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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
 お問い合わせは当ブログのメールフォーム(下の方にあります)やコメント欄(内緒設定もご利用ください)や、ツイッターのダイレクトメッセージをご利用ください。

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683:中国、次の暴落は2015年秋ごろか?

2015/07/23 (Thu) 15:24
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当面、ツイッターのみ更新し、ブログ更新はどうしてもツイッターでは表現しきれない重要なニュースがあったときだけ、というようにする方針です。

※私のツイッターは、当ブログのPC版の左上に表示しているツイッター窓で見て頂くか、「twitterでフォローして下さい」ボタンを押してツイッターを開いてみて下さい。





※ツイッターでは書ききれ無さそうな話なので、ブログ更新です。



【仮説:秋ごろ、中国発世界大恐慌】

先月から今月にかけて中国株の暴落があり、現在は共産党政権によるありとあらゆる株価維持対策でかなり回復しています。


上海総合指数は“6月に5166でピークに達してから急落し、7月8日には3507の安値をつけた。その後は、7月初めに中国政府が打ち出した数々の「非伝統的政策手段」のおかげで約15%値を戻している”という状況です。

中国当局による株価対策をざっと拾い上げてみると

中央銀行提供の資金を使って市場規制当局の一部門である中国証券金融(CSF)が株式を購入

大株主による保有株の売却を6カ月間禁止

中国の主要証券会社21社は株式購入基金に1200億元(約2兆3700億円)を拠出すると表明


ちなみに、ここ2週間ほどの中国株式市場は、午後になると政府主導の介入でほぼ必ず株価が上がるという珍現象が続いており、もしも市場が開けるとともに株を買い、その日の引けの時に株を売ると、買い持ちしているよりもずっと儲かるという状況になっているそうです。
但し、そのような、その日に買った株をその日のうちに売る取引は禁止されているのですが、先物は禁止されてないのでやろうと思えばできる状態ではあります。
ブルームバーグ記事)。


さらに、

WSJの分析によると、ピーク時には全上場銘柄の51%が売買停止を申請し、さらに46%が値幅制限規則により取引が停止された
→売買停止は政府の指示などがなくとも、上場企業が自主的に申し入れることで可能になるようなシステムであって、たまたまのタイミングで買収阻止のために売買停止していた「全くの偶然の一致」、と説明している企業もあるとか。まあ、この世の中、様々な偶然で成り立っていると言えますが(笑)。


とまあ、かなり凄まじい株価維持作戦を絶賛実施中という塩梅。


なお、証券会社による買い支えは、「中国株価対策に新たな犠牲者-やればやるほど証券会社に負担と言えそうです。これはいつまででも続けられません。


また、中央銀行(中国人民銀行)の資金まで使った買い支えも、これもまたいつまででも続けられないものと思われます。特に習近平政権はいま、人民元の国際化、とりわけ人民元のSDR入りを最優先課題の一つとしているため、人民元安を許容できないからです。よって、人民銀行がいくらでも人民元を刷りまくるというわけには行かず、いくらでも株の買い支えをやる、というわけには行かないと考えられます。

というよりも、むしろ、中国の通貨当局はこの1年、対米ドルで人民元安になるのを防ぐために、為替介入していたようです。ブルームバーグの記事

A $4 Trillion Force From China That Helped the Euro Now Hurts It
これまでユーロを支えてきた500兆円の中国外貨準備が、いまやユーロを傷つける

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-22/a-4-trillion-force-from-china-that-helped-the-euro-now-hurts-it
Bloomberg, July 22, 2015

によると、人民銀行が保有する4兆ドル(ざっと500兆円)にのぼる外貨準備のうち、今年の6月までの一年間で3,000億ドルを切り崩して対ドルレートの下落を防いでいたとのこと。

記事の趣旨は、これによりドル準備が減ったので、バランスを取るためにユーロ準備を売る動きとなり、ユーロが安くなるのではないか、ということです。
しかし私はそれよりも、人民元がIMFのSDRの構成通貨となる確率を高める目的で、他国の通貨当局が外貨準備として人民元を買いたくなるようにするために、対ドルのレートを維持するという動きとなっていたことに注目したいと思います。


というわけで、政府主導の株価対策はいくらでも、いつまでもできるかというと、かなり難しいと思われます。



そして、電力消費量(参考資料)、鉄道輸送量(参考資料)、コンテナ輸送量(参考資料)が昨年から今年にかけて大幅に減速しているというデータから、中国の景気の実態は相当に悪いという説があります。


というわけでここで仮に、中国の景気は相当に悪い、とします。

その中で、民間証券会社や政府系金融機関や中央銀行による株価対策に回せる資金は、恐らく、限りがあると思われます。

また、大株主による保有株の売却を6カ月間禁止、ということは、景気が悪い中で資金調達の必要性が出て来ても、年末までそれら大株主は株を売って資金調達をすることができない状態であるわけです。SDR入りが重要課題である間は、中央銀行による輪転機を回して※の救済(リーマンショック後にFRBが大手保険グループAIGに対してやったようなこと)は期待できないでしょう。ということは、一旦景気が悪くなると、悪化の度合いがいやが上にも深まりやすい状態と言えそうです。
※実際には輪転機を回すわけではなく、単なる帳簿上の操作で当座預金を増やすことになります。


そして、SDR入りになるかどうかが決まる時期が、大和総研のレポートによると

「今後のタイムスケジュールとしては、7 月中に IMF の非公式理事会が開催され、人民元の利用状況についてデータ上の検討を行い、秋頃に公式理事会で人民元の構成通貨入りが審議される予定」


今年の秋ごろです。秋ということは、9月~11月という具合でしょうか。

少なくともその辺りまでは、株価維持が必要であり、当局はやっきになって株価を維持し続けるのではないかと思います。
そうでなければ、株価が暴落し、すると、外資がいっせいに資金を引き上げることとなり、元安、元の急落圧力が高まります。
そうなると、大規模な為替介入で人民元の価値を維持せざるを得なくなりますが、それは外貨準備の急減となり、人民元の信用に傷がつき、SDR入りの可能性を減らしてしまいます。
ゆえに、少なくとも「秋ごろ」までは株価維持が継続されるものと考えられるわけです。


一方、人民元がSDR入りになるにしても、ならないにしても、これが決着すると、人民元の対ドル為替レートの介入の必要性は当面減ります。
すると、株価対策のために人民銀行は大っぴらに当座預金を増やして株を買うことによる株価維持対策をするようになる、かも知れません。
しかし、それは人民元の国際化の方向性と正反対になります。これから安くなる通貨を、外貨準備として保持したいような他国の通貨当局はいないでしょう。
しかしながら、株価対策はしない、となると、もちろん今度は大暴落、外資引き上げ、人民元安、ということになってしまいます。

が、SDR入りを果たす前の株大暴落&人民元安と、SDR入りを果たした後の株大暴落&人民元安は意味合いが違います。

SDR入り後の暴落は、人民元の基軸通貨化に一歩近づいた後の暴落ですが、SDR入り前の暴落は、基軸通貨化から遠ざかった後の暴落です。


そして、今般の株式市場における、株価下落を防ぐための信じがたいほどの強力な規制については、SDR入りの妨げになると思われます。人民元が「自由に使用できる通貨」となることはSDRの条件です。そういうわけで、逆に、この規制をSDR入りと引き換えに速やかに撤廃するという「取引」が行われるかも知れません。

以上のように考えると、

SDR入りとなるかどうかが決まる10月前後までは、ガチガチに株価を維持し、それ以降は株価維持を止めることとなり、そして暴落過程に入る

というシナリオが浮かび上がる塩梅となります。あくまでも、仮説ですが。



暴落が起きるとすれば、恐らく、6月から7月にかけての暴落以上の大規模な暴落となるのではないでしょうか。世界中を巻き込む大暴落、です。





【仮に世界的暴落が起きた場合、

 中国はどうなるか?】




大暴落シナリオ1:そのまま共産党政権が崩壊し、清朝崩壊から国共内戦に至る大混乱級の歴史的大混乱を呈する

→保守系の皆さんの選好するシナリオと思われます。この通りになるかも知れませんが、逆の可能性も想定しておくのが無難です。でないと、逆になった場合において対応不能となるばかりでなく、精神的打撃も測り知れません!



大暴落シナリオ2:1929年のアメリカのように、自国発の大暴落のあと、中国が覇権国となる

→2014年末の中国の対外純資産は、日本の366.8兆円に次ぎ、214.3兆円(財務省資料)です。
 1929年のアメリカは第一次世界大戦で一気に対外債務国から対外債権国になったあとでした。
 可能性として、世界有数の債権国の一つである中国が自国発の株式大暴落のあと、覇権を強めるというシナリオはあり得ないことでもないことになります。
 日本にとって重要なのは、共産党政権崩壊でも、中国の覇権拡大でも、どっちに転んでも大丈夫なようにしておくことだと私は思います。

なお、残念ながらこのシナリオ2を補強する材料として、以下のような話も:






大暴落シナリオ3:シナリオ1と2の中間で、共産党政権の崩壊もないが、覇権国レースからは当面脱落する

→共産党政権崩壊でも、中国の覇権拡大でも、どっちに転んでも大丈夫なようにしておくことができれば、この第3のシナリオへの備えはできるので、このシナリオはそれほど考える必要もないでしょう。







シナリオ1なら、大量の難民、場合によってはそれに紛れて不穏分子が大量に日本に押し寄せる可能性が高いでしょう
(北アフリカや中東の混乱で欧州に大量の難民が押し寄せているのと同じ)。国防の強化が必要不可欠です。


シナリオ2でも、中国の政権がどのような意志であれ、日本の国防強化は必須
です。米国が軍縮を進めているからです。中国と敵対的関係になろうと、友好的関係になろうと、米国がシェール革命によってエネルギー依存の減る中東地域から軍事的関与を縮小させようとしていることに変わりはありません。



アラブ諸国はもはや、アメリカだけに頼ってられないというわけですね。




米国の国防費はすでに自衛隊二つ分、削減済みです。米軍の規模は縮小の方向にあるのです。




もはや米国による中東安保に「タダ乗り(free rider)」していられないのは、中国だけでなく日本も同様です。
別の言い方をすると、中東の安保を中国だけに任せていいのか、とも言えます。



また、






という話も、米国の中東への関与縮小の方向性を匂わせています。


なお、中国との敵対シナリオであっても、






というように、アメリカはもちろん、フィリピンやオーストラリア、あと当然ベトナムなどと共同で中国に対抗する必要がありますが、この際、「憲法9条があるので、日本だけ何もしません!」では通らないでしょう。それでは日本はつまはじきにされ、外交的に孤立しかねません。


さらには、


というように、日本の領土、領海を横切って中国海軍が軍事演習を展開しているような状況です。それにもかかわらず日本が安保に関して何もしないというのでは、世界中から見放されることとなるでしょう。だって、そんな国と安全保障で協力し合いたいなんて、思います?残念ながら、私なら思いません。ほかを当るでしょう。


なお、敵対シナリオを強化する材料としては



 というものがあります。


 今後、中国と敵対関係になるにせよ、友好関係になるにせよ、







といったことは必要性が高まるでしょう。


対中友好シナリオであっても、中東の安全保障だけでなく、中東からの重要な輸送航路であるマレーシアのマラッカ海峡の安全保障も、アメリカが関与を縮小しようとするなか、日本がインドや中国とこれらの地域、海域での安全保障の負担を分担する必要性が高まるものと思われます。


そういったわけで、

・中国でもう一度株式大暴落があろうとなかろうと、

・中国が今後、覇権国に近づこうと覇権国レースから脱落しようと、

・中国と敵対関係になろうと友好関係になろうと、

日本は安全保障を強化することが必要不可欠になる、というシナリオに変わりはない


ものと思われます。



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682:#安倍安保を世界が支持 →「このハッシュタグをツイッターで流行らせ、外務省作成の各国公式賛同メッセージまとめ資料を拡散しよう!」キャンペーン実施中の件

2015/07/19 (Sun) 09:49
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さて、極めて重要な案件があったので、ブログ更新です。


昨日、小坪慎也・福岡県行橋市議がブログで取り上げていた外務省作成の各国公式賛同メッセージまとめ資料の件です。


私、↑これを読んで、ぜひ広めなければと感じました。

外務省作成の重要な一次資料があるからです。


安倍安保法制に対する「世界の反応」につき、日本のメディアは主に反対の声だけに重点を置き、賛成の声をあまり伝えていないのが現状のようです。
 ただ、一応申し上げておきますと、昨日の朝放送の読売テレビ(日テレ系)の「ウェークアップ!ぷらす」では、産経新聞の記事に基づいて、中国と韓国以外の国々が賛同していると伝えていました(辛坊氏が、中国と韓国以外は賛成なんですよね、このことはあまり報道されていないですね、と言っていたのは、個人的にはビックリ。辛坊氏は、国の借金問題については少々アレかな、と個人的には思う次第でありますが、この問題については完全に賛同できるなあ、と思った次第であります)。


で、私がふと思い出したのが、先日のギリシャ協議で、債権団がギリシャに財政主権の放棄を迫るような厳しい条件を突きつけたときにツイッターで #ThisIsACoup 「これはクーデター(政府転覆)だ!」のハッシュタグがツイッターで世界のトップトレンドとなり、世界中のメディアが報じた件です。




↑これにならってハッシュタグを作ってみよう、ということで考案してみたのが

#安倍安保を世界が支持


のハッシュタグであります。






で、その後、小坪さんに電話。

小坪さんも「いやあ、それはいいですねえ!」ということで、↓このツイート





※他の皆さんの #安倍安保を世界が支持 のツイートは、こちらをクリック


今のところ、一晩で300ツイートほどであり、 #ThisIsACoup ほどの爆発的拡大には至っていませんが、これを是非、流行・拡散させたいと思います。



賛同して頂ける皆さんには、

#安倍安保を世界が支持


ツイートをして頂きたいと思います。

また、フェイスブックやブログをお持ちの方はぜひ、この件を取り上げて頂ければと思います。




当面の一つの目標は、

#安倍安保を世界が支持のハッシュタグがツイッターで○○万回ツイートされた」というような感じで、産経新聞さん辺りで記事にしやすいような状態に持って行くことであります。




一応、小坪さんのブログから、その外務省作成の各国公式賛同メッセージまとめ資料を、↓以下に引っ張ってきておきます:










#安倍安保を世界が支持
→このハッシュタグをツイッターで流行らせ、外務省作成の各国公式賛同メッセージまとめ資料を拡散しよう!


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681:お知らせ:当面ツイッター中心に更新。ブログ更新は控えることにしました

2015/07/16 (Thu) 12:18
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一応、最新のギリシャ関連ツイートのまとめと補足をしておきます:



















※与党シリザ内で緊縮案採決で造反の中心となった極左(革マル派)の「Left Platform」の代表、ラファザニス氏(エネルギー大臣)は、「大臣辞任の要請があれば受ける。債権団救済案には反対するが今後もチプラスを支持する」と述べています。つまり、政権与党内に留まるということですね。

 今後は、今回の国会採決で明確に反対を示した政権与党外の勢力である極右の「黄金の夜明け」、極左の共産党が勢力を徐々に拡大するでしょう。しかし、共産党はギリシャ正教会信徒の支持は得られないでしょうから、党首が正教会信徒である「黄金の夜明け」のほうが若干有利でしょうか。とは言え、正教会の聖職者らは「黄金の夜明け」を少なくとも表立って支持することは、まず、ありません。

 というわけで、
前回のエントリーで立てた仮説、正教会そのものが、政府の弱体化によって相対的に権威・権力が増してゆく、という路線が今後の有力なシナリオかと、やはり思う次第です(正教会は、反グローバリゼーションという点において、極左とも極右とも一致)。
 ギリシャの政権は今後、安定した政権運営のために正教会との協力を強化することはあっても、協力を弱めてゆくことはまずないと思われます。無神論が党是のシリザ政権が、今般の危機においてすら教会の特権を取り払えなかったことは、その大きな証左と言えます。









※やはり、「正教 Orthodox Church」は今般のギリシャ問題において、一つの極めて重要な要素と言えそうです。とはいうものの、上記はあくまでも野党議員の提言に過ぎませんが。







※プーチン大統領がギリシャを全面的に支援するとまでは言わないのは、アメリカへの遠慮もあるのかも知れません。もちろん、しゃしゃり出過ぎると、ユーロ圏内、EU内の嫌ロシア派を刺激し過ぎることとなり、交渉をぶち壊してしまいかねない、ということもあるでしょう。つまり、米欧の出方を見ながら、チプラス首相と懇意にしつつ、間接的に圧力を加える、という具合でしょうか。





緊縮が強化され、新自由主義、グローバリゼーションが強化されるという「作用」は、その反対側で、反緊縮、反新自由主義、反グローバリゼーションの勢力も強化されるという「反作用」をも生むことになります。

今後、世界はどうなるか?

