真剣に考えろ!ほんの少しでも脳みそを使って考えてからものを書け!」

というのがこのレビューに対する私のレビューです。もちろん星★は一つです。


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 たしかに、

 『暴落本』を出す前に、

 そのショックを和らげるための

 『心理学本』をわざわざ書いている経済評論家は、

 他にはおらんやろ。



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697:国民の8割が15年も実質所得が減り続ける覇権国アメリカ。米国民にとってアメリカは、覇権国であり続ける意味があるのか、どうか

2016/03/04 (Fri) 17:04
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というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:

前回のエントリーのコメント欄で、


世界の株価指数は(倒産する可能性は殆どないという)ドイツ銀行ショックのあった2月にボトムをつけて上昇しつつありますが(インデックスは重たく見えても個別株は生きている銘柄が結構多い)、当面(2~3年?)は米経済はリセッション入りしないというのがコンセンサスのようですね。ウォーレン・バフェット氏は、米国経済の見通しなどについて楽観的な見方をしているようです

(BERKSHIRE HATHAWAY INC)SHAREHOLDER LETTERS
http://www.berkshirehathaway.com/letters/letters.html

が、これからも米国経済が力強く成長していく場合、いわゆる恐慌にはならずに、今後も米国が世界経済を牽引していく、ということになるんでしょうか?

-----

Mr.Tさん、ご質問頂きありがとうございます!


さて、このご質問について、前回のコメント欄で回答させて頂いたのですが、せっかくなので今回のエントリーにそのまま流用させて頂くことにしました:

-----


バフェット氏は1000万円程度から投資を始めて数兆円の資産を築き上げた点で、実に素晴らしい人だと思います。
長期的に米経済を楽観しているというバフェット氏の見方は、それはそれで見るべきものがあります。

しかし、私が『異次元大恐慌』(p.173 図表47、p.174 図表48)で示したような米国勢調査局のデータから見ると、2000年以降は米国の8割の世帯で実質所得が減り続けています(※)。これで「アメリカ経済は力強い」というのははなはだ疑問を呈せざるを得ません。

※より正確には、「2000年から2014年にかけて、増えたり減ったりしながらも、全体的傾向として減り続けた」、となります。

世界に冠たる覇権国の国民の8割が、15年も実質所得が減り続ける。これで健全というのなら、何が健全な経済なのかという本質が問われるでしょう。

これを健全な経済だ、力強く成長している、と主流派の政治家や経済の専門家がいっているのがいかにも嘘くさい、ということに気づき、怒り心頭に来ている米国民がいかに多いか――ということが今回の大統領選挙でトランプ氏やサンダース氏に人気が集まっている根本原因ではないかと思います。


また、バフェット氏は昨年の秋に想定していたよりもアメリカ経済は弱くなっていた、と発言しているようです。

Buffett says US economy weaker than he expected but growing
https://eaglefordtexas.com/news/id/164322/buffett-says-us-economy-weaker-than-he-expected-but-growing/
EagleFordTexas.com
March 3, 2016


また、世界最大の経済規模、GDPが世界の25%を占めるアメリカが本当に力強い成長をしているのであれば、なぜ、日本は前四半期比でこのところ何度もマイナス成長を記録しているのか、中国経済がここまで減速しているのか、ブラジルなどの少なくない新興国が継続的にマイナス成長を続けているのか、ということについての納得できる説明がないように思います。

G20ではそういう認識で財政出動必要論が半年前と今回と、続けて2回も共同声明に盛り込まれています。しかし、主要国はほぼ、十分に大規模な財政出動をする予定が、いまのところありません。

昨日、こんな話も出ています:





なお、JPモルガンは先々月、別のストラテジストがこんなノートを出しています:






あと、ドイツ銀行ですが、同行の財務資料
https://www.db.com/ir/en/download/FDS_4Q2015_28_01_2016.pdf
の3ページ目を見ていると、
株価が、1株あたりの簿価の7割とか半分という状態が2年前から継続しています。
つまり、PBR(=株価÷1株当たり簿価)が1倍を大幅に切った状態が延々続いているということになります。
投資家は、「何かおかしい」と思い続けているわけですね。

米ヤフーファイナンス
http://finance.yahoo.com/q/ks?s=DB+Key+Statistics
を見ると、昨日のドイツ銀行のPBR(=株価÷一株あたり簿価)はなんと、0.3倍です。

簡単に言えば、これはドイツ銀行の資産につき、7割引きセール実施中ということになり、7割引きでもほとんど誰も買わない状態、というわけです。


UBS(UBS)は同1.2倍
ゴールドマンサックス(GS)は同0.9倍 
HSBC(HSBC)は同0.7倍

三菱UFJは同0.5倍
です。
銀行セクターはマイナス金利でこの先どうなるか、という不安があり割安になっている銘柄が多くなっているようです。そして、ドイツ銀行は輪をかけてヤバいと思われているということなのでしょう。


またドイツ銀行は先月、「詐欺まがい」な自社債の発行と買戻し計画で自己資本増強を図ろうとして投資家の怒りを買っています。






また、本日のブルームバーグ記事によれば、高額ボーナス支払い延期を検討しているようです

ドイツ銀、ボーナスの支払い繰り延べ期間を延長-関係者
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3H2V3SYF01Y01.html
ブルームバーグ
2016/03/04

約束の期日に約束の金額を支払わない、という意味においては、これも一つの債務不履行ですね。


あと、株価が上昇したからといって、経済全体が成長しているかどうかは別です。そこに問題の本質があるということではないでしょうか。
ちなみに、いわゆるバフェット指数、株式時価総額÷GDPは依然、高水準のままです。

Market Cap to GDP: An Increase in the Buffett Valuation Indicator
http://www.advisorperspectives.com/dshort/updates/Market-Cap-to-GDP
March 2, 2016
by Jill Mislinski, Advisor Perspectives

というよりは、リーマンショック前より「割高」水準から少し下げてきたということで、ピークアウト、これから大暴落、という運びになるかも知れませんが…。

いずれにせよ私がここで最も強調したいのは、覇権国、世界最大の経済大国のアメリカで、8割の世帯で実質所得が15年も下がり続けているにも関わらず、株価が上昇し続けるという状態はいつまでも続かないだろう、ということです。

----



 第二次大戦の戦勝国イギリスは帝国を失った
 
 敗戦国のドイツと日本は、西側諸国の中で最も経済的に成功した

 覇権国アメリカでは、国民の8割がこの15年、ひたすら貧乏になっている

 何事も、『禍福は糾(あざな)える縄の如し』、

 『人間万事、塞翁(さいおう)が馬』、か?


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696:米大統領選が示唆する、公式経済統計と経済実感の乖離(かいり)

2016/03/02 (Wed) 17:55
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


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さて、本題です:


先週末のG20共同声明(コミュニケ)で月曜日の金融市場は「失望売り」の様相を呈していたのですが、その日の中国人民銀行による預金準備率引き下げの発表を受けて、日本時間の夕方以降は世界的に株価上昇となりました。


特に、中国経済の影響をもろに受けやすい資源輸出国、ブラジル株が急上昇。


ブラジル株:ボベスパ指数が世界で最も上昇-中国の景気浮揚策を好感
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3BWRV6JTSEB01.html
ブルームバーグ 2016/03/01 07:16 JST

ブラジルの株価指標であるボベスパ指数は2月29日、世界の主要株価指数の中で最も上昇率が高かった。同国最大の貿易相手国である中国の景気浮揚策で商品輸出企業の業績見通しが高まった。



ブラジル株は月間で昨年4月以来最大の上昇率を記録。中国人民銀行(中央銀行)は市中銀行に課す預金準備率の引き下げを決め、景気の下支え策を強化した。中国がハードランディングに向かうとの懸念は、ボベスパ指数が今年、2008年以来最悪のスタートとなった要因だった。

ボベスパ指数は前営業日比2.9%高の42793.86で終了。指数を構成する61銘柄中59銘柄が上昇した。

-----


翌日には中国株も上昇。



中国株:上海総合、取引終了前に急反発-中銀が預金準備率引き下げ
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3C7VA6K50Y001.html
ブルームバーグ 2016/03/01 17:57 JST

中国人民銀行(中央銀行)が預金準備率を引き下げたことや、製造業購買担当者指数(PMI)が市場予想を下回った中でも人民元が上昇したことが材料視された。


-----


「製造業購買担当者指数(PMI)が市場予想を下回った」という、景気の悪い話もあったにも関わらず、です。



しかし、そんな市場の浮ついたお祭り気分に水を差すかの如く、中国国営の新華社通信は、こんな見解を出しているとか:




中国の預金準備率引き下げ、大型刺激策の前触れではない=新華社
http://jp.reuters.com/article/china-banks-rrr-idJPKCN0W407S
ロイター 2016年 03月 2日

新華社は2日の解説記事で、先月29日の中国人民銀行(中銀)による銀行の預金準備率引き下げについて、中国の慎重な金融政策における若干の緩和バイアスを示しているが、決して大規模な刺激策が後に続くことを示唆するものではない、との見解を示した。



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一方、アメリカはというと、



Fading recession fears bring out the bulls
景気後退懸念の弱まりを受け、上げ相場に
http://www.cnbc.com/2016/03/01/fading-recession-fears-bring-out-the-bulls.html
CNBC
Wednesday, 1 Mar 2016
2016年3月1日水曜日

Equities were boosted by a few factors, including February ISM manufacturing data, still in contraction at 49.5 but better than expected. Oil also rallied to close near the key $35 per barrel area, and that also helped lift stocks.
株はいくつかの要因に押されて上昇した。例えば2月のISM製造業指数が、縮小を示す49.5(50以上は拡大)であるが期待より良かった。原油価格も1バレル35ドルに接近したことも、株式市場を押し上げた

The ISM is the latest major data to show an upside surprise. Construction spending was reported on Tuesday as up 1.5 percent in January, which was better than expected, and durable goods data last Thursday was also better than expected.
ISMは最新の上振れサプライズとなった主要指数である。火曜日に発表された工事支出も1月の1.5%増が期待を上回り、先週木曜の耐久財のデータも期待を上回った。



----

そして、週末(3月4日)の雇用統計に注目が集まっている、という塩梅だそうで。

しかし、ISM指数は製造業購買担当者の今後の見通しを示す指数で、50を下回っていれば「縮小」です。この数値が期待より良かったとは言え、50を切っているため、景気が良くなるという話でもないわけです。
セントルイス連銀でこのISM指数の
グラフを見ることができますが、現状は09年以来の低水準と言える状態です。

このようなデータや、上述の中国人民銀行の預金準備率引き下げ(準備率を17.5%から17%に引き下げた→これにより、銀行が中央銀行に預ける準備金に対し、資金貸し出しなどに運用できるレバレッジ倍率が5.7倍から5.9倍に増える)など、ニュースの受け止め方次第で気分がころころ変わるというのが市場と言えるかも知れませんが。


直近の世界の株価を押し上げる原因となった人民銀行の預金準備率引き下げも、リスクの側面がまたあるわけです:




中国の預金準備率引き下げと融資拡大、銀行のリスクに=フィッチ
http://jp.reuters.com/article/idJPL3N16A212
ロイター 2016年 03月 2日



フィッチは、中国経済における借り入れ比率がすでに高い状況で、中国の銀行が再び急速な融資拡大を持続することはクレジットネガティブになるとの見方を変えていない。

フィッチは、信用の伸び(フィッチ基準の社会融資総量に基づく)は2016年も鈍化を続け、13%になると予想する。ただ、信用の伸びは依然として名目国内総生産(GDP)の伸びを上回って推移しており、(フィッチ基準の社会融資総量をGDPで割った)借り入れ比率は2016年末時点で260%に達する見通しだ。


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中国の民間部門の借入に関しては、こんな話も:




香港・シンガポール金融 中国経済減速の影
東亜銀―不良債権が急増 DBS―融資を絞り込み

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDX01H0V_R00C16A3FFE000/
2016/3/2 日本経済新聞

中国経済の減速がアジアの金融センターである香港やシンガポールの銀行経営に影を落とし始めた。香港の東亜銀行では中国企業向け不良債権が急増。シンガポールでも最大手のDBSグループ・ホールディングスが中国・香港などへの貸出額を減らしている。東南アジアの資源関連企業の業績悪化も懸念材料だ。不良債権比率はまだ低水準だが、アジア経済の高成長を当てこんだ拡大路線は見直しを迫られつつある。


-----

すでにかなりヤバい民間の借入れを無理やり増やすよりは、政府が借入れを増やして財政出動・景気対策するのが順当のはずです。

しかし、中国当局の本当の狙いは、拙著『異次元大恐慌』でも述べています通り、恐らく「ゾンビ企業の排除」その他の「権力構造の大転換」と思われます。

「動機と手段と機会があれば、やる」、という見立てです。習近平政権が財政出動をあまり積極的にしようとしていないことは、この見立て(仮説)を強化する材料となります。
それでも、一応は、それなりの財政出動その他の景気対策はする、という感じになっていますが、それは要するに世界大恐慌となった場合において、自分たちの責任にされたくない、ということでしょうか。なお、これは中国に限らず、主要各国の首脳すべてに当てはまるのですが…。


なお、中国に関しては、この「権力構造の大転換」をほどよいところで止めるための手段が、官民合わせてかなり膨大な量をため込んでいると思しき金準備、ということになります(ここは、著書ではあまり踏み込んで書かなかった部分ですが)。



そして、アメリカです。

下に引用するブルームバーグの記事によると、アメリカの経済統計がどうやら生活実感とかけ離れているということが、今回の大統領選挙におけるトランプ氏とサンダース氏に人気が集まっていることによって示唆されます。
(『異次元大恐慌』では、複雑な計算を経て算定される実質GDPが、物量ベースのいくつかの統計と乖離していることから、実体経済の実際の状況を反映できていない可能性に触れていますが、それと関係する話になります)




米国民は怒り心頭:トランプ氏善戦の陰に大恐慌以降「最悪の景気回復」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3DKKK6JIJUP01.html
ブルームバーグ 2016/03/02

