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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
 お問い合わせは当ブログのメールフォーム(下の方にあります)やコメント欄(内緒設定もご利用ください)や、ツイッターのダイレクトメッセージをご利用ください。

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573:#TPP 新定義:「巨大国際企業という既得権益の既得権益による既得権益のためのルール作り」。米国“既得権益”CEOは年収10億円⇔日本は瀕死の“危篤権益”

2012/12/21 (Fri) 12:03
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その他詳細な内容紹介:
1.“章別の内容紹介”→こちら
2.“5つのことわざで分かる、簡単マクロ経済入門”→こちら







日本のTPP推進派の皆さんの中には、「JAなどの“既得権益”をぶっ潰すため」にTPP推進を唱えられている方がいらっしゃいます。
また、TPP推進を明確に謳う政党の皆さんも「既得権益ガー」とおっしゃっています。

しかし、既得権益の権化というか総本山というイメージのあるJAや建設業界は、私に言わせれば年々衰退を続ける“危篤権益”です。一方で、アメリカでTPPを推進する主としてアメリカに本拠を置く国際的巨大企業のCEOは年収10億円が当たり前のスーパーリッチ。

つまり、日本のTPP推進派(の一部)の皆さんは、「日本の死にかけの既得権益(実際には“危篤権益”)をぶっ潰して、アメリカのスーパーリッチな既得権益の権益を拡大しよう!」と叫んでいるようなものです。


まずはプレジデント誌のコラムから一部引用:

―――

堀田佳男のオバマの通信簿
米金融大手のCEOの年収は、いまだに社員の300倍
http://www.president.co.jp/pre/special/barackobama/12395/
2009年9月18日

…専門家たちの中には、金融機関のカネへの貪欲な執着さからくるシステムの機能不全はこれからも避けられないとの意見がある。それは主に2つのことによって端的に示されている。


 一つはAIGやJPモーガン・チェイス、バンク・オブ・アメリカといった金融大手CEOの収入が、相変わらず10億円以上に達していることだ。金融機関トップ20に席をおく役員100人の2008年の平均収入は1380万ドルで、07年の1910万ドルよりは下がったものの、一般市民の常識から大きくかけ離れている。
 本来であれば、民間企業なので役員がいくら稼ごうが勝手ではある。ただし、それは財務状況が健全で、政府から支援を受けていない場合である。昨秋、政府からの救いの手がなければ、多くのCEOはすでに業界から姿を消していても不思議ではない。
 たとえばAIGトップはまったく懲りていない。AIGは昨年、政府から700億ドルもの税金を投入された企業である。本来なら潰れていてもおかしくないが、CEOのロバ―ト・ベンモシュ氏は1050万ドルを手にしている。
 前CEOのエドワード・リディ氏が反省して年収1ドルで仕事をしたのがウソのようである。「すでに交わした契約だから」という言い訳は、業界の中だけでしか通じない戯言である。というのも、彼らの年収は一般会社員の平均年収の318倍だからだ。30年前は30倍に過ぎなかった格差が広がるばかりである。
 格差だけならまだしも、税金が使われているだけに、市民からの嫉妬と憤りは収まらない。金融機関でも製造業者でも、一般市民の声を無視したところで長期的な経営は立ち行かないことを理解すべきである。自分たちだけが旨味を感受できればいいというミーイズムがまん延している。

 もう一つの機能不全は、アメリカ政府が肥大化した金融機関と金融市場を統制できなくなっている点である。


―――

堀田氏が書いているように、

「本来であれば、民間企業なので役員がいくら稼ごうが勝手ではある。」

と私も思います。


しかし、これまで当ブログでご紹介しました米国におけるTPP推進プロセスと、上記のAIGのCEOが、税金で救済されているのに「1050万ドル」、つまり約8億円の収入を手にしようとしている「ミーイズム(自己中心主義)」が何とも重なって見えてしまいます。

たとえば、アメリカのワイデン上院議員が、大企業には情報を公開されているにもかかわらず、貿易交渉の監督責任がある上院財務委員会の交易・関税・国際競争の小委員会の委員長である自分にはまったく公開されていないと指摘がありました。