私は、このブログでも何度か紹介している書経(しょきょう)の周書・泰誓上(しゅうしょ・たいせいじょう)の言葉:

“天、民をあわれむ。民の欲するところは、天、必ずこれに従う”

が鍵になると、個人的には思う次第であります。



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※あと、この2、3週間のギリシャ危機や反緊縮関係の当ブログエントリーの一覧を以下に示します:


2015/06/21
【拡散希望】「大規模反緊縮デモ in ロンドン」:主催団体の経済的主張が非常に興味深い――日本のメディアが一切報じないのはなぜ??
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-659.html


2015/06/23
日本のメディアがなぜか一切報じない「大規模 反緊縮財政デモ in ロンドン」の話――補足(これまでのツイートのまとめetc)
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-660.html


2015/06/28
現代版ギリシャ悲劇、いよいよ第二幕か?――ギリシャ債務危機:直近2週間の流れのまとめ&今後の想定シナリオの検討
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-664.html


2015/06/29
ギリシャ銀行閉鎖:国民投票終了後まで+先行き不透明ながらギリシャ瀬戸際外交はさっそくEU、独、仏のみならず米の首脳らから「債務減免」の言及引き出す「成果」も
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-665.html


2015/06/30
ギリシャには米軍基地があるため、ギリシャ危機は米露「冷戦」と無関係でいられなさそう
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-666.html


2015/07/01
ギリシャ、ユーロ離脱なさそう:独財相の「国民投票で“NO”でもギリシャはユーロ残留可」発言で+その他今朝のIMF返済「延滞」までの動きのまとめ
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-667.html


2015/07/02
ギリシャ、波乱の一日終え、首相と財相は「反緊縮&ユーロ居座り路線」を強化
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-668.html


2015/07/03
ギリシャ不法入国者数、上半期でEU首位に――日本にとって他人事でないのは、借金問題よりは難民・移民問題かと+今朝までのギリシャ危機関連の動きのまとめ
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-669.html


2015/07/04
ギリシャ、ドイツに債務免除していた!――1953年、第二次大戦戦勝国の一員として
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-670.html


2015/07/05
独、土壇場で「NO」を支持?:対ギリシャ強硬派の独財相が「NOはギリシャの一時的なユーロ離脱につながる」発言直後に「我々はギリシャを見殺しにしない」と姿勢急転換+ギリシャのNO支持は極左と極右であり日米の反TPPと同じ構造
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-671.html

2015/07/06
ギリシャ、反緊縮が地すべり的勝利⇒今後の想定シナリオ:ドイツが「ギリシャをユーロから追い出せ」世論に押されて強硬路線→株価暴落(?)→ドイツ世論に揺らぎ→ギリシャがほど良く妥協し債権団譲歩引出してユーロ居座り
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-672.html


2015/07/07
ギリシャ新財相は反グローバリゼーション、反新自由主義の経済学者:冷静で物腰柔らかな、ギリシャ左派期待の星
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-673.html


2015/07/08
甘利大臣の緊縮NO発言が、あまり日本で報じられていない(というか日本のメディアがあまりにも報じなさ過ぎる)件
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-674.html


2015/07/09
ギリシャ、国民投票の真の目的は「大手メディアつぶし」か?
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-675.html


2015/07/10
ギリシャ、TV広告税導入へ(→国民投票実施の真の目的??日本では広告税導入検討で麻生内閣が倒れたとの噂も…) - ギリシャ、債権団にGDP比7%の緊縮財政案を提出(日本で言えば、自衛隊7個分消失の強烈な緊縮財政案)
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-676.html


2015/07/12
ギリシャ瀬戸際外交の瀬戸際――瀬戸際なのはギリシャだけでなくドイツやEU全体も、だと思いますが!
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-678.html


2015/07/13
「これはクーデターだ!」:国民投票前のショイブレ独財相のちょいブレは、“NO”勝利を間接的に支援した上で「信頼性が」とチプラス政権にいちゃもんを付け、ギリシャ財政主権接収に持って行くための仕込みだった?
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-679.html


2015/07/14
ギリシャ危機、本当の「勝者」は「ドイツ第四帝国」か、「ローマ帝国」か?
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-680.html



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680:ギリシャ危機、本当の「勝者」は「ドイツ第四帝国」か、「ローマ帝国」か?

2015/07/14 (Tue) 15:17
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近年まれに見る「国際的大型政治劇」もひと段落、と言ったところでしょうか。

今般のギリシャ危機のすったもんだは、ネットによりリアルタイムで、豊富な情報を時系列で観察することができた、という意味で個人的に非常に勉強になったという印象です。善悪良否は別にして、ですが。

特に、イギリスのガーディアンやテレグラフのように、重要なテーマはライブ・アップデート記事サイトを立ち上げ、次から次へと新しい情報が追加され、しかも時系列で確認できたので、話の流れを追うことが容易になりました。
 
ただ、テレグラフはひと月あたり無料で見れる記事数が限られており、あっというまに上限が来てしまったので、後半はガーディアン頼みでした。ガーディアンはリベラル、テレグラフは保守という感じで、ガーディアンはチプラス政権に若干好意的、テレグラフはチプラス政権に若干批判的なスタンスかな、という感じでしたので、バランスを取るために、本当は両方とも見たかったのですが。

ガーディアンとテレグラフを比較すると、プロパガンダ・マシーンとしてのメディアの機能の観点から、ある立場からの情報を無料で大量に流すことの重要性を改めて感じた次第です。プーチン肝煎りで創設されたロシアの英語メディアRTは、もちろんその文脈で作られたものと考えられます。まあ、メディアというものはそういうものでしょう。







さてさて。
昨日、夜通し行われ、現地時間の朝9時くらいまで続いてようやく「合意」に至ったギリシャ問題協議の、その合意に至った直後の様子を振り返っておきます:






※このトゥスクEU大統領の発言を受け、欧州の株式市場は2%以上、ニューヨークも1%以上上昇した、とのことです(ガーディアン記事参照)。

※グレグジット(Grexit)に続き、新たな造語(aGreekment)が出て来ましたね。






















※ユンケルさんと言えば、チプラス首相による国民投票の発表の直後、「債権団は年金カットを要求していない、チプラス首相はうそつきだ」といって、ジャーナリストらから「あんさんこそうそつき」と言われていた、あのユンケルさんです。最後は妥協する、というのがユーロ・スタイルということのようで。












※この500億ユーロ(約7兆円)のギリシャ政府資産の民営化ファンドへの資産移転の件、当初ユーロ財相会合で出て来たドイツ案では、ドイツのショイブレ財務大臣が経営トップであるKfWというドイツの開発銀行の100%子会社であるルクセンブルクのInstitution for Growthというファンドに移転させるという、とてつもない話になっていました。

 これは、あまりにもあからさま過ぎた案です。

 で、これをチプラス首相が交渉し、新ファンドをギリシャ国内に設立するということで話が付いたわけですね。

 これは恐らく、法人税の問題かと思います。もちろん、この新ファンドの組織形態をどうするかによって税負担は違って来るかとも思います。NPOとかだったら非課税かも知れません。でも、普通の民間企業という形式であれば、間違いなく法人税の課税対象です。今回の協議では法人税は引き上げられることになっていますから、もしこの新ファンドが課税対象であれば、ギリシャにとって引き上げた法人税率で課税できるので、その分は有利になります。
 ルクセンブルク案だったら、ギリシャで課税できない(というか課税の可能性が完全に断たれる)だけでなく、ルクセンブルクはユーロ圏のタックスヘイブンとして有名な国であるわけですから、ユーロ圏全体でみても課税がやり難いという話になっていたわけです。ここはチプラス首相も一矢報いることができた、という話になります。
 
でも、よくよく考えてみるとこの話、またもや「仕込み」だったのではないかと思います。ショイブレ独財相も、こんなあからさまな話が完全に通るとは最初から思っていないでしょう。

つまり、
・とにかく、目的はギリシャに政府資産を供出させること
・でも、このあからさまな案は、かなりの確率でギリシャの国会で可決されない、ということも最初から承知の上
・で、チプラス首相の求めに応じて、新ファンドをルクセンブルクではなく、ギリシャ国内に設立、ということにして、チプラス首相に花を持たせ、ギリシャ国会で通りやすくする
という筋書きではないかと思います。



政治というのは、このように進んで行くんだな、という典型的な事例ではないかと思うわけです。これがユンケルさんのいう「典型的な欧州の流儀 typical European arrangement」なのかも知れません。
前回も書きましたが、国際政治場裏というのはこんな海千山千で溢れているんでしょうね。ちなみに、チプラスさんは41歳で私より1つ年上なだけです。




ギリシャは、いわば上記の500億ユーロの政府資産を担保(collateral)として差し出し、さらに「増税&歳出削減」の緊縮財政パッケージと引き換えに、860億ユーロ(約11兆円)の新規借り入れや、債務返済期限の延長を獲得する(予定)となっているわけです。

 この件につき、ギリシャにおいては、シリザ(急進左派連合)の中でも最左翼で革命マルクス主義の「Left Platform」始めとするグループが造反しそうですし、連立相手のギリシャ人独立党(ANEL)の党首も同意しないと言っています。

 また、新規資金の貸し手となるユーロ圏のみならずEU各国では、資金貸出を渋る動きもあるようです。まだまだひと波乱ありそうな気配もありますが、ひとまずは「典型的な欧州の流儀」で何とか収まるんじゃないかと個人的には予想します。

 ギリシャでは銀行閉鎖、ATM引出し制限が続いていることも大きな不満の要因であり、860億ユーロの借入ができればそのような資本規制も解除できるでしょうから、国会でも結局は賛成が過半数を上回って可決されるものと思われます(可決されなければ、また一大国際的政治劇になってしまいます…)。




以下、ギリシャでも欧州各国でもこの新プランが可決されるシナリオで、今後の推移を想定してみたいと思います。その場合における、本当の「勝者」は誰か、という視点で。


勝者は「ドイツ第四帝国※」か?

※神聖ローマ帝国が第一の帝国、プロイセン国王が帝位について成立したドイツ帝国が第二、ヒトラーの「帝国」が第三。その次ということで第四の帝国。第四帝国という言い方は当ブログでも3年前にもちらりと触れました。

【EU、第4帝国か解体か? - メルケル首相、「主権移譲すればユーロ圏共同債の検討が可能」とな?】
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-503.html 2012/06/24

そこで引用していたロイターの記事で以下のような箇所がありました:

----
成長戦略をめぐっては、欧州の政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)の増資やEU構造基金の未使用分の再分配、インフラ事業向けのプロジェクトボンドなどがすでに検討されているが、この日、追加対策に関する発表はなかった。

こうしたなか、ユーロ圏共同債などをめぐっては、メルケル首相から前向きな発言はなく、オランド仏大統領がドイツの消極的な姿勢に不満を漏らす場面も見られた。

オランド大統領は「ユーロ圏共同債を選択肢とみなしているが、10年という時間では考えていない」とした上で、「ユーロの連帯改善なくして主権移譲などあり得ない」と強調した。

これに対しドイツは実質的に逆の立場をとっており、メルケル首相はこれまでに、ユーロ圏加盟国が財政や経済政策をめぐる権限を移譲すればユーロ圏共同債の検討が可能としている。
-----


この3年前の記事で伝えられている仏オランド大統領と独メルケル首相の姿勢は、今回の協議の過程における姿勢と全く同じですね。

以前からメルケル首相はユーロ圏加盟国の「財政や経済政策をめぐる権限を移譲」について言及していた、というわけです。そして、ギリシャがその初のケース(に近々なる予定)という運び。


前回書きましたが、ショイブレ独財相の、ギリシャ国民投票発表後の発言の揺らぎは、少なくとも結果として、ギリシャ有権者にNO投票を後押しするものになっていたと考えられます。

NOの圧勝(といっても有権者の35%に過ぎませんが)を盾に、待ってましたとばかり「ギリシャは信用できん!」「信用ガー」と騒ぎ立て、ドイツ及びその賛同国はギリシャの500億ユーロ政府資産の供出をもぎ取りました。

(この「信用ガー」というのは、国際政治場裏では有効な手段のようですね。最近、日本は世界遺産登録の場で韓国に事前の約束を「裏切られた」ので、「信用ガー」オプションを全面的に活用し得る立場を得たと言えます。しかし残念ながら、今までのところはドイツがギリシャに行使したようなほどには全面的に活用できていない、という具合でしょうか)


今回の交渉につき、ガーディアンの記事

almost total surrender of the nation’s fiscal sovereignty
ほぼ全面的な国家の財政主権の放棄


と表現し、あるシリザ幹部が

the deal as the product of defeat and capitulation
敗北の産物、降伏文書としての取引


と言っていることを紹介しています。



さて、ユーロ圏は金融調節機能を一つの中央銀行、ECBに集中させることで、通貨発行権は統合されています。財政主権は各国が一応は独自に持っています。そして今回、ギリシャはその財政主権の一部を「放棄」する流れになっています。これが全てのユーロ圏参加国でなされると、財政がみごとに統合されます。あとは政治統合、となりますが、財政が統合されれば、各国政府は自治体政府のようなものになりますから、ユーロ圏は一つの国ということになりますね。それがドイツ第四帝国というわけですが、今回の条件が各国の国会で承認されれば、このドイツ第四帝国に一歩近づきます。

その意味で、3年以上前からユーロ圏加盟国の「財政や経済政策をめぐる権限を移譲」について言及していたドイツ・メルケル首相は「勝者」と言えるでしょう。


一方、逆の方向からの見方もできます。



勝者は「ローマ帝国」か?

拙著「日本経済のミステリーは心理学で解ける」で私が散々多用した「抑圧」の概念を考えてみましょう。

抑圧というのは、簡単に言ってしまえば「否定」、あるいは「否定されること」、「存在を否定されること」です。

そして、どんな形であれ「否定」はストレスを生じさせます。これは心理学的、生理学的、生物学的、あるいは、物理的、化学的に、生物個体において自動的に発現する機能です。

それは、一人の個人においても発現しますし、多数の人間集団においても発現します。

今回の「取引」は、多くのギリシャ国民を抑圧することになり、ギリシャ国民の個人個人の、あるいは集団的なストレス、不満は高まることになるでしょう。当たり前と言えば当たり前ですが、作用には必ず反作用がある、と言えます。

今回、平たく言ってしまえがドイツはかねてからの所望どおり、ユーロ参加国であるギリシャの財政主権をかなりの度合いで移譲させることに成功しました(あくまでも、「その予定」ですが)。その「作用」に対し、今後、その作用によって生じる「反作用」のほうが上回ることになれば、今後はドイツが一転して「敗者」になる可能性もあることになります。ナチスドイツという「作用」が「反作用」に打ち負かされたように、です。

そこでカギになるのは、ギリシャ正教会かも知れません。


前回も書きましたが、西ローマ帝国の流れをくむカトリック(バチカン)に対し、東ローマ帝国の流れをくむのが東方正教となります。東方正教は各国ごとに正教会があります。例えば、ギリシャ正教会、ロシア正教会という具合です。


今回の交渉に当り、ギリシャがフランス官僚軍団の助けを得ながら作成した「改革案」では、ギリシャ最大の地主であるギリシャ正教会の特権に切り込む改革が含まれていないと、ドイツの「自由民主党FDP」所属で欧州議会副議長のLambsdorff氏が指摘しています。


ギリシャ与党のシリザは、党の方針としてギリシャ正教会の特権廃止を謳っています英語wikipediaエコノミスト誌記事参照)

それにも関わらず、今回の切羽詰った局面でも、その党の方針であるギリシャ正教会の特権を弱めるような提案を債権者側に対して行っていないわけです。今回こそ絶好の機会であったと言えるのに、です。

 そのシリザの党首であるチプラス首相自身、二人の子供を洗礼させず、また、就任宣誓式を宗教的形式で行わなかった最初のギリシャ首相で、無神論者です。しかし、政権与党にまでなるくらいに勢力を拡大するに当たっては、ギリシャ正教会の信徒票が必要不可欠であるため、シリザはギリシャ正教会とも良好な関係を維持しているとのことです。2004年に初めて国会で議席を取ったときはたったの6議席。それが今年初めの選挙では149議席です(ギリシャ国会の議席総数は300)。これだけの議席の確保には、無神論のシリザもギリシャ正教会を敵に回せないわけです。その上、ギリシャ正教会とシリザには「反グローバリズム」という共通項もありますから、シリザが敢えて教会を敵に回す必要もない、という面もあります。(英語wikipediaエコノミスト誌記事参照)。

 そして、 シリザが政権の座に就くためには、ユーロ離脱も言えませんでした。シリザは元からユーロ残留を唱えて選挙に勝っているわけです。それが圧倒的な世論だからです。だから、今回の交渉の成り行きはある種、当然の結果と言えます。
 
 
 一方、シリザの正反対の極である、極右ネオナチの黄金の夜明けの党首、ミハロリアコスは元軍人にしてギリシャ正教会の信徒でもあります。
 彼は何人かの聖職者を褒めちぎっています。ただ、褒められた聖職者は即座に拒否反応を示していますが。とにかく彼は正教会の教義をうまく活用して支持者を獲得しているということがあるようです(エコノミスト誌記事参照)。