秋に大統領選挙を控えた米国で、有権者の間でまったく現実味が感じられないフレーズの一つに、経済は順調だという言い方がある。

オバマ大統領が1月の一般教書で使ったように、このフレーズを使いたければそれを裏付ける統計のヘッドラインを見つけることは可能だ。しかしながら党候補者指名争いたけなわの現在、共和党の主流派をドナルド・トランプ氏が脅かし、断然有利だったはずのクリントン氏に対してバーニー・サンダース上院議員が予想以上に健闘している背景には、米経済は順調などではないと嫌気が差している国民がいる。そしてヘッドラインの裏に潜む数字に目を向けると、国民の怒りも納得が行く。

失業率は8年ぶりの低水準なのだろうか。
確かにそうだが、生産年齢人口全体をカバーする指標の大半は弱く、労働参加率は下降トレンドをたどってきた。

経済は失速することなく6年以上も成長してきたのだろうか。
確かに先進国の大半よりは良い状況だが、このペースでは生産ギャップを埋めるのはどんなに早くても2026年以降になりそうだ。
賃金の伸びはようやく上向き始めたのか。全体の数字としてはその可能性もあるが、その度合いは大きくない。そもそも、誰の賃金が伸びたと言うのか。


コップが半分空っぽになっていることを示すこうした統計は、2009年に終息したリセッション(景気後退)がいまだに大統領選挙の行方に影を落としている理由を説明している。
ゆがんだ富の配分を批判するサンダース氏。貿易の影響で雇用が失われると猛烈に攻撃するトランプ氏。いずれも米国の政治においては目新しい主張ではない。しかし、大恐慌以降で最悪の不況とそれを受けた最も弱々しい回復を目の当たりにして、全米の有権者はこの主張に積極的に耳を傾けるようになった。

かつて米議会予算局(CBO)局長を務め、現在は中道右派のアメリカン・アクション・フォーラムの社長を務めるダグ・ホルツエアキン氏は、「『景気後退は終わり経済は回復し、良いことずくめだ』と言うが、『ちょっと待てよ。うちは回復どころか、むしろ悪くなっている』というのが一般世帯の反応だろう」と語る。「日常生活において目に見える現実と、耳にする話の間に大きな矛盾がある。それで国民は怒っているのだ」と続けた。

2018年までの米経済について、ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査では、景気後退以降の平均である2.1%成長を大きく上回るペースは予想されていない。
欧州や日本からみればうらやましい数字かもしれない。しかし、米国の有権者が主流派を敬遠し始めた理由をこうした数字は物語っていると、ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズ(ノースカロライナ州シャーロット)のチーフエコノミスト、ジョン・シルビア氏は説明する。
「有権者は自分たちの現状と主流派の候補者らを結びつけて考えている」とシルビア氏。「現状はあまり良くないというのが彼らの見方だ。成長率は今後7年も2-2.5%程度なのか。それではアメリカンドリームは多くにとってかなわぬ夢で終わる」と述べた。

-----



そして、

元FRB議長のグリーンスパン氏は昨年の夏ごろ、繰り返し悲観論を述べていましたが、その見方は今も変わっていないようです。




Greenspan: I Haven’t Been Optimistic in Quite a While
グリーンスパン:私はかなり長期間、楽観的になったことはない

http://www.bloomberg.com/news/videos/2016-03-01/greenspan-i-haven-t-been-optimistic-in-quite-a-while
Bloomberg
March 1, 2016



-----


↑このブルームバーグのインタビューを元にした↓Business Insiderの記事に発言の多くの部分が書き起こされていますので、抜粋翻訳してみます(意味の取れないところはスパッと訳を飛ばしますが!)




Alan Greenspan hasn't been optimistic about America in a long time
アラン・グリーンスパンは長い間ずっと、アメリカに関して楽観的ではなかった

Business Insider
March 1, 2016


"We're in trouble basically because productivity is dead in the water."
「生産性が暗礁に乗り上げていることによって、我々は基本的に困難に陥っている」

"Let's put it this way. Output per hour is driven by real capital investment ... Real capital investment is way below average. Why? Because business people are very uncertain about the future."
「Let's put it this way. 時間当たりの産出量は、実質資本投資(資本投資:生産設備などの生産財への投資)によって持ち上げられる。…実質資本投資は平均よりはるかに低い。なぜか?企業経営者らが将来に関して確信を持てないからだ」

Later in the interview, McKee asked if Greenspan was optimistic going forward and Greenspan put it simply, saying, "No, I haven't been for quite a while."
インタビュー後半で、今後について楽観的かどうかと尋ねられた際、グリーンスパンは「いいや。私はかなり長い間、楽観的になったことはない」と答えた。

"And I won't be until we can resolve the entitlement programs. Nobody wants to touch it, but it's gradually crowding out capital investment, and that's crowding out productivity, and that's crowding out the standards of living. Where do you want me to go from there?"
「福祉制度を解決できるまで、私は楽観的になることはないだろう。誰もこの問題に触れようとしないが、この問題は徐々に資本投資を締め出しつつあり、生産性を締め出しつつあり、生活水準を締め出しつつある。Where do you want me to go from there?」

Additionally, Greenspan felt that the current global economy is incredibly uncertain. He said that productivity collapse in China could lead to a rough landing for the country, and when asked by Keene about a possible back and forth between the Chinese Renminbi and the US dollar, Greenspan admitted to befuddlement.
加えて、グリーンスパンは世界経済の現状が信じがたいほど不安定であると感じている。人民元と米ドルの価値変動について聞かれた際、彼は、混乱となることを認め、中国における生産性の崩壊が、同国をハードランディングに導き得ると答えた。

"This is where the issues lie. I don't know the answer to that," said Greenspan. "The United States unquestionably, the US dollar unquestionably, is the firmest currency in the world of the major countries. It's hard to see where it goes from here there
「This is where the issues lie. 私は答えが分からない」とグリーンスパンは言った。「アメリカは疑いなく、米ドルは疑いなく、世界の通貨で最も堅固である。これからどこに向かうかを見通すことは難しい」

-----

グリーンスパン氏は、

・企業経営者らが将来に確信を持てず、それが原因で生産性向上のための投資ができず、将来の生産性が崩壊しそう。

・アメリカも中国も、引退世代が増え、現役世代が減る状況であり、生産性の向上が必須であるのに、生産性の向上が不足しているので、将来に悲観的


と言いたいのでしょう。

これは、「国の借金問題はカネの問題ではなく、少子高齢化で現役世代が減って引退世代が増えたときに物不足に陥らないよう、将来投資が足りるかどうかの問題」という、私が2009年5月に拙ブログ

年金問題、何が問題?【1】

年金問題、何が問題?【2】

で示して以来、繰り返し当ブログや著書で書いてきた問題意識とも、かなり近いもの
と言えます。


なお、「企業経営者らが将来に確信を持てず、それが原因で生産性向上のための投資ができず」というように、需要が増えないと予測することで企業が積極的に生産財投資を行わない、というのは、木下栄蔵・名城大学教授の『通常経済・恐慌経済』または『正と反の経済学』における、「恐慌経済」「反の経済」の定義に当てはまることになります。


そんなこんなで、

・今週の株価急上昇は、経済実態を反映しているかどうかは、かなり疑わしい

・それどころか、主要な経済統計ですら、経済実態や国民の生活実態を反映しているかどうか、疑わしいかも知れない

というお話でした。





 2016年の米大統領選の動向は

 経済指標と国民の生活実態の乖離の指標

 ということか?


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695:ないがしろにされているG20共同声明:「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」「我々は機動的に財政政策を実施する」という文言、実は半年前にも入っていたが、あまり履行されていない

2016/02/29 (Mon) 17:37
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:


昨日のG20上海の共同声明(コミュニケ Communiqué)と、
昨年9月の
G20アンカラ(トルコ)の共同声明を比較します。

(出典は財務省の仮訳)


というよりは、比較した結果を以下に示します。


凡例:


取り消し線の箇所が昨年9月アンカラにあって、今回の上海で削除された箇所

黒字は昨年9月アンカラから今回の上海で変わっておらず、そのまま残っている箇所。

青字今回、新しく入った箇所

となります。


 我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長過去数年間、G20は成長、投資及び金融安定の強化に関し、重要な成果を挙げてきた。我々は、信認を醸成し、回復を維持・強化するための行動をとっている。これらの目標を達成するための、我々は全て取組を支える、マクロ経済政策手段――金融、財政及び構造政策の役割――再確認する個別にまた総合的に用いる

 金融政策は引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に経済活動と物価安定を支えるだろう。しかしながら、金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう。
我々は、経済見通しの改善に沿って、いくつか先進国において金融政策の引締めの可能性がより高まっていることに留意する。我々は、根底にあるファンダメンタルズを反映するため、より市場で決定される為替レートシステムと為替の柔軟性に移行し、為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避けるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗する。我々は、我々の財政戦略は成長の下支えを企図しており、強靭性を高め債務残高対GDP 比を持続可能な道筋に乗せつつ乗せることを確保しつつ、経済成長雇用創出及び信認支える強化するため、短期的な経済状況を勘案して我々は機動的に財政政策を実施する。

 この目的のため、我々はまた、引き続き、生産性、包摂性及び成長を支えるために歳出及び歳入の構成を考慮していく我々はまた、質の高い投資へと支出を重点化することを含め、税制及び公共支出をできるだけ成長に配慮したものにしている。

 我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長の実現に向けた努力を支える上で相互補完的なマクロ経済政策と構造政策が果たす役割を再確認する。構造改革の早急な進展は、中期的に潜在成長力を高め、経済をより革新的、柔軟かつ強靭にする。潜在的なリスクへの対応力をより高めるべく、我々
は引き続き、成長と安定を支えるためにG20諸国が必要に応じとり得る政策オプションにつき追求する。

 我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。我々は、為替市場に関して緊密に協議する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のため
為替レートを目標とはしないことを含む、我々以前の為替相場のコミットメントを再確認する。我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する。我々は、政策に関する不確実性を軽減し、負の波及効果を最小化し、透明性を向上させるために、マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行う。




・「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」

 「債務残高対GDP 比を持続可能な道筋に乗せつつ乗せることを確保しつつ…我々は機動的に財政政策を実施する」
は、実は前回とほぼ同じです。


いくつかの報道で、
「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」
が新しく入ったというような書き方をしている記事が見受けられましたが、7か月前にも入っていました。

その後、ECB総裁が今年1月、追加緩和を示唆したり、日銀がサプライズの追加緩和、マイナス金利を発表、実施したりしています。昨年9月のG20共同声明の「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」という文言はある意味において、ないがしろにされていると言えなくはない、といったところでしょうか。

「我々は機動的に財政政策を実施する」もまた、7か月前に入っていましたが、これもある意味、世界的にないがしろにされている、と言えますが…。

この辺りは私の「『異次元大恐慌』が世界的に、政治的に引き起こされそうだ」という仮説の、重要な強化材料になります。



・一方で、G20のこれまでの「成果」につき、新たに触れています。
 「過去数年間、G20は成長、投資及び金融安定の強化に関し、重要な成果を挙げてきた」

これは、上記のように、前回アンカラの共同声明の「金融緩和だけじゃだめだ」、「我々は機動的に財政政策を実施する」というのがないがしろにされていることを認識し、G20の存在意義の喪失しかねないという危機感を持ち、過去の成果について触れておく必要性から盛り込まれた文言なのかも知れません。


・あと、目立つところは為替レートに関するものですね。


 我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。
 我々は、為替市場に関して緊密に協議する。
 我々は、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないことを含む、我々以前の為替相場のコミットメントを再確認する。
 我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する。


これは最近のアメリカの政治情勢とも密接な関係がありそうです。


-----

「日中が通貨を安く誘導」…クリントン氏が批判
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160224-OYT1T50087.html
読売新聞 2016年02月24日

 【ワシントン=安江邦彦】米大統領選の民主党指名候補争いでリードしているヒラリー・クリントン前国務長官は、日本や中国が輸出を増やすために通貨を安く誘導していると批判し、大統領に就任した場合には対抗措置を取る考えを表明した。

22日、米地方紙への寄稿で明らかにした。

 クリントン氏は「中国や日本などは何年も通貨の価値を下げて輸出品を人為的に安くしてきた」と名指しで批判した。為替操作によって米国の労働者が不利な競争条件にさらされると指摘したうえで、大統領就任後には「(輸入)製品に関税を課すなど、効果的な手段を拡大する」と対策に乗り出す考えを示した。

 12か国が正式合意した環太平洋経済連携協定(TPP)については「雇用を創出し、賃金を引き上げ、安全保障を強化するとの基準を満たしていない」と改めて反対を表明した。

-----


前回アンカラでも「我々は、通貨の競争的な切り下げを回避」と共同声明に書かれていましたが、今回上海の共同声明はかなりの分量の文言に書き換えて、この方針を再確認しています。

「日中が通貨を安く誘導」うんぬんというのは、トランプ氏やほかのアメリカの政治家も頻繁に触れていると記憶しております。


今後、日本や欧州は追加緩和がやりにくくなかもしれません。

中国も、人民元レートの切り下げはやりにくい、という気もしますが、人民元安の流れを敢えて放置し、「中国がハードランディングすると発言したジョージ・ソロスや西側メディアが煽るから中国から資本流出が起きているので仕方ないじゃないか」と切り返してくるかも知れません。


また、上記の読売の記事によると、ヒラリー氏が、

「大統領就任後には『(輸入)製品に関税を課すなど、効果的な手段を拡大する』と対策に乗り出す考えを示した」

とあります。

これはG20の今回も、前回も共同声明で盛り込まれていた「我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する」に反します。

サンダース氏もトランプ氏も、このG20共同声明の方向性に反し、保護主義的です。

というわけで、G20共同声明はおおむね空証文になることがほぼ運命づけられている、という具合でしょうか。


ちなみに、そんなヒラリー氏を支援するスーパーPACに、ジョージ・ソロス氏が6百万ドル寄付している、という話もあります:






