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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
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695:ないがしろにされているG20共同声明:「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」「我々は機動的に財政政策を実施する」という文言、実は半年前にも入っていたが、あまり履行されていない

2016/02/29 (Mon) 17:37
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:


昨日のG20上海の共同声明(コミュニケ Communiqué)と、
昨年9月の
G20アンカラ(トルコ)の共同声明を比較します。

(出典は財務省の仮訳)


というよりは、比較した結果を以下に示します。


凡例:


取り消し線の箇所が昨年9月アンカラにあって、今回の上海で削除された箇所

黒字は昨年9月アンカラから今回の上海で変わっておらず、そのまま残っている箇所。

青字今回、新しく入った箇所

となります。


 我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長過去数年間、G20は成長、投資及び金融安定の強化に関し、重要な成果を挙げてきた。我々は、信認を醸成し、回復を維持・強化するための行動をとっている。これらの目標を達成するための、我々は全て取組を支える、マクロ経済政策手段――金融、財政及び構造政策の役割――再確認する個別にまた総合的に用いる

 金融政策は引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に経済活動と物価安定を支えるだろう。しかしながら、金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう。
我々は、経済見通しの改善に沿って、いくつか先進国において金融政策の引締めの可能性がより高まっていることに留意する。我々は、根底にあるファンダメンタルズを反映するため、より市場で決定される為替レートシステムと為替の柔軟性に移行し、為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避けるとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗する。我々は、我々の財政戦略は成長の下支えを企図しており、強靭性を高め債務残高対GDP 比を持続可能な道筋に乗せつつ乗せることを確保しつつ、経済成長雇用創出及び信認支える強化するため、短期的な経済状況を勘案して我々は機動的に財政政策を実施する。

 この目的のため、我々はまた、引き続き、生産性、包摂性及び成長を支えるために歳出及び歳入の構成を考慮していく我々はまた、質の高い投資へと支出を重点化することを含め、税制及び公共支出をできるだけ成長に配慮したものにしている。

 我々は、強固で持続可能かつ均衡ある成長の実現に向けた努力を支える上で相互補完的なマクロ経済政策と構造政策が果たす役割を再確認する。構造改革の早急な進展は、中期的に潜在成長力を高め、経済をより革新的、柔軟かつ強靭にする。潜在的なリスクへの対応力をより高めるべく、我々
は引き続き、成長と安定を支えるためにG20諸国が必要に応じとり得る政策オプションにつき追求する。

 我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。我々は、為替市場に関して緊密に協議する。我々は、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のため
為替レートを目標とはしないことを含む、我々以前の為替相場のコミットメントを再確認する。我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する。我々は、政策に関する不確実性を軽減し、負の波及効果を最小化し、透明性を向上させるために、マクロ経済及び構造問題に関する我々の政策行動を注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行う。




・「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」

 「債務残高対GDP 比を持続可能な道筋に乗せつつ乗せることを確保しつつ…我々は機動的に財政政策を実施する」
は、実は前回とほぼ同じです。


いくつかの報道で、
「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」
が新しく入ったというような書き方をしている記事が見受けられましたが、7か月前にも入っていました。

その後、ECB総裁が今年1月、追加緩和を示唆したり、日銀がサプライズの追加緩和、マイナス金利を発表、実施したりしています。昨年9月のG20共同声明の「金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう」という文言はある意味において、ないがしろにされていると言えなくはない、といったところでしょうか。

「我々は機動的に財政政策を実施する」もまた、7か月前に入っていましたが、これもある意味、世界的にないがしろにされている、と言えますが…。

この辺りは私の「『異次元大恐慌』が世界的に、政治的に引き起こされそうだ」という仮説の、重要な強化材料になります。



・一方で、G20のこれまでの「成果」につき、新たに触れています。
 「過去数年間、G20は成長、投資及び金融安定の強化に関し、重要な成果を挙げてきた」

これは、上記のように、前回アンカラの共同声明の「金融緩和だけじゃだめだ」、「我々は機動的に財政政策を実施する」というのがないがしろにされていることを認識し、G20の存在意義の喪失しかねないという危機感を持ち、過去の成果について触れておく必要性から盛り込まれた文言なのかも知れません。


・あと、目立つところは為替レートに関するものですね。


 我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを再確認する。
 我々は、為替市場に関して緊密に協議する。
 我々は、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないことを含む、我々以前の為替相場のコミットメントを再確認する。
 我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する。


