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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
 お問い合わせは当ブログのメールフォーム(下の方にあります)やコメント欄(内緒設定もご利用ください)や、ツイッターのダイレクトメッセージをご利用ください。

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639:ムーディーズ、日本国債格下げしつつ「民間部門の黒字が依然として財政赤字を十分に賄える水準」で国債金利急上昇のリスクは低い、とお墨付き

2014/12/02 (Tue) 12:05
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私は、格差拡大、それによる社会の不安定化の根本的原因は、

①国の借金に対する恐怖

②富を失うことに対する恐怖(=強欲)

という二つの恐怖だと考えています。

①の恐怖によって、各国は格差拡大による社会不安の増大を防ぎ、将来の生産能力不足を防ぐための投資を行うことができなくなってしまいます。また、この恐怖により、財政政策よりも金融政策に依存しがちになり、それは
国連開発計画の報告書によれば、金融の不安定化とさらなる格差拡大につながってしまいます。つまり、国の借金に対する恐怖(過剰な恐怖)を克服しない限り、これからも格差拡大は止まらず、各国の社会の不安定、世界全体の不安定はますます拡大してしまうでしょう。

②の恐怖によって、富裕層がますます富裕層により有利なルールを作ろうとして、資金を投じて政治家を支援し、それによってますます格差が拡大し、不安定化してしまう可能性があります。そうなると本来はその富裕層の皆さんの身を危険にされすことになるのですが・・・(それを身をもって示してくれたのが故カダフィ大佐と言えます)

恐怖とは本来、危険を回避するための生物が備えている防衛本能であり、生命の保存、種の保存のための機能であり基本的機能です。
しかし、上記の私の説明のとおりであるとするならば、その危険回避のための本能である恐怖によって、人類社会の危険がどんどんと高まっていると考えることができるでしょう。

よって、
これからの世界の安定、日本の安定のために、極めて重要と思えるのが、
「恐怖とは何か?どのようなメカニズムのものなのか?」、
「恐怖とうまく付き合い、この厄介な本能的機能を使いこなすにはどうしたらよいか?」
という問題と言えるでしょう。


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 「日本経済のミステリーは心理学でトロピカル」
 https://www.facebook.com/groups/1472415033007299/
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↑この本の「書評」を書いて下さっているブログの一覧はこちら










2か月ぶりくらいの更新です。

最近は情勢的にどうもブログ記事を書きにくくてあまり更新していませんでした…。

今後、治世に向かうか乱世に向かうか、と問われれば迷わず「乱世に向かう」と答えたくなる状況というのが当ブログで何度か書いている私の現状認識です。

それゆえに心理学的なものが致命的に重要になると思って上に紹介しました著書を執筆して出版に至った次第でありますので、私としてできる最低限のことはもうしてある、という状況であるとも認識しているところであります。


まあ、それはそれとして、本題です↓



ムーディーズの日本国債格下げが報じられ、世界中の株価が下落しているようですね。

それでメディア各社がこの国債格下げを報じていますが、そのなかで一番バランスの取れていると思われるのが意外にもNHKだったので、ご紹介:

-----
日本国債の格付け 1段階引き下げ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141201/k10013634691000.html
NHK NewsWeb 2014年12月1日

アメリカの大手格付け会社の「ムーディーズ」は、日本国債の信用度を示す格付けについて、財政赤字の削減目標の達成に不確実性が高まったことなどを理由に、「Aa3」としてきたこれまでの格付けを1段階引き下げ、上から5番目の「A1」とすると発表しました。

 発表によりますと、「ムーディーズ」は、日本国債の格付けについて、「Aa3」としてきたこれまでの格付けを1段階引き下げ、上から5番目の「A1」としました。
格下げの理由について、日本の財政赤字の削減目標の達成可能性や経済の成長戦略の有効性に不確実性が高まったことなどを挙げています。
 声明の中で「消費税率の引き上げ延期を発表したことで来年度予算案の編成が遅れ、財政目標を達成するための具体案が明らかになるのは来年の下半期になるとみられる」などとしています。
 ムーディーズが日本国債の格付けを引き下げるのは3年前の平成23年8月以来で、今後の格付けの見通しについては「安定的」だとしています。
 この格付け会社は、国内の投資家の国債に対する投資意欲は強く、民間部門の黒字が依然として財政赤字を十分に賄える水準にあるなどとして、国債の利回りが急上昇するようなリスクは「低いと考えている」としています。