 といったわけで、ギリシャ正教会は極右から極左まで幅広く共通的に良好な関係を構築し、あるいは幅広く支持されている、ということになります(もちろん、極左といわれるシリザの中の最左翼であるLeft Platformの革マル派な人々は、無神論の度合いも高いでしょうから違うかも知れませんが)。

 そして、先ほども触れたようにギリシャ正教会はギリシャ最大の地主です。
 政府が今般の財政主権の弱体化、緊縮財政の強化、となれば教会の力、権威は、自然の成り行きとして相対的に増すことになります。
 経済を構成する3要素である「ヒト、モノ、カネ」のうち、本質的に重要なのはカネではなく、ヒト、モノです。すなわち
  ヒト× モノ○ カネ○ →人類滅亡
  ヒト○ モノ× カネ○ →飢え死にでやはり滅亡
  ヒト○ モノ○ カネ× →一応、社会経済は成立可能
というわけです。
 教会はカネはあまりなかったとしても、ヒト、モノは有り余るほど動員できるはずです(その意思があれば、ですが)。

 エコノミストの記事では、無神論を掲げるシリザを支持するギリシャ正教会の信徒である若者のコメントを載せていますが、
彼は今後、教会がチャリティー(奉仕活動)だけに専念し続けるのか、ギリシャをこんな状態にした人々に説明責任を果たさせようとする(つまり、政治に介入を強める)か、注目したいと言っています。

 ギリシャ正教会はその莫大な所有地を、多数の失業者を募ってうまく活用すれば、かなりのことができるのではないかと思います。教会はいわば、大規模な物々交換コミュニティーを成立させ得るわけです。政府が金銭的に弱体化することが確実な今、まさにそのような環境が整おうとしていると言えます。
 
 この流れが確実になれば、ドイツは「勝者」から「敗者」に転じ、この数百年で権威・権力を弱め続けて来た東方正教会が勢力を盛り返し、却って「勝者」に転じるかも知れません。

 そして、同じことはローマカトリックにも言えるかも知れません。

 ちなみに、ドイツは一応はカトリック教徒も多い国です(wikipediaでリンクしている資料によると、2008年時点で30%がカトリック、29%がプロテスタント、4%がイスラム教、34%が無宗教)。
 そしてメルケル首相自身は祖父、父親がプロテスタントの牧師ですが、メルケル首相の所属政党であるキリスト教民主同盟(CDU)は、いまはプロテスタントも受け入れていますが元はカトリックだけの政党でした。

 メルケル政権の主導する欧州全体における財政統合&緊縮財政の大きな流れは、大企業にとって有利であるという「作用」がある一方、格差・貧困の拡大に伴うカトリック教会や東方正教の勢力の拡大にもつながる――すなわち、東西ローマ帝国復興への道につながる――という「反作用」をもたらし得るわけです。
 そして、上述のようにメルケルさんの所属政党は元々はカトリック教徒だけの政党でした。
 これは偶然なのか、必然なのか。


もちろん、これは一つの仮説です。


なお、バチカンのフランシス法王は最近、反グローバリゼーションの砦たるボリビアで、グローバル経済に批判的な演説をしています:



Pope Francis Calls for 'Globalization of Hope' Throughout Latin American Tour
フランシス法王、南米歴訪で「希望の国際化」※を呼び掛け

by ABC News Videos
The papal leader spoke critically of the global economy for encouraging the destruction of natural resources.
カトリック指導者、天然資源の破壊を促進するとしてグローバル経済に批判的な演説



Pope Calls for ‘Globalization of Hope’
法王、「希望の国際化」※を呼び掛け
http://www.wsj.com/articles/pope-francis-asks-bolivians-to-remember-the-poor-1436465872
Pontiff warns against temptations of materialism during South American tour
教皇、南米歴訪において実利主義への誘惑を警告
The Wall Street Journal, July 9, 2015



※「今の世界に必要なのは経済の国際化ではなく、希望の国際化」ということですね。国際的な巨大組織であるカトリック教会の長らしいお言葉であるかと。




最後に勝つのは、グローバル経済の「新帝国」か。
それとも、反グローバル経済の「伝統的帝国」か。

欧州だけでなく、日本を含む世界全体がその岐路に立たされているようです。







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679:「これはクーデターだ!」:国民投票前のショイブレ独財相のちょいブレは、“NO”勝利を間接的に支援した上で「信頼性が」とチプラス政権にいちゃもんを付け、ギリシャ財政主権接収に持って行くための仕込みだった?

2015/07/13 (Mon) 12:28
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ギリシャ問題、昨日もまた大荒れな一日でしたね。
そして、大きな流れは、前回(昨日)書いたような、ドイツによるギリシャの財政自主権の接収の流れに向かっているようです。

(これが仮に失敗し、万一ギリシャのユーロ離脱となれば、シリザ内の「革マル派」や、ネオナチの「黄金の夜明け」が勢いづくことになろうかと思います。ゆえに、グレグジットの政治的リスクは非常に高いし、経済的コストは非常に高くつくことになるでしょう。その場合、ドイツはギリシャ政府に貸している約8兆円や、ドイツ企業がギリシャ国内に持っている権益の大半を失うんことにつながると思いますので、それは本当の狙いではないでしょう。ゆえに、最後には話がつくと見ますが、どうでしょうか)

というわけで、以下、私の関連ツイートを振り返りながら補足を加えます:


















※「信頼」という「通貨」が失われたので、現ナマという本物の「通貨」を寄越せ、という具合でしょうか。







※ギリシャが今回提出していた提案は、フランス官僚軍団の全面バックアップで作成されたものでした。オランド大統領にしたら、全面的に顔をつぶされたという塩梅ですね。


※ちなみに、ユーロ圏諸国につき、ギリシャに対する態度が融和的か、中立的か、敵対的かを色分けして示す地図をガーディアンが作成しています。パッと見では、カトリック教徒の割合が多い国ほどギリシャに対して融和的かな、という印象。
 ギリシャは東方正教会ですが、大雑把に言ってしまえば、カトリック教会(バチカン)は西ローマ帝国で、東方正教会は東ローマ帝国ですね。いや、関連性があるのか、ないのかは分かりません。偶然の一致か何かでしょうか。
 ちなみに、カトリック教徒の多いラテン系民族は、大きな政府志向である、というのはフランスのル・ボンが百年以上前に指摘していたことです。それとは関連性があるかも。










※ショイブレさんは、ギリシャの国民投票の発表後、非公開の会合において「結果がNOでもギリシャはユーロ圏を脱退しなくともよい」と発言していたことが、匿名のドイツ連邦議員3名からブルームバーグにリークされていました。その後も、投票直前において、ギリシャに厳しい発言をしたかと思えば、融和的な発言に転じるということもありました。この言動は、「NO」派に有利なものだったと言えます。平たく言ってしまえばギリシャの「NO派」有権者を後押しした、とも言えます。
その上で、「信頼性が」と言っているわけです。何かあるな、と思っていたら案の定、というべきでしょうか。

しかし、公平性のために言及しておくと、
ガーディアンが、このKfWの件につき、「スキャンダルではないと主張」しているアメリカの金融アナリストがいることを紹介しています。
ガーディアンは基本、リベラルですので、「スキャンダルではない」という主張があると紹介することで、逆に「スキャンダルかも」と匂わせているように思われますが、どうでしょう。









※チプラス首相も、さすがにそれは受けられなさそうですね。

この件を含め、クルーグマン教授がご立腹です↓。







シリザと緊密な関係を持つ、スペイン版シリザと言えるポデモスは、最近の世論調査では上位2政党と支持率でほぼ並んでいるそうですが、そのポデモスの党首も大層ご立腹↓







そして今の大きな流れがこれ↓






そして、チプラス首相は水曜日までに色々なことをやり切ることを迫られています↓。


ギリシャに72時間の猶予、欧州首脳が緊縮策の法制化を要求
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NRDT9VSYF01T01.html
ブルームバーグ 2015/07/13




国民投票だ!とやってから得た成果物の数々を考えるとギリシャのシリザ政権は大した交渉上手だ、とはいまも思っていますが、二次大戦前からの生き残りであるショイブレ独財相らの老獪さも凄まじいものがあるようです。

何やら、タヌキとキツネの化かし合いに多くの諸国民(とりわけギリシャ国民)が巻き込まれている、という具合でしょうか。

日本の政治家や官僚の皆さんは、世界において、こんな海千山千な人達と互角以上にわたり合わなければならないのか、というのが私のいまの率直な感想です。



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678:ギリシャ瀬戸際外交の瀬戸際――瀬戸際なのはギリシャだけでなくドイツやEU全体も、だと思いますが!

2015/07/12 (Sun) 16:08
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ギリシャ問題、ギリシャの超緊縮案の国会での圧倒的多数による可決に加え、安全保障問題なども考えれば、もうちょっとすんなり行くかと思っていましたが、なんともすったもんだしている模様です:








フィンランド財相:これ以上ギリシャに資金を出すことを拒否。
ドイツ財相:ギリシャは少なくとも5年間ユーロ圏から外れるべき。

ドイツや東欧諸国は、とにかく信用ならん、という感じ。

一方、フランス、イタリアは「なんとかしないと」という感じ。








ドイツ人は、第一次大戦の巨額賠償金を課せられ、それが延滞したことでフランス軍とベルギー軍に占領され、それでハイパーインフレとなり、共産主義グループと資産家グループの対立激化で内乱・暴動が頻発、そしてヒトラー率いるナチスの登場&悲惨な第二次大戦となり、最後はギリシャ含む戦勝国から債権放棄してもらって立ち直った、ということを本気で忘れているのでしょうかね?

もしそうならば、一人の人間として私にはかなり本気で理解不能ですが、政治的駆け引きということなら、まあ、それはそれであり得るかとも思います。

政治的駆け引きとすれば、上記のツイートのように

ギリシャ信頼できん→カネの管理はEUの関係機関か何かでやらせるというなら信用してやろう→EUによるギリシャの財政自主権の全部または一部接収

を狙っているのかも知れません。


ショイブレさんは、少なくとも5年は出てってもらうと言いますが、その間にギリシャで共産主義者と極右勢力の内戦でも起きたら責任取れるのかしら。

ちなみに、金曜日の夜、というか土曜日の明け方(現地時間)に行われたギリシャ国会の緊縮案採決では、与党シリザから17議員の造反が出ました(ほとんどは欠席か白票という形の造反。反対票は2)
その中心だったのが、シリザ(急進左派連合)の中でも、最左翼と言える「Left Platform」というグループです(シリザは元々13の左派団体の連合体)。

シリザ最左翼の「Left Platform」の代表は生産復興・環境・エネルギー大臣であるラファザニス氏で、元は共産党出身。その「Left Platform」を構成する団体の一つである Internationalist Workers' Left (DEA)は、

革命マルクス主義

を標榜しています。


革命マルクス主義。略すと「革マル」。どこかで聞き覚えのある響きでありますが…。


彼ら「Left Platform」は、土曜日早朝の緊縮案採決の直前においても、ギリシャのユーロ脱退を主張しています。

つまり、ショイブレ独財相がいうような一時的にでもギリシャのユーロ脱退ということに万が一なったとき、この革命マルクス主義グループの皆さんが勢いづくということになろうかと思われます。ドイツあるいはEUはそれで本当にええのんか、という話です。

仮に交渉の決裂によってギリシャの銀行が全面的に破綻に追い込まれ、ギリシャ政府が自らの意志でユーロ脱退を余儀なくされた場合、勢いづくのは「革命マルクス主義」の皆さんだけでなく、ユーロ脱退を標榜していたネオナチの黄金の夜明けも勢いづくでしょう。

じゃあ、内戦か?

というとそれは恐らく、外国勢力がどのような形で、どこまで介入するかによるのではないかと思います。

1946-1949年の内戦では、共産勢力はユーゴスラビアとソ連の、右派・国軍勢力は米英の支援を受けていましたが、いまどき共産勢力を全力で後押しするような大国があるかな…と考えると、内戦の可能性は低いかも知れません(武器の供給が無い限り、戦争しようがない)。もちろん、ウクライナのような米露の代理戦争の場と化す可能性もなきにしもあらずですが。

仮にユーロ離脱(グレグジット)となった場合、ギリシャ軍が内部分裂しない限りは、タイのように一時的(?)に軍政を取ることでひとまず落ち着くかも知れませんが、どうでしょう。まあ、その場合はギリシャ軍事政権を自陣営に取り込もうとする大国間の外交的な「争い」があるかも知れません。


で、ドイツの政権が本当に↑こんなことになることを望んているか?というとやはりそこは疑わしいと感じる次第です。


↑のようなことになるのは、ドイツ、EU全体にとってもまさに瀬戸際と言えます。
「ユーロ圏拡大」のみならず、「EUの民主主義、人権主義拡大」も頓挫することになるからです。
じゃあ、EUって何なの?意味あるの?
という話になります。

ちなみにロシアのプーチン大統領は最近、「ギリシャ危機が拡大しているとき、EUはどこにいたのだ?」と突っ込みを入れています。要するに、EUって何か意味あんの?的な。
EUの盟主たるドイツにとって、まさにそういう意味での瀬戸際というわけです。



そして、対照的なのが先進国のすったもんだを尻目に勢力拡大を図るBRICSグループであります。














欧州は、まあ、憲法で財政赤字を禁じている、財政黒字原理主義とでもいうべきドイツ主導で緊縮

アメリカ
もこれ以上借金増やせない的な雰囲気(私は増やせると思っていますが、連邦議会、特に共和党はダメだと信じている)なので、どちらかというと緊縮

日本
は、先般の甘利大臣のように、緊縮では進歩はないと主張する閣僚がいらっしゃるとは言え、閣議決定で2020年までにプライマリーバランスの黒字化を目指すことになっているので、やはり、どちらかというと緊縮気味





一方、BRICSは南アの大臣のような

今の世界に必要なのは「一部先進国世界で大きな困難を引き起こしている思慮の無い緊縮財政(mindless austerity)ではない」、インフラ整備だ!投資だ!

という感じです。







緊縮の先進国世界。
投資拡大の途上国世界。

遠からずBRICSを中心とする途上国が世界の中心となって行かざるを得ない
(個人的には緊縮原理主義のドイツの経済規模が世界の中で相対的にどんどん縮小し、その発言力が徹底的に「緊縮」して小さくなり、その発言力が遂には雲散霧消して欲しい)と思う今日この頃です。



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677:TPP:オバマ政権がマレーシア参加させるため人権報告書を「改竄」、奴隷商人に加担しようとしていることは“恥ずべきスキャンダル” ― 米保守系ネットメディア、民主党リベラル議員がTPA法案に埋め込んだ人権条項を盾にオバマ政権を攻撃

2015/07/11 (Sat) 12:52
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TPP、そして先般可決したTPA法案に関連して、米国の保守系ネットメディア 
The Fiscal Timesが非常に興味深い記事を出しています。

※The Fiscal TimesはPeter George Petersonという、元NY連銀総裁にして大金持ち、財政赤字削減、社会福祉費削減、社会保障費削減を信条とする人物が設立したメディア。多分、反オバマケア、ゆえに反オバマと思われます。とは言え、今回の記事を書いている記者は、文面からすると人権を重視するリベラルっぽい雰囲気のような気もしますが。以上を踏まえつつ、以下、紹介します。





The Obama Administration’s Scandalous Stance on Slavery
オバマ政権の奴隷制に対するスキャンダラスな姿勢

http://finance.yahoo.com/news/obama-administration-scandalous-stance-slavery-091500575.html
The Fiscal Times, Fri, Jul 10, 2015
By David Dayen


I thought the list of betrayals in the Obama administration’s trade agenda couldn’t swell any further, but a remarkable development this week proved me wrong.
私は、オバマ政権の通商政策に関する「裏切りリスト」がこれ以上長くなることはないと考えていた。しかし今週、驚くべき進展があり、私が間違っていたことが証明された。

Add to those wronged the unfortunates sold to Malaysian slave traders.
その「間違いリスト」に加わるのは、マレーシアの奴隷商人に売り飛ばされた不幸な人々だ。

Hopes that international pressure would force the Malaysian government to protect these victims has been snuffed out, overcome by the White House’s desire to write a trade agreement.
国際社会の圧力によってマレーシア政府がこれら奴隷商人の犠牲者を保護せざるを得なくなるという希望は、ホワイトハウスが通商協定(※TPPのこと)を何が何でも締結しようとしていることによって、消えうせた。


According to Reuters, next week the State Department will release its annual report on human trafficking, which will upgrade Malaysia from a Tier 3 country, the worst of the worst, to Tier 2.
ロイターによれば、国務省は来週、人身売買に関する年次報告書を発表する。その報告においては、マレーシアが「Tier 3」、つまり、最悪の中の最悪というランクから、「Tier 2」に格上げされることになっている。


This comes just weeks after authorities in Malaysia discovered a mass grave of 139 Rohingya Muslims, who fled discrimination in Burma and were sold into slavery upon their escape.
これは、ミャンマーでの差別から逃げ、そして逃げたところを奴隷商人に売られた、イスラム教徒のロヒンギャ族139人の遺体をマレーシア当局が発見してからたったの2週間後のことである。


