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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
 お問い合わせは当ブログのメールフォーム(下の方にあります)やコメント欄(内緒設定もご利用ください)や、ツイッターのダイレクトメッセージをご利用ください。

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294:自民党VS民主党[経済政策比較] ②

2009/01/30 (Fri) 23:12

【3】定額給付金の効果

積極財政・景気対策をしようとすると、すぐ「バラマキ」マスコミもこぞって批判を始めるが、
「バラマキ」が全くの無意味ということはない。

例えば、
与党の「定額給付金2兆円」の場合。

この「給付金」は、それ自体が公共事業とは違って「生産活動」を伴わないので
GDPの計算には入らない

しかし、
この金額だけ国民の金融資産が増えたり借金が減ったりする=国民の純資産が増える
ので、
その分だけでも意味がないということにはならない。

また、
この給付金の使い道については共同通信の電話調査(東京新聞2008年11月11日 朝刊に掲載)で

・「生活費」50.3%
・「娯楽費や高価な商品の購入」16.9%

という結果が出ている。

この調査通りになると仮定すると合計67.2%が消費に回ることになる(※1)。

※1.
最近の日経ネット調査でも「消費者の約6割が買い物やレジャーなどの消費に使うと考えている」となっています(日経ネット09年1月29日)
これ(67.2%)と国全体の消費性向として07年度実績の57%を用いて乗数効果を計算すると

2兆円×0%+2兆円×67.2%+2兆円×67.2%×57%+2兆円×67.2%×57%2+・・・
↑ここで0%を掛けるのは、
    最初の2兆円(政府→国民への支給)は単なるお金の給付で生産行為ではなく、
    価値を生まない、つまり、GDPの計算に含まれないため。
=2兆円×67.2%×1/(1-57%)
2兆円×1.56倍
=3.1兆円

名目GDP押し上げ効果が期待できる(※2)。

※2.
定額減税はいわば所得税の減税です。内閣府経済社会総合研究所の短期「短期日本経済マクロ計量モデル(2008年版)」によれば、名目GDP比1%の所得税減税(毎年継続)による名目GDPの押し上げ効果は
1年目 0.25%  
2年目 0.80%
3年目 1.08%
で、単年度だと、なんと乗数効果は0.25倍にしかならないことになります。

ということは、
2兆円なら2兆円×0.25=0.5兆円しか名目GDPは増えないことに。
それでも使われない部分は貯金などの形で国民資産の増加になるのですが。

でもこれだと、消費性向(r)は
定額給付金のうち「r」の割合だけ使われ、その後は国全体の消費性向57%でお金が循環すると仮定すると、

r×1/(1-0.57)=0.25
⇒r=0.108

で、国民は平均でもらったお金のうち10.8%しか使わないという想定になります。

では、先ほど計算した1.56倍は大げさか?ということになりますが、そんなことはないと思います。

というのは、
通常の所得税減税では、所得税を払っている人、つまり、課税最低限以上の所得のある人だけしか恩恵がりません(夫婦子2人の給与所得者なら所得税の課税最低限は325万円[財務省])。

と言うことは、
所得のうち消費に回す割合の高い低所得者層に対しては、減税の効果は皆無となります。
それゆえ、
通常の減税では、消費性向は低くなる=乗数効果が小さくなると考えられます。

しかし、
定額給付金は所得に関係なく全世帯に支給されるので、
消費性向はもっと高くなる=乗数効果は高くなるでしょう
(前述のアンケート調査のように6~7割程度ではないでしょうか)。

【4】与党の「生活対策」(2008年10月30日)では規模は不十分

ただし、名目GDP
平成20年度第2四半期年額換算前年同期比マイナス4.3兆円
第3四半期 マイナス10.5兆円
になっている中で、
真水5兆円(※3)で
しかも単年度のみの経済対策では
乗数効果を入れてもGDPのマイナスをある程度緩和するくらいにしかならない
と考えられる。
しかも、
経済対策の実施時期がずるずる遅れてしまっている点は非常に問題である。

※3.
その後、政府の追加経済対策の「真水」規模は12兆円まで増えて来ていますが、平成20年第4四半期以降、GDPの落ち込みはそれ以上になってきそうなので、これでも物足りない感があります。なお、その12兆円のうち、この記事を投稿した時点で国会で成立しているのは4.8兆円です。

【5】民主党の政策の方向性は評価に値するが…

一方、
民主党の「経済・金融危機対策」は真水の金額を明瞭にしていない点が問題であるが、

とりあえずは
4年にわたって継続的に積極財政を行おうとしている点は高く評価できる。

また、
「子ども手当て」や「後期高齢者医療制度の廃止・医師不足解消」など、
カネを使ってこの国をどういう方向に持って行きたいかがある程度明らかになっている点も好ましい(※4)。

ただし、
民主党案が有効かどうかも、結局真水がいくらになるかに左右される
ということを指摘しておきたい。

※4
・医療重視、社会保障費削減は止めるというのは、国の借金が問題ないという前提の中では、
 全く正しいと言えます。
・また、「子ども手当て」については、「国債を刷れ!」の中で、
  ・子どもの「貧困」はその子自身の責任ではありえない。
  ・「貧困」で子どもの教育機会が奪われれば、潜在的に能力の高い人材が
   埋もれたままになって、将来、国全体の利益が損なわれかねない
  ・子どものいる世帯は消費性向が高いので、「子ども手当て」は乗数効果
   が高くなることが期待でき、よって経済合理性が高いと考えられる
 のような内容を書きました。
上記のような観点で、民主党の政策の方向性は好ましい、というわけです。
 



〔追記次項① 自民・民主 経済対策の最新情報〕

自民党民主党、それぞれ景気対策について具体的な内容を簡単にまとめた「チラシ」がありますので、ご参考までにリンクを:
自民党チラシ(pdf)
民主党チラシ(web)

また、
景気対策の財政出動の規模(「真水」)について最新情報

自民党の12兆円に対し、

2月1日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」
民主党の鳩山幹事長「それでは全く足りない」

のように発言されていました。

ということは、民主党の考えている真水は12兆円を超えていることになりますね。

「結局、なんぼやねん」ということは、民主党のホームページを見てもさっぱり分からないのですが、真水の規模は大きいに越したことはありません!