さて、今回のG20上海の共同声明についてはほかにも…





※↑このブルームバーグ記事は、G20共同声明の草案(draft)に関するものでしたが、まあ、それほど違いはないでしょう。




そして、さらには…


上海G20、具体策なく株式市場は失望売りか
http://jp.reuters.com/article/g20-china-markets-idJPKCN0W10YL
ロイター 2016年02月29日



Stocks Drop With U.S. Futures as G-20 Underwhelms; Yen Advances
G20への失望とともに米株先物下落、円は上昇

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-28/yen-rallies-after-being-singled-out-at-g-20-while-data-hits-kiwi
February 29, 2016
by Emma O'Brien, Kevin Buckland, Bloomberg

・Shanghai Composite sinks to one-month low as yuan weakens
 人民元の下落とともに、上海総合指数は1か月ぶり安値

・Crude oil declines with copper, nickel as gold rallies
 原油と銅、ニッケルが下落し、金は上昇



The G-20 was “underwhelming,” said Ray Attrill, National Australia Bank Ltd’s global co-head of foreign-exchange strategy in Sydney. There was an “admission of downside growth risks but no tangible commitments to fiscal policy action in particular to bolster growth in the short term,” he said.
G20は「がっかりさせる」ものだったと、豪州シドニーにあるナショナル・オーストラリア銀行の国際外国為替戦略部門長レイ・アトリル氏はいう。「成長の下振れリスクを了解しているにも関わらず、特に短期的な成長を支える財政政策行動への具体的な合意がなかった」と彼は述べた。



-----

それでもって、最近はリスク回避のためのこんな動きが…









最近、経営危機が取りざたされているドイツ銀行が、「金は今、買いどきです!」と言っているのは何ともシュールですね。


ついでながら、に関してはCNBCでこんな記事も:

Here's how to play gold: Technician
金でいかに儲けるか? あるテクニカル分析家の見解

http://www.cnbc.com/2016/02/28/heres-how-to-play-gold-technician.html
By CNBC's Re-Essa Buckels



According to Wald's chart work, the recent price action in gold is strikingly similar to the activity in 1999 when the commodity reversed a multi-year downtrend and started to form a base.
オッペンハイマー Oppenheimer の アリ・ワルド氏 Ari Waldのチャート分析によれば、最近の金価格の動向は、1999年にコモディティーが数年にわたる下落トレンドが逆転したときの動きに似ており、 下値固めを形成し始めているという。

If history is in fact repeating itself, the long term decline in gold is setup for a long term bottom. The recent turbulence has some investors seeking the safety of gold.
もし歴史が繰り返すなら、金の長期下落傾向は長期的な底入れとなりそうだ。最近の市場の動揺は一部の投資家を、金の安全性に向かわせた。

"The trading environment is much more favorable, and presents tradable opportunities within this base" said Wald.
「この取引環境は大変好ましい。この下値固めによって投資機会を提供してくれている」とワルドはいう。

Wald recommends playing the gold miners over gold. The Gold Miners ETF is tracking for its best month since May 2009, up 32 percent. According to Wald's chart work, gold miners' underperformance relative to gold have recently reversed, suggesting miners will be the outperforming asset within the group.
ワルドは金そのものよりも、金鉱山株に投資することを推奨している。金鉱山株ETF(GDX)は、2009年9月以来最高の値上がりとなっており、(2016年2月は1か月で)32%上昇した。ワルドのチャート分析によれば、金鉱山株は金価格に対して相対的にパフォーマンスが下回っていたが、最近それが逆転した。それは金鉱山株が抜きんでて値上がりしそうであることを示唆する。

"That is not my favorite area to sell right here. I think near-term as a trade gold miners continue to work" said Wald.
「いまここで売るのは私の好みではない。私は目先、金鉱山株取引が有効であり続けると考える」とワルドは述べた。





仮に日本で金鉱山株ファンドに投資するとすれば、

野村証券で販売しているブラックロックの「ブラックロック・ゴールド・メタル・オープン Bコース(為替ヘッジなし)」(金鉱山株に分散投資)

か、もしくは

アメリカ株を扱っている証券会社で

Market Vectors Gold Miners ETF (GDX) (金鉱山株に分散投資)
もしくは、
Market Vectors Junior Gold Miners ETF (GDXJ) (小型の金鉱山株に分散投資)

を買う、といった具合でしょうか。


※上記はあくまでも一つの情報を提示しているだけであり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません(仮に投資する場合、損しても自己責任、という覚悟が必要であり、損する覚悟がない場合、決して投資すべきではありません)。




というわけで、最近は

・G20共同声明に表れているように、各国首脳において需要不足の認識、財政出動の必要性の認識があるのに、財政出動がどの国でもほとんど実施されなさそう

TPPがポシャりそう

・金に注目が集まっている

というように、

拙著『
異次元大恐慌』で提示している仮説を強化する材料が日増しに増えている

という今日この頃であります。




 『金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう』
 
 『我々は機動的に財政政策を実施する』

 という、繰り返されたG20の文言は、

 実に的を射ているのだが…



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694:「アベノミクス・プラス(金融緩和+財政出動+構造改革)」が世界経済に必要。だが、「決定的な財政出動」は政治的に困難。よって、景気後退はほぼ確定:シティのブイター氏

2016/02/26 (Fri) 19:07
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:

ブルームバーグはよく興味深い記事を出すので、個人的には好きなメディアの一つです。

ただ、そのような興味深い記事が日本語訳されない、されても部分訳しかされないという点が非常に残念なところ。

(この1年かそこら、英語のメディアをできる限り読むようにしていますが、正直、骨が折れます^^;。が、英語で読まないと、なかなか接することの情報の、なんと多いことか!)

今回ご紹介する記事も、そのような類(たぐい)のものかも知れないので、大雑把ながら全訳してみます。

『異次元大恐慌』でも紹介しました、シティ・グループのブイター氏の見解に関する記事です。

ブイター氏は、英中銀(Bank of England)の金利決定委員会(英中銀内部の委員5人と外部委員4人の9人で構成)で外部委員を2年間(だったかな)務めた経歴の持ち主です。ブイター氏が以前、経済の安定に関して、民間債務を非常に気にかけた分析をしているのを読んだときから、私は個人的にかなり注目しています。


Citi: Here Comes a Global Recession
シティ:世界的景気後退がやってきた

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-25/citi-here-comes-a-global-recession
by Julie Verhage, Bloomberg
February 25, 2016

Growth is likely to fall apart.
成長は崩壊しそうだ。


After a few years of reasonably calm markets and stable growth around the world, Citigroup Inc. says the chances of a global recession are already high and only going up.
世界における2、3年間の分別ある穏やかな市場と安定した成長を受け、シティ・グループは世界的景気後退の可能性はすでに高く、そして、その可能性は高まるばかり、と言っている。

"In our view, global growth is at a highly precarious point, after 2-3 years of relative calm," the team of economists led by Willem Buiter said in their note, which is likely to exacerbate concerns about the world's ability to withstand a pause in China's stunning economic growth.
「我々の意見では、世界の成長は2、3年の比較的穏やかな期間を経て、かなりおぼつかない地点にある」:ウィレム・ブイターによって率いられたエコノミスト集団は、彼らの書いたノートにおいて、驚異的な中国の経済成長の停滞に世界が耐えられないという懸念を強調しているようだ。


"The long-standing fragilities in the world economy relate to the structural and cyclical slowdowns in China and its unsustainable exchange rate regime, the excessive level of debt across many countries and sectors and ongoing regional and geopolitical uncertainty," the economists said. The economists have accordingly revised their forecast for growth this year in advanced economies, from a 2.4 percent in January 2015 to 1.6 percent currently, and warned that the 2016 figure "could well be lower."
「世界経済における長く続いている脆弱さは、構造的、循環的な中国の減速、並びにその不安定な為替相場体制、そして、多国間、他部門間にまたがる過剰な水準の債務、地政学的不確実性と関連している」と彼らはいう。彼らは、今年の先進経済における成長率を、2015年1月の予測2.4%から現行の1.6%に引き下げ、この2016年の成長率は「もっと低くなり得る」と警告している。

When they adjust for what they call "true Chinese growth," the Citi team finds that global growth might have been as low as 2 percent year-over-year in the final quarter of 2015. That is the lowest since the euro zone recession of 2012-13, and if growth remains at such depressed levels, it would qualify as a global recession according to their measures:
彼ら自身が「真の中国の成長率」と呼ぶような調整をした場合、世界全体の成長率は2015年の最後の四半期において既に2%を下回っているとシティは見積もっている。2012-13のユーロ圏の景気後退以来、最低の水準である。そして、もし成長率がこのようなこち込んだ水準を続けるなら、それは彼らの基準では世界的な景気後退と判定されることになる。


"The most recent deterioration in the global outlook is due to a moderate worsening in the prospects for the advanced economies (AE), a large increase in the uncertainty about the AE outlook (notably for the U.S.) and a tightening in financial conditions everywhere. Unlike most of the previous years, the most recent worsening in global growth prospects and global sentiment is therefore driven by the advanced economies rather than [emerging markets] ... Below-potential global growth will likely reinforce disinflationary momentum and global growth could fall to even one percent or lower, in the event of an even sharper AE downturn (including eg a U.S. recession).
「最新の世界経済の見通しの悪化は、先進経済の見通しの悪化、先進経済(特に、米国)の見通しの不確実性の大きな増大、そこかしこにおける金融状態の引き締まりに起因する。前年と異なり、最新の世界経済成長の見通しと世界的な市場心理の悪化は、(新興市場)よりもむしろ先進経済によって引き起こされている。…潜在成長率を下回る世界経済の成長率は、ディスインフレーション(=インフレ率の低下)のへの勢いを強化しそうであり、もし先進経済が鋭く落ち込むことが(例えば米国の景気後退入りなど)あった場合、世界経済の成長率は1%もしくはそれを下回ることすらありそうだ。

While a global recession may be increasingly probable, according to Citi, it's not necessarily unavoidable.
世界的な景気後退の確率が高まりそうであるが、シティによれば、これは必ずしも不可避ではない。

"To avoid a recession and to avoid a greater slowdown in potential output growth than is warranted because of worsening demographics, the world needs a global version of what we would call 'Abenomics plus,'" which in Citi's terms would be easy monetary policy coupled with fiscal stimulus and structural reform that would include "material deleveraging."
「悪化する人口動態を原因とする景気後退を避け、潜在的成長率の一層の減速を避けるには、世界は、我々が『アベノミクス・プラス』と呼ぶ経済政策――金融緩和政策に、財政刺激と、『実体的な債務縮小』を含む構造改革を組み合わせた経済政策――の世界バージョンを必要とする。

※deleveraging デレバレッジングとは、レバレッジの縮小、つまり、資産を売って債務を返済し、債務比率を低減して自己資本比率を高め、企業や個人のバランスシート(貸借対照表)の安全性を高めることです。ここでいう債務縮小は、政府の債務縮小ではなく、民間部門の債務縮小を指していると思われます。というのは、政府の財政出動(=財政赤字の拡大)が必要としているからです。
多くの危機、日本の1990年前後の株・土地バブルの崩壊やリーマンショックは、政府の借金ではなく、民間の借金が問題を起こしました。ゆえに、上記のdeleveraging デレバレッジングは、民間の債務縮小を指すと考えるのが妥当でしょう。


But, given their recession call, the team doesn't believe these policy measures will actually occur as fiscal stimulus faces high political hurdles.
しかし、財政刺激は政治的に高いハードルに直面するため、これらの政策手段(「アベノミクス・プラス)が実際に実行されるとは、彼らは信じていない。

"Even though we suspect that ongoing economic weakness and limited options for incremental monetary easing will probably reinforce the trend towards modest fiscal easing, we do not foresee a shift to decisive fiscal easing," they somberly conclude.
「進行中の経済的な弱さと、限られた漸進的な金融緩和のための選択肢が穏やかな財政緩和に向かうことを強制するかも知れないと、我々は考える。しかしながら我々は、決定的な財政緩和への転換があるとは予測していないと、彼らは陰鬱に文章を結んでいる。






このシティのブイター氏のチームによる、

現在、世界的な需要不足の状況にあり、世界的な財政出動が必要であるが、必要な財政出動が実施されることは政治的に難しいので、世界的な景気後退は避けられないだろう

という見方は、私の『異次元大恐慌』の見立てと同様のものになります。


ところで、今回取り上げたブルームバーグの記事には、なぜか、ロスチャイルド・グループのパオロ・スカロニ副社長が景気楽観論を語っている動画が付いています。悲観論の記事とバランスを取る意図なのかも知れません。

スカロニ氏は、「ガソリンが安くなって、皆のポケットには一人当たり1000ドルが残る(1年あたり1000ドル=12万円、か?)。それが消費に回ることの影響を、悲観論者は考慮していない」というようなことを話しています(というように聞こえたと思っていますが、それほどリスニングに自信はありません!)。

私が思うに、それはそれで確かに考えられるでしょう。しかし、民間部門、企業や個人が、受け取った金を全部使うか、全部貯金するか、半分だけ使って残りを貯金に回すか、それは定かではありません。
少なくとも最近の世界においては、世界中の政府の借金が増え続け、民間の貯蓄が増え続けています。そして、「国の借金がー!」というプロパガンダが、多くの国のメディアで年がら年中喧伝されています(「民間の貯蓄がー!」とはほとんど語られることはない)。
民間部門は、将来の先行きが不透明、さらに外貨建て借金かどうかとか、経常収支がどうかとか、対外純資産がどうかとかの区別なく、「国の借金がー!」のプロパガンダなどによって、政府の先行きにも不安を抱き、貯蓄をため込む傾向はますます強まります。

すると、ガソリンが安くなったからといって、それで節約できた分を、「宵越しの銭はもたねえぜ!」とばかり使うかというと、それは非常におぼつかないことだと言わざるを得ません。