これは最近のアメリカの政治情勢とも密接な関係がありそうです。


-----

「日中が通貨を安く誘導」…クリントン氏が批判
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160224-OYT1T50087.html
読売新聞 2016年02月24日

 【ワシントン=安江邦彦】米大統領選の民主党指名候補争いでリードしているヒラリー・クリントン前国務長官は、日本や中国が輸出を増やすために通貨を安く誘導していると批判し、大統領に就任した場合には対抗措置を取る考えを表明した。

22日、米地方紙への寄稿で明らかにした。

 クリントン氏は「中国や日本などは何年も通貨の価値を下げて輸出品を人為的に安くしてきた」と名指しで批判した。為替操作によって米国の労働者が不利な競争条件にさらされると指摘したうえで、大統領就任後には「(輸入)製品に関税を課すなど、効果的な手段を拡大する」と対策に乗り出す考えを示した。

 12か国が正式合意した環太平洋経済連携協定(TPP)については「雇用を創出し、賃金を引き上げ、安全保障を強化するとの基準を満たしていない」と改めて反対を表明した。

-----


前回アンカラでも「我々は、通貨の競争的な切り下げを回避」と共同声明に書かれていましたが、今回上海の共同声明はかなりの分量の文言に書き換えて、この方針を再確認しています。

「日中が通貨を安く誘導」うんぬんというのは、トランプ氏やほかのアメリカの政治家も頻繁に触れていると記憶しております。


今後、日本や欧州は追加緩和がやりにくくなかもしれません。

中国も、人民元レートの切り下げはやりにくい、という気もしますが、人民元安の流れを敢えて放置し、「中国がハードランディングすると発言したジョージ・ソロスや西側メディアが煽るから中国から資本流出が起きているので仕方ないじゃないか」と切り返してくるかも知れません。


また、上記の読売の記事によると、ヒラリー氏が、

「大統領就任後には『(輸入)製品に関税を課すなど、効果的な手段を拡大する』と対策に乗り出す考えを示した」

とあります。

これはG20の今回も、前回も共同声明で盛り込まれていた「我々は、あらゆる形態の保護主義に対抗する」に反します。

サンダース氏もトランプ氏も、このG20共同声明の方向性に反し、保護主義的です。

というわけで、G20共同声明はおおむね空証文になることがほぼ運命づけられている、という具合でしょうか。


ちなみに、そんなヒラリー氏を支援するスーパーPACに、ジョージ・ソロス氏が6百万ドル寄付している、という話もあります:






さて、今回のG20上海の共同声明についてはほかにも…





※↑このブルームバーグ記事は、G20共同声明の草案(draft)に関するものでしたが、まあ、それほど違いはないでしょう。




そして、さらには…


上海G20、具体策なく株式市場は失望売りか
http://jp.reuters.com/article/g20-china-markets-idJPKCN0W10YL
ロイター 2016年02月29日



Stocks Drop With U.S. Futures as G-20 Underwhelms; Yen Advances
G20への失望とともに米株先物下落、円は上昇

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-28/yen-rallies-after-being-singled-out-at-g-20-while-data-hits-kiwi
February 29, 2016
by Emma O'Brien, Kevin Buckland, Bloomberg

・Shanghai Composite sinks to one-month low as yuan weakens
 人民元の下落とともに、上海総合指数は1か月ぶり安値

・Crude oil declines with copper, nickel as gold rallies
 原油と銅、ニッケルが下落し、金は上昇



The G-20 was “underwhelming,” said Ray Attrill, National Australia Bank Ltd’s global co-head of foreign-exchange strategy in Sydney. There was an “admission of downside growth risks but no tangible commitments to fiscal policy action in particular to bolster growth in the short term,” he said.
G20は「がっかりさせる」ものだったと、豪州シドニーにあるナショナル・オーストラリア銀行の国際外国為替戦略部門長レイ・アトリル氏はいう。「成長の下振れリスクを了解しているにも関わらず、特に短期的な成長を支える財政政策行動への具体的な合意がなかった」と彼は述べた。



-----

それでもって、最近はリスク回避のためのこんな動きが…









最近、経営危機が取りざたされているドイツ銀行が、「金は今、買いどきです!」と言っているのは何ともシュールですね。


ついでながら、に関してはCNBCでこんな記事も:

Here's how to play gold: Technician
金でいかに儲けるか? あるテクニカル分析家の見解

http://www.cnbc.com/2016/02/28/heres-how-to-play-gold-technician.html
By CNBC's Re-Essa Buckels