〔追記次項②〕 求む「対立を乗り越える柔軟なリーダー」
アメリカではオバマ大統領が、
・予備選であれだけ激しくやりあっていたヒラリー・クリントンを国務長官に指名
・米国史上で初めて民主党大統領として共和党の閣僚(国防長官)を留任
といった具合に、
国難にあって、鮮やかなまでに対立を乗り越えるようとする姿勢を打ち出しています。

日本に今望まれるのは、対立を乗り越えていけるような、柔軟に事態に対処できるリーダーであるように思うのですが、いかがでしょうか。

犬猿の仲だった薩摩藩と長州藩の間を取り持って薩長同盟を成立させた坂本龍馬のような、調整力に長けた人物が…



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295:自民党VS民主党[経済政策比較] ①

2009/01/30 (Fri) 18:58
この記事は、紙幅の関係で「国債を刷れ!」に掲載できなかった部分です:


08年11月時点での比較なので、若干古いネタ'''なのですが、
主なテーマは
・評判の悪い定額給付金の経済効果やいかに?
・金額はさておき、お金の使い方の中身は自民と民主どちらが良さそうか?
で、このテーマ自体はまだまだ新鮮なネタであると思います^^。

#ただ、最も重要なのは

与党も野党も中身はともかく、一番注力すべきはお互いに対立を乗り越えて、大規模な経済対策を速やかに実行に移すこと

であるように思う次第ですが…

政府の2次補正予算は「衆院優越規定」で1月27日に一部だけ成立しましたが、定額給付金その他の財源についてはまだもつれ込みそうです(日経ネット記事)。

(今回の記事は長いので①と②に分けて掲載します)


自民党と民主党の経済対策比較(2008年11月時点)

※ここでは、
「無駄を省いて捻出した財源での経済対策」や、
「貸付金・融資など政府があとから回収するような金額の支出」
ではなく
政府が純粋に費用的な支出を増やすか、減税により民間の支出を促す
「真水」の経済対策
つまり、積極財政政策のみに焦点を当てる

というのは、
無駄を省いた分を他の支出項目に付け替えたり、貸付金を増やしたりするだけでは、政府支出の合計額は増えないし、それでは政府支出と民間支出と純輸出の合計であるGDPも基本的には増えないからである。

【1】自民党・公明党(与党):「生活対策」(2008年10月30日)
・①定額給付金2兆円
②中小・小規模企業等支援対策0.5兆円
③地域活性化対策0.8兆円
を含む真水の歳出増加が5兆円(単年度のみ)


財源は霞ヶ関埋蔵金。

 赤字国債に依存しないこととし、
 そのための特例措置として、
 平成20年度における財政投融資特別会計から
 国債整理基金特別会計への繰入れを停止するなど
 財政投融資特別会計金利変動準備金の活用等を行う

となっている。

ここで金利変動準備金とは

財政投融資の利ざやによる利益の積立金

である。

これを「国債整理基金特別会計」に繰入れないというのは、

財政投融資特別会計の金利を国債の返済に回さないという意味。


つまり、

いわゆる霞ヶ関埋蔵金を国の借金を減らすのに使うのを止めて景気対策に回す

ということになる。


これでは結局政府の純負債は増える方向になるので、
赤字国債の発行による景気対策と本質的には同じである。

もちろん、それ自体は問題ではなく、支出を増やすことに意義がある。


【2】民主党:「経済・金融危機対策」(2008年11月5日)
・①子ども手当て4.6兆円
②農家戸別補償金1兆円
 ③道路特定財源の暫定税率廃止2.6兆円
 ④高速道路の無料化2兆円
 ⑤後期高齢者医療制度の廃止・医師不足解消1.9兆円などで、

・予算規模は平成21年8.4兆円、22年と23年は14兆円、24年は20.5兆円と段階的に増額する。

・ただし「真水」の部分は霞ヶ関埋蔵金を毎年6.5兆円使う部分のみの模様
 (「真水」がいくらかは明示されていない)

・財源は霞ヶ関埋蔵金と、それ以外は「無駄」な支出の付け替え
(公務員の人件費カットなど)になっている。


なお、民主党の「埋蔵金」活用は、

外為特会の毎年の利益相当額
(財務省の「平成15年度以降特別会計項別歳入歳出決算、予算」を見ると、近年では毎年3.5兆円程度

などを充てるとのこと。


実は平成20年度予算では、

外為特会からは1.3兆円を国の借金返済に回すことになっているので、

この部分を経済対策に使うとすれば結局は赤字国債の増発と変わらない


また、

埋蔵金は国の保有する資産であり、

この資産をどんな形であれ使うということは、

結局は国の純負債を増やす方向になる。

ということであるので、自民党の財源と本質はさほど変わらない。


自民党民主党

互いに相手の政策について「財源がない」とか「バラマキだ」とかいった批判

をしているが、

本書(「国債を刷れ!」)で繰り返し述べて来たように財源がないということは全くない。



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