"The majority of Congress is being kept in the dark as to the substance of the TPP negotiations, while representatives of U.S. corporations – like Halliburton, Chevron, PHRMA, Comcast, and the Motion Picture Association of America – are being consulted and made privy to details of the agreement,” said Wyden.
ワイデン議員は、「国会議員の大多数は、TPPの実体に関して暗闇の中に置かれたままだ。しかし、一方でハリバートン(石油)、シェブロン(石油)、PhRMA(米国研究製薬工業協会)、コムキャスト(ケーブルテレビ、インターネット)、アメリカ映画協会といった米国企業の代表には、相談を持ちかけ、TPP協定の詳細についての機密を教えている」と語った。

以前のエントリーでご紹介したロシア・トゥデイの記事の↑この箇所は、ワイデン上院議員の上院の公式HPに掲載されている大統領宛て書簡(2012年5月23日)からの引用です。


また、これに関連して別のエントリーでアメリカの「過激保守」雑誌のNew Americanの記事からの引用で、ワイデン議員のスポークスマンが

“An advisor at Halliburton or the MPAA is given a password that allows him or her to go on the USTR website and view the TPP agreement anytime he or she wants.”
「ハリバートン社やアメリカ映画協会(MPAA)の顧問は、USTRのウェブサイト上でTPP協定に関していつでもどんなことでも閲覧するためのパスワードを与えられている」

と語っていた話も紹介しました(大元の情報源はリベラル系のインターネット新聞Huffinton Postの記事)。


また最近、米共和党議員団の著作権ルール改正案に米ネットユーザー 熱狂するも、発狂したハリウッドのロビイストの圧力でわずか24時間で撤回という話があったこともご紹介しました。
この件は、あくまでも元の記事を書いたアメリカのネット・メディアの記者の推定ですが、まあこの見立ては特に間違っていないんじゃないかと思います。

そして、
米製薬業界がevergreeningと呼ばれる簡単なマイナーチェンジで特許期間を延長することをやり易くし、特許切れを利用する安価なジェネリック医薬品を作ったり売ったりすることを困難にするような圧力をかけている話も紹介しました。


―――――

【追加】国境なき医師団がEvergreeningについて解説している動画がありましたので貼り付けておきます:

'Evergreening' Drugs: An attack on access to medicines
医薬品の「エバーグリーニング」:医薬品へのアクセスに対する攻撃

20. Mar 2012


英語ですがかなり聞き取りやすく、分かりやすい内容です。
インドでは安価な医薬品を確保するため、Evergreeningを禁止する法律があるそうです。

この動画の紹介文:
Evergreening…sounds nice doesn’t it ? But evergreening is what drug companies do when they want to increase profits and it leaves people in developing countries without the medicines they need.
エバーグリーニング…良さげなものに聞こえませんか? しかしエバーグリーニングは製薬会社が彼らの利益を増やしたいためにするものであり、それは発展途上国の人々が必要な医薬品を手に入れられないようにすることです。


ちなみに、ノーベル平和賞をとったこともあるこのフランスの「国境なき医師団」、Evergreeningに関連してスイスの巨大製薬企業Novartisノバルティスを名指しで批判しているようです。
http://www.msfaccess.org/STOPnovartis/


―――――


さて、以上のように、アメリカにおけるTPP推進は、オキュパイ運動の人々が口にしていた

“Our government is being bought by corporations,”

「俺たちの政府は企業に買収されている」

という状態がピタリと当てはまるような様相を呈しています。


私は、大企業がカネを儲けてこれからも繁栄することを歓迎しています。

しかし、TPPのような強引な“既得権益拡大ルール”はいけません。

これによって格差はますます拡大し、少数の大金持ちとその他大勢の貧乏人という状況がますます進行してしまうでしょう。

「自分以外みんな貧乏人」になったとき、誰があなた方の会社の商品を買うのですか?という話なのです。

やり過ぎると結局は長期的に誰も儲からない、みんなで一緒に衰退するという憂き目に遭うでしょう。

何にしても過ぎたるは及ばざるがごとしです。超長期的な繁栄のためには、ほどほどが一番良いのですよ。




さて、

それから、巨大農産企業であるモンサントがバーモント州議会に圧力をかけて遺伝子組換え食品の表示に関する規制の議会決議を延期させる、ということもありました。


さて、そのモンサントのCEOの年収はいくらか、というと、英語Wikipediaによれば、モンサントCEOのHugh Grant紙の2009年の年収は…

In 2009, Grant earned a total compensation of $10,803,757


ということで、1,080万ドル、日本円で8億円超ですね。

私はこの方たちが高い収入を得ることに対して文句を言いたいわけではありません。

しかし、こんだけ儲けてるんだから、遺伝子組み換え表示を義務化するくらいしても良いじゃないの、と思うのであります。



一方、日本の悪しき既得権益(?)の代表、JAはというとどうでしょうか?