また、ガソリン、原油が安くなった分、石油業界、産油国の収入が減り、彼らの投資支出、消費支出が減るのですから、ガソリンが安くなったことのプラスの影響とマイナスの影響はほぼ相殺されるように思われます。

よって、「ガソリンが安くなって、1000ドル浮いた」ことの効果は、あまり期待できない、と考えられます。


ちなみに、本日の上海におけるG20会合で、ドイツのショイブレ財務大臣が以下のように語ったとのこと。原油価格安に関しては、ロスチャイルドの副社長と同じご意見のようです:



ドイツはG20による財政刺激には反対、構造改革に注力を-財務相
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O350MA6JIJUP01.html
ブルームバーグ 2016/02/26

(ブルームバーグ):ドイツのショイブレ財務相は26日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がこの日上海で開幕するのに先立ち、ドイツとしてはG20によるいかなる財政刺激計画にも反対すると表明した。それよりも各国が構造改革に注力して成長率を高めるべきだと述べた。
ショイブレ氏はさらに、金融政策の余地も使い尽くされたと指摘。債務に依存して成長を押し上げる政策は経済の「ゾンビ化」につながるだけだと警告した。
同氏は上海でのコンファレンスで、「さらなる財政刺激策に関する議論は、目の前にある真の課題から注意をそらすだけだ」と説明。ドイツの政策当局としては「見通しへのリスクが現実化した場合の策として一部が主張しているG20の財政刺激パッケージには賛成しない」と述べた。
ショイブレ氏はまた、原油価格の下落が需要に「多大な」刺激を既に与えていると指摘。拡大的な財政政策は将来の危機の下地をつくる恐れがあると述べた。




というわけで、世界的な「アベノミクス・プラス」はこれだけでもなさそうです。

一応、中国がもっと財政出動します、金融緩和も、構造改革もやりますと、いわば「アベノミクス・プラス」実施を宣言(?)していますが…


中国には景気支援で金融政策面での余地がある-人民銀総裁
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O34V4U6TTDTF01.html
ブルームバーグ2016/02/26


周総裁は「引き続き進展を注視し、調整を適切に進める必要がある。下振れリスクの可能性に対処するため、中国にはまだ一定の金融政策の余地と複数の政策手段が残されている」と説明した上で、財政政策が一段と積極的になり、供給サイドの構造改革が引き続き焦点になるとも話した。





しかし、その積極財政も、世界全体の景気を押し上げることはなさそうです:


中国財政赤字の対GDP比、4%に上昇でも対応可能-中銀幹部ら
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O333K46JIJUS01.html
ブルームバーグ 2016/02/25

 (ブルームバーグ):中国政府が法人税減税を目指す中で、同国は財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を4%まで上昇させることができると、中国人民銀行(中央銀行)当局者が中国紙、経済日報のウェブサイトへの寄稿で指摘した。
人民銀調査統計局の盛松成局長らによると、政府債務は低水準で、経済成長は「比較的速い」上に国有資産を豊富に抱えており、中国にはより大きな国債増発能力がある。財政赤字が対GDP比4%に上昇したとしても、2025年末時点で債務の対GDP比は70%にまでに維持できるとしている。
国営の新華社通信が最近報じたところによれば、財政赤字の対GDP比は15年の2.3%から今年は上昇する可能性が高い。3月5日には全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕し、今年の経済計画や目標が審議、発表される見通し。




2015年の財政赤字GDP比2.3%から4%に上げられます、という程度です。

2015年の中国の名目GDPはIMFによると11.4兆ドル(1ドル=120円とすれば、1368兆円)と見積もられます。
GDP比4%まで上げられるということで、4-2.3=1.7%分、財政赤字を増やせると。

1368兆円×1.7%=23兆円

まあ、名目で仮に2016年のGDPがドル建てで6%増えるとしましょう(怪しいですが)。それでも、中国が増やせる財政赤字は24兆円に留まります。

世界全体の2015年の名目GDP(ドル)は73.5兆ドル(1ドル120円で8820兆円。それに対して24兆円の「積極財政」(8820兆円のわずか0.3%程度)があったとしても焼け石に水、シティのブイター氏らが言うところの「決定的な財政緩和への転換があるとは予測していない」という範囲内でしかないでしょう。

ドイツもない、中国もない。

日本や米国であるかというと、やはり政治的に難しいでしょう。

特にアメリカは議会で間違いなく「債務上限がー」で紛糾するのでほぼ不可能。

日本は、仮にできたとしても、20兆円とか30兆円でしょう。それもまた世界全体のGDPの0.3%程度でしかありませんが、それでも政治的には困難ではないかと思われます。





 世界的な『アベノミクス・プラス』。

 あって欲しいとも思うが、

 残念ながら、政治的にお預け、か?



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693:トルコとロシアの直接衝突がシリア国境のリスクを増大させている - まるで戦国時代そのものと言える、複雑怪奇な中東情勢について、ひとまず整理を試みます

2016/02/17 (Wed) 17:40
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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:

ブルームバーグ(英語)で、目下の中東情勢について把握するのにちょうど良い記事がでてたので、大雑把に翻訳しておきます。そのあと、いくつかほかの記事を紹介しながら、複雑な中東情勢について、ひとまず整理してみたいと思います。


A Direct Turkey-Russia Clash Is Growing Risk on Syria Border
トルコとロシアの直接衝突がシリア国境のリスクを増大させている

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-16/a-direct-turkey-russia-clash-is-a-growing-risk-on-syria-border
by Selcan Hacaoglu, Bloomberg
February 17, 2016

There’s only one major group of combatants in the Syrian war that’s backed by both Russia and the U.S. -- and now Turkey is attacking it.
シリアではただ一つだけ、ロシアとアメリカの両方に支援されている有力な武装勢力が存在する。--そして現在、トルコがその勢力を攻撃している。

For a fourth day on Tuesday, Turkey unleashed its 155-millimeter heavy guns across the border with Syria. The targets were Kurdish forces, whose recent advance is a key part of the Russian plan to restore President Bashar al-Assad’s control over Syria.
(攻撃の?)4日目の火曜日、トルコはシリア国境越しに、155ミリの重砲を撃ち放った。標的はクルド人部隊だった。そのクルド人部隊の最近の進撃は、ロシアによる、アサド大統領のシリア支配回復プランの重要な要素となっている。

Syria’s five-year war has turned into a tangled web of proxy conflicts between global and regional powers, with a growing risk that some of them could clash directly. Right now the most dangerous flashpoint is between Russia and NATO member Turkey, which shot down a Russian plane in November. Since then tensions have steadily built as the Assad-Russia alliance -- with help from the Kurds -- threatens to surround Turkish-backed rebels in Aleppo, Syria’s biggest city.
シリアの5年にわたる内戦は、世界の主要国や地域大国の間の代理紛争の場となり、複雑な様相を呈している。その一部はいまや代理紛争ではなく、直接衝突となるリスクが増大しつつある。目下、最も危ういのがロシアと、NATO加盟国であるトルコの間の衝突だ。トルコは昨年11月、ロシアの戦闘機を撃墜した。それ以来、緊張は着実に確立されている。アサド-ロシア同盟はクルドの支援を受けつつ、トルコが支援する反乱軍をアレッポ(シリア第二の都市)に包囲しつつある。

“Both Russia and Turkey are looking to position for strategic advantage,” Tim Ash, head of emerging-market strategy at Nomura in London, said by e-mail on Monday. “The risk is of an actual Russo-Turkish military clash, which would then threaten to draw in NATO.”
「ロシアとトルコの双方とも、戦略的に有利な地位を模索している」と、野村(ロンドン)の新興市場戦略部長、ティム・アッシュ氏はいう。「現実的なロシア-トルコの軍事衝突のリスクは、いずれNATOを巻き込む恐れもある」

‘Accidental’ War
「偶発的」戦争
The irony is that even while Turkey faces off against NATO foe Russia, its policies are also putting it at odds with leaders of the Western coalition.
トルコがNATOの敵であるロシアと対立する一方、トルコの政策が西側同盟国の指導者らと一致していないのは、皮肉である。

The U.S. shares Turkey’s desire to halt the Assad advance, and its suspicion of Russian intentions. But on the subject of Syria’s Kurds, there’s a sharp difference.
米国は、アサドの進撃を止めたいというトルコの望みと、ロシア介入に対するトルコの懐疑を共有している。しかし、シリアのクルド人のこととなると、鋭い相違がある。

Turkey says the main Kurdish fighting unit, the YPG, is a terrorist group that’s in league with autonomy-seeking militants inside Turkey. The U.S. views the Syrian Kurds as a proven battlefield ally against Islamic State. Two weeks before Turkey started shelling them, President Barack Obama’s envoy for the coalition against Islamic State, Brett McGurk, was visiting YPG fighters in Syria to congratulate them.
トルコは、(シリアにおける)主たるクルド人武装勢力YPGをテロ組織だと言っている。YPGはトルコ国内で自治権確立を目指す武装勢力と連合している。アメリカはシリアのクルド人は対IS戦闘の同盟者として認めている。トルコが砲撃を開始する2週間前、オバマ大統領の対IS融資有志連合担当の特使、ブレット・カクガーク氏が、シリアでYPG戦闘員を訪問し、祝辞を述べている。

Turkey says its attacks on the Kurds were in retaliation for cross-border shooting, and most analysts say it’s unlikely to carry out a major incursion that would put its troops under Russian fire. But the risk of an “accidental” clash is increasing, according to Nihat Ali Ozcan at the Economic Policy Research Foundation in Ankara.
トルコは、クルド人への攻撃は、国境越しに撃ってきたことへの報復としている。ほとんどのアナリストは、トルコ軍が本格的に(シリアに)侵入してロシアと砲火を交えることは、ありそうにないと言っている。しかし、「偶発的」衝突のリスクは増大している、とアンカラ(トルコの首都)にある経済政策研究財団のNihat Ali Ozcan氏は言う。

Once Friends
かつては友人だった

Turkey’s lira slid to a three-week low on Tuesday as the shelling fueled concerns of a wider conflict in Syria, where at least a quarter-million people have already died.
トルコの通貨リラは火曜日、3週ぶりの安値となった。(シリアのクルド人への)砲撃が、シリアにおける広範な衝突への懸念を加速させた。シリア(内戦)では既に、少なくとも25万人が死亡している。

The once-friendly relationship between Ankara and Moscow has deteriorated since Russia entered the Syrian war on Assad’s side last September. The rebels backed by Turkey and other U.S. allies, including Saudi Arabia, have been withering under Russian bombing that has helped Assad regain territory.
かつてのたトルコとロシアの友好関係は、昨年9月、ロシアがアサド側に立ってシリア内戦に介入して以来、悪化している。トルコや、サウジなどアメリカの同盟諸国が支援する反乱軍は、アサドの支配領域回復を支援するロシアの空爆で衰退しつつある。

For Turkish President Recep Tayyip Erdogan, two threats are unfolding simultaneously. In the short term, a Russian-backed Kurdish advance could cut supplies to the rebels that Turkey’s been backing for years, increasing the chance that Assad will recapture Aleppo and survive in power. That would be the latest blow to Erdogan’s policy in the Middle East, a region of growing economic importance for Turkey: he’s already lost allies in Egypt and Iraq.
トルコのエルドアン大統領にとって、二つの脅威が同時に展開した。短期的には、ロシアに支援されたクルド人の進撃により、トルコが何年ものあいだ支援してきた反乱軍への補給が断たれ得るということだ。それはアサドによるアレッポ奪還と権力温存の可能性を高める。それは、エルドアンの中東政策に新たな打撃を与えることになる。中東はトルコにとって経済的重要性が増大している地域であるが、エルドアンはすでに、エジプトとイラクの同盟者を失っている。

※エジプトは、シシ大統領の軍事クーデターで崩壊したムスリム同胞団のモルシ政権のこと(近年のトルコとエジプトの関係はこちら)。
イラクは…、現在のシーア派政権になる前のスンニ派政権、つまり、イラク戦争で滅亡したフセイン政権のことか?