According to Wald's chart work, the recent price action in gold is strikingly similar to the activity in 1999 when the commodity reversed a multi-year downtrend and started to form a base.
オッペンハイマー Oppenheimer の アリ・ワルド氏 Ari Waldのチャート分析によれば、最近の金価格の動向は、1999年にコモディティーが数年にわたる下落トレンドが逆転したときの動きに似ており、 下値固めを形成し始めているという。

If history is in fact repeating itself, the long term decline in gold is setup for a long term bottom. The recent turbulence has some investors seeking the safety of gold.
もし歴史が繰り返すなら、金の長期下落傾向は長期的な底入れとなりそうだ。最近の市場の動揺は一部の投資家を、金の安全性に向かわせた。

"The trading environment is much more favorable, and presents tradable opportunities within this base" said Wald.
「この取引環境は大変好ましい。この下値固めによって投資機会を提供してくれている」とワルドはいう。

Wald recommends playing the gold miners over gold. The Gold Miners ETF is tracking for its best month since May 2009, up 32 percent. According to Wald's chart work, gold miners' underperformance relative to gold have recently reversed, suggesting miners will be the outperforming asset within the group.
ワルドは金そのものよりも、金鉱山株に投資することを推奨している。金鉱山株ETF(GDX)は、2009年9月以来最高の値上がりとなっており、(2016年2月は1か月で)32%上昇した。ワルドのチャート分析によれば、金鉱山株は金価格に対して相対的にパフォーマンスが下回っていたが、最近それが逆転した。それは金鉱山株が抜きんでて値上がりしそうであることを示唆する。

"That is not my favorite area to sell right here. I think near-term as a trade gold miners continue to work" said Wald.
「いまここで売るのは私の好みではない。私は目先、金鉱山株取引が有効であり続けると考える」とワルドは述べた。





仮に日本で金鉱山株ファンドに投資するとすれば、

野村証券で販売しているブラックロックの「ブラックロック・ゴールド・メタル・オープン Bコース(為替ヘッジなし)」(金鉱山株に分散投資)

か、もしくは

アメリカ株を扱っている証券会社で

Market Vectors Gold Miners ETF (GDX) (金鉱山株に分散投資)
もしくは、
Market Vectors Junior Gold Miners ETF (GDXJ) (小型の金鉱山株に分散投資)

を買う、といった具合でしょうか。


※上記はあくまでも一つの情報を提示しているだけであり、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません(仮に投資する場合、損しても自己責任、という覚悟が必要であり、損する覚悟がない場合、決して投資すべきではありません)。




というわけで、最近は

・G20共同声明に表れているように、各国首脳において需要不足の認識、財政出動の必要性の認識があるのに、財政出動がどの国でもほとんど実施されなさそう

TPPがポシャりそう

・金に注目が集まっている

というように、

拙著『
異次元大恐慌』で提示している仮説を強化する材料が日増しに増えている

という今日この頃であります。




 『金融政策のみでは、均衡ある成長に繋がらないだろう』
 
 『我々は機動的に財政政策を実施する』

 という、繰り返されたG20の文言は、

 実に的を射ているのだが…



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694:「アベノミクス・プラス(金融緩和+財政出動+構造改革)」が世界経済に必要。だが、「決定的な財政出動」は政治的に困難。よって、景気後退はほぼ確定:シティのブイター氏

2016/02/26 (Fri) 19:07
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:

ブルームバーグはよく興味深い記事を出すので、個人的には好きなメディアの一つです。

ただ、そのような興味深い記事が日本語訳されない、されても部分訳しかされないという点が非常に残念なところ。

(この1年かそこら、英語のメディアをできる限り読むようにしていますが、正直、骨が折れます^^;。が、英語で読まないと、なかなか接することの情報の、なんと多いことか!)