例えば、「JA庄内たがわ」(山形県)の場合(2002年):

・代表理事組合長    年報酬 810万円
  他に全農理事(全農庄内・運営委員会会長兼務)の報酬があります。

・代表理事専務     年報酬 775万2千円

・代表理事常務     年報酬 729万6千円

・常務理事       年報酬 729万6千円


社団法人全国農協観光協会の場合、役員報酬規程(平成22年)により

第2 条 役員の報酬は年額報酬をもって全てとし、その額は次のとおりとする。
1.常勤役員
副会長理事 5,000,000 円
専務理事 14,500,000 円
常務理事 13,500,000 円

1500万円あたりが最高額、という感じでしょうか。



建設業はというと、例えば業界最大手の鹿島建設の場合、

平成23年度の財務諸表を見ると

役員報酬 441百万円
執行役員報酬 1,176百万円

ということで、合計16億円。
ここで「役員の状況」に記載されている役員・執行役員が65名(重複除く)です。
ということは、モンサントCEO二人分の報酬を65人で分け合っているということになりますが、一人当たり平均が2千5百万円となります。



ちなみに、2012年11月21日発表のプライスウォーターハウスクーパースによる日本の上場・非上場企業67社(外資系含む)対象の調査によると、会長、社長の平均報酬は6千万円ほどであり、全役位平均値が2800万円程度のようです。

鹿島は、建設業界最大手ですが、この「日本の平均」より少し低めとなっています。
建設業界最大手でもこの程度ということです。そして、JAはそれよりも遥かに低い水準ということになりますね。

一般庶民に比べたらもちろん「物凄い高収入」ということになるかも知れませんが、TPPを推進するアメリカの大企業の一人10億円が当たり前の状況に比べたら、どうでしょうか?


日本のTPP反対派は人数にモノを言わせて反対している一方、アメリカの推進派はカネにモノを言わせて推進、と言ったところです。さて、どっちが民主主義的と言えるでしょうか?



さて、
ここで国土交通省による大手建設業55社の調査を紹介します。

平成23年 建設業活動実態調査の結果

によると、この55社のうちの「総合建設業」つまりはゼネコンの従業員数は平成6年(1994年)から平成23年(2011年)の17年間で半減しています。15万人が8万人に減っています。

(↓クリックすると拡大表示されます)
建設大手従業員数推移



また、大手建設企業55社計の売上高は24.5兆円から12兆円に半減

(↓クリックすると拡大表示されます)
建設大手売上高推移



「国土強靭化で公共事業をやると土建屋だけが儲かる」という人々がいらっしゃいますが、その土建業界はもはや既得権益ではなく、瀕死の危篤権益という様相を呈しています。


また、JAに関しては、JAも地域組織や全国組織がいろいろあって一概には言えないかも知れませんが、専門職をやっていた職員がある日突然、共済のライフ・アドバイザー、つまりは保険の外交員に回されるということが頻発しているそうです。JAは役所ではなく民間組織であり、公務員のような安定した職業と思って入るのは大間違いなのだとか。

ちなみに、私の知人の親戚筋がJAに就職し、上記の共済の仕事に回されているそうです。ノルマがキツくて大変なんだそうです。

JAも建設業界も「美味しい汁を吸う既得権益」というイメージはあまり湧かないのが実態であると言えるでしょう。


「既得権益ガー」でTPP推進や公共事業反対をすることは、日本の危篤権益をぶっ壊し、アメリカのスーパーリッチな既得権益の皆さんを更にスーパーリッチにする片棒を担ぐことになりやしないか、心底から心配な今日この頃です。


「既得権益ガー」の皆さんは、日本の危篤権益叩きではなく、アメリカをはじめとする“国際的既得権益”叩きをすべきではないのかと思うのですが、いかがでしょうか?

なお、私はどちらも叩かなくて良いと思っています。最終的には共存共栄こそが肝要なのであります。

と、言いつつ…



 TPPとは、

 日本の“危篤権益”をぶっ壊し、

 巨大国際企業という本物の

 既得権益の既得権益による

 既得権益のためのルール作り

 ということか?



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