In the longer term, Turkey is wary of territorial gains for the Syrian Kurds that could eventually deliver them a state of their own, and fuel similar aspirations among Turkey’s Kurdish minority. Erdogan says Russian airstrikes are allowing the Kurds to drive ethnic Turkmens and Arabs away from the border areas, deepening the refugee crisis.
長期的には、シリアのクルド人の支配領域拡大が、最終的にクルド人国家につながり、それがトルコ国内のクルド人を刺激し得ることを、トルコは懸念している。ロシアの空爆で、クルド人がトルクメン人やアラブ人を国境地帯から追い払い、難民危機を深刻化させているとエルドアンは言っている。


‘Reciprocal Restraint’
「相互抑制」

Like other U.S. allies in the region, Turkey has been pinning its hopes for a turnaround on Washington’s leadership. Turkey would definitely join a ground operation with its international partners to end the Syrian war, a Turkish official said at a briefing in Istanbul on Tuesday, speaking on condition of anonymity. The official ruled out a unilateral incursion by Saudi Arabia, which has made a similar offer of troops, or Turkey.
地域における他のアメリカの同盟諸国と同様、トルコはアメリカの指導層の方針転換に望みをつないでいる。トルコはシリア内戦を終結させるため、ほかの国々とともに地上作戦に参加すると、火曜日、イスタンブールでトルコ高官が明言している。その高官は、トルコと同じく地上軍派遣を提示しているサウジも、トルコも、一方的に(シリアに)侵入することはないとしている。

The U.S. appears to be backing diplomacy rather than military escalation, though the truce it brokered last week with Russia and other powers has run into trouble even before it was due to take effect. Obama told reporters on Tuesday that the cease-fire probably won’t work “if Russia continues indiscriminate bombing.”
アメリカは軍事活動の増大よりも、外交(による解決)を支持しているが、先週ロシアとほかの主要国とで合意した停戦は、それが効果を発揮する前に、むしろ困難に陥っている。オバマは火曜日、「もしロシアが無差別な空爆を続けるなら」停戦は恐らく機能しない、述べている。

The U.S. has acknowledged some of Turkey’s concerns. In a phone call with Turkish premier Ahmet Davutoglu, Vice President Joe Biden said efforts were being made “to discourage Syrian Kurdish forces from exploiting current circumstances to seize additional territory near the Turkish border,” the White House said on Sunday. But Biden also urged Turkey “to show reciprocal restraint by ceasing artillery strikes in the area.” Members of the UN Security Council expressed concern about the Turkish attacks at a meeting on Tuesday, the Associated Press reported.
アメリカは、トルコの懸念の一部については承認いている。トルコのダウトオール首相との電話会談でバイデン副大統領は、「シリアのクルド人勢力が、現在の状況を利用して、トルコ国境付近でこれ以上、支配領域を拡大しないように」する努力はなされていると話している。ホワイトハウスが日曜、明らかにした。しかしバイデンはトルコに対し、「その地域における砲撃を停止することにより、相互抑制の姿勢を示す」ように促した。国連安保理の参加国は、火曜日の会合においてトルコの攻撃につき懸念を表明したと、AP通信が報じている。

Russia has been carrying out military exercises in the Black Sea area that are “a signal to Turkey not to stage a provocation,” according to Igor Korotchenko, director of the Center for Analysis of World Arms Trade in Moscow.
ロシアは黒海において軍事演習を実施している。それは「トルコに対し、挑発行為を行わないようにというシグナル」であると、モスクワのthe Center for Analysis of World Arms Tradeの理事長(?)、イゴール・コロトチェンコ氏はいう。

‘Enough Forces’
「十分な軍事力」

“We have enough forces to bring Erdogan back to his senses if Turkey forces us to act militarily,” Korotchenko said.
Turkey’s actions on the border are defensive steps to avoid a war, Davutoglu said on Tuesday. A day earlier, he denied reports that Turkish troops had crossed into Syria.
「我々は、もしトルコが我々に軍事行動を取らせようとした場合、エルドアンに正気を取り戻させるのに十分な軍事力を持っている」とコロトチェンコはいう。
トルコの国境における行動は、戦争を避けるための防衛的な措置であると、ダウトオール首相は火曜日に述べた。その前日には、彼はトルコ軍が国境を越えてシリアに侵入したという報道を否定した。

All the rhetoric shows that, while the risk of a clash between major powers in Syria may be exaggerated, it’s “still real,” said Michael Gunter, author of several books on the Kurds and a professor of political science at Tennessee Tech University in Cookeville.
If Turkey takes further action to counter the Kurds and Russia, he said, “things could quickly escalate into a greater confrontation which nobody in their correct mind would want.”
シリアにおいて主要国が衝突するリスクは誇張されたものであるかも知れないが、それは「いまだ現実味がある」と、クルド人についてのいくつかの著作の著者であり、テネシー工科大学の政治科学の教授であるマイケル・グンター氏は言う。もしトルコがクルドとロシアに対して更なる行動に踏み込めば、「物事は急激にエスカレートして、誰もが理性では望まないような大きな対立となり得る」と彼は言う。

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さて、以下は、中東情勢を整理するための追加的な情報です。

クルドに関して、イスラエルの(極右の美人)法務大臣Ayelet Shaked アイエレット・シャクド氏が、先月、「クルド人国家建設を支援すべき」と述べています。RTの記事を抜粋翻訳:


‘Time to help them’: Israeli justice minister calls for independent Kurdish state
「彼らを助ける時だ」:イスラエル法務大臣、クルド人国家独立を訴える
https://www.rt.com/news/329518-israel-kurdish-state-calls/
RT, 20 Jan, 2016

“We must openly call for the establishment of a Kurdish state that separates Iran from Turkey, one which will be friendly towards Israel”
「我々は公に、イランやトルコから分離したクルド人国家建設を求めるべきだ。クルド人国家はイスラエルに対して友好的となるだろう」

The minister stressed that Israel should “promote steps that would correct the injustice that [made Kurds] the biggest nation without a state,” BasNews reported. She also emphasized that “the Kurds are an ancient people with thousands of years of history, and a democratic nation” – one that has “never attacked any other nation.”
イスラエルは「(クルド人という)国を持たない最大の民族に対する不正義を正す動きを促進」すべきであると強調した。彼女はまた、「クルド人は数千年の歴史を持つ人々であり、民主的な民族だ」、「他の国を攻撃したことがない民族だ」と強調した。

“The Kurdish people are a partner for the Israeli people,”
「クルドの人々はイスラエル人の仲間だ」

“We Kurds and Jews have a long history. We have common interests in trying to stop Daesh [Islamic State/IS, formerly ISIS/ISIL] and the Kurds are fighting ISIS with all their might.”
「我々クルド人とユダヤ人は、長い歴史を持っている。我々はダエシュ(IS)を止めるという共通の利害を持っている。そしてクルド人は彼らの全ての力を使ってISと戦っている」

“[The] Kurds are the only ones fighting ISIS as their highest priority.”
「クルド人は、最優先事項としてISと戦っている唯一の人々である」

Although there was always implicit support from the Israelis for a free Kurdish state, there are no official diplomatic ties between the two peoples. However, reports claim that visible business and military cooperation exists between Israel and the semi-autonomous Kurdish region in Iraq.
これまで、イスラエルからクルド人国家建設への暗黙のうちの支援は常にあったが、クルドとイスラエルの公的な外交関係はなかった。しかしながら、イスラエルとイラクのクルド人の半自治国とのあいだには、目に見える形で経済や軍事の協力が存在している、と言われている。

In 2014, Prime Minister Benjamin Netanyahu also advocated the creation of an independent Kurdistan.
2014年、ネタニヤフ首相もまた、クルド人国家の独立を提唱している。

Israel is also running out of friends, and some believe that calls for an independent Kurdistan are aimed at establishing at least one Muslim ally for the Jews.
イスラエルもまた、友好国を失いつつある。一部の人々は、イスラエルによるクルド人国家独立の提唱は、ユダヤ人にとって少なくとも一つのイスラム教国を設立することを狙いとするものだと考えている。

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なお、トルコとクルド人の関係は、少々入り組んでいます:








トルコ ←戦争中→ トルコやシリアのクルド人
トルコ ←友好関係→ イラクのクルド人

ということになります。

次に、トルコとイスラエルの関係は…















ということで、トルコとイスラエルの関係は良くありません。

但し、トルコとイスラエルは、イラクのクルド人と良好な関係、ということでは一致。

一方、イスラエルのヤアロン国防大臣が、「トルコがIS支援している」というロシアの従来からの主張で、アメリカが否定していたことを、思いっきり肯定したことで、イスラエルとロシアが急接近。

トルコとロシアも上述のようにかなり険悪。

という具合です。


あと、中東と言えば、

・イエメンの内戦(サウジとイランの代理戦争)

・パレスチナ問題

ですね。

全部書くと、それこそ収集が付かんような気がしてきたので、パレスチナについて少しだけ:















ちなみに、パレスチナに関して日本は…

アル・アイヤーム紙(パレスチナ)による安倍総理大臣インタビュー
2015年1月20日付
http://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/ip/page4_000931.html
外務省:平成27年1月26日
日本国総理大臣:パレスチナ国家建設を支持し,イスラエルに入植停止を促す




あと、イランに関しても少しだけ…



















以上を整理する、というのはなかなか困難な作業でありますが…

・対ISでは、国際社会も、中東も、ほぼ結束している。(トルコは微妙か?)

・クルド人に対しては、ロシアとアメリカ、イスラエルが一致して友好的であるが、トルコが徹底的に反発している(ただし、トルコはイラクのクルド人とは関係良好)。

・パレスチナ国家承認に関しては、国際社会がほぼ一致するが、イスラエルが徹底的に反発している(アメリカもパレスチナ国家は承認していないが、オバマ政権内部ではパレスチナ国家承認を検討する動きもあった)

・イランに関しては、イスラエルが死ぬほど警戒しており、イスラエルに配慮してか、アメリカもいつでもサイバー攻撃する準備をしていた。一方、何だかんだといってイランは西側を信用したことがなく、中国やロシアとの関係が深い。


要は、アメリカの今年の大統領選で、トランプ氏やサンダース氏(両氏ともイラク戦争は間違いだったと主張)のような内向き志向の政権が誕生するかどうか、アメリカの覇権がどれくらいのペースで退潮するかによって、中東情勢は大きく変わるものと思われます。

※なお、アメリカの覇権がどうなるか、ということは拙著『異次元大恐慌』の主要なテーマの一つであります。

※近いうちに来るかも知れない大暴落・大恐慌は、アメリカの覇権からの退座を伴うかもしれない、という意味でも『異次元大恐慌』となり得るのであります。



・但し、アメリカの覇権がどうなるかにかからわらず、ひとまず、ISは衰退に向かいそう

・ISが片付いたら、今度はクルド人問題とパレスチナ問題。イラン核問題も場合によってはまた持ち上がりそう。


○アメリカの覇権からの退座が進むと、

・イランが地域大国として台頭

・イスラエルはイランを抑えるために、必死でクルド人国家建設を支援。その際はロシアとも協力。

・トルコは、ロシア、イスラエル、クルドと向かい合わなければならない。アメリカが中東から引けば、NATOは頼りにならず、しぶしぶクルド人国家を認めざるを得ない(核を持たないトルコは、恐らく、そうせざるを得ない)

・イスラエルもまた、パレスチナ人国家を承認せざるを得ない。

・イランの大国化で、サウジもいつまでもイエメンでイランと戦っているわけにもいかず、イエメンの内戦も収束に向かう。


●アメリカの中東への関与が今後も続くなら…

・トルコがNATOの後ろ盾で、クルド人国家建設をとにかく可能な限り阻止しようとする

・イスラエルは、アメリカがイランを抑えることでクルド人国家建設にそこまで注力せずにすみ、また、パレスチナ人国家を認めずに済み、むしろ、パレスチナへのユダヤ人入植を推進する

・サウジも、アメリカがイランを抑えることで、イエメンでの内戦でイランと対立を続けることが可能となる

といった具合でしょうか。


あれ?

そうなると、アメリカが中東に関与し続けると却って中東の不安定さが増す、ということになってしまうか。

いや、それはそれで違うかも知れませんが、どうでしょうか…。


以上は、中東情勢を整理するための一つの考え方の例、くらいに思って頂ければ幸いです。




 まあ、ひとことで言えば、

 中東はまるで戦国時代そのもの

 ということか。


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692:プーチンに利益か:ローマ法王とロシア正教大主教の歴史的会談の政治的意義+サンダース氏とローマ法王、トランプ氏と正教会の意外なつながり

2016/02/11 (Thu) 22:22
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:


先日ツイートしていた、ロシアRTの記事↓





に関して、ロイター(英語)が興味深い記事を出していたので紹介します。


というのは、

拙著『異次元大恐慌』で提示しました、ローマ帝国の流れを汲むローマ・カトリック教会(西ローマ帝国)と東方正教会(東ローマ帝国)を軸にした世界情勢分析にとって、かなり重要な裏付け材料

と考えるからです。


さて、そのロイターの記事の紹介に入る前に、

カトリックと日本の関係

について少し。


まず、否定的な側面を書くと、戦国時代、でしょうか。


秀吉や家康は、

「カトリックの布教→スペインやポルトガルの軍隊が来て植民地化」

というのを恐れて、カトリック、というかキリスト教を禁止しました。
(かなり大雑把な言い方ですが…)

徳川幕府は、欧州諸国の中で「交易のみ。キリスト教の布教なし」の条件を飲んだプロテスタントの国であるオランダとのみ交易関係を保持しました。



次に、肯定的な側面。


日本の敗戦後、GHQが靖国神社を焼却しようとしたのを、当時の駐日バチカン大使が思い止まらせた
(と思われる)、という話があります。

この話は以前、国際政治学者の藤井厳喜さんがラジオで話していたことで私は知ったのですが、国会図書館にも資料がありました。

『靖国神社とはなにか : 資料研究の視座からの序論』
著者 春山明哲
出版地 日本
出版社 国立国会図書館
出版年 2006-07
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000040-I000024371-00

から、関係箇所を引用しておきます:

 GHQ では、 靖国神社そのものの存廃が検討されていた。
 ブルノー・ビッテル神父 (カトリック教会東京大司教区麹町教会、 聖イグナチオ教会)の回想によれば、 大招魂祭の前の10月中旬、マッカーサー元帥からのメモが届いた。
 その内容は 「司令部の将校たちは靖国神社の焼却を主張している。 同神社焼却に、 キリスト教会は賛成か、 反対か、 すみやかに貴使節団の統一見解を提出されたい」 というものであった。
 駐日ローマ法王代表・バチカン公使代理のビッテルは「自然の法に基づいて考えると、 いかなる国家も、 その国家のために死んだ人びとに対して、敬意をはらう義務と権利があるといえる… (中略) …もし靖国神社を焼き払ったとすれば、 その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るであろう」 という意見を提出した。
 マッカーサーはのちに 「カトリック教会からあんな見解が出されるとは、 思いもよらないことだった」
と語ったという。

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バチカン駐日大使が日本に同情的であった(かも知れない)のは、そもそも第二次世界大戦において、イタリアが日本と同盟関係にあったことも関係があるのかも知れませんが、どうでしょうか。

しかし、どのような事情があるにせよ、

「いかなる国家も、 その国家のために死んだ人びとに対して、敬意をはらう義務と権利があるといえる… (中略) …もし靖国神社を焼き払ったとすれば、 その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るであろう」

というビッテル神父の言葉には、ただただ心を打たれるのみであります。


本日は建国記念日ということもあり、こういう話も書いてみました。


※あと、キリスト教は一神教で、多神教の日本とは違いが大きい、という見方もありますが、古代ローマ人はもともと多神教的な宗教観を持っていました。それが、ユダヤ教の分派と言えるキリスト教がローマ帝国に広まる中で、キリスト教がローマ帝国の国教となったわけです。
 私も宗教的な話はそこまで専門的に調べたわけではないので、かなり大雑把な話になってしまいますが、聞いたところによると一神教では通常、偶像崇拝というのがないそうです。
 ところが、カトリックでは教会にキリスト像やマリア像、つまり偶像が祀られています。また、マリア被昇天というように、聖母マリアも神に近い存在となっているため、この辺りは多神教的と言えるのかも知れません。ローマ人が元々、多神教であったのですから、ローマ帝国の国教となる際に、ローマ人が受け入れやすい形になっていたのではないかと推定します。
(ここは、もしかしたらトンチンカンなことを書いているのかも知れません。ゆえに、あくまでも「そうかも知れない」という話です)