今回ご紹介する記事も、そのような類(たぐい)のものかも知れないので、大雑把ながら全訳してみます。

『異次元大恐慌』でも紹介しました、シティ・グループのブイター氏の見解に関する記事です。

ブイター氏は、英中銀(Bank of England)の金利決定委員会(英中銀内部の委員5人と外部委員4人の9人で構成)で外部委員を2年間(だったかな)務めた経歴の持ち主です。ブイター氏が以前、経済の安定に関して、民間債務を非常に気にかけた分析をしているのを読んだときから、私は個人的にかなり注目しています。


Citi: Here Comes a Global Recession
シティ:世界的景気後退がやってきた

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-25/citi-here-comes-a-global-recession
by Julie Verhage, Bloomberg
February 25, 2016

Growth is likely to fall apart.
成長は崩壊しそうだ。


After a few years of reasonably calm markets and stable growth around the world, Citigroup Inc. says the chances of a global recession are already high and only going up.
世界における2、3年間の分別ある穏やかな市場と安定した成長を受け、シティ・グループは世界的景気後退の可能性はすでに高く、そして、その可能性は高まるばかり、と言っている。

"In our view, global growth is at a highly precarious point, after 2-3 years of relative calm," the team of economists led by Willem Buiter said in their note, which is likely to exacerbate concerns about the world's ability to withstand a pause in China's stunning economic growth.
「我々の意見では、世界の成長は2、3年の比較的穏やかな期間を経て、かなりおぼつかない地点にある」:ウィレム・ブイターによって率いられたエコノミスト集団は、彼らの書いたノートにおいて、驚異的な中国の経済成長の停滞に世界が耐えられないという懸念を強調しているようだ。


"The long-standing fragilities in the world economy relate to the structural and cyclical slowdowns in China and its unsustainable exchange rate regime, the excessive level of debt across many countries and sectors and ongoing regional and geopolitical uncertainty," the economists said. The economists have accordingly revised their forecast for growth this year in advanced economies, from a 2.4 percent in January 2015 to 1.6 percent currently, and warned that the 2016 figure "could well be lower."
「世界経済における長く続いている脆弱さは、構造的、循環的な中国の減速、並びにその不安定な為替相場体制、そして、多国間、他部門間にまたがる過剰な水準の債務、地政学的不確実性と関連している」と彼らはいう。彼らは、今年の先進経済における成長率を、2015年1月の予測2.4%から現行の1.6%に引き下げ、この2016年の成長率は「もっと低くなり得る」と警告している。

When they adjust for what they call "true Chinese growth," the Citi team finds that global growth might have been as low as 2 percent year-over-year in the final quarter of 2015. That is the lowest since the euro zone recession of 2012-13, and if growth remains at such depressed levels, it would qualify as a global recession according to their measures:
彼ら自身が「真の中国の成長率」と呼ぶような調整をした場合、世界全体の成長率は2015年の最後の四半期において既に2%を下回っているとシティは見積もっている。2012-13のユーロ圏の景気後退以来、最低の水準である。そして、もし成長率がこのようなこち込んだ水準を続けるなら、それは彼らの基準では世界的な景気後退と判定されることになる。


"The most recent deterioration in the global outlook is due to a moderate worsening in the prospects for the advanced economies (AE), a large increase in the uncertainty about the AE outlook (notably for the U.S.) and a tightening in financial conditions everywhere. Unlike most of the previous years, the most recent worsening in global growth prospects and global sentiment is therefore driven by the advanced economies rather than [emerging markets] ... Below-potential global growth will likely reinforce disinflationary momentum and global growth could fall to even one percent or lower, in the event of an even sharper AE downturn (including eg a U.S. recession).
「最新の世界経済の見通しの悪化は、先進経済の見通しの悪化、先進経済(特に、米国)の見通しの不確実性の大きな増大、そこかしこにおける金融状態の引き締まりに起因する。前年と異なり、最新の世界経済成長の見通しと世界的な市場心理の悪化は、(新興市場)よりもむしろ先進経済によって引き起こされている。…潜在成長率を下回る世界経済の成長率は、ディスインフレーション(=インフレ率の低下)のへの勢いを強化しそうであり、もし先進経済が鋭く落ち込むことが(例えば米国の景気後退入りなど)あった場合、世界経済の成長率は1%もしくはそれを下回ることすらありそうだ。

While a global recession may be increasingly probable, according to Citi, it's not necessarily unavoidable.
世界的な景気後退の確率が高まりそうであるが、シティによれば、これは必ずしも不可避ではない。

"To avoid a recession and to avoid a greater slowdown in potential output growth than is warranted because of worsening demographics, the world needs a global version of what we would call 'Abenomics plus,'" which in Citi's terms would be easy monetary policy coupled with fiscal stimulus and structural reform that would include "material deleveraging."
「悪化する人口動態を原因とする景気後退を避け、潜在的成長率の一層の減速を避けるには、世界は、我々が『アベノミクス・プラス』と呼ぶ経済政策――金融緩和政策に、財政刺激と、『実体的な債務縮小』を含む構造改革を組み合わせた経済政策――の世界バージョンを必要とする。