Last year, the State Department listed Malaysia among the world’s worst human trafficking nations because of “limited efforts to improve its flawed victim protection regime.”
昨年、国務省は「被害者保護政策の欠陥の改善につき、限られた努力しかしていない」という理由で、マレーシアを世界最悪の人身売買国に指定していた。


The report described a horrendous life for Malaysia’s foreign workers, threatened by large smuggling debts and confiscated passports that put them at the mercy of recruiting companies. Women in particular, recruited for hotel or beauty salon work, are routinely coerced into the commercial sex trade.
その報告書は、マレーシアの外国人労働者の凄まじくひどい生活、密入国費用についての多額の債務とパスポートの没収により、採用企業の慈悲にすがりつかなければならないようにし向けられている、というように描写している。特に女性は、ホテルやビューティーサロンで採用され、日常的に売春を強いられている。


The conviction rate for smugglers has actually fallen in Malaysia since last year’s report, suggesting no improvement on fighting human trafficking.
昨年の報告書以後も、マレーシアにおける(人身売買の)密輸業者の有罪判決率は実際に低下しており、人身売買との戦いが改善していないことが示唆される。


One house of Malaysia’s parliament did pass legislation giving more protections to slavery victims, but it further criminalizes something that’s already illegal.
マレーシア議会のうちの一院において、奴隷被害者により大きな保護を与える法案が可決されたが、それは犯罪者らに違法行為をより一層推進させている。

(※恐らく、被害者保護が充実すれば、密輸業者がその被害者たちから密輸代金をより一層回収しやすくなる、ゆえに密輸業者はより一層人身売買に励むことになる、ということかと思われます)

The problem has always been sustained enforcement.
この問題はこれまでも常に強調されてきた。

The U.S. Ambassador to Malaysia, Joseph Yun, criticized the lack of will to defend trafficking victims as recently as this April.
米国のJoseph Yun駐マレーシア大使は、この4月に人身売買被害者を保護する意思の欠如を批判したばかりだ。


Yet an unnamed administration official told Reuters that the U.S. had been working closely with Malaysian leaders to remedy the problem.
匿名の政権高官がロイターに語ったところでは、米国はマレーシアの指導者に対し、この問題の改善を密接に働きかけてきた。



The political implications of reclassifying Malaysia suggest another rationale for the upgrade.
マレーシアのランク変更の政治的な影響は、ほかに理論的な根拠があることを示している。

During the markup of trade promotion authority (aka “fast track”), signed into law by the president last month, Sen. Robert Menendez (D-NJ) passed a provision denying access to fast-track procedures for any trade partner in Tier 3 on the human trafficking report.
先月大統領が署名して立法手続きが完了した、大統領貿易促進権限(TPA、ファーストトラック)法案の最終折衝において、ロバート・メネンデス上院議員(民主党、ニュージャージー選出)は、人身売買報告書で「Tier 3」にランクされている交渉相手国を、TPA法の手続から排除する条項を可決させた。




Malaysia is one of the 12 countries negotiating the Trans-Pacific Partnership (TPP), the first deal to be finalized under the reauthorized fast track process.
マレーシアはTPP交渉参加12か国のうちの一つである。TPPは、再承認されたTPA法において、最初に妥結しそうな通商協定である。

If it remained in Tier 3, either TPP would not get the benefits of fast track — meaning that Congress could try to amend the trade agreement or filibuster it, and wouldn’t have to bring it to a vote within 90 days of being signed — or Malaysia would have to leave the agreement.
もし、「Tier 3」のままであれば、TPPはTPA法の恩恵を受けないことになる――つまり、議会は通商協定の修正や議事妨害を試みることができるようになるし、協定署名から90日以内に採決する必要もなくなることになる――か、あるいは、マレーシアは協定から離脱しなければならなくなる。


Upgrading Malaysia to Tier 2 allows the country to stay in TPP.
マレーシアを「Tier 2」に格上げすることは、マレーシアをTPPに入れることを許す。


And Menendez is livid about it, saying in a statement, “If true, this manipulation of Malaysia's ranking… would be a perversion of the trafficking list and undermine both the integrity of this important report as well as the very difficult task of confronting states about human trafficking.”
メネンデス上院議員はこのことについて怒り狂っており、声明において「もし本当なら、これはマレーシアの格付け改竄であり…人身売買格付けリストのねじ曲げであり、この重要な報告書の高潔性と、人身売買問題で対立する国々との非常に困難な作業を台無しにする」と言っている。




Instead of hitting them with sanctions until they improve — Tier 3 status can lead to withholding of foreign aid — the administration is instead granting Malaysia trade benefits and then hoping for more influence once they’re inside the trading regime.
彼らが改善するまで制裁を加える――「Tier 3」であれば、外国からの援助を停止できる――代わりに、(オバマ)政権はマレーシアに通商上の利益をマレーシアに与え、通商協定圏内に入ることによるマレーシアの影響拡大を望んている。

Plus, these slaves produce the very goods that would get duty-free access to U.S. markets under the TPP. Forced labor is reportedly high in the agriculture, electronics and textile industries in Malaysia, yet the United States is apparently willing to overlook that to complete the trade deal. So consumers like you and me who unwittingly buy things made in Malaysia could be implicated in the slave trade as well.
加えて、これらの奴隷が作る製品はTPPにおいて関税なしで米国市場に流入する。強制労働はマレーシアにおいて農業、エレクトロニクス、繊維産業で主に用いられていると報告されている。それにもかかわらず、米国はTPP協定を締結するために見過ごそうとしているようだ。あなた方や私のような消費者は、知らぬうちにマレーシア産の産品を買うことにより、奴隷商人に加担することになりかねない。



Malaysia controls parts of a critical oil shipping lane in the Straits of Malacca, where China receives much of its shipments.
マレーシアは、中国も多くの貨物を受け取っているような、重要な原油運搬航路であるマラッカ海峡の一部を支配している。

Keeping Malaysia as an ally allows America, whose Navy controls access to the strait, to habitually pressure China with the implied threat of cutting off its oil. So Malaysia is a key strategic partner, the rampant epidemic of forced labor within its borders notwithstanding.
マレーシアをアメリカの同盟国に留め、アメリカ海軍がマラッカ海峡へ出入りを掌握しておくことは、中国に対し、原油供給が断絶する脅威を常に与えることができる(※)。


※原油供給が断たれる脅威については、そのまま日本に対しても当てはまりますね。個人的には、TPPがアメリカでぶっ壊れ、それはそれとしてアメリカ、日本、アジア諸国の関係が良好に維持されることを望むところであります。


The episode crystallizes exactly who trade agreements like TPP are really designed for: elites and corporate titans, not ordinary workers.
以上のような話は、TPP協定が誰のために設計されているかを正確に、はっきりとさせている:特権階級と超巨大企業のためであり、一般労働者のためではない。

Sometimes you hear the argument that workers in poor countries like Malaysia should be thankful for foreign investment.
時としてあなたは、マレーシアのような貧困国の労働者は外国からの投資に感謝している、という議論を聞くだろう。

Working in a sweatshop may be arduous, but it at least improves wages and creates jobs, the argument goes. The high incidence of trade partners that do nothing to stop forced labor obliterates this theory.
ブラック企業(sweatshop)で働くことは耐えがたいものであるが、少なくとも賃金が改善し、働き口を生み出す、というように議論は続く。多くの協定国が強制労働を止めようとしていないことで、この仮説は完全に崩壊している。

Workers in Malaysia have no reason to thank the United States for facilitating their toil as slaves. And manipulating a government report to that end should be called out for what it is: a shameful scandal.
米国が奴隷としての彼らの苦役を助長することについて、マレーシアの労働者が感謝する理由はない。政府の報告書をそような理由で改竄することは、このように呼ばれなければならない:恥ずべきスキャンダル。





途中、「…」で略している箇所も興味深いところがあったのですが、長いので省略しました。


ところで、記事で触れられている、TPA法案(というか、成立したのでTPA法)に民主党のメネンデス上院議員が押し込んだ条項を、以下に引用しておきます:



(6) LIMITATIONS ON PROCEDURES WITH RESPECT TO AGREEMENTS WITH COUNTRIES NOT IN COMPLIANCE WITH TRAFFICKING VICTIMS PROTECTION ACT OF 2000.—

(A) IN GENERAL.—The trade authorities procedures shall not apply to any implementing bill submitted with respect to a trade agreement or trade agreements entered into under section 103(b) with a country to which the minimum standards for the elimination of trafficking are applicable and the government of which does not fully comply with such standards and is not making significant efforts to bring the country into compliance (commonly referred to as a “tier 3” country), as determined in the most recent annual report on trafficking in persons submitted under section 110(b)(1) of the Trafficking Victims Protection Act of 2000 (22 U.S.C. 7107(b)(1)).

(B) MINIMUM STANDARDS FOR THE ELIMINATION OF TRAFFICKING DEFINED.—In this paragraph, the term “minimum standards for the elimination of trafficking” means the standards set forth in section 108 of the Trafficking Victims Protection Act of 2000 (22 U.S.C. 7106).

要するに、国務省の最新の年次報告書で人身売買格付けが「Tier 3」とされる国には、通商協定交渉においてTPA法のプロセスを適用しない、ということです。





いやはや、しかし。

上記の記事の論法で言うと、TPPがこのまま成立すると、日本も奴隷商人のカネ儲けに加担してしまうことになりますね…。

アメリカの駐マレーシア大使が「人身売買被害者を保護する意思の欠如を批判」したばかりであるのに、国務省の人権報告書でマレーシアが格上げされる(予定)であるというのが本当であれば、かなり不自然な印象を持たざるを得ません。
それは、TPPのための改竄・操作か、と思ってしまうのは自然ではないかと。

しかし、
TPA法には上記のメネンデス上院議員が押し込んだような条項以外にもいろいろなトラップが仕込まれているとも思われます。

こういったことが頻繁に問題化し、米国でのTPP反対運動が盛り上がるか、どうか…。



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676:ギリシャ、TV広告税導入へ(→国民投票実施の真の目的??日本では広告税導入検討で麻生内閣が倒れたとの噂も…) - ギリシャ、債権団にGDP比7%の緊縮財政案を提出(日本で言えば、自衛隊7個分消失の強烈な緊縮財政案)

2015/07/10 (Fri) 11:41
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まず、昨日のギリシャ危機関係の動きというか、私のツイートをまとめてどうぞ:















※目下、ギリシャ支援に積極的なのは、フランス、イタリア、そしてEU大統領のトゥスク氏(ポーランド前首相)と目されているようです。

フランス:左派政権としてのチプラス政権に対するシンパシーと、ドイツに対抗する政治力の向上を図ることが背景か?

イタリア:自国も財政はそれほど安泰というわけではないため、ギリシャが助けられなければ、明日は我が身という恐怖心?

トゥスクEU大統領:トゥスク氏自身が第二次大戦中にナチスに強制収容所に入れられた経験があり、ドイツに対しては多少なりとも含みがあるかも。そして、ポーランド人が一般に持つロシア恐怖症も背景か?但し、トゥスク氏自身はスラブ系(ちなみに、ロシアもスラブ系が多い)とのことですが。(トゥスク氏の経歴はwikipedia参照







※↑これは前回の話の関連ですが、今回の表題の話(TV広告税導入?)にも関連します。少なくとも、この国民投票をテコに「政権にとって、うるさいTVキャスターたち」を黙らせる効果はあったようです。善悪良否は別として。








※ガーディアンの当該ページにいくと、各地区のところにマウスオーバーする(マウスのポインタを合わせる)と、詳細なデータが表示されます(地区ごとの投票のNOとYESの結果と、平均所得が同時表示される仕組みになっている)。

※実は、投票結果が出る以前にギリシャ在住の「グリコーゲン」さんから、世論調査は拮抗でも実勢はNOが優勢であること、YESは富裕層が多く、NOは一般庶民が多いことは、内緒コメントで教えて頂いていたのですが、実際の結果がまさにその通りでした。グリコーゲンさんの観察眼の確かさには敬服するばかりです。

※そのグリコーゲンさんから新たに公開コメントを頂いています(
前回のエントリーのコメント)。ギリシャ産のバージン・オリーブオイルがイタリア産として、ギリシャ産のワインがフランス産として世界に輸出されている実態であるとか、食料自給率は低いが実態としては食糧生産は有り余るくらいであるとか、興味深い内容です。(グリコーゲンさんからは3年前にもギリシャの不法移民に関する興味深い話を頂いていました。グリコーゲンさん、ありがとうございます!)
























最後のはシャレですが、まあ、額面上のヘアカットがなくとも、利払いの減免&返済期限の延期で手打ちになりそうですね。

一方、ギリシャは結局、それと引き換えにするための、かなりの緊縮財政案を提出したようです。


ガーディアンの記事と、ガーディアンによる英FT記者、AP通信、イタリアの経済誌EASTの記者らが得たギリシャ提案のリーク情報のツイートまとめから、ギリシャ提案の中身をざっと書き出してみます:

○増税と歳出減の組み合わせで130億ユーロ(GDP比7%)の緊縮財政案になっている模様
ギリシャの2014年の名目GDPは1865億ユーロなので、GDP比7%の緊縮財政案となっています。日本で言えば、GDP500兆円とすれば、35兆円という超緊縮ですね。自衛隊7個分です。ただ、毎年130億ユーロの緊縮なのか、複数年の合計なのか、それは不明ですが。

○消費税(付加価値税VAT)をGDP比1%分増税
日本では消費税率1%で2.5兆円と概算されますから、日本の消費税率でいうと2%分程度=税収5兆円=GDP比1%の増税という感覚ですね。
消費税の詳細に関しては、
・23%という最高税率を適用する物品の範囲拡大
・観光客誘致のための島嶼部の税率低減案の撤回
という内容が含まれます。


○年金カット
以前のエントリーで、国民投票は債権団案の年金カットが許せん、ということで実施されたにもかかわらず、年金受給者は意外に「緊縮YES」が多数派というという世論調査結果を紹介しました。そして、それゆえに、チプラス政権は年金受給者は年金カットに「YES」であるとみなして、堂々と年金カットに踏み切りそうだとも書きました。実際、そうするようです。

具体的には、
・貧困層向けの基礎年金?(solidarity payments for the poorest pensioners)の2019年12月までの段階的廃止(以前の案より1年前倒し)
・2022年までに定年退職年齢を67歳に引き上げ


○法人増税
・IMFの望みどおり、法人税率を28%に引き上げ(以前の案では29%だった)


○海運会社に対する増税

○贅沢品税の増税
日本でも昔、物品税というのがありましたね。

○テレビ広告に対する課税
これが、最も注目すべき項目の一つかと。

※イタリアのEAST誌の記者のツイート:





「ギリシャ改革案:速やかな贅沢品税の増税とテレビ広告税の実施」


以上、リークなど基にしていましたが、正式な案は↓こちらで見れます(ギリシャ紙の記事)

The Greek reform proposals
ギリシャ改革案

http://www.naftemporiki.gr/finance/story/976680/the-greek-reform-proposals
naftemporiki.gr Παρασκευή, 10 Ιουλίου 2015 00:43

こちらでも

introduce tax on television advertisements
テレビ広告税の導入

とあります。

国民投票における民放テレビ各局のYESキャンペーン偏向が「選挙法違反」ということで締め上げ、黙らせ、テレビ広告税を導入という運びでしょうかね。




チプラス政権が国民投票実施で得たと思われることを列挙してみましょう:

・各国要人や国際機関からの債務減免の必要性への言及を引き出した。特に米国の圧力ともされるIMF報告書の絶妙なタイミングでの公表が大きかったと思われる。

・国民投票「NO」すなわち、債権団による要求を一旦拒否しても、ユーロ離脱はしなくても良いというドイツのショイブレ財務大臣の発言を引き出した。

・国民投票の結果、3大野党の交渉への協力を書面により取り付けることができた。

・国民投票の投票動向から、年金受給者が年金カット含む債権団案にYESであることが判明し、年金カットも堂々と言えるようになった。

・国民投票に対するTVキャスターの偏向姿勢があったことで、選挙法違反を盾に、圧力をかけることが可能となり、TV広告税導入を混ぜ込んだとみられる財政改革案を国会で通しやすくできた(かも)。
→この改革案、ギリシャ国会では現地時間の金曜日夜(つまり、日本時間の本日深夜から明日早朝)に採決されるそうです(ガーディアン記事参照)。



ギリシャ、TV広告税導入へ。

TV広告税といえば、
麻生内閣がそれを実施しようとして倒されたという噂もありますが…

どうやら、危機のギリシャにおいては、日本では不可能であったことが、可能になろうとしているようです。




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675:ギリシャ、国民投票の真の目的は「大手メディアつぶし」か?