消費増税延期がポイント
 日本国債の格付けを1段階引き下げたことについて、「ムーディーズ」で、日本国債を担当するトーマス・バーンシニア・ヴァイス・プレジデントは、記者会見し「消費増税が2020年度の基礎的財政収支の均衡を図るための主要な政策手段で、それが延期されたことがポイントとなっている」と述べました。
 そのうえでトーマス・バーン氏は日本国債の格付けについて「高い格付けだと考えており、日本国債は依然として大きな信用力がある。不安定な事態に遭遇するリスクは低いか、中程度に収まっていると考える」と述べました。

-----


ほうほう。

国内の投資家の国債に対する投資意欲は強く、民間部門の黒字が依然として財政赤字を十分に賄える水準にあるなどとして、国債の利回りが急上昇するようなリスクは「低いと考えている」

とは、なかなかよく分かっているじゃないですか、ムーディーズさん!


で、NHK記事で担当者のトーマス・バーンズ氏が今回の格下げは「消費増税延期がポイント」と記者会見で言ったことになっており、この記事では消費増税延期で財政再建が遅れるから格下げになったようなニュアンスが感じられますが、その当のバーンズ氏が責任者として書いたムーディーズの声明では、それよりも景気が悪くなって名目GDPが思ったほど伸びなかったことが格下げ要因としているように読めます。
 というのは消費増税が「少なくとも短期的に…経済再生を揺るがしている」とムーディーズの声明文にあるからです。

というわけで、ムーディーズの声明を見てみましょう。

「もっと構造改革だ!」とか「公的GDP比ガ~」というお約束な箇所もありつつ、「民間が強固なので当面は大丈夫じゃ」という感じで政府だけを見ず、民間の債務状況も評価した上で国全体を総合的に評価しているという意外な側面も見受けられます。民間もちゃんと見ている箇所は非常に興味深いところです。


以下、声明を全文引用しつつ、重要と思える箇所だけ部分訳します:

・・・と思ったら日本語訳のプレスリリースもPDFでありました:

https://www.moodys.com/researchdocumentcontentpage.aspx?docid=PBC_177743

そしたらこの日本語訳をコピペしたろか、と思ったらPDFがコピペできんようになっているので、
英文の下にPDFにある日本語訳を書き写してみます↓

-----

Rating Action: Moody's downgrades Japan to A1 from Aa3; outlook stable The document has been translated in other languages
日本の政府債務格付をAa3からA1に格下げ、格付け見通しは安定的
Global Credit Research - 01 Dec 2014
https://www.moodys.com/research/Moodys-downgrades-Japan-to-A1-from-Aa3-outlook-stable--PR_313476

Singapore, December 01, 2014 -- Moody's Investors Service today downgraded the Government of Japan's debt rating by one notch to A1 from Aa3. The outlook is stable.

The key drivers for the downgrade are the following:
格下げおよび安定的の見通しの主な要因は以下のとおりである。

1. Heightened uncertainty over the achievability of fiscal deficit reduction goals;
1.財政赤字削減目標の達成可能性に関する不確実性の高まり

2. Uncertainty over the timing and effectiveness of growth enhancing policy measures, against a background of deflationary pressures; and
2.デフレ圧力の下での成長促進策のタイミングと有効性に関する不確実性

3. In consequence, increased risk of rising JGB yields and reduced debt affordability over the medium term.
3.それに伴う中期的な日本国債の利回り上昇リスクの高まりと債務負担能力の低下

The A1 rating reflects the government's significant credit strengths, including a large, diverse economy with a strong external position, very high institutional strength and a very strong domestic funding base.
A1の格付は、規模が大きく多様な経済、強固な対外支払いポジション、非常に強い制度の頑健性、非常に強固な国内資金調達基盤を含む、極めて高い政府の信用力を反映している。