さて、ではロイター記事のご紹介です。たぶん、日本語版では出ることのない記事と思われるので、ざっくりですが全訳しておきます:

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Putin may benefit from meeting of pope and patriarch
プーチン、法王と大主教の会談から利益を得そう

Feb 10, 2016
VATICAN CITY/MOSCOW | BY PHILIP PULLELLA AND MARIA TSVETKOVA, Reuters

A meeting between Pope Francis and Russia's Orthodox Patriarch Kirill on Friday could not happen without a green light from President Vladimir Putin, diplomats and analysts say, and he may be one the beneficiaries.
金曜日に予定されるフランシスコ法王とロシア正教会のキリル大主教の会談は、プーチン大統領の許可なしには起こりえなかったし、プーチンはこれで得をするうちの一人になるかも知れないと、外交官らやアナリストらは言う。

In a landmark step towards healing the 1,000-year-old rift between the Western and Eastern branches of Christianity, the two religious leaders will meet in Havana on the pope's way to Mexico.
1000年に及ぶ東西キリスト教会亀裂の癒しに向かう歴史的段階において、二人の宗教指導者は、法王のメキシコ訪問の途中で、キューバの首都ハバナで会談する。

"There is no doubt the Kremlin took part in making this decision," said Gleb Pavlovsky, a political analyst and former Kremlin adviser in Moscow. "Otherwise the meeting would not have happened."
「ロシア政府がこの会談の決定に関与したことに疑いはない」と政治アナリストで元ロシア政府顧問のバブロフスキはいう。「そうでなければ、この会談は起こり得なかった」

Putin has aligned himself closely with the Russian Orthodox Church (ROC), making Friday's two-hour private meeting not just a religious event but politically charged as well, especially when Russia is at odds with the West over Ukraine and Syria.
プーチンがロシア正教会と密接な関係にあることは、金曜の二人の内密の会談を単なる宗教イベントに留まらせず、政治的な意義を持たせることになる。現在は特に、ウクライナやシリアを巡ってロシアが西側と不和にある時であるのだから。

"Putin clearly sees the value of his relationship with the ROC and the ROC's relationship with the pope," said a diplomat who spoke on the condition of anonymity.
「プーチンは明らかに自らのロシア正教会との関係と、ロシア正教会と法王との関係に価値を見出している」と、匿名を条件にしたある外交官は言う。

"He understands the pope is a big player on the world stage and I think that he would be happy about having the possibility of using the improved relations between the Vatican and the ROC to get the Kremlin's view across to the Vatican," he said.
「プーチンは法王を世界の舞台における重要人物と理解している。彼は、バチカンとロシア正教会の関係改善を活用できる可能性を持つことを喜ぶことになるだろう」とその外交官は言う。

Alexander Volkov, Russian church spokesman, said that while a joint declaration will dwell on the Middle East's persecuted Christians, tensions between Russia and the West may be brought up in the talks.
ロシア正教会の広報担当者ボルコフは、共同宣言において、中東のキリスト教徒への迫害問題に重点が置かれるが、ロシアと西側との緊張に関しても話されるかも知れない、という。

"This is one of the burning issues and we can assume it will be reflected in the dialogue. It can't be ruled out," he said.
「これ(ロシアと西側との緊張)は差し迫った問題の一つであり、我々はそれが対話に反映されると想定できる。(その可能性は)排除できない」と彼は述べた。

DIFFERENT POPE, WARMER TIES
普通ではない法王、温かい関係


Relations between Moscow and the Vatican have improved steadily since the reign of Pope John Paul II, a Pole who had an inbred suspicion of Russia and who died in 2005. But Francis is an Argentinian with no historical baggage associated with the East-West divisions of Europe after World War Two.
ロシア政府とバチカンの関係は、ロシア系とも言われるヨハネ・パウロ二世以来、着実に改善している。フランシスコ法王はアルゼンチン人であり、二次大戦後の欧州の東西分裂と関連する歴史的重荷と無関係である。

In 2013, Moscow was pleased after Francis opposed a proposed U.S.-led military intervention in Syria, a key Russian ally.
2013年、フランシスコ法王が米国主導のシリア軍事介入に反対したことにつき、ロシア政府は好意的であった。シリアはロシアの主要な同盟国だ。

Last year, Catholics in Ukraine accused Francis of being soft with Moscow when he described violence in Eastern Ukraine as "fratricidal". They saw it as a product of foreign aggression.
昨年、ウクライナのカトリック教徒らは、フランシスコ法王がロシアに対して温和であることを非難した。フランシスコ法王は、ウクライナ東部での紛争を「同胞相(あい)争う」と表現したが、ウクライナのカトリック教徒らは「外国からの侵略の産物」と見なした。

One commentator said Francis' view was perhaps "blurred by ecumenical correctness" in the hopes of a meeting with Kirill.
ある論者は、フランシスコ法王の見解は、キリル大主教との会見を果たすための、「教会一致を目的にした政治的正しさのためのぼかし(意訳)」であったのかも知れないとする。

In an interview with Reuters, Cardinal Kurt Koch, head of the Vatican office for Christian unity, was non-committal when asked if the meeting could help Putin. "I think Putin agrees with the meeting, but I can't say more," he said.
ロイターの取材に対し、キリスト教間の一致を再築するための諸活動を行う機関のコッホ枢機卿は、この会談がプーチンを助けることになるか、言質を与えなかった。「私は、プーチン大統領は会談に賛成していると思うが、それ以上は言えない」と彼は述べた。

Russia's ambassador to the Vatican, Alexander Avdeyev, said the two Churches organised the meeting but that it could "help politicians and diplomats" with policy decisions.
ロシアの駐バチカン大使、アブデエフは、両教会が会談を企画したが、それは政治的決定のための「政治家や外交官の手助け」となり得る、と述べた。

"The two Churches clearly understood that all threats and challenges in the world threaten both of them and cooperation has to be stepped up to fight nationalism and terrorism," he told Reuters.
「二つの教会は、世界におけるすべての脅威と課題が両協会にとっても脅威であり、ナショナリズムやテロリズムとの戦いのために更なる協力が必要と理解していることは明らかだ」と彼はロイターに述べた。(廣宮注:ロシア大使は「ナショナリズムとの戦い」などと言いますが、ロシアは原油安や西側からの経済制裁による苦境を、まさしくナショナリズムで耐えているような気が…。まあ、いいか)

The meeting, which will put another historic notch on Francis' legacy, came after two years of secret contacts in Rome, Moscow and Havana, Vatican and diplomatic sources said.
フランシスコ法王にとってもう一つの歴史的業績となるこの会談は、2年に渡るローマ、モスクワ、ハバナの秘密裏の接触の結果であると、ある外交情報筋は言う。

Agreement was clinched last autumn but the ROC wanted to keep it under wraps for several more months, one Vatican source said.
(会談についての)合意は昨秋には整っていたが、ロシア正教会が数か月のあいだ、秘匿することを望んだと、あるバチカン情報源は言う。

The Russian Church had long accused Catholics of trying to convert people from Orthodoxy after the break-up of the Soviet Union in the early 1990s. The Vatican denied the charges and both sides say that issue has largely been resolved.
ロシア正教会は長らく、1990年代初頭のソ連崩壊以降においてカトリック教会が人々を正教から転向させようとしていた、と非難していた。バチカンはその非難を否定。そして、両教会はその問題の大部分は既に解決したとしている。

One sore point remains the fate of church properties that Soviet dictator Josef Stalin confiscated from Eastern Rite Catholics in Ukraine and gave to the Russian Orthodox there. After the fall of communism, Eastern Rite Catholics took back many church properties, mostly in western Ukraine.
一つの困難な未解決問題は、ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンがウクライナで東方典礼カトリック教会から没収してロシア正教会に与えた教会資産の扱いである。共産主義の瓦解後、東方典礼カトリック教会は多くの教会資産を取り戻したが、そのほとんどはウクライナ西部において、である。

The meeting was brokered by Cuban President Raul Castro, who hosted the pope in Cuba last year. The Vatican helped arrange the rapprochement between Cuba and the United States.
今回の会談は、昨年法王を招待したキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が仲介した。バチカンはキューバとアメリカの関係改善を手助けした。





というわけで、

カトリック - ロシア正教会(東方正教) - プーチン大統領

という線が見えてきたわけですが、前回

・プーチン大統領が米共和党の大統領候補者の一人、トランプ氏(プロテスタントの長老派教会の信徒)を絶賛

・米民主党の大統領候補者の一人、サンダース氏(ユダヤ教徒)が頻繁にカトリック法王の言葉を引用

ということを書きました。


これにより、

サンダース氏 - カトリック教会 - ロシア正教会(東方正教) - プーチン大統領 - トランプ氏 

というつながりが見えてくることになります。

ここで、サンダース氏トランプ氏の英語版Wikipediaの宗教の項目を見ると、かなり興味深い事実が示されています。


サンダース氏はユダヤ人の両親を持ち、ユダヤ教の躾けを受けて育っており、「ユダヤ人であることを誇りに思う」と述べています。しかし「必ずしも宗教的に、ではない」のであり、神は信じるが、宗教団体には「属していない」とのことです。
そして、実に興味深いことに、夫人がカトリック教徒であるとのことです。Wikipediaのその箇所を引用します:

Sanders's wife is Roman Catholic, and he has frequently expressed admiration for Pope Francis, saying that "the leader of the Catholic Church is raising profound issues. It is important that we listen to what he has said." Sanders has said he feels "very close" to Francis's economic teachings, describing him as "incredibly smart and brave".
サンダースの妻はローマ・カトリック教徒であり、彼は頻繁にフランシスコ法王への敬意を表明しており、「カトリック教会の指導者は深淵な問題を提起している。我々が彼の発言に耳を傾けることは重要である」と述べている。サンダースは、フランシスコ法王の教える経済に「極めて親しみ」を感じ、法王を「非常に賢明で勇敢」と評価している。




一方、トランプ氏。


トランプ氏は「私はプロテスタントだ。私は長老派の信徒だ」と言っています。
なお、長老派はカルヴィン派のプロテスタントの宗派です(と言えば、私の『異次元大恐慌』を読んだ方、あるいは、私の本の記述の原典であるマックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読んだことのある方は、ピンとくるものがあるでしょう)。

そして、
Trump has praised and maintains relationships with several prominent national evangelical and Christian leaders, including Tony Perkins and Ralph Reed. During his 2016 presidential campaign, he received a blessing from Greek Orthodox priest Emmanuel Lemelson.
トランプは、トニー・パーキンスやラルフ・リードを含む、何人かの福音派キリスト教指導者を称賛し、良好な関係を維持している。2016年大統領選においては、ギリシャ正教会の司祭、エマニュエル・レムルスからの祝福を受けている。
(英語版Wikipediaより引用)

とのことです。



というわけで、


サンダース氏(現カトリック法王を尊敬) - カトリック教会 - ロシア正教会(東方正教) - プーチン大統領 - トランプ氏(ギリシャ正教会の司祭から祝福受ける)

といったところです。



※今回のエントリーを読んだ後で、私の新著『異次元大恐慌』を読むと、かなり興味深く読んで頂けるのではないかと思います。



 まさに、『異次元』な新時代が来ようとしている、か?


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691:トランプとサンダースの“政治革命”:共通点は「TPP反対」「イラク戦争は間違い」「国民皆保険の再整備」「ウォール街に厳しい」。相違点は不法入国者の扱い、銃規制、それに「ユダヤ人とお友達」か「本人がユダヤ人」か

2016/02/10 (Wed) 18:29
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら





さて、本題です:

ニューハンプシャー州の予備選挙、

民主党はサンダース氏、

共和党はトランプ氏が首位

となりました。


詳細はガーディアンでどうぞ。



まず、トランプ氏の「国家主権強化」姿勢について。

マスメディアの報道でほとんど取り上げられない、トランプ氏の移民改革に関する政策集の冒頭で、重要なことが書かれています:

1. A nation without borders is not a nation. There must be a wall across the southern border.
1.国境のない国は、国ではない。南国境(メキシコとの国境)には壁が必要である。

2. A nation without laws is not a nation. Laws passed in accordance with our Constitutional system of government must be enforced.
2.法律の無い国は、国ではない。憲法に合致して成立している法律は、政府が必ず適用しなければならない。

3. A nation that does not serve its own citizens is not a nation. Any immigration plan must improve jobs, wages and security for all Americans.
3.自国民に奉仕しない国は、国ではない。いかなる移民計画も、前米国民にとって、雇用、賃金、安全保障が改善されるものでなければならない。


国境に壁が本当に必要かどうかは別にして、上記の太字部分に、私は非常に共感を覚えます。

1.国境のない国は、国ではない。
2.法律の無い国は、国ではない。
3.自国民に奉仕しない国は、国ではない。


↑これは、非常に当たり前のことを言っているように感じるのは、私だけでしょうか。

トランプ氏の発言は、ときに過激になりがちですが、上記の方針から外れることはないように思われます(私が気づかないところでは、あるのかも知れませんが!)。

ちなみに、「国境に壁」という件につては、ハンガリーが「刃付き鉄条網フェンス」設置という形で、先に進んでいます:








さて、次にトランプさんとサンダースさんの共通点について


◎TPP反対


トランプ氏:TPPはひどい取引





サンダース氏:私はNAFTAもTPPも、常に強く反対してきた



サンダース氏:(TPP大筋合意で)ウォール街やほかの大企業がまた勝った。私は可能な限り全てのことをして、TPPを打倒する。




◎国民皆保険の再整備

トランプ氏:
In his 2000 book, The America We Deserve, Trump wrote, "We must have universal health care."
2000年に出版した彼の著書、The America We Deserveにおいて、「我々は国民皆保険を持つ必要がある」と述べている。