2015/07/09 (Thu) 12:19
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ひとまず、昨日までのギリシャ危機関連の各国要人発言をまとめておきます(私の独断と偏見で選んだものだけ、ですが):



【無理のないリボルビングご返済プラン】





一週間前のエントリーでも触れたIMF WEOのデータを見ると、最近のギリシャの利払いはGDP比で4%で程度(一般政府財政収支から一般政府プライマリーバランスを差し引いて計算)です。

そして、公的債務GDP比は170%程度です。

元本の免除をしないとしても、金利のうちGDP比3%分を免除するとして、その分を元本返済に充てさせることとすれば、
170%÷3%=57
ということで、57年後には完済できます。

ギリシャ:57年目ぇ~の返済くらーい大目に見ろよ♪
ドイツ:キラキラオー、土下座したって、許してあーげーない♪

バロファキス前財相の「テロ」発言で怒り狂っている人々がいるようなので、その件でチプラス首相が土下座でもすれば、許してもらえるかも…。




【地政学上の重要性】












フランス首相の発言にある「インポテンス」ですが、元はフランス語なのか英語なのか分かりませんが、ガーディアンの記事では「impotence 」とありました。weblio英和辞典によると

impotence
【名詞】【不可算名詞】
1無力,無気力,虚弱.
2【医学】 (男性の)性交不能,陰萎(いんい).


です。仏首相の意図が、「1」の意味なのか「2」の意味なのかは私には分かりかねましたので、カタカナで「インポテンス」としておきました。

ついでながら、以前も紹介したエコノミスト記事にあった、地政学的重要性が分かる地図をもう一度:




ちなみに、↑このツイート主は、エコノミスト誌の記者さんです。





そしてもう一つ、ある意味「地政学的」な話:






↑日本も他人事ではありません。東シナ海や日本海の対岸の国々が崩壊なんてことになった日にゃ…。






そして、表題の件。






もう少し補足しておくと、国営のメディア監視組織やシリザ寄りのメンバーが多い「ジャーナリストとアテネ日刊紙の組合 the Union of Journalists and Athens daily newspapers (ESIEA) 」は、民放各局の報道姿勢が選挙法に違反していた、と非難しているとのことです。

そして、私がこのガーディアンの記事を見て思ったのが、これがチプラス首相の、国民投票を唐突に実施することにした真の狙いであったのではないかという仮説です。

ガーディアン記事では

Private channels (many owned by the oligarchal elite and other business interests)
民放の各テレビ局の多くは、oligarchal elite(少数のエリート)や business interests(企業関係者)に所有されている

とあります。

oligarchalとは少数独裁政治的という意味です。
ロシアの財閥はオりガルヒと呼ばれますが、その関連語ですね。


シリザ政権は、今回の国民投票の件を利用して、大手メディアを、極端な話、つぶそうとしているのかも知れません。

そして、もしかしたら、それを国民投票以前から計画していたのかも知れません。

もしそうだとしたら、善悪良否は別として、途方もない策士ということになります。そして、もしかすると、プーチン大統領ともこういったことを相談していたのかも(?)。

…などと色々考えてしまう今日この頃であります。




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674:甘利大臣の緊縮NO発言が、あまり日本で報じられていない(というか日本のメディアがあまりにも報じなさ過ぎる)件

2015/07/08 (Wed) 10:57
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まず、昨日のギリシャ危機関係の動きをまとめておきます:




遂に、最終期限が切られました。


トゥスクEU大統領はこれまで、ギリシャに対し融和的な発言をしてきていますので、恐らく本音としては、このグダグダを日曜日で終わらせ、ギリシャの破綻も、破綻後の可能性としてあり得るギリシャのユーロ離脱も回避したい、ということかと思います。


その他、ガーディアン記事を参考にして昨日の動きをごく簡単に:

・ドイツのメルケル首相との電話会談でチプラス首相が約束していた、昨日が期限のギリシャからの新提案の提出はなかった。

・ユーロ財相会合では、文書化した提案の代わりに、ギリシャのツァカロトス新財相が口頭でプレゼンを行った。新財相の人当たりの良さで、会合の雰囲気は悪くなかった模様。

・文書化された新提案の提出期限は金曜日の朝(現地時間)となった。

・ユンケル欧州委員会議長やオーストリア財相によると、グレグジット(ギリシャのユーロ離脱)のシナリオも策定中とのこと(破綻があった場合、弱者救済の人道支援を行うことも含む)。これに加えて12日の日曜には、ユーロ圏のみならず、EU28か国の全首脳がブリュッセルに集まるよう、トゥスクEU大統領が要請したことから、いよいよギリシャのユーロ離脱が決定されるか、との憶測も。

→多分、ギリシャに譲歩させるための駆け引きかと思いますが…。

→たった41年前の1974年まで、ギリシャは軍政でした(Wikipedia参照)。混乱がひどくなれば、軍事クーデターが起こった場合の対処シナリオも検討が必要と思われます(前回も書きましたが、軍事政権、独裁政権となれば、ギリシャは独裁政権にやさしい中国やロシア側の国になる可能性が高い)。そして、それは誰も望んでいないのではないかと思われます。そのような意識が、トゥスク大統領の声明にある「ギリシャ破綻は、欧州全体の敗北」ということでしょうね。


いずれにせよ、このドタバタ劇も次の日曜日(日本時間では月曜日の朝くらいかな)で決着となりそうです。







さて、翻って甘利経済再生大臣の「緊縮NO」発言の件です:










このブルームバーグの記事、おそらく、この「甘利大臣の緊縮NO発言報道」の唯一の日本語ソースなので、以下に引用しておきます:



緊縮では「のた打ち回る」とギリシャ証明、日本は成長重視-甘利氏 (1)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NR269D6K50Y101.html
ブルームバーグ 2015/07/07

 (ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)への債務返済が6月末に滞り事実上のデフォルト(債務不履行)に陥ったギリシャについて甘利明経済再生相は、増税と歳出減では財政再建ができない証しだとして経済成長による税収増の重要性を示した。

 付加価値税と軽減税率上げによる増税や歳出減をしたギリシャは結果として「税収はもっと減ってしまった」と甘利再生相はブルームバーグのインタビューで2日語った。その上で「増税と歳出カットだけでやろうとするとのた打ち回るようなことになる」と述べ、健全な経済を取り戻すことで税収を増やすことなしに財政再建はできないとした。

 アベノミクスを受けて日本の税収は2014年度で53兆9700億円と21年ぶりの高水準になった。安倍晋三政権が閣議決定した財政健全化計画では16年度から18年度までを集中改革期間と位置づけ、一般歳出の増加幅を1.6兆円程度にすることを盛り込んだ。甘利氏は一貫して歳出規模の固定化に反対の立場を取り続けてきた。

 甘利氏はインタビューで、これまでの財政再建は歳出カットの甘さによって失敗したとの一部の見方を否定。経済が失速して歳出減が続かなくなったとして「成長が確保されなくなって失敗している」と述べた。

 5日のギリシャの国民投票後も、甘利氏は自身の考え方に変わりがないことを確認した。国民投票では、金融支援を受ける条件として緊縮策の受け入れに反対の民意が示された。また日本については「安倍内閣においては経済再生なくして財政再建なし。一言で言えば、デフレ下では財政再建はできない。そのことに向かい合う必要がある」と話した。





グーグルで「甘利 ギリシャ」でニュース検索した結果、ブルームバーグの日本語版以外、全く見つかりませんでした。


英語(
「amari greece」でニュース検索)では、上記のツイートの英ガーディアン紙や、ギリシャの英語ニュースサイトなど。


あと、今回の分ではなく、先週6月30日付けの甘利大臣による同様の趣旨の発言に関するロイターを引用している
インドの経済紙記事が見つかりました。

で、そのロイター英語版記事のタイトルと要約が↓こちら



For Japan, lesson from Greek crisis is to keep on spending
ギリシャ危機の教訓は、日本が歳出を維持すること


* Austerity caused Greek economy to shrink - Japan economy min
* 緊縮財政はギリシャ経済を収縮させた - 日本の経済大臣

* Japan's debt-to-GDP ratio 230 pct vs Greece's 175 pct
* 日本の債務GDP比は230%で、それに対し、ギリシャは175%

* Some analysts say Greece shows Japan should cut debt now
* 一部の分析家は、ギリシャは日本がいま債務削減すべきことを示している、と言っている

* Japan avoided caps on spending in new fiscal blueprint
* 日本は新しい財政計画で支出上限を定めることを避けた

By Leika Kihara and Yuko Yoshikawa

http://www.reuters.com/article/2015/06/30/eurozone-greece-japan-idUSL3N0ZG2U320150630
Reuters, Tue Jun 30, 2015


で、これに対応する日本語記事をロイターの日本語版で見つけようとしましたが、6月30日前後の日付で、これに対応する記事は見当たりませんでした(英語版の記事を書いたのが、Kiharaさん、Yoshikawaさんという日本人記者と思われるのに、です)。





先般のロンドンの大規模反緊縮デモといい、日本のメディアは、「緊縮NO」に関して報道することを避ける傾向にあるようです。たとえそれが、地球の反対側の出来事ではなく、自分の国の閣僚の発言であったとしても。

“甘利大臣の「緊縮NO」発言が、日本であまり報じられない、というよりはあまりにも報じられなさ過ぎであることは、あまりにも問題だ!”




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673:ギリシャ新財相は反グローバリゼーション、反新自由主義の経済学者:冷静で物腰柔らかな、ギリシャ左派期待の星

2015/07/07 (Tue) 12:23
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何ともギリシャにどっぷりつかってしまっている今日この頃であります。

表題のギリシャの新しい財務大臣、ツァカロトス氏――祖父のいとこが、左派勢力と戦って勝った政府軍側の指揮官の一人だったのに対し、本人曰く「これ以上左に行きようのないくらいの左派」で、反グローバリゼーション・反新自由主義の、イギリスで生まれ育った紳士的な経済学者――に関する興味深い話はあとにして、昨日のギリシャ危機関連の動きをまとめておきます:




※バロファキス前財相は、正確には「欧州の要人らが、ギリシャ人に恐怖を煽っている。恐怖を煽ることはテロだ」という趣旨のことを言っていました。で、ツァカロトス新財相はイギリス育ちの紳士という塩梅。なお、両者に共通するのは左派経済学者であるという点。







※↑元々は英エコノミスト誌の記事に掲載されていたもので、前回紹介した駐米フランス大使がリツイートしていたので私の目に留まったという代物。
よくよく考えれば、ギリシャの隣はトルコです。その隣はシリアです。ISの支配地域です。また、地中海の対岸にもIS系勢力が蟠踞するリビアが控えています。ギリシャが万一崩壊してめちゃくちゃになると、IS系勢力のシンパの人々が自由に行き来できるような、欧州とIS支配地域とをつなぐ格好の交通路になってしまいかねません。
冷静に考えれば、ギリシャをどうこうしてしまうのは、ドイツにとっても明らかに損失のほうが大きいように思われます。ギリシャはドイツと陸続きであって、ドイツとギリシャの間には、地中海もボスポラス海峡もないのです。

債務免除しない→ギリシャ経済がめちゃくちゃになって結局カネは返ってこない(きっとギリシャ側が踏み倒す)上に、安全保障上もめちゃくちゃ。
つまり、
カネ×
治安×

債務免除→カネはカネは返ってこないが、安全保障上は安定しやすい。
つまり、
カネ×
治安○

⇒ドイツ人も最終的には「債務免除のほうがマシ」となるのが自然ではないかと思う今日この頃です。







※個人的には、シュワちゃんが知事だったときのカリフォルニアで発行したというIOU(I owe you。借用証書。日本で言えば、日銀券も日銀が発行しているIOUですが、イメージとしては幕府発行の小判に対する各藩独自発行の藩札という具合でしょうか)が、電子的に発行されていた(らしい)という点でした。電子マネーてなわけですね。
企業で経理に関わっている方なら、手形取引とか買掛、売掛による取引のイメージのほうがしっくり来るかも知れません。企業は、取引先との取引の際、いきなり現金払いするのではなく、手形や買掛でひとまず「支払う」ということはよくあることです(現金・預金は後から清算)。
でも、これをやってしまうとユーロから抜けるつもりか、と誤解されかねないので、チプラス首相は採用しないということなんでしょうかね。









※個人的には、チプラスさんがメルケルさんに電話するよりも先にプーチンさんに電話していたということは、非常に重要なポイントだと思います。
借金取り(ドイツ)に電話する前に、弁護士(ロシア)に電話したみたいな印象。法定金利を超えている過払いなので、むしろ返金してもらえませんやろか、みたいな。







※チプラスさんの「国民投票は、あります!」の宣言後、債務免除(debt relief。私は全部免除になることはなく、一部免除だと思うので債務減免と訳しています)という用語が脚光を浴び、各国の要人の発言やIMFの報告書などにおいて、繰り返し出て来るようになりました。
さらには、前に書いたように、バロファキス前財相が「ギリシャが自らの意志に反して強制的にユーロから脱退しなくてもよいという命令を欧州司法裁判所に出してもらうことを考えている」とテレグラフ紙に言った後、それに呼応するかのようにドイツのショイブレ財相が「ギリシャは“NO”でもユーロ脱退しないことが可能」と発言しています。そして、世論調査ではギリシャ人は圧倒的多数でユーロ離脱に反対です。つまり、法理論的にギリシャのユーロ離脱はいまのところあり得ない、ということが明確になっているわけです。
この2点は、ギリシャにとって、とてつもない前進と言えます。そして今般、国民投票にすら反対し、債権団の緊縮案「YES」キャンペーンをしていた主要3野党も、チプラス首相に協力を約束するという運びになっているわけです。





さて、ギリシャ左派期待の星、ツァカロトス新財相が何ものか、という話をガーディアンの記事から拾っていきましょう:


Euclid Tsakalotos: Greece's secret weapon in credit negotiations
ユークリッド・ツァカロトス:債権団との交渉における、ギリシャの秘密兵器

http://www.theguardian.com/world/2015/jun/18/euclid-tsakalotos-greeces-secret-weapon-in-credit-negotiations
The Guardian, Thursday 18 June 2015

Oxford-educated economist is well qualified as the point man in negotiations between Athens and international creditors
オックスフォードで教育を受けた経済学者は、ギリシャと国際債権団との交渉担当者としてうってつけ



※以下、↑この記事からいくつかの文章を抜き出して紹介します。


Phlegmatic, professorial, mild-mannered, Tsakalotos has spent the best part of 30 years in the ivory towers of Britain and Greece “engaging critically” with neoclassical economic thinking.
冷静な、学者らしい、物腰柔らかなツァカロトスは、英国やギリシャの象牙の塔で30年を過ごし、新古典派経済学の思想に対して批判的に取り組んできた。

“The fact that he also sounds like an aristocrat helps too,” said an insider in the Syriza party. “He speaks their language better than they do. At times it’s been quite amusing to watch.”
シリザの内部関係者は「事実、彼は特権階級からも助けてもらえそうな響きがある彼が貴族のような話し方をすることも、役に立つだろう。彼は、彼らの言葉を、彼ら以上にうまく話せる。たまに、そのような様子を見ることがあったが、愉快だった。」

“My grandfather’s cousin was general Thrasyvoulos Tsakalotos who led the other side, the wrong side, in the Greek civil war,” he said of the bloody conflict that pitted communists against rightists between 1946-49. “He expressed the fear that I might end up as a liberal, certainly not anything further to the left.”
「私の祖父のいとこはThrasyvoulos Tsakalotosで、彼は、ギリシャの内戦であちら側、間違った側を率いていた」と、彼は共産主義者と右派(国軍)との間に起きた、1946-49年の流血の衝突のことを話した。「彼は、私がリベラルになってしまうことを恐れていたが、確かに私はこれ以上左に行きようがないくらいの左派になった」

※新財相の祖父のいとこThrasyvoulos Tsakalotosはギリシャ軍の陸軍中将。内戦では、ナチスの占領軍に抵抗して戦い抜いた経歴をもつ左派武装勢力を、米英の支援を受けた国軍が打ち負かしたのですが、新財相のご親戚は、国軍で陸軍2個軍団を率いて、その左派勢力を打ち負かしたというわけです。そして、それにも関わらず、ご本人はガチ左翼になった、ということ。


新財相がなぜ、そこまで左派にシンパシーを感じるかというのは、以下のようなことのようです:

What goaded him more than anything else was the treatment of the Greek left – who had led the resistance movement against Nazi occupation – after the second world war.
他の何よりも彼を突き動かしたのは、ナチスによる占領への抵抗運動を主導したギリシャ左派に対する、第二次大戦後の扱いであった。

“Greeks have had a lot to resist, civil war, dictatorship, authoritarianism,” he said.
「ギリシャ人は内戦、独裁、権威主義など多くのことに抵抗してきた」と彼は言った。

“But perhaps the most terrible thing was the unfairness with which the left was treated in the postwar period. We were the only nation where people who had participated in what had been a very important resistance movement were treated like pariahs while those who had collaborated with the Germans had it good. It was just so wrong.”
「しかし、恐らくもっともひどいことは、戦後期における左派の扱われ方の不公平さだ。我々は、最も重要な抵抗運動に参加した人々が社会ののけ者のように扱われている唯一の国だ。その一方で、ドイツに協力してきた人々が良い思いをして来た。これは単純に、あまりにも間違っている。」