The stable outlook reflects the broad balance between upside risks including significant fiscal consolidation and a resumption of economic growth, and downside risks including intensification of deflationary pressures and loss in economic momentum.
安定的の見通しは、大幅な財政再建、経済成長の回復といった上方リスクと、デフレ圧力の上昇、景気モメンタムの喪失といった下方のリスクの双方を反映している。

The rating action does not affect Japan's Aaa foreign currency, local currency country and bank deposit ceilings. Those ceilings act as a cap on ratings that can be assigned to the obligations of other entities domiciled in the country.
今回の格付アクションは、日本の外貨建て・自国通貨建てカントリーシーリングおよび銀行預金シーリングAaaには影響を与えない。シーリングは国内の他の発行体の債務に付与される格付の上限となる。


RATINGS RATIONALE
格付理由

RATIONALE FOR DOWNGRADE

DRIVER 1: HEIGHTENED UNCERTAINTY OVER REACHING FISCAL TARGETS AND CONTAINING DEBT
理由1:財政赤字削減目標の達成可能性に関する不確実性の高まり

The first driver for the downgrade of the Japan government's debt rating to A1 is the rising uncertainty over whether the government's medium-term deficit reduction goal is achievable, and whether policy makers can overcome the tensions inherent in promoting growth while simultaneously stabilizing and reversing the rising debt trajectory.
日本の政府債務格付をA1に引き下げた第1の理由は、政府が中期的な財政赤字の削減目標を達成できるか否か、および政務の増大傾向を安定化ないしは反転させると同時に、成長を促進することに内在する緊張を克服できるか否かに関する不確実性の高まりである。

The Bank of Japan remains committed to monetary expansion, with some positive impact on core CPI inflation. However, while monetary expansion has boosted domestic aggregate demand to some extent, the consumption tax increase on April 1 2014 has exerted even more powerful downward pressure. At least in the short term, deficit reduction is undermining the growth revitalization objective of Prime Minister Shinzo Abe's economic policy strategy.
日銀は引き続き金融緩和を継続する意向であり、コアCPI上昇率にプラスの影響を与えている。金融緩和により国内の総需要は幾分高まったが、2014年4月1日の消費増税はそれを上回る下方圧力を与えるものとなった。少なくとも短期的には、財政赤字削減のための主要な政策が安倍首相の経済戦略である経済再生を揺るがしている。

The government's response, to announce a delay in the second step in the consumption tax increase, appears to represent a shift in policy towards stemming re-emerging deflationary pressures on economic growth and away from near-term fiscal deficit reduction. This strategy could have merits. In our view, the government's target of halving the primary deficit balance, excluding budgetary interest payments, by fiscal 2015 from its fiscal 2010 level will be difficult to achieve without more robust nominal GDP growth and hence improved buoyancy in tax revenues. In their absence, reaching the long-term target of a primary balance surplus by 2020 will be even more challenging.
政府の消費再増税延期の決定は、短期的な財政赤字削減から、経済成長に対するデフレ圧力の再発を阻む政策へのシフトを模索しており、その戦略には利点があると考えられる。利払い費を除く基礎的財政収支の赤字を2010年度の水準から2015年までに半減するという政府の目標は、税収の改善および名目GDP成長率の上昇なくしては実現が困難であろう。2020年までに基礎的財政収支を均衡させるという長期目標の達成はさらに厳しくなるだろう。

However, the strategy also poses risks to fiscal consolidation and, over the longer-term, to debt affordability and sustainability. Japan's deficits and debt remain very high, and fiscal consolidation will become increasingly difficult to achieve as time passes given rising government spending, particularly for social programs associated with a rapidly ageing population.
この戦略は、財政再建と、長期的には債務の負担能力および持続可能性にリスクをもたらすと考えられる。日本の財政赤字および債務は依然として極めて高水準にあり、政府支出、とりわけ急速な高齢化に伴う社会保障費が増大する中で、財政再建は時間の経過とともにさらに困難となる。