He suggested that this initiative be modeled after the Federal Employees Health Benefits Program, saying, "Our objective [should be] to make reforms for the moment and, longer term, to find an equivalent of the single-payer plan that is affordable, well-administered, and provides freedom of choice. Possible? The good news is, yes. There is already a system in place-the Federal Employees Health Benefits Program-that can act as a guide for all healthcare reform. It operates through a centralized agency that offers considerable range of choice. While this is a government program, it is also very much market-based."
彼は、この新たな取り組みは、連邦職員健康保険制度をモデルにする、として、「我々の改革は、当面、そして長期的に、一つの公的機関による保険制度( the single-payer plan )と等価のもので、誰の手にも届く、よく管理された、選択の自由を提供するものを目指すべきだ。 可能か? 可能である。既に実施されている連邦職員保険制度がある。この制度は全ての健康保険改革の指針となり得る。この制度では、集中型の機関において、かなりの範囲の選択肢を提供している。これは政府の制度である一方、かなりの度合いで市場原理に基づいている。」


サンダース氏:
At the second Democratic primary debate, on November 14, 2015, Sanders, when asked about the Affordable Care Act, said "I believe we've got to go further. I want to end the international embarrassment of the United States of America being the only major country on earth that doesn't guarantee health care to all people as a right, not a privilege. ..."
2015年11月14日、2回目の民主党予備選討論会で、皆保険制について「私はもっと進むべきと信じる。私は地球上の主要国で米国だけが人々の特権でなく、権利としての健康保険を保証していないという国際的に恥ずかしい状態を終わらせたいと思っている」。

(保険制度に関する両候補主張の出典:Ballotpedia



◎「イラク戦争は間違い」と主張












◎ウォール街に厳しい

トランプ氏:



サンダース氏:
サンダース氏については言うまでもないという気もしますが、彼は↓こんな発言も






次に、両氏の相違点:

◎不法入国者に対する態度

トランプ氏:厳しい
“I have a very hardline position, we have a country or we don't have a country. People that have come into our country illegally, they have to go. They have to come back into through a legal process. I want a strong border. I do want a wall. Walls do work, you just have to speak to the folks in Israel. Walls work if they're properly constructed. I know how to build, believe me, I know how to build. ... People can come into the country, we welcome people to come but they have to come in legally.”
「私はかなり強硬な立場である。我々は国を持つのか、それとも持たないのか、ということだ。不法に我々の国に入った人々は去らなければならない。彼らは、法に則った過程で戻って来なければならない。私は強固な国境を望む。私は壁を強く欲する。壁は役に立つ。イスラエル人に聞けばわかる。壁は、適切に建設すれば機能する。私はどう建設すればよいか知っている。…人々はこの国に来ることができる。我々は人々を歓迎するが、彼らは法に則って来なければならない。」


このトランプ氏の不法移民に対する強硬な姿勢に共感しているのが、長年、不法移民に厳しい姿勢で知られるアリゾナ州の名物保安官です:







サンダース氏:
一方、ユダヤ系のサンダース氏はやはり、移民全般に寛容です

Bernie Sanders released a statement on January 19, 2016, applauding the U.S. Supreme Court for deciding to review the constitutionality of President Obama’s executive actions on immigration. “ ... Clearly the best form of action is for Congress to pass comprehensive immigration reform to put undocumented people on a path toward citizenship. But if Congress fails to act, as president I would uphold and expand the president’s action,” Sanders said.
バーニー・サンダースは、オバマ大統領の移民に対する行動(一部不法移民の強制送還)につき、最高裁が憲法に基づく見直しを行う決定をしたことを称賛し、2016年1月19日に声明を発表し、「…明らかに、最善の行動は、連邦議会が包括的な移民改革を成立させ、不法滞在者に市民権への道を与えることである。しかし、もし議会がそれに失敗したなら、大統領として私は更なる行動を展開する」、と述べた。

(両氏の移民問題の主張の出典:Ballotpedia )



◎銃保有

トランプ氏:推進

合衆国憲法修正第2条で保障された銃を持つ権利を守り、再び偉大なアメリカを!

購入時のバックグラウンド・チェック(身元調査)など不要!
犯罪者はそんなチェックを受けるほどアホじゃない。彼らは友人や家族を通じて買うか、盗み取る。

運転免許同様、州別ではなく全国共通の銃携行ライセンスを!
正当防衛の権利は、自宅にいるときにだけあるのではない。だから私は、他の数千万のアメリカ人と同じく、銃を隠して携行する許可を持っている。州別の許可制では、この許可は特権になってしまう。自動車の運転免許と同じく、全50州で共通にすべきだ!

(トランプ氏のウェブサイト参照)


そんなトランプ氏なので、↓学生に「銃を持て!」と呼びかけたリバティ大学の学長、ファルウェルさんが彼を支持しています:








ちなみに、ファルウェルさんは、こんな人:







「銃を持て!奴らイスラム過激派が来やがったら、返り討ちにしてやるぜ!」という感じです。



サンダース氏:規制強化

We have to try to strengthen the instant background checks. Our goal as a nation…is to make sure that guns do not fall into the hands of people who should not have them. People who have criminal backgrounds, who are mentally ill. The federal government does have a very important role.
我々は身元調査の強化を試みるべきだ。我々の国としての目標は、確実に、犯罪歴のある人々や、精神疾患のある人々など、銃を持つべきでない人々の手に銃が渡らないようにすることだ。連邦政府は、極めて重要な役割を持っている。

(出典:Breitbart, "Bernie Sanders: Gun Control The Job of the Federal Government", 24 Jan 2016



◎「ユダヤ人とお友達」か「本人がユダヤ人」か

トランプ氏:今回の共和・民主両党の候補者のなかで、唯一、日常的にユダヤ人と接しており、また、孫にユダヤ教徒がいる、とロイター記事:





が、トランプ氏は、「イスラム教徒入国禁止」発言で、イスラエルから猛反発を受けます:
















その一方、トランプ氏はロシアのプーチン大統領から絶賛されています:







イスラエルに反対され、ロシアに支持されるトランプ氏…




サンダース氏:本人がユダヤ人
次に、サンダース氏は、実はユダヤ人そのものです





ユダヤ人で、恐らく、ユダヤ教徒のサンダース氏ですが、興味深いことにカトリック法王の発言をよく引用しています:








私の新著『異次元大恐慌』では、ローマ・カトリックと東方正教を、ローマ帝国からの流れと見て、国際情勢分析の主軸に据えました。
本当は、イスラエル/ユダヤ軸もあったほうが良いと思うので、これはまた近いうちに当ブログで補足しておきたいと思います。




両氏の人気:背景は政治不信

共和党の元下院議員(ニューヨーク選出)が、トランプ氏とサンダース氏の人気の高まりにつき、次のようなことを言っています:












「トランプ大統領」は日本にとって…

「メキシコ国境に壁」発言でヒスパニック票を取れそうにないトランプ氏にとっては、現状ではまだ、本選で民主党候補(サンダース氏であれ、クリントン氏であれ)に勝てるかどうかかなり、微妙です。各社調査で現状、トランプ氏はサンダース氏にもクリントン氏にも負けてます。もちろん、それもトランプ氏が共和党候補になった場合のことですが。

しかし今後、本選までに暴落・大恐慌があれば、昨年12月にバブル崩壊を「予言」しているトランプ氏が有利です:








但し、トランプ氏が大統領となった場合、日本にとっては厳しい面もあることを覚悟しておいたほうが良いでしょう:










 トランプ氏が大統領となれば、日本にとって厳しい面もある。
 しかし、それは彼が言っているような
 1.国境のない国は、国ではない。
 2.法律の無い国は、国ではない。
 3.自国民に奉仕しない国は、国ではない。
 という国家主権強化を日本が推進する好機ともなり得る、か?


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690:中国。カネはないが金はある、か?――知りたくなくとも、知っておいたほうが良いかも知れない、中国の金準備について

2016/02/09 (Tue) 17:05
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




今回は、↑新著に書ききれなかった中国の金(ゴールド)の話です。

(新著では、最も重要な世界全体の公的金準備の動向については書きましたが、紙幅の制限もあり、中国限定の話は割愛しました)


さて、先に申し上げますと、今回のこのエントリーの話、読んでいて爽快になるような類の話ではないかも知れません。



しかし、『孫子』にあるように

「彼を知り、己を知れば、百戦あやうからず」

「彼を知らず、己を知れば、一勝一負す」

「彼を知らず、己を知らざれば、百戦ことごとくあやうし」

であります。

事実を事実として認識したうえで、いかに相手に負けぬようにするかが肝要というわけです。


ユングは、人間は放っておけば必ず優越感か劣等感に傾く、と言っています(我が家にある何冊かのユングの著書のどれかは忘れましたが、そう書いてあったと記憶しております)。

優越感も、劣等感も、事実誤認によって生じると私は考えています(これは前著で書きました)。

優越感は、自分以外の人を過小評価し、自分を過大評価するというように、事実を歪めて認識することで生じます。

劣等感は、自分以外の人を過大評価し、自分を過小評価するというように、これもまた事実を歪めて認識することで生じます。

要は、事実をできるだけ正確に把握することが肝要、ということになります。


嫌いであればこそ余計に、事実を可能な限り正確に把握しておくことが望ましい、と考える次第であります。

-----



一昨日(2月7日)、中国が今年1月、わずか1か月の間に1000億ドル(約12兆円)の外貨準備を失った、と欧米メディアが盛んに報じました。



例えばブルームバーグロイターです。


China's Foreign-Exchange Reserves Decline to $3.23 Trillion
中国の外貨準備、3.23兆ドルに減少

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-07/china-s-foreign-exchange-reserves-decline-to-3-23-trillion
Bloomberg, February 7, 2016


UPDATE 1-China FX reserves fall almost $100 bln to lowest since May 2012
中国外貨準備、ほぼ1000億ドル減少し、2012年5月以来の低水準に

http://uk.reuters.com/article/china-economy-reserves-idUKL3N15M037
Reuters, Feb 7, 2016


要は、中国からの資本流出でドル高元安の圧力が高まり、当局が元安を抑制するために、外貨準備(主にドル、米国債)を投げ売っている、というような話です。


一方で、ブルームバーグでもロイターでも、気になる記述があります(恐らく、多くの日本人があまり聞きたくもないようなお話です)


ブルームバーグ

China increased its gold hoard in January, raising its holdings to 57.18 million ounces at it looks to diversify its foreign-exchange stockpile.
中国は1月、金準備を5718万オンス(1778.5トン)に増加させた。外貨準備の多様化を図っているようだ。


ロイター
China's gold reserves rose to $63.57 billion at the end of January, from $60.19 billion at end-2015, the PBOC said.
They stood at 57.18 million fine troy ounces at the end of January, up from 56.66 million fine troy ounces in December.
人民銀行によると、中国の金準備は2015年末の601.9億ドルから635.7億ドルに増加した。
これは昨年12月の5666万オンス(1762.3トン)から1月末に5718万オンス(1778.5トン)に増加したことを意味する。



しかしながら1月の外貨準備の減少1000億ドルに比べて、金準備はたかだか34億ドルの増加に過ぎない、といえば確かにそうです。


というわけで、外貨準備を含む、人民銀行のバランスシートの項目別の増減(2015年1月→12月)を見てみましょう:



ScreenShot_20160209154052.png


一応、グラフも。

ScreenShot_20160209164354.png 

出典:中国人民銀行データから計算



昨年1月から12月にかけて、人民銀行の資産と負債は大雑把に言うと、

資産側:
・外貨準備(表中の「外貨」)が2.2兆元(38兆円)減少
・金準備が670億元(1.2兆円)増加

負債側:
・当座預金(表中の「その他預金金融機関預金」)が1.2兆元(21兆円)減少
・政府預金が1兆元(17.5兆円)減少

となります。





当座預金の21兆円減少は、マネタリーベースの減少、金融引き締めということになりますね。

もちろん、為替操作でドルを売り、元を一般市中銀行から買い戻す、ということでも元安の抑止となっているのでしょう。

ドル売り&元買い→買い戻した元を償却→マネタリーベース減で金融引き締め→金利上昇(?)→元安の抑止、ということでしょう。



一方、政府預金の17.5兆円減少は…。

資産側の「対政府債権」は変化なしですから、素直に読めば、外貨準備の減少の半分は、政府預金の引き出しとなっている、ということになります。

しかし、外貨準備は、通常は政府と中央銀行が保有する外貨建て資産の合計です。外貨準備が減り、政府預金が減っている、ということは、恐らく、政府から政府以外(民間、あるいは、国有企業)に渡っている、ということを意味します。

では、中央銀行→政府→政府以外に渡ったと思われる17.5兆円は何に使われたのでしょう?