※「ドイツに協力してきた人々が良い思いをして来た」という新財相の発言に関して。コメント欄でギリシャ在住の方から教わったのですが、ギリシャの公益事業は大部分がドイツ資本なのだとか。ドイツに協力してきた人々というのはそういう含みなのかも知れません。一方で、戦時中にドイツに抵抗した人々がまったく報われていない。それが新財相が左派に傾倒した背景だ、ということのようです。
「ギリシャの公益事業は大部分がドイツ資本」とすると、ドイツはやはりギリシャをつぶせないでしょうね。ギリシャ人が怒って軍事政権とかになり、独裁者にやさしい(?)中国やロシアの支持を背景にドイツ資本の公益事業が独裁政権に接収されてしまうリスクもあるわけですから…。


When he moved to Greece, with his Scottish wife in the early 1990s, he signed up with Synaspismos, the party that would become the central plank of Syriza.
1990年代、彼がスコットランド人の夫人とギリシャに移り住んだとき、彼はSynaspismos、後のシリザの中心をなすことになる政党、に入党した。

The anti-globalisation movement convinced him that there was a large segment of society that felt it was not expressed by political elites – one of Syriza’s many mantras.
反グローバリゼーション運動について政治的エリートが表現することがない、と社会の大部分の人々が感じているということを、反グローバリゼーション運動は彼に納得させている。これは、シリザの多くの「教義」のうちの一つだ。

Like many on the Greek left, he believes Athens’ anti-austerity government speaks for the growing numbers across Europe who, subjected to the brutal vagaries of the market, feel excluded from decision-making.
多くのギリシャ左派と同様、彼はアテネの反緊縮財政の政府は、市場の残酷な気まぐれに従って、意思決定から疎外されていると感じている人々が増えつつある欧州と対話するのだと信じている。





政権与党シリザはユーロに留まることを公約しています。ユーロはある意味グローバリゼーションと言えますが、シリザ、そしてシリザに属する新財相の意図は、市場主義、新自由主義において自分たちの考えを表明できていない反緊縮・反グローバリゼーション派の意見を、EUで出来る限り広め、そしてそのような政策をEUで採択させてやろう、という腹積もりのようです。




追記:
ここから→


→ここまで




つまり、「超巨大企業群VS一般諸国民」という構図の、一般諸国民側に立っているというのが、いまのギリシャ政権の立場ということのようです。

この「超巨大企業群VS一般諸国民」という構図、どこかで見たような、見ていないような…



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672:ギリシャ、反緊縮が地すべり的勝利⇒今後の想定シナリオ:ドイツが「ギリシャをユーロから追い出せ」世論に押されて強硬路線→株価暴落(?)→ドイツ世論に揺らぎ→ギリシャがほど良く妥協し債権団譲歩引出してユーロ居座り

2015/07/06 (Mon) 12:20
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ギリシャ国民投票、直前の「接戦」の世論調査結果が見事に打ち破られ、「NO=反緊縮」が地すべり的勝利となりました。







ただ、NOが「地すべり的勝利」とは言え有権者数に占める割合は36%に過ぎず、実は最大派閥は「無投票+無効票+白票」(41%)でした。


                                     人                対有権者数比
有権者数                       9,858,508   100%
NO票                            3,558,450    36%
YES票                          2,245,537    23%
無投票+無効票+白票 4,054,521    41%

データ出典:ギリシャ内務省データより計算




前回の今年1月の総選挙(現政権が誕生した選挙)の投票率は65%だったと記憶しています。今回の投票率はそれより低い62%でした(有効票の割合は58%)。いや、意外と冷めてますね。
あるいは、生活が厳し過ぎて投票に行く余裕もない人々が多かったのか…






それにしても、前回紹介させて頂いた現地在住の方の話では、大手メディアの「YES」キャンペーンに対し、ネット世論は圧倒的に「NO」だった話を考え合わせると、実に興味深い話です。

というのは、これが本当であれば大手メディアがネット世論に完全に敗北したことになるからです。



前回も少し紹介したAVGI紙(大手新聞で唯一の与党シリザ寄り)に載っていた、事前の世論調査の内訳を見ておきましょう:

AVGI紙の当該ページ
英テレグラフ紙による英訳

Age  No (pc)  Yes (pc)  年齢別
18-25  71  20 
25-34  59  26 
35-44  34  53 
45-54  48  36 
55-64  44  47 
65 and over  26  56 

Job  No (pc)  Yes (pc)  職業別
Private sector  54   34 
Public sector  58   31 
Unemployed  51   26    →失業者
Students  83   13   →学生
Self-employed  39   50 
Pensioners  31  55  →年金受給者
Housewives  42  42 


若年層、学生は「NO」が圧倒的だったのに対し、高齢者、年金受給者が「YES」が優勢だったという興味深いデータになっています。


関連ツイート:




※今後、今回の結果を踏まえて若年層が自分たちの政治的影響力に自信を深め、ギリシャの政治に大きな影響を与えるのではないでしょうか。






次に、
今後の想定シナリオについて検討する前に、
今回の投票締め切り前の独仏要人の言動――締め切り前、ということは、投票行動に影響を及ぼし得る発言――を紹介しておきたいと思います:






※ついにフランスの閣僚、ナチスのネタを持ち出しましたね。しかも、あからさまに「NO」への投票を呼び掛けています。







※正確には、木曜日のインタビュー内容が、投票の真っ最中に公表されたのに対し、欧州議会議長がそれを打ち消すかのような発言をした、ということのようです。ただ、対ギリシャ強硬発言は国内向け、融和的な発言は海外向け(特に、ギリシャの有権者向け)というような、微妙なさじ加減をしているのでしょう。まさに政治的、と言えます。




もう一つ、フランスの駐米大使もツイッターでこんな発言:



※これも投票時間中のものです。訳すと:

「ギリシャの国民投票がどんな結果になろうと、フランスはギリシャがEUとユーロ圏に留めるために最大限度のことをする」






というわけで、

投票締め切り前までの独仏の政治家の姿勢はこんな感じ:

ドイツ
前回書いたショイブレ財相も、今回の欧州議会議長も、国内向けは強硬発言(ギリシャをユーロから少なくとも一時的に追い出す)、国外向け(これから投票に向かうギリシャ有権者含む)は融和的発言、という様相でした。

フランス
以前も書きましたがオランド大統領は国民投票を待たずに交渉を続けるべき、という感じで親チプラス政権的発言で一貫しています。そして今回の、経済大臣、駐米大使のいかにも「NO」に投票しましょうという踏み込んだ発言がフランス要人の特徴といえます。しかも、ナチスまでうまく持ち出してドイツをけん制しています。ただ、オランド大統領はあからさまに「NO」への投票呼びかけはしていないようです。それをやるとドイツと決定的にこじれる可能性を頭に入れて、周りの要人だけがそのような発言をするに留める、という微妙なさじ加減の駆け引き展開の様相です。




で、投票結果を受けた経済メディアの反応は、こんな感じ:






まずは、つい最近もチプラス首相の「ほぼ無条件降伏」報道で株価を上昇させた実績のある英フィナンシャル・タイムズ

No vote puts Greece’s euro future in doubt
「NO」でギリシャのユーロ残留不確かに

Berlin accuses Tsipras of ‘tearing down the last bridges’
ドイツはチプラスが「最後の架け橋を破壊した」と非難

http://www.ft.com/cms/s/0/ff37c3a0-22e7-11e5-9c4e-a775d2b173ca.html





ロイター

German calls for Grexit mount as EU stunned by 'No' vote
ドイツ、ギリシャの「NO」でEUがつまずいたのを受け、ギリシャのユーロ離脱求める

http://www.reuters.com/article/2015/07/05/us-eurozone-greece-eu-idUSKCN0PF11S20150705?mod=related&channelName=ousivMolt

※記事の概要は、ギリシャをユーロから追い出せというドイツ世論を背景に、ユーロから追い出せという与党政治家が増えており、これまで繰り返しギリシャをユーロに留めたいと言っていたメルケル首相も姿勢を転換するかもしれない、というようなものです。





ブルームバーグ

How Bad Is ‘No’ for Greek Banks? Analysts Split on ECB Lifeline
「NO」がいかにギリシャの銀行に悪影響を及ぼすか?ECBのつなぎ融資につき、専門家の意見は真っ二つ

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-05/how-bad-is-no-for-greek-banks-analysts-split-on-ecb-lifeline


Even Greece’s German Allies Despair at ‘No’ Vote in Referendum
ギリシャのドイツにおける同盟者ですら、国民投票の「NO」に失望

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-05/even-greece-s-german-allies-despair-at-no-vote-in-referendum



Surge in Europe Stock Options Volume Shows Race to Hedge Greece
欧州、株価急落に備えたオプション取引が急増

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-05/surge-in-europe-stock-options-volume-shows-race-to-hedge-greece







ウォール・ストリート・ジャーナル



In Rebuke to Europe, Greeks Vote Resounding ‘No’ to Bailout Terms
欧州への厳しい非難のなか、ギリシャは救済案に大きな「NO」

Outcome sets Athens up for further clash with European creditors and uncertain future in eurozone
この結果はギリシャを欧州債権団との更なる衝突に向かわせ、ユーロ圏残留を不確かにした

http://www.wsj.com/articles/polls-close-in-greek-referendum-1436113280






と、とりあえず米英の主要な経済メディアは、ドイツがカンカン、ギリシャ激ヤバという雰囲気を醸し出し、当面の世界的な株価下落を思わせる論調となっています。








最後に、日本経済新聞。意外と冷静です。


ギリシャ国民投票、反対派上回る チプラス首相が勝利宣言
欧州に交渉呼びかけ

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK06H0P_W5A700C1000000/






というわけで今後の想定シナリオの検討です。


まあ、今回のエントリーのタイトルに書いていますように

今後の想定シナリオ:ドイツが「ギリシャをユーロから追い出せ」世論に押されて強硬路線→株価暴落(?)→ドイツ世論に揺らぎ→ギリシャがほど良く妥協し債権団譲歩引出してユーロ居座り

というのが最もあり得るのではないかと、現時点では考える次第です。


上のほうに紹介した世論調査の詳細を見ると、年金受給者は意外にも「YES」派が多くなっていました。

チプラス首相は1週間前、債権団による年金の更なるカット要求を蹴って、国民投票にかけたわけです。年金受給者を守ろう、てなものです。ところが、この調査に基づけば、肝心の年金受給者が「YES」、つまり、債権団による年金カット案を飲んでも良い、という人のほうが多いとみられるわけです。


それならば。

チプラス首相は今後、年金カットを飲んでもいいか、ということになるでしょう。

ただ、「NO」を突き付けた1週間前の債権団の提案通りでは、国民投票の「NO」は何だったのか、ということになりますから、債権団提案を多少なりとも弱めた年金カット、というのが落としどころでしょう。

今後、欧州全体の金融が不安定化すれば、ドイツの有権者や与党政治家らも、ギリシャが多少なりとも年金カットを飲むのならば、致しかたないのう、となるのではないかと想像する次第です。


この線で考えると、最近の中国、上海株の「暴落」の様相は、「一つの欧州」を維持したい人々にとっては、もっけの幸いとも言えます。これは、欧州の金融不安定化の要因ともなるわけですので。


そして、ああだこうだグダグダと言っているうちに

・クレタ島の米軍基地喪失リスク
・ギリシャのNATO脱退リスク
・中露のギリシャへの影響拡大リスク
・ギリシャを経由する難民・移民増大リスク
・ギリシャ経済崩壊によるギリシャ人自体の大量難民化リスク

といったことも、クローズアップされてくるでしょう。


というわけで、今後は

ドイツが「ギリシャをユーロから追い出せ」世論に押されて強硬路線→株価暴落(?)→ドイツ世論に揺らぎ→ギリシャがほど良く妥協し債権団譲歩引出してユーロ居座り

という具合に推移して行くのではなかろうか、と思う今日この頃であります。



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671:独、土壇場で「NO」を支持?:対ギリシャ強硬派の独財相が「NOはギリシャの一時的なユーロ離脱につながる」発言直後に「我々はギリシャを見殺しにしない」と姿勢急転換+ギリシャのNO支持は極左と極右であり日米の反TPPと同じ構造

2015/07/05 (Sun) 10:18
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いよいよ本日、ギリシャの国民投票ですね。


対ギリシャの強硬派最右翼として知られるドイツのショイブレ財務大臣が、ちょいブレている…いや、かなり揺れ動いているようです。

以下、ガーディアン記事を一部抜粋:





Greek referendum: Germany says it won’t leave Greece in the lurch
ギリシャ国民投票:ドイツが「ギリシャを見殺しにしない」と言っている

http://www.theguardian.com/world/2015/jul/04/greek-referendum-germany-no-vote
The Guardian, Saturday 4 July 2015

German finance minister, Wolfgang Schäuble, appears to bolster No vote in last-minute intervention on Saturday
ドイツのウォルフガング・ショイブレ財務大臣は土曜日、土壇場の介入でNOへの投票を支持したようだ




After more than five months of eyeball-to-eyeball confrontation between Alexis Tsipras’s radical left-led government and Greece’s creditors, and with only hours to go before voting began, one of the most hawkish of the lenders appeared to blink. Germany’s finance minister, Wolfgang Schäuble, until now even more of a hardliner than his chancellor Angela Merkel, suddenly turned a more conciliatory face towards Athens.
5か月にわたるチプラスの極左政権と債権団とのあいだの厳しい対立のあと、そして、数時間後に投票が始まるというときに、最強硬派指導者のうちの一人が戸惑いを見せているようだ。ドイツのショイブレ財務大臣は、今に至ってもメルケル首相以上の強硬派であるが、突如、ギリシャに対してより融和的な態度に転換した。

Having previously insisted that a No vote on the lenders’ last terms would see their country forced out of the euro, Schäuble told the Bild newspaper that the choice before them on Sunday was between holding on to the euro and being “temporarily without it”.
ショイブレがビルト紙に語ったところでは、日曜日の国民投票の選択肢は、ギリシャがユーロに留まるか、「一時的にユーロを離脱する」かの選択肢であり、債権団提案に対するNOへの投票は、ギリシャのユーロからの強制離脱につながるだろう、と彼は主張していた。

It was far from clear what Schäuble had in mind, but economists have mooted the notion of a period in which Greece might go back to its national currency, the drachma, while its economy recovered.
ショイブレの心中がどのようなものか、かなり不透明であるが、エコノミストらは、ギリシャは経済が回復するまで自国通貨ドラクマにある程度の期間は戻っているかも知れないということだと論じた。

With pharmacists in Athens reporting that the government had rationed the distribution of drugs, and fears being raised of food shortages within weeks, the finance minister of Europe’s biggest economy said: “It is clear that we will not leave the [Greek] people in the lurch.”
アテネの薬剤師らが政府が医薬品の配給制を始めたと報告し、数週間のうちに食料不足が起こる恐れが生じるさなか、欧州最大の経済国の財務大臣は、「我々が(ギリシャの)人々を見殺しにしたりしないことは、明らかだ」と述べた。

What effect Schäuble’s last-minute intervention may have on the vote is impossible to gauge. But it appears to favour the No camp.
ショイブレの土壇場での介入が、投票にどのような影響を及ぼすかを測定することは不可能だ。しかし、NO陣営を有利にするように思われる。

His remarks seemed to endorse the claims of the Greek government, which has called for a No vote, to the effect that a majority in favour of rejection would not lead to the country’s exit from the euro (“Grexit”).
彼の発言は、NOへの投票の呼びかけるギリシャ政府の、(債権団提案を)拒否することはギリシャのユーロ離脱(グレグジット)につながらないという趣旨の主張を、保証しているように見える。

The German minister’s tone was strikingly at odds with that of his charismatic but controversial Greek counterpart, Yanis Varoufakis, who turned up the heat before the ballot by accusing Greece’s creditors of terrorism.
このドイツの大臣の論調は、彼のカリスマ性にふさわしくないが、物議をかもす彼の交渉相手であるヤニス・バロファキス財務大臣は債権団のことを「テロだ」と難じ、投票を目前にしてヒートアップしている。

(後略)





ガーディアンの記事ではショイブレ財相の本音はちっとも分からん、ということですが、ショイブレさんは何日か前に非公開の場で国会議員らに対し「国民投票で“NO”でもギリシャはユーロ残留可」と発言していたわけですから、それが彼の「本音」であると思います。

政治家という職業というのは、いつでも「本音」を語るような職業ではなく、「政治的に正しい」台本に沿って、「政治的に正しい」役割を演じることにあるものだと私は認識しています。

ショイブレ氏は、特にドイツの有権者向けに、ギリシャに対する厳しい取り立て屋の役を演じる必要があるでしょう。本音が「安全保障や難民移民問題を考えれば、どこかで妥協しないといけない」であったとしても、です。


いや、「本音を語れない」職業というのは何も政治家だけでもないですね。どんな職業でも、あるいは、私生活においてすら、多かれ少なかれ、本音は制限される、というのが現実の生活とも言えます。