The government acknowledges that additional but as yet unidentified economic and fiscal reforms will be needed for Japan to achieve its primary balance target in the second half of this decade. But the postponement of the second stage of the increase in the consumption tax has resulted in the delay of the 2015 budget, and a concrete plan to meet fiscal targets is not likely to emerge until the second half of 2015. The trajectory of government debt, projected at 245% of GDP in 2014 according to the IMF, will only start to decline under the most favorable combination of economic and fiscal reforms, including tax and social security system reforms and total factor productivity improvements, an end to deflation and achievement of annual nominal GDP growth of more than 3.5%. Given current domestic circumstances and lackluster external demand for Japan's exports, achieving these conditions will be challenging.
日本が2015年度から2020年度にかけての基礎的財政収支の目標を達成するには、追加的な経済・財政改革が必要となることを政府は認識している。消費再増税延期により2015年度予算案の編成が遅れることとなり、財政目標達成のための具体案が明らかになるのは2015年下半期になるとみられる。IMFによれば、2014年の政府債務残高はGDP比で245%に達しており、税制・社会保障改革、生産性改善、デフレ終息、名目GDP成長率約3.5%以上を含む、経済・財政改革のベストな組み合わせの下でのみ、安定化ないし低下に向かうであろう。現在の国内環境、および日本からの輸出に対する海外需要の弱さから、これらを達成することは容易ではないだろう。


DRIVER 2: ECONOMIC GROWTH POLICY UNCERTAINTIES AND CHALLENGES IN ENDING DEFLATION
理由2:デフレ圧力の下での成長促進策のタイミングと有効性に関する不確実性

The second driver for the downgrade is the rising uncertainty over the government's ability to enhance medium term growth through structural economic reform -- the third 'arrow' of Abenomics -- success in which will be crucial to achieve fiscal consolidation. While some indicators suggest a pick-up in economic activity over the past year, potential economic growth remains low.
格下げの第2の理由は、経済構造改革を通じた中期的な成長促進(アベノミクスの「第三の矢」)を達成する政府の能力に関する不確実性の高まりである。政府が財政再建目標を達成するにはその成功は不可欠である。一部の経済指標は過去1年間で経済活動が改善したことを示しているが、潜在成長率は依然として低い。

GDP growth sharply contracted in the second quarter of this year following the introduction on 1 April of the first step of the consumption tax increase, to 8% from 5%. Output was also affected by adverse weather in the summer to some extent. And both real and nominal GDP contracted again in the third quarter of the year, putting Japan's economy in recession for the third time since global financial crisis.
4月1日に実施された消費税率の5%から8%への引き上げの後、今年第2四半期のGDP成長率は大幅に低下した。景気の悪化は夏の悪天候にもある程度の影響を受けている。また、今年第3四半期のGDPは実質、名目とも縮小し、日本経済は世界金融危機後3度目の景気後退に陥った。

Moreover the relapse of the GDP deflator, the broadest measure of price movements, into negative territory in the third quarter of this year highlights the difficult nature of ending more than a decade of deflation. Although the ratcheting up by the Bank of Japan of its quantitative easing policies in October may once again move the deflator back onto positive ground in the fourth quarter of 2014, the task ahead for economic revitalization and price reflation is looking more challenging than envisaged by Prime Minister Abe when he introduced his three-arrow economic policy package in March 2013.
また、物価変動を示す総合指数であるGDPデフレーターが今年第3四半期にマイナスとなったことは、10年以上に及んだデフレを終息させることが困難であることを示している。日銀が10月に量的緩和を拡大したことで、2014年第4四半期にデフレーターが再びプラスに転じる可能性はあるが、経済再生およびリフレに向けた課題は、安倍首相が2013年3月に三本の矢の経済政策を導入した当時より厳しいものとみられる

Looking further ahead, the most notable structural reform measure to be implemented to date is a reduction in corporate taxation beginning in fiscal 2015. The details have yet to be announced, and the implications for business investment are therefore still unclear. It is not yet clear what further measures the government will choose, or be able, to take to address the deep-rooted structural problems of Japan's economy, including broadening labor force participation, enhancing corporate governance and dealing with the challenges posed by demographic trends.
政府がこれまでに発表した今後の主な構造改革策として、2015年度の法人減税は詳細が不透明で、事業投資への影響は依然として不明である。労働参加率の向上、コーポレートガバナンスの向上、人口動態から生じる課題への対処の必要性など、日本経済の根底にある構造的な問題に対処するために、政府がどのような追加施策を選択・実行し得るかも依然として明らかではない。