恐らく、↓こういった目的でしょう






ギリシャ最大港民営化、中国国有海運の買収提案受け入れ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H03_R20C16A1EAF000/
日経新聞 2016/1/21


中国化工、シンジェンタ買収で当局承認得るためには
http://jp.wsj.com/articles/SB12572346946470444848304581519783260433052
ウォールストリート・ジャーナル 2016 年 2 月 4 日


シカゴ証取、中国の投資会社が買収
http://www.sankei.com/economy/news/160206/ecn1602060018-n1.html
産経新聞 2016.2.6


全世界の国境越えたM&A総額、中国企業主導で06年以来の高水準
http://jp.reuters.com/article/m-a-data-idJPKCN0VE18X
ロイター 2016年 02月 5日


少し上のほうの私のツイートの引用(ブルームバーグ記事参照)で

「利益より資源確保優先の姿勢だが株価下落は絶好の機会と捉える」

とあります。中国政府、習近平政権は経済はカネではなくモノが足りるかどうか、という経済の本質をよくよく分かっている(かも知れない)という認識を持って警戒すべきものと私は考えます。

「中国は崩壊する、だから大丈夫」というのでは、認識が少々甘過ぎるのではないか、というのが私の意見です。


最終的に中国の戦略が成功するかどうかは別です。


中国が転んで崩壊したならば、中国は日本にとって、まるで北アフリカや中東のように、難民問題の根源となり、脅威となるでしょう。

一方、中国の世界的買収作戦が奏功すれば、日本にとってやはり脅威となるでしょう。

どちらに転んでも、脅威であり、脅威の種類が変わる、というわけです。


さて、

仮に「中国の世界的買収作戦」が成功するとすれば、中国の狙いは、今後、世界的暴落やそれによって生じるかもしれない混乱期において、カネはどうでもよいのでモノを確保することを狙うものでしょう。

カネよりもモノ、です。

金準備をせっせと増やしているのもその一環と思われます。



そして近年の中国は、世界最大の産金国になっています:

Chinese gold production surges
中国の金産出量、急増

MineWeb, 12 August 2015
http://www.mineweb.com/articles-by-type/analysis/chinese-gold-production-surges/

昨年(2015年)は上半期で228トン算出したとのことで、単純には年間450トン程度かと思われます。


次に、

中国の需要は2013年の記録を更新?― ペイパーゴールドと現物ゴールド
http://goldnews.jp/column/ikemizu/entry-3944.html
池水 雄一 スタンダードバンク東京支店長 2015年11月20日

によると、
  • 上海黄金交易所(SGE)の現物引き出し量(11月2週までで2210トン)などから考えると、中国の2015年の金需要量は2600トン(全世界の金鉱山の産出量80%相当)となり、2013年を上回りそう
(中国の官民合わせた1年の需要が2600トンということで、公式の中国の金準備1700トンを上回ってしまってうことになります)

  • 現在ゴールドの価格はComex(米NYの商品取引所) での先物取引で決められているといっても過言ではありません。
 ただこれは現物を伴わないいわゆるペイパー取引であって、現物の数量をベースに考えると、200倍以上のレバレッジがかかった計算になります。 そのため、実際の現物がベースであるアジアと現物の伴わない、つまり価格だけの取引であるニューヨークのギャップは相当大きなものがあります。
 つまりComexからこれだけの現物の引き出しがあるということは、誰かが現物を集めているということになります。投資家のペイパーゴールドの売りによって、現物の価格も下がっており、アジア勢は逆にこの低い価格で買えるのでは、と活発にゴールドを買っているのです。
 このペイパーゴールドと現物ゴールドのギャップはどこかで訂正されるはずです。先物投資家の売りによって実需とはかけ離れた安い価格になっているとすれば、その是正はいつか必ず入ってくるはずです。」

とのことです。

で、昨年来下がり続けていた金価格が昨日、7か月ぶりに1オンス1200ドルを一時的ながら回復しました:





いざというとき、習近平政権が金準備を最大限活用するシナリオも想定されます。
正式な公的準備だけでなく、おそらく国有企業などでも密かに蓄えられている民間備蓄も、です(国有企業の外貨資産・金準備は、公的外貨準備には算入されません)。もしかすると中国当局は、墨俣の一夜城ばりに、いきなり膨大な公的金準備を発表する可能性もあります。



あと、中国の金準備に関しては、昨年6月の拙ブログもご参照ください:

中国、金本位制を検討中?――米投資情報サイトTheStreetでブルームバーグインテリジェンスの金属・鉱山調査部長「この動きは大勢を一変させ得る」
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-663.html
2015/06/27




日本では、日銀、年金基金(GPIF)、ゆうちょ銀行、簡保などが日本株を買いあさっている。
が、目的は株価維持だけでなく、
『異次元大恐慌』において外国資本から日本企業が買収される確率を、未然に減らしている、
という目的もあって欲しいと願う今日この頃


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689:資本主義の権化というべき、代表的超巨大金融機関、ゴールドマンサックスが資本主義に疑義

2016/02/04 (Thu) 16:07
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 2月4日 発売予定
※「配本2月4日」ということで、明日5日には店頭に並ぶのではないかと思います



ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


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今回は、↑の新著で提示しています、

資本主義でも、共産主義でも、民主主義でも

 ない、異次元な新時代の幕開け」



に関連して、ブルームバーグ(英語)で興味深い記事があったので、そのご紹介です。



※なぜか、日本語版ではまだ、ないので、一応、大雑把に全訳しておきます。





Goldman Sachs Says It May Be Forced to Fundamentally Question How Capitalism Is Working
ゴールドマンサックスは、資本主義がいかに機能するかについて、根源的な疑義を持たざるを得なくなるかもしれない、と言っている

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-03/goldman-sachs-says-it-may-be-forced-to-fundamentally-question-how-capitalism-is-working

The profit margins debate could lead to an unsettling conclusion.
利益率についての議論は、落ち着きどころのない結論となりそうだ

February 3, 2016
Joe Weisenthal, Bloomberg


One of the most heated debates among investors is the question of whether corporate profit margins can maintain their elevated level, or whether they will inevitably revert to mean.
投資家の間で、もっとも熱している議論のひとつは、企業の利益率がその高い水準を維持できるかどうか、あるいは、それが平均的水準に回帰することが避けられないかどうか、についてのものだ。

Here's a quick look at S&P 500-stock index profit margins, for example, going back more than 25 years. They remain high by historical standards.
例として、過去25年超におけるS&P500株式指数の利益率を示す(記事本体のグラフ参照)。利益率は、これまでの基準からすれば、高いままである。

A new note from Goldman Sachs Group Inc. analysts led by Sumana Manohar looks at the bull and bear arguments for the profit margins debate.
スマナ・マノハールに率いられたゴールドマンサックスのアナリスト集団が公表した新しいノートには、利益率に関する強気と弱気の議論が見受けられる。

Manohar argued that profit margins have expanded, thanks to four key trends: strong commodities prices, emerging market cost arbitrage (companies making things more cheaply in emerging markets), demand growth from emerging markets, and improved corporate efficiency driven by the use of new technology. Continuing one of its major analytical themes of recent months, Goldman also noted that the market has rewarded companies that have undertaken mergers and share buybacks, as opposed to companies that have invested internally, further bolstering margins.
マノハールは、利益率は4つの主たるトレンドによって拡大してきたと主張する:
・強いコモディティー(商品・原材料)価格
・新興市場におけるコスト裁量取引(企業がモノをより安価な新興市場で製造)
・新興市場からの需要拡大
・新技術の利用による企業効率の改善

ゴールドマンサックスは、最近数か月の主要な分析テーマの一つを継続してきたが、市場から儲けを得て利益率を増強したのは、内部で投資をしていた企業ではなく、合併や自社株買いをしていた企業であった。
(廣宮注:恐らく、まじめに設備増強などの実物投資をしていた企業があまり儲かっておらず、株価がリーマンショック後において長期的上昇を始める前の時期に合併や自社株買いをしていた企業だけが、株価上昇の恩恵を受けている、というような意味と思われます)


So will profit margins inevitably roll over?
となれば、利益率が上昇から反転することは、避けられないのだろうか?

Goldman went through both sides of the argument. On the bull side, the bank said that ongoing consolidation in industries, cost deflation, and tighter purse strings help keep a floor under margins. Ultimately though, it found that the above trends, coupled with weak demand and general industrial overcapacity, mean that margins are likely to come down.
ゴールドマンサックスは両方の議論を展開した。
ひとつは、強気側である。ゴールドマンサックスは、継続的な産業の統合、コスト下落、財布のひもの引き締めが、利益率の底固めを助ける、としている。しかし最終的には、需要の弱さと全般的な産業の過剰生産能力を伴って、利益率が落ち込みそうであることを見出している。

But what if margins stay elevated? That too is possible, and its implications could be unsettling.
しかし、もし利益率が高い状態を続けたら? それもまたあり得るが、それが意味するところのものは、落ち着きどころのないものとなり得る。

Goldman wrote: "We are always wary of guiding for mean reversion. But, if we are wrong and high margins manage to endure for the next few years (particularly when global demand growth is below trend), there are broader questions to be asked about the efficacy of capitalism."
ゴールドマンサックスは、「我々は常に平均への回帰について警戒している。しかし、もし我々が間違っていて、高い利益率が(特に、世界的需要の伸びがトレンドを下回る中で)今後2、3年続くなら、そこには、資本主義の有効性に関する広範囲の疑義が生じることになる。

In other words, profit margins should naturally mean-revert and oscillate. The existence of fat margins should encourage new competitors and pricing cycles that cause those margins to erode; conversely, at the bottom of the cycle, low margins should lead to weaker players exiting the business and giving stronger companies more breathing space. If that cycle doesn't continue, something strange is taking place.
言い換えれば、利益率は自然に平均に回帰すべきであり、(上振れしたり下振れしたりという形で)振動すべきものである。高い利益率の存在は、新規の市場参加者の参入を促し、価格のサイクルがその利益率を侵食するはずである。逆に、価格サイクルが底にあるときは、低い利益率によって弱い市場参加者が退場させられ、強い企業により多くの生息余地が与えられなければならない。もしそのサイクルが継続しないのであれば、なにか奇妙なことが起こっている、ということになる。
(廣宮注:コモディティー価格が大幅に下落し、世界的に需要が減退し、モノの価格が下落しているのに、利益率が高いままというのは訳の分からん現象が起きている。というよりは、上のほうに書いてあったように、需要減退の中で、企業がモノを作って儲けるということではなく、合併や自社株買いなどの金融取引で儲けているという状況がなぜか延々と続いている、という訳が分からん現象が起きている。これは、資本主義の原理が働いていないということで、おかしなことだ。ということですかね)

Needless to say, it's not every day you see a major investment bank say it might have to start asking broader questions about capitalism itself.
言うまでもないが、資本主義そのものに広範囲の疑問を投げかけなければならない、などと大手投資銀行が言い始めるようなことは、毎日のように起きることではない。


-----



 ゴールドマンサックスという、

 資本主義の権化のような巨大投資銀行が

 資本主義に疑義を呈するとは驚いた!


 というか、

 金融屋が、ほかの業種の企業に

 『お前ら金融じゃなく、モノ作りで儲けろや!』

 と述べている(ように見える)ことについても、

 広範囲における疑義を呈するかも


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688:新著『異次元大恐慌』の目次です--「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」

2016/02/01 (Mon) 15:34
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当面、ツイッターのみ更新し、ブログ更新はどうしてもツイッターでは表現しきれない重要なニュースがあったときだけ、というようにする方針です。

※私のツイッターは、当ブログのPC版の左上に表示しているツイッター窓で見て頂くか、「twitterでフォローして下さい」ボタンを押してツイッターを開いてみて下さい。





※今回は、2年ぶり新著のご案内です。


 2月4日 発売予定


ijigen-hyoushi.png


『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊




ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。





では、以下に目次の項目を掲載します:


『2016年、異次元大恐慌が始まる』

目次

第1章 国家を危機に陥れる、「経済の根本はカネ」という誤解」

経済成長=実質GDPの増加=モノが増えること

カネの価値を支えるのはモノである

国の借金を支えるのも、カネではなくモノ

基本原理:政府の支出(赤字)は民間の収入(黒字)

応用原理:ある国の経常黒字 = 他の国の経常赤字

経常赤字:危険な香り

「政府の赤字」よりも「民間の赤字」が危ない

「対外債務」と「国内債務」と「通貨発行権で対応できる債務」

「経常赤字」+「通貨発行権で対応できない債務」:最悪の組み合わせ

「二重に安全」の日本、将来も安全でいるためには?


第2章 「国の借金」への過剰な恐怖で停滞する日本

国の借金問題の本当の弊害

世界一、政府支出を増やしてこなかった日本

本当の危機は「盛んに物資を作る」ための投資が増えていないこと

破綻とその後の回復

日本:敗戦直後「ハイパーインフレ」の実相

日本:敗戦とハイパーインフレからの復興

「国の借金」への恐怖:心理学的考察

「格差」を助長する「国の借金恐怖症」と「金融緩和依存症」

「国の借金」問題と税:「経済の安定化」と「格差の是正」

消費税の意義:国際的な租税回避防止の一環=国家主権の強化


第3章 「世界大恐慌2.0」前夜の世界経済


世界経済の現状:2015年秋時点、既に停滞もしくは景気後退入り

貿易:先進国は4年以上前に、新興国も1年以上前にピークアウト

電力量、貨物輸送量で見ると中国のみならず日米欧も景気後退

恐慌前夜:「世界的な量的緩和の限界」でも財政拡大しない各国政府

アベノミクスの限界:「異次元緩和」の数値的評価

世界的金融緩和で蝕まれた世界経済

過剰な「金融緩和」で貧乏人がより一層貧乏になったアメリカ


第4章 「世界大恐慌2.0」後の世界:想定シナリオ


「世界大恐慌2.0」に至る政治の潮流――800年ぶりの転換期

現在は800年の流れの転換期

米国覇権の凋落=民主主義・資本主義の退潮

米国覇権の凋落は「TPP」、「カトリック」、「タイの軍政」で占える

「権力構造大転換」の手段としての銀行破綻+ペイオフ

金本位制に向かう世界

中国。崩壊か?それとも中央集権強化か?

ロシア。帝国は復活するか?

欧州。移民問題で崩壊か?それとも軍事政権化か?

日本。戦後体制は一新されるか?


おわりに:「世界大恐慌2.0」後の経済――資本主義でも共産主義でもない「第三の道」




最後に、↓私が考案しました、ポップの案です

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『2016年、異次元大恐慌が始まる』

≪著者からのメッセージ≫

経済で最も重要なのは
1. カネではなくモノが足りているか
2. 貧富の格差が許容範囲内であるか
の2つだと、私は認識しています。

本書ではこの認識をベースに、
「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の到来」
という、類書とはかなり違った、独自の未来予測を提示しています。

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 大恐慌≠この世の終わり

 大恐慌=新時代の幕開け

 か!?


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