例えば、服屋の店員が本音ばかり語っていたとしたら、そんな服屋はあっというまに倒産するか、その前にそんな店員がクビにされるかのいずれかでしょう。





【ギリシャ国民投票にみるネットとテレビ新聞のネジレ】







※例えば、仮に、日本のとあるA新聞が「日本軍が従軍慰安婦という性奴隷を強制連行した」という情報をねつ造したとします。仮に、ですが。仮に、それを大多数の日本の新聞が書き立てたとします。海外メディアは、恐らく、日本のことを知るために、少なくともそのような日本の新聞を参考にし、場合によっては直接引用した上で、そのような事柄を報道することになるでしょう。

 ひるがえって今回のギリシャの国民投票。
 多くの世論調査でYESとNOが拮抗していますが、一方で、テレビや新聞はそれぞれ一社を除いてほぼ反シリザであり、YESへの投票を呼び掛けています。
 ということは、ギリシャのテレビや新聞は必ずしも世論を反映するものではない、ということですね。
 だから、もしもギリシャの諸問題につき、海外メディアがギリシャのテレビや新聞に引きずられた形で報道していることがあったとしたら、ギリシャの実状というのは、かなり歪んだ形で海外に伝わっている可能性があります。すなわち、日本に、日本のメディアを通じて伝わっているギリシャ像は、実状とはかなり違っている可能性もある、というわけです。まあ、可能性でありますが。




※ところで、メディアの情報のあり方について、ロシア在住の評論家、北野幸伯さんが、発行する「ロシア政治経済ジャーナル」というメールマガジンで昨年の4月、以下のようなことを書いています



RPE(北野氏発行のロシア政治経済ジャーナル)は、「すべての情報ピラミッドを超越している」媒体です。


普通、日本のメディアは、「米英情報ピラミッド」内にある。


あるいは、「中共情報ピラミッド」内にある。


しかし、世界には、その他にも「欧州情報ピラミッド」「クレムリ
ン(ロシア)情報ピラミッド」「イスラム情報ピラミッド」などがある。



そして、そのピラミッド内部にいる人は、たいてい洗脳されて
いる。



たとえば、日本人のほとんどは「米英情報ピラミッド」に洗脳
されている。


「クレムリン情報ピラミッド」、つまりロシア人たちは、「クレム
リン」に洗脳されている。



だから「欧米メディア」では、「プーチンは、ヒトラーのようだ!」
といわれているのに、


ロシア人のほとんどは、「クリミア併合」を大歓迎している。


そして、プーチンの支持率は、年初の60%から、いまでは83
%まで上がっている。


そういう、日欧米からは理解不可能な現象が起こる。




私はこのギリシャ危機に関して、北野氏がいうような「情報ピラミッド」を多少は意識して、できるだけ多くのメディア、特に、海外メディアから情報を収集してツイッターやブログを書いています。

ただ、基本的には「英米ピラミッド」と言えます(たまに、ロシアRTも入れたかな?)。とはいうものの、例えば前回紹介したAP通信(アメリカのメディア)の記事のように、ギリシャが過去にドイツに対して債権放棄していた、なんて話も拾えるわけです。


北野さんの書いていることは、言い換えれば、多角的な視点を持ってものごとを見ていれば、洗脳されるリスクを軽減できる、ということもできるでしょう。
⇒忙しくて多様な情報を収集する時間がない、あるいは、考える時間すらない、という場合は、「自分は常に多少なりとも洗脳される可能性がある」ということを頭の片隅で意識しておくだけでもかなり違うでしょう。ユングの「意識化」の応用です。たいていの問題は無意識下で起こりますので、それを「意識化」によって意識にほどよく上らせることで無毒化、中和を図るわけです。これもまた「多角的視点で考える」の一環です

もしも、「多角的視点で考えることは愚かだ」と言っている人がいたとすれば、上記の観点からすると、「私は洗脳されやすい人です」と宣言してしまっているに等しことになります。

私が言っている、
「多角的な視点で考える」ということは、このような観点からも極めて有用なのではないかと思う次第です。





【ギリシャ国民投票にみるTPPとの類似点】

昨夜、ギリシャ在住の方からコメント(内緒コメント)を頂いたのですが、その方は、国民投票で「NO」を支持しているのは、「超極左と超極右」なのだそうです。

確かに、これまでガーディアンの記事を読んでいて私が得た情報としては、NOを呼び掛けている政党

シリザ(極左)

ギリシャ共産党(いわずもがな極左)

黄金の夜明け(ネオナチの極右)

となっています。


米国のTPP反対派も似たようなもので

労働組合(まあ、民主党支持層の中でも一番左の部類)

ティーパーティー(ロン・ポール元下院議員を始めとする“過激保守”)

です。TPP反対派については日本でも似た傾向と言えます。






極右と極左が「共闘」できるような問題が増えている、というのがいまの世界的な傾向と言えそうです。

「過度のグローバリゼーションと過度の新自由主義が、極右と極左を不可抗力的に連帯させている」、というべきでしょうか。





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670:ギリシャ、ドイツに債務免除していた!――1953年、第二次大戦戦勝国の一員として

2015/07/04 (Sat) 12:36
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表題の件はあとにして、まず、昨日のギリシャ危機関係の動きのまとめです:







※世論調査に関しては英語のブルームバーグが自社依頼分の国民投票YES/NOとユーロ残留YES/NOの世論調査結果につき、時系列のグラフを載せています。

傾向をざっくり書くと

・国民投票
 NO↓
 YES↑
 ⇒現在はほぼ拮抗(差は誤差範囲内なので本当に拮抗)
 一方で、
 未決定↑+NOとYESともに微減↓
 という興味深い状況です。投票が迫るにつれて迷っている人が増えているというわけですね。
 最終結果は本当にどうなるか分かりません。

・ユーロ残留
 YES↑
 NO↓
 ⇒一週間でYESがどんどん増えています。目下、EUの法理論的にギリシャ人自身が望まない限りユーロ離脱はないので、基本的に国民投票の結果を問わずユーロ離脱はないと言えます。
 まあ、ギリシャが混乱すれば安全保障やギリシャ人自体が難民化することで難民・移民問題が悪化することでドイツもただでは済まないでしょうから、最終的には妥協に向かわざるを得ないのではないかと。








※私がブログや書籍で繰り返し書いていますように、経済の根本はカネではなくモノです。ギリシャ財相は羽柴藤吉郎に包囲された鳥取城(小判ザクザクでカネだけあって兵糧などのモノがない状態であっけなく落城)の轍は踏まなさそうですね。

※ちなみに、AP通信(英語)が「(銀行閉鎖、資本規制、年金削減から身を守るための)ギリシャ農村の秘密兵器:食糧を自ら育てよ」という記事を書いています。








国際政治情勢はどちらかというとチプラス首相の思惑通りに動いていると言えます。あとは、国民が支持してくれるかどうか、天下分け目の関ヶ原――ギリシャ版小早川秀秋は現れるか?――という塩梅。






というわけで本題です。これもAP通信の記事。簡単に紹介しておきます:






The case for Greece: when it forgave Germany's debt
ギリシャの真実:ギリシャがドイツの借金を免除したとき

http://finance.yahoo.com/news/case-greece-forgave-germanys-debt-154706236--finance.html
AP, July 2, 2015


LONDON (AP) — Forgiving debt, if done right, can get an economy back on its feet.
借金を免除すること、それが正しく行われれば、経済的な自立が可能となる。

The International Monetary Fund certainly thinks so, according to a new report in which it argues Greece should get help.
ギリシャは支援を与えられるべきことを論じている新しい報告書によれば、IMFは確かにそう考えている。

But Germany, another major creditor to Greece, is resisting, even though it knows better than most what debt relief can achieve. After the hell of World War II, the Federal Republic of Germany — commonly known as West Germany — got massive help with its debt from former foes.
しかしドイツなど主なギリシャに対する債権者らは、債務減免が達成できれば状況はもっと改善されると知りつつも、抵抗している。第二次世界大戦の地獄のあと、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)は、かつての帝国敵国からの大規模な債務支援を受けている。


Among its creditors then? Greece.
そのときの債権団の中には、ギリシャがあった。


The 1953 agreement, in which Greece and about 20 other countries effectively wrote off a large chunk of Germany's loans and restructured the rest, is a landmark case that shows how effective debt relief can be. It helped spark what became known as the German economic miracle.
1953年ギリシャは他の20か国と共に、ドイツに対する大規模な貸付の免除や債務再編を行う協定を発効させた。この協定は、債務減免がいかに効果的かを示す画期的な事例である。それは、奇蹟的なドイツの経済発展をもたらした。


So it's perhaps ironic that Germany is now among the countries resisting Greece's requests for debt relief.
ゆえに、ドイツが他の国々とともにギリシャからの債務減免の要求に抵抗し続けているのは恐らく、皮肉であると言えるだろう。


Greek Finance Minister Yanis Varoufakis claims debt relief is the key issue that held up a deal with creditors last week and says he'd rather cut off his arm than sign anything that doesn't tackle the country's borrowings.
ギリシャのヤニス・バロファキス財務大臣は、債務減免こそが先週の債権団との交渉における鍵となる項目であったと主張し、彼は債務減免のない協定に署名するくらいなら腕を切り落としたいとまで言っている。

The IMF backed the call to make Greece's debt manageable with a wide-ranging report on Thursday that also blames the Greek government for being slow with reforms.
IMFは木曜日の広範囲な報告書でギリシャ債務を維持可能な水準にすることを支持しつつ、ギリシャ政府が改革を遅らせようとしていることを非難している。

Despite years of budget cuts, Greece's debt burden is higher than when its bailout began in 2010 — over 300 billion euros ($332 billion), or 180 percent of annual GDP — because the economy has shrunk by a quarter.
四半期ごとに経済が収縮したことにより、何年にもわたる予算削減にも関わらず、ギリシャの債務負担は、3千億ユーロ(約40.5兆円、GDP比で180%)を超え、支援が始まった2010年よりも高くなっている。

Here's a look at when Germany got debt relief, and if such action might help Greece.
もしかしたらギリシャを助けることにつながるであろう、ドイツが債務減免を受けたときのことを以下に示す。


FORGIVE US OUR DEBTS
我々の借金を免除して下さい


1953's London Agreement, hammered out over months, was generous to West Germany. It cut the amount owed, extended the repayment schedule and granted low interest rates.
数か月にわたる激しい議論の末に合意に至った、1953年のロンドン協定は、西ドイツに寛容であった。その協定により、債務の一部が免除され、返済スケジュールが延期され、低金利が与えられた。

And crucially, it linked West Germany's debt repayment schedule to its ability to pay — tying repayments to the trade surplus it was running and expected to run. That created an incentive for trading partners to buy German goods.
そして決定的なこととして、返済スケジュールはドイツの支払い能力に適合するように調整――貿易黒字の実績値あるいは予測値に連動――された。このことは、貿易相手国らに、ドイツ製品購入の動機づけを与えた。

The deal effectively blocked claims for reparations for the destruction the Nazis inflicted on others.
この協定においては、ナチスによる破壊に対する賠償権も放棄された。

But it wasn't a one-way street.
しかし、これは一方通行のものではなかった。

"The London Agreement gave Germany sweeping debt forgiveness and protection from creditors, in exchange for pro-market reforms," said Professor Albrecht Ritschl of the London School of Economics.
「ロンドン協定はドイツに債務免除と債権団からの保護を与える替わりに、親市場の改革(要するに新自由主義的な改革?)を実行させるものであった」とロンドン大学経済学校のAlbrecht Ritschlはいう。

West Germany was able to borrow on international markets again, and, free of onerous debt payments, saw its economy grow strongly.
西ドイツは再び国際市場での借入れが可能となり、そして、やっかいな債務支払いから自由になり、経済は力強く成長した。

Development activists cite that case when arguing for easier terms for troubled countries today.
開発発展活動家らは、今日の困難に陥った国に寛容な手段を用いる主張をする際、このケースを引き合いに出す。

"The same opportunity should be given to Greece that was given to Germany in 1953," said Eric LeCompte, executive director of debt relief organization Jubilee USA.
「1953年にドイツに与えられたような機会が、ギリシャに与えられるべきだ」と、(社会的弱者の)債務減免を手助けする団体であるJubilee USAの執行役員であるEric LeCompteはいう。

Greece has had some relief. Private sector bondholders lost 53 percent of face value in a 2012 restructuring, and remaining debts have been stretched out.
ギリシャはいくらかの債務免除をすでに受けている。民間の債券保有者は2012年の債務再編において額面価額の53%を失っているし、残っている部分も返済が延期されている。

Now most of Greece's debt is owed to bailout creditors. While they, notably the IMF, have indicated that the debt load should be made more manageable, little has been done of late.
いまや、ギリシャの債務の大半は救済債権団によって保有されている。債権団ら、特にIMFは、債務が維持可能な水準となるべき(債務減免をすべき)ことを示唆しているが、最近はほどんどなされていない。

___

NOT CHARITY
チャリティーではない


The German debt forgiveness was driven by the United States, which pressed others to get a deal — British creditors gave up two-thirds of what they were owed.
ドイツの債務減免は、米国主導でなされた。米国は他の国々に圧力をかけ、英国は3分の2の債権を放棄した。

It wasn't charity. The U.S needed a strong West Germany as an ally against the perceived threat of the Soviet Union.
これはチャリティーではない。米国は、ソ連の目に見える脅威に対抗するため、同盟国としての力強い西ドイツを必要としていた。

(後略)






国民投票がYESとなろうと、NOになろうと、

・クレタ島の米軍基地喪失リスク
・ギリシャのNATO脱退リスク
・中露のギリシャへの影響拡大リスク・
・ギリシャを経由する難民・移民増大リスク・
・ギリシャ経済崩壊によるギリシャ人自体の大量難民化リスク

がそこにあります。

欧州や米国の政治家や、あるいは諸国民が、これらのリスクをどのように評価した上で、どのような判断を下すか、それが鍵になりそうですね。

いや、一番重要なのは、ドイツの政治家と国民が1953年のことを思い出せるかどうか、でしょうか。


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669:ギリシャ不法入国者数、上半期でEU首位に――日本にとって他人事でないのは、借金問題よりは難民・移民問題かと+今朝までのギリシャ危機関連の動きのまとめ

2015/07/03 (Fri) 11:30
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まず、
昨夜から今朝にかけてツイートした
前回エントリー質疑応答
ギリシャ危機関係の動きをまとめておきます(不法入国者問題の話はのちほど):
























※「報道機関による情報操作か?」と書きましたが、ちなみに、よくよく調べるとこのGPOという調査機関に調査を依頼したのはフランスのBNPバリパだそうです。誰が、どのような過程で部分的データの分析結果公表に至ったか、ということはまだよく分からない状況のようです。











※何だかんだといっても、IMFによる「状況次第では債務削減(debt relief / haircut)も必要」と取れる内容の発表を導いたのは、チプラス首相の主張通り、国民投票の唐突な発表ではなかったかと。





というわけで、「ギリシャ不法入国者数、上半期でEU首位」の件について。





なお、「不法入国者」と言ってしまうと多少の語弊があるように思われます。

正確には海からの「難民 refugee」と「移民 migrant」です。

とは言え、あの船の定員を大幅に超えて乗せられている「難民」の映像を見ると、正式な手続きを踏んでの入国ではあり得ませんから、法的には「不法入国」で間違いないとは思いますが…。



国連、正確には国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)報告書(2015年7月1日)に基づく、英テレグラフの記事を以下に翻訳しておきます:

Greece overtakes Italy as first port of call for migrants
ギリシャ、「移民」の最初の寄港地としてイタリアに取って代わる


In the first six months of this year, Greece has received more migrants crossing the Mediterranean than Italy, according to a new UN report. Italy had previously been seen the rise in migrant arrivals.
国連の報告書によると、今年の前半6ヵ月において、ギリシャに地中海を渡って流入した移民の数はイタリア以上となった。イタリアは従前、移民の到着の増加の象徴と見られていた。

※国連報告書の画像で、今年上半期の海からの「難民と移民」の流入数は、ギリシャが68,000人、イタリアが67,500人と示されています。








• The number of refugees and migrants entering the western Balkans from Greece has already dramatically increased since the beginning of June, with more than 1,000 people entering every day, as opposed to 200 just a few weeks ago.
・ギリシャから西バルカン半島に流入した難民と移民は、6月の初め以来、劇的に増加している(2、3週間前には1日あたり200人だったのに対し、1000人以上となっている)。

• There has been a major increase in refugees and migrants taking the ‘eastern Mediterranean route’ from Turkey to Greece.
・トルコからギリシャに入る「東地中海ルート」を取る難民と移民に大きな増加が見られる。

• More than 85 pc of those arriving in Greece are from countries experiencing war and conflict, principally Syria, Afghanistan, Iraq and Somalia. From Greece, most move onwards across the Balkans to western and northern Europe. Italy remains the primary destination for Eritreans, Somalis and other people from sub-Saharan Africa.
・ギリシャに流入したうちの85パーセントは主にシリア、アフガニスタン、イラク、ソマリアといった戦争や紛争を経験している国からのものである。ほとんどはギリシャからバルカン半島を通って西ヨーロッパや北ヨーロッパに移動している。イタリアはいまもエリトリア人やソマリア人その他、サハラ砂漠以南のアフリカの人々の主たる目的地となっている。