DRIVER 3: EROSION OF POLICY EFFECTIVENESS AND CREDIBILITY COULD UNDERMINE DEBT AFFORDABILITY
理由3:政策の有効性および信頼性の低下が債務負担能力を低下させる可能性

The third driver for the downgrade is the potential implications of the first two drivers for the affordability and sustainability of Japan's huge debt load. Debt sustainability will rest on the continued willingness of domestic investors to provide funding at affordable rates for the government. This looks likely to remain the case as long as investor confidence is not undermined. The JGB market has been characterized by low and stable interest rates despite the exceptional rise in debt since the 1990s. And JGB interest rates have remained low and stable through a number of crisis episodes, including Japan's 1997-1998 financial crisis, the 2008 global financial crisis and the 2011 tsunami and Fukushima nuclear power plant disaster.
格下げの第3の理由は、日本の多額の債務残高の負担能力および持続可能性に対する最初の2つの懸念の影響である。債務の持続可能性は、国内投資家が政府に低コストで資金を提供する継続的な意思に依拠している。投資家の信認が損なわれない限りは、この状態は維持されるとみられる。日本国債市場は金利が長期にわたって低位安定を保ってきたという特徴をもつ。国債市場はまた、日本の1997-1998の金融危機、2008年の世界金融危機、2011年3月の東日本大震災および原発事故を含む数々の危機を経てもなお低位安定を維持してきた。

Nonetheless, the Bank of Japan's efforts to raise inflation to 2% may eventually put pressure on government bond yields and thereby raise government borrowing costs. Rising interest rates would increase expenditure and offset gains from revenue buoyancy. Rising uncertainty regarding the government's capacity to deliver on its policy objectives could raise yields without any commensurate rise in revenues. Either outcome would further undermine the government's ability to meet its fiscal deficit targets and reduce its debt burden over the medium term, and eventually start to undermine debt sustainability.
しかし、2%のインフレ目標に向けた日銀の政策により、いずれ国債利回りが上昇し、政府の借入コストが上昇する可能性がある。金利が上昇すれば歳出が増大し、税収増が相殺されることになる。さらに、政府の政策目標を達成する能力に関する不確実性が高まれば、利回りが上昇し、歳入増によって補うことが困難となる。こうした帰結はいずれも、政府が中期的に財政赤字の削減目標を達成し債務負担を削減する能力を損ない、最終的に債務の持続可能性が低下し始める。


RATIONALE FOR A1 RATING AND STABLE OUTLOOK
A1の格付けと安定的の見通しの根拠

JAPAN'S CREDIT STRENGTHS SUPPORTED BY A DEEP DOMESTIC BOND MARKET, STRONG INSTITUTIONS, LOW VULNERABILITY TO EXTERNAL SHOCKS
日本のA1の格付と安定的の見通しは、厚みのある国内債券市場、高い制度の頑健性、外生的ショックへの脆弱性の低さによって支えられている

Whatever the challenges facing the government, Japan retains very significant credit strengths. Its A1 rating and stable outlook are supported by its large, diverse economy, which we characterize as having 'High' economic strength. And even with the very significant debt burden, we believe that Japan exhibits only 'Low' susceptibility to event risk. A marked home bias on the part of resident investors provides a strong funding base —domestic investors retain a marked preference for government bonds, which has allowed fiscal deficits to be funded at the lowest nominal rates globally over the past two decades. Private sector fiscal surpluses remain more than adequate to fund government deficits, without the government resorting to external funding. We believe that very high institutional and structural strengths, including a decisive and powerful central bank, currently sustain this funding advantage and are very unlikely to diminish over the rating horizon.
日本政府がどのような課題に直面している状況であれ、日本は極めて高い信用力を維持している。A1の格付と安定的の見通しは経済の規模と多様性に支えられており、ムーディーズは日本の経済力を「強い」としている。債務負担は極めて大きいものの、イベント・リスクに対する感応性は「低い」とムーディーズは考えている。国内投資家の国内投資志向が強固な資金基盤を提供しており、特に国債に対する投資志向が強いため、過去20年間にわたり、世界的にも極めて低い名目金利で財政赤字が賄われている。また、政府が外部資金に依存しなくとも、民間部門の黒字は依然として財政赤字を十分に賄える水準にある。さらに、果断で実行力のある中央銀行の存在を含む制度・構造の頑健性が、資金調達上の優位性を支えており、格付の見通し期間においてそれが損なわれるとは極めて考えにくい。