※まるでフン族に追い立てられて「民族大移動」を起こしたゲルマン民族の様相です。それでローマ帝国が崩壊したように、やがては「EU帝国」も…

• 90pc of Syrian refugees interviewed in Greece said they wanted to find asylum somewhere else in the EU, mostly in Germany and Sweden, for better assistance and employment opportunities
・ギリシャにいるシリア人難民の90%は、よりよい援助や雇用機会を求めて他のEU国(ほとんどはドイツやスウェーデン)への亡命を望んでいると回答している。

※とにかくまずはギリシャに逃げ込み、シェンゲン協定で国境検査がないことを利用して、より豊かな地への移動を望むのは、ある意味、自然なことかと…

※スウェーデンはユーロには加盟していませんが、シェンゲン協定には加盟しています。シェンゲン圏内は国境検査がありません(一時、検討していましたが、その後どうなったかな??)。






現状、ギリシャを危機のまま放っておくとギリシャに入った難民はギリシャにはいたくない(ギリシャ自身が経済危機で助けられない)ので、ドイツやスウェーデンなどの豊かで福祉の整っている国は、大量の難民・移民を抱えることになりそうです。

ギリシャを助けず、その替わり「不法入国者」を助ける、ということになるわけです。

さらには、仮にギリシャが崩壊したら、ギリシャ人自体が難民化してドイツやスウェーデンに大量に押し寄せるかも知れませんね。

まさに、民族大移動、帝国崩壊の危機かと。



日本では、「ギリシャ政府の借金問題は、政府が多額の借金を抱える日本も他人事ではありません」とテレビなどで言われていますが、

はっきり言って借金問題自体はほぼ完全に他人事かと個人的には思います。

ギリシャ政府が抱えているのは通貨発行権の権能の及ばない債務であるのに対し、日本政府が抱えているのはほぼ完全に通貨発行権の権能の及ぶ債務のみなので、まるで別世界であります。


ただ、他人事で全くない問題もあります。

上記の「難民・移民」問題です。

仮に東シナ海の向こうで北アフリカや中東のような混乱が生じた場合、日本は、ギリシャ、イタリア、ドイツ、スウェーデンと同等以上の混乱に見舞われる可能性があります。

万が一にも日本が「ゲルマン民族大移動」で滅びたローマ帝国のようにならないためにはどうしたら良いかについて考えましょう、ということであれば、ギリシャ危機は全く他人事ではない問題であると言えそうです。



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668:ギリシャ、波乱の一日終え、首相と財相は「反緊縮&ユーロ居座り路線」を強化

2015/07/02 (Thu) 12:11
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昨日のギリシャは、チプラス首相が「ユーロ債権団に「降伏」してほぼ全面的に条件受け入れ」、と取れる英フィナンシャル・タイムズ(FT)の記事が出たあと、さらにチプラス首相が債権団との取引成立と引き換えに国民投票を中止するという噂がまことしやかに流れ、最後はチプラス首相のテレビ演説での国民投票実施の名言で幕を引くというような慌ただしい一日でした。













早速ですが一つ訂正を。
↑上記の私のツイートで「株乱高下」というのは半分間違いです。FTの記事が出て、「ギリシャが債権団の条件に応じて引き下がる」という思惑で欧米の株式が上昇した(ガーディアン記事1記事2)あと、チプラス首相が「国民投票実施、NOとなれば今後の交渉しやすくなるのでNOに投票よろしく」とTV演説しても株価が下がることはありませんでした(ガーディアン記事3)。

→これは有力メディアの情報の伝え方の違い(ギリシャ譲歩の情報の報道に力を入れ、ギリシャ強硬の情報の報道はあまり力を入れない)なのか、あるいは、また別の理由があるからなのか??


それはそれとしまして、チプラス首相のテレビ演説はまさに当ブログで月曜日(資本規制導入直後)に書いていた方向で動いていると言えます:

「チプラス政権はおそらく3番のシナリオ(国民投票でNo→瀬戸際外交で債権団の譲歩引き出しユーロ居座りのシナリオ)の路線でユーロ離脱恐怖派の国民を惹きつけつつ、債権団から大幅な譲歩(特に、大幅な債務免除)を引き出す作戦を強化するのではないかと想像する次第です」


加えて、その首相テレビ演説のあと、バルファキス財務大臣がブログで「我々がNOへの投票を推奨する6つの理由」を書いています:

Why we recommend a NO in the referendum – in 6 short bullet points
なぜ我々は国民投票でNOを推奨するのか――6つの要点
Posted on July 1, 2015 by yanisv

1. Negotiations have stalled because Greece’s creditors (a) refused to reduce our un-payable public debt and (b) insisted that it should be repaid ‘parametrically’ by the weakest members of our society, their children and their grandchildren
1.交渉が先延ばしになったのは、債権団が(a)我々の支払い不能な公的債務の削減を拒否し、(b)我々の社会のもっとも弱い人々、その子供たち、その孫たちによって「数学的に」返済しなければならないと主張しているからです。

2. The IMF, the United States’ government, many other governments around the globe, and most independent economists believe — along with us — that the debt must be restructured.
2.IMF、米国政府、その他世界中の多くの政府、そして多くの個別の経済学者ら(※)は我々とともにあり、債務は再編されなければならないと信じています。

※その経済学者にはノーベル賞を取ったスティグリッツ氏も含まれます。ちなみに、バロファキス財相は、ガーディアンに載っていたスティグリッツ氏の見解記事のリンクをツイートしています。
 なお、米国政府(オバマ大統領やルー財務長官)の姿勢は、以前のブログで書いた通りです。
 米国にはクレタ島の米軍基地やNATOなど安全保障の背景もあります。


3. The Eurogroup had previously (November 2012) conceded that the debt ought to be restructured but is refusing to commit to a debt restructure
3.ユーログループ(ユーロ財相会合)は以前(2012年11月)、債務は再編されるべきであることにつき妥協していましたが、債務再編の確約を拒み続けています。


4. Since the announcement of the referendum, official Europe has sent signals that they are ready to discuss debt restructuring. These signals show that official Europe too would vote NO on its own ‘final’ offer.
4.国民投票の発表以降、欧州の政府や公的機関は債務再編を議論する準備があるというシグナルを発しています。このシグナルは、欧州の政府や公的機関が彼らの最終提案(ギリシャ政権が拒否し、国民投票で賛否を問おうとしている債権団の提案)に対し、自ら「NO」に投票しているようなものです。

※確かに、理屈としてはそうか、と。うまいことを言いますね。


5. Greece will stay in the euro. Deposits in Greece’s banks are safe. Creditors have chosen the strategy of blackmail based on bank closures. The current impasse is due to this choice by the creditors and not by the Greek government discontinuing the negotiations or any Greek thoughts of Grexit and devaluation. Greece’s place in the Eurozone and in the European Union is non-negotiable.
5.ギリシャはユーロに残ります。ギリシャの銀行にある預金は安全です。債権団は銀行閉鎖に基づく脅迫の戦略を選んでいます。現在の袋小路は債権団のそのような選択によるものであり、ギリシャ政府の交渉打ち切りのせいでもないし、ギリシャでグレグジット(ギリシャのユーロ離脱)と平価切下げを考えている人達のせいでもありません。ギリシャのユーロ圏およびEUにおける居場所は、交渉できるものではありません。


6. The future demands a proud Greece within the Eurozone and at the heart of Europe. This future demands that Greeks say a big NO on Sunday, that we stay in the Euro Area, and that, with the power vested upon us by that NO, we renegotiate Greece’s public debt as well as the distribution of burdens between the haves and the have nots.
6.未来は、ユーロ圏と欧州の中心に存在する、誇りあるギリシャを求めています。この未来は、ギリシャ人が日曜日に大きな「NO」を表明すること、我々がユーロ圏に残ること、そのNOによって与えられた力を用いてギリシャの公的債務を我々が交渉し、持てるものと持たざるものが負担を分かち合うようにすること、を求めています。




さて、ギリシャの債務危機の発端は、直接的には2009年に不正会計が発覚したことでした(根本的にはユーロに参加したことが原因とも言えます)が、よくよく考えてみれば、それは現政権の責任とは言えません。(①)

さらには、IMFのWEOデータを見ると、近年、ギリシャは利払いだけでGDP比約4%の負担を強いられています(中央+地方+年金基金の一般政府ベース。金利収支を除いた財政収支であるプライマリーバランスと全部ひっくるめた財政収支の差額から金利収支を算定)。2009年からの6年間の累計を単純に考えるとGDP比4%×6=24%。日本で言えば、GDP500兆円の24%といえば120兆円。この6年間の累計でギリシャは、おそらく大半は海外(とくにIMF、ECB、EUかな?)に日本の感覚なら累計で120兆円程度の金利を支払っていることになります。(②)

まあ、①と②を考えると、そりゃ、そろそろ勘弁してくれや、というのも一理あるかも知れませんね。

普通、破綻国はかなり大幅な債務再編(借金の一部棒引き)が認められますが、ギリシャは危機後6年もの間、それを許されていないというわけです(一部、免除はあったみたいですが)。

というのが、バルファキスさんの気持ちなのかも知れません。






一方、目下、ドイツは「国民投票終わるまで一切交渉しない」ユーログループ(ユーロ財相会合)も同様フランスは「すぐにでも交渉を再開すべき」という感じで、債権者側も足並みがそろっていない感じです。








また、世論調査では、NOが優勢という結果と、YESが優勢という結果が錯綜しています。

↓これはProrataという調査機関の調査結果。調査は6月28日から30日にかけて行われ(英語のロイター記事参照)、28日の資本規制発表後だけの標本を見ても一応はNOが46%で優勢、となっています。








↓こちらは、GPOという調査機関のもの。EURO2DAYといういかにも親ユーロな名前(?)の新聞向けの調査ですが、EURO2DAYの記事(ギリシャ語)を日本語訳(Google翻訳。あまり意味を成す日本語になっていませんが単語レベルは辛うじて分かる)を見ると、6月30日に実施されたもので、YESが47%、NOが43%と若干優勢となっています。また、当該記事には、ユーロに残留すべきかどうかの結果グラフも示されています(これは英語)。ユーロ残留賛成が74%、反対が24%となっています。親ユーロ新聞と思われるとはいえ、このユーロ残留賛成74%は圧倒的ですね。




まあ、調査実施者が右派か左派か、親ユーロ派か反ユーロ派かによって揺らぎがあるかも知れません。
また、上記の調査はいずれも、昨日(7月1日)のチプラス首相の演説よりは前のタイミングのものです。
ユーロ残留の世論が強く、NOへの投票はユーロ離脱と思っている人もまだまだ多いようですから、日曜日までに政権がどこまで「NOで譲歩引出しつつユーロ居座り」ということを浸透できるかにかかっていると言えます。





あと、小ネタですが、↓こんなのも









バロファキス財相の関与否定コメントは↓こちら








なお、私は何年も前から「財務省悪玉論」は完全に放棄しています。

それは中国の古典、周書・泰誓上にある以下の言葉の概念を支持しているからです:

「天、民をあわれむ。民の欲するところは、天、必ずこれに従う」

財務省がどう考えようが、政治家がどう考えようが、大多数の国民が「国の借金大丈夫だ」ということを確信していたならば、2020年までにプライマリーバランス黒字化というような財政再建目標が取られることはないでしょう。
逆に言えば、大多数の国民が「国の借金大変だ」と確信しているからこそ、このような財政目標が掲げられて粛々と緊縮気味な財政政策が取られることになると考えるのが自然であり、天の成すところと思う次第です。
国民全般の意識が変わらない限り、財政政策のあり様は変わらない、ということであります。

どれほどの権力者、どれほどの独裁者、どれほどの強大な政権であっても、民に見放されれば天からも見放されるということは歴史が教えるところのものと言えます。
例えば、他の6か国をことごとくうち滅ぼして強大な中央集権体制を築いた秦王朝も、始皇帝の死後たった10年で滅び去ってしてしまいましたし、それだけでなく、かの国では何度も権力者・政権が民衆の不満の鬱積で生じた革命によって倒されてきました。これは古今東西で繰り返されているようなありふれた事象と言えるでしょう。

ギリシャ問題も、ユーロ問題も、民の欲するところに天が従う、ということではないかと思う次第です。



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667:ギリシャ、ユーロ離脱なさそう:独財相の「国民投票で“NO”でもギリシャはユーロ残留可」発言で+その他今朝のIMF返済「延滞」までの動きのまとめ

2015/07/01 (Wed) 10:38
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国民投票の結果がどうであれ、暴力革命や軍事クーデターなどがなければ、ギリシャのユーロ残留(居座り?)はかなり確実と言えるようになりました。




というのは、

これまで一貫してギリシャに対して強硬な姿勢を示してきたドイツのショイブレ財務大臣が「国民投票で“NO”でもギリシャはユーロ残留可」とドイツの国会議員らに表明したからです。



とりあえず、日本語のロイター記事のタイトルとリンク:

-----
国民投票否決でもグリジット不要、独財務相が認識=議員
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PA20S20150630
2015年 07月 1日 00:29 JST ロイター
-----

↑ショイブレさんがこんなことを言うに至る経緯が非常に興味深いのですが、それは↓以下の私のツイートを見ながら追い追い説明します。なお、このショイブレ発言の報道はブルームバーグのスクープです。















※バルファキス財相もチプラス首相も「ユーロ離脱はない。あり得ない」と繰り返しているのですが、国民にはなかなか伝わっていないようです。「国民にはなかなか伝わっていない」という話の関連はまた下のほうで出て来ます。








このメルケルさんの発言について、私はかなり誤認がありました。
 「
欧州はギリシャのような危機において過去よりもより良く取り組むことが出来る」というのは、「ギリシャがどうなろうと欧州はその準備ができているからOK牧場」ということのようです。
 ただ、これまでショイブレ財相が「とにかくカネ返せ」の強硬派、メルケル首相は外交や安全保障を見据えた柔軟派という全般的な印象に違いはないものと思われます。本当にギリシャがユーロ離脱してロシアや中国に走ったとしたら、前回のエントリーの内容も考え合わせると顔面蒼白だと思われますので…。






















※ちなみに、NOはギリシャ語で「OXI」、YESは「NAI」です。デモで「OXI」のプラカード持っていたら反緊縮派、「NAI」なら緊縮やむなし派となります。








※国民投票、まだまだ不透明ながら、何だかんだと言って最終的にはNO(OXI、反緊縮)になるのかな、と個人的には感じています。一方で、ショイブレ発言もあったのでユーロ離脱確率は10%以下かな、と今のところは思っています。















※このバルファキス財相の「裁判所命令取るぞ、この野郎!」という脅しが効いて、ショイブレ独財相の発言につながったのではないかと、個人的には想像しています。
 この件、かなり重要な話だと思いますが、日本語ソースではいまのところ東京新聞だけしか報じていない模様です(グーグルで「欧州司法裁判所」をニュース検索した結果)。















※ギリシャ政権のユーロ居座りへの並々ならぬ決意が現れています。







※ちなみに、ユーロ残るかどうか以外にも、国民投票の結果がNOかYESかとかも賭けの対象。








※ギリシャ国内のメディアがあまり伝えないので、「国民投票でNO(反緊縮)でも法理論的にユーロ残留はOK牧場なのでユーロ残留です」ということが広く共有されていないようです。ギリシャのメディアがこぞってユーロ債権団にYES、チプラス左派政権のNOを呼び掛けているのは、目下、日本でも話題沸騰中の「マスコミのスポンサー」の問題があるからなのか、どうなのか。
このギリシャメディアの報道姿勢の件は、国民投票の結果の見通しをいささか不透明にさせている大きな要因と言えそうです。












※↑この件のツイート、あまりリツイートなどの反応がなかったのでありますが、私の個人的見立てでは国民投票発表以後でもっとも重要な鍵となる出来事です。
 先ほども書きましたがこれはブルームバーグのスクープ記事で、ブルームバーグの記事には珍しく、動画付きの記事となっています:




※このブルームバーグ記事によると、ショイブレ独財相はベルリンでドイツの国会議員ら相手の非公開会議で「国民投票NOでもギリシャはユーロ離脱しなくても可」と話し、その会議の参加者のうちの3人が匿名を条件にブルームバーグに語ったとのことです。
 この3人とは恐らく国会議員の皆さんだと思われますが、外交や安全保障の観点からギリシャのユーロ離脱を望まない派の方々なのでしょうかね。






































































いや、それにしてもこのギリシャの件、つぶさに追っていくとギリシャ政権の「駆け引き上手」が目につきます。

例えば、独財相の「国民投票NOでもギリシャはユーロ残留可」発言を引き出したり、いままでなかなか出て来なかった「債務減免(debt relief)」の言及を引き出したり。

この点、日本外交も見習うべきところがあるかも知れませんね。

ただ、ギリシャのような「口出すな、カネだけ寄越せ、この野郎!」的な方式をやり過ぎると、日本人的ではなくなってしまいそうと思う、今日この頃であります…



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