Although Japan's government gross financing requirements are far larger than other advanced country governments', contingent risks which could elevate further such financing needs are low and remote. Japan's banking and corporate sectors have restored their health in recent years in terms of capitalization and deleveraging. Household debt is at a moderate level and has remained stable over the past decade. And despite low economic growth, Japan's labor market is relatively sound in regard to key features, such as low unemployment level, the recent pick-up in employment and nominal wages and a labor force participation rate broadly comparable with other advanced economies.
日本政府の総財政必要額は他の先進国政府に比べてはるかに大きいが、さらに増加させる偶発リスクは低い。日本の銀行・事業会社セクターは最近、資本増強および負債削減の点で健全性を回復している。家計債務は低水準で、過去10年の間安定的に推移してきた。経済成長率は低いものの、日本の労働市場は、非常に低い失業率、最近における雇用および名目賃金の改善、他の先進諸国とおおむね同水準の労働参加率といった主要な特徴において、比較的良好である。

Related to Japan's home bias is its strong external payments position, which reflects the accumulated system-wide savings. At more than 60% of GDP in 2013, Japan's net international investment position is much larger than any advanced industrial G-20 economy, insulating its economy and capital market from global shocks. Income earned from Japan's sizable external assets has helped to sustain the current account surpluses, although this has diminished owing to a shift into a trade deficit which is in large part driven by the demand for energy imports following the shutdown in the nuclear power industry after the 2011 tsunami and Fukushima nuclear power plant disaster.
日本の国内投資家の強さは、システム全体に蓄積された貯蓄を反映した強固な対外支払ポジションを支えている。2013年においてGDP比で60%以上にのぼる対外純資産残高は、他のG20諸国よりはるかに大きく、経済および資本市場をグローバルなショックから隔離している。また、多額の対外資産からの収入は経常黒字の維持に寄与している。しかし、2011年3月の東日本大震災および原発事故後の原発の稼働停止に伴うエネルギー輸入増加を主因として貿易収支が赤字に転じたことにより、経常黒字は縮小した。


WHAT COULD MOVE THE RATING DOWN / UP
将来の格下げおあるいは格上げにつながる要因

While the stable outlook indicates that we believe the rating is well positioned for the next twelve to eighteen months, factors that could prompt a negative rating action include significant divergence from the path toward achieving fiscal targets; an intensification of deflationary pressures; a severe loss in economic momentum; or a shift in the external current account surplus into persistent deficit.
安定的の見通しは、格付が向こう12-18ヵ月にわたって安定した位置付けにあるとムーディーズが考えていることを反映しているが、ネガティブな格付アクションにつながり得る状況としては、財政目標達成に向けての軌道を大きく外れた場合、デフレ圧力が高まった場合、景気モメンタムが深刻に悪化した場合、経常黒字が恒常的な赤字に転じた場合などが考えられる。
Moody's would consider a positive rating action if Japan were to implement policies that we concluded were likely to restore economic momentum and improve prospects for significant fiscal consolidation and debt reduction.
一方、景気モメンタムを回復させ、大幅な債務削減の見通しを強める政策が実行された場合には、ポジティブな格付アクションを検討する。
(以下省略)


Thomas J Byrne
Senior Vice President
Sovereign Risk Group
Moody's Investors Service Singapore Pte. Ltd.
トーマス・バーン
シニア・ヴァイス・プレジデント
ソブリン・リスク・グループ
ムーディーズ・シンガポール

Alastair Wilson
MD-Global Sovereign Risk
Sovereign Risk Group
Moody's Investors Service Singapore Pte. Ltd.
アラステア・ウィルソン
マネージング・ディレクター
ソブリン・リスク・グループ
ムーディーズ・インベスターズ・サービス
-----


日本は政府が大幅な累積赤字であるが企業部門と家計部門という民間部門が大幅な累積黒字で、その結果(とまでは行ってないにしても)、対外純資産が先進国最大であるので当面は大丈夫、としっかり書いてありますね。この点は高く評価したいと思います。

しかし、民間黒字が拡大するなら、政府赤字の拡大(累積)である公的債務GDP比は気にする必要あるのかしら、とも思いますが、公的債務GDP比は経済学の教科書でもどこまでも大きくすることはできない云々と書いてあるので、まあ、しゃあないか…

財政再建と経済成長の両立のためにはもっと構造改革を!という趣旨の文面が見受けられる点は、まあアレですが、このムーディーズの声明文では消費増税延期と解散総選挙で法人減税等の具体案や実施スケジュールが不明確になったことを問題にしているようです。

「政府がこれまでに発表した今後の主な構造改革策として、2015年度の法人減税は詳細が不透明で、事業投資への影響は依然として不明である」

というのは、「日本の事業者は、これじゃあ当面、長期的な事業計画が立てられんやないかい」ということを指摘しているのでしょう。それはそれで仰せごもっともな面もあるように思われます。

私は法人減税には個人的には賛成です。
世界的に法人税率は減税合戦が起こっており、日本だけ実効法人税率、実質税負担率が高い状態だと、せっかくの円安でも日本に工場を作ろうとする企業は増えにくいものと思われます。

実効法人税率、実質税負担率の国際比較は経産省資料
http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2015/pdf/02_2.pdf
のp.5参照

それは、長期的な日本の生産供給能力を損ない、すなわち、日本政府の真の財政余裕度を毀損することになります。

今回のムーディーズの声明文では、「構造改革」について「移民を増やせ!」とか「TPPなどグローバリゼーションを推進しろ!」という文言は少なくとも出て来ておらず、「主な構造改革策として、2015年度の法人減税」と法人減税主体で書いてあったので、その点、私は個人的には好意的に評価している次第であります。


今回のムーディーズの格下げ声明文、公的債務GDP比が云々意外は、実は、あまり違和感がありません。
日本の民間の黒字にも触れていた点は大きいと感じています。

ただ、今後経常赤字が恒常的になれば格下げする、としている点は少し厳し過ぎるんじゃないかと思います。
恒常的に経常赤字な英米豪NZは安定してまんがな、ムーディーズさん!

ただ、経常赤字化は、民間の黒字が政府の赤字を補えないほどに減少してしまうということを意味しており、それは日本の生産供給能力の衰えと捉えれば、経常赤字を日本政府の格付下げ要因と考えることは、完全な的外れとは言えないでしょう。

結局、いまの日本の課題は、少子高齢化が進行するなかで、生産供給能力をどのように維持するか、ということには違いはありません。

ならば、今は公的債務GDP比が245%だろうが1000%だろうが、政府の歳出増や法人減税などを駆使して国全体の生産供給能力を高める投資を積極果敢に行うことで、格付けの見通しが「安定的」から「ポジティブ」に転換するように持って行くのが最善かと思われます。

今回の格下げ声明文でもう一つだけ気に入らないのは、日銀が2%のインフレを達成すると金利が上昇して、政府の債務負担が増加すると言っている点ですが、まあ、それは民間の黒字が増えるだけですし、民間の黒字のことをちゃんと言及しているので許容範囲かな、とも思う次第です。






日本を『格下げ』したムーディーズが、

・民間部門の黒字が依然として財政赤字を十分に賄える水準にある

・日本政府がどのような課題に直面している状況であれ、日本は極めて高い信用力を維持している。

・債務負担は極めて大きいものの、イベント・リスクに対する感応性は『低い』

と言っているとは、驚いた!



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