※deleveraging デレバレッジングとは、レバレッジの縮小、つまり、資産を売って債務を返済し、債務比率を低減して自己資本比率を高め、企業や個人のバランスシート(貸借対照表)の安全性を高めることです。ここでいう債務縮小は、政府の債務縮小ではなく、民間部門の債務縮小を指していると思われます。というのは、政府の財政出動(=財政赤字の拡大)が必要としているからです。
多くの危機、日本の1990年前後の株・土地バブルの崩壊やリーマンショックは、政府の借金ではなく、民間の借金が問題を起こしました。ゆえに、上記のdeleveraging デレバレッジングは、民間の債務縮小を指すと考えるのが妥当でしょう。


But, given their recession call, the team doesn't believe these policy measures will actually occur as fiscal stimulus faces high political hurdles.
しかし、財政刺激は政治的に高いハードルに直面するため、これらの政策手段(「アベノミクス・プラス)が実際に実行されるとは、彼らは信じていない。

"Even though we suspect that ongoing economic weakness and limited options for incremental monetary easing will probably reinforce the trend towards modest fiscal easing, we do not foresee a shift to decisive fiscal easing," they somberly conclude.
「進行中の経済的な弱さと、限られた漸進的な金融緩和のための選択肢が穏やかな財政緩和に向かうことを強制するかも知れないと、我々は考える。しかしながら我々は、決定的な財政緩和への転換があるとは予測していないと、彼らは陰鬱に文章を結んでいる。






このシティのブイター氏のチームによる、

現在、世界的な需要不足の状況にあり、世界的な財政出動が必要であるが、必要な財政出動が実施されることは政治的に難しいので、世界的な景気後退は避けられないだろう

という見方は、私の『異次元大恐慌』の見立てと同様のものになります。


ところで、今回取り上げたブルームバーグの記事には、なぜか、ロスチャイルド・グループのパオロ・スカロニ副社長が景気楽観論を語っている動画が付いています。悲観論の記事とバランスを取る意図なのかも知れません。

スカロニ氏は、「ガソリンが安くなって、皆のポケットには一人当たり1000ドルが残る(1年あたり1000ドル=12万円、か?)。それが消費に回ることの影響を、悲観論者は考慮していない」というようなことを話しています(というように聞こえたと思っていますが、それほどリスニングに自信はありません!)。

私が思うに、それはそれで確かに考えられるでしょう。しかし、民間部門、企業や個人が、受け取った金を全部使うか、全部貯金するか、半分だけ使って残りを貯金に回すか、それは定かではありません。
少なくとも最近の世界においては、世界中の政府の借金が増え続け、民間の貯蓄が増え続けています。そして、「国の借金がー!」というプロパガンダが、多くの国のメディアで年がら年中喧伝されています(「民間の貯蓄がー!」とはほとんど語られることはない)。
民間部門は、将来の先行きが不透明、さらに外貨建て借金かどうかとか、経常収支がどうかとか、対外純資産がどうかとかの区別なく、「国の借金がー!」のプロパガンダなどによって、政府の先行きにも不安を抱き、貯蓄をため込む傾向はますます強まります。

すると、ガソリンが安くなったからといって、それで節約できた分を、「宵越しの銭はもたねえぜ!」とばかり使うかというと、それは非常におぼつかないことだと言わざるを得ません。

また、ガソリン、原油が安くなった分、石油業界、産油国の収入が減り、彼らの投資支出、消費支出が減るのですから、ガソリンが安くなったことのプラスの影響とマイナスの影響はほぼ相殺されるように思われます。

よって、「ガソリンが安くなって、1000ドル浮いた」ことの効果は、あまり期待できない、と考えられます。


ちなみに、本日の上海におけるG20会合で、ドイツのショイブレ財務大臣が以下のように語ったとのこと。原油価格安に関しては、ロスチャイルドの副社長と同じご意見のようです:



ドイツはG20による財政刺激には反対、構造改革に注力を-財務相
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O350MA6JIJUP01.html
ブルームバーグ 2016/02/26

(ブルームバーグ):ドイツのショイブレ財務相は26日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がこの日上海で開幕するのに先立ち、ドイツとしてはG20によるいかなる財政刺激計画にも反対すると表明した。それよりも各国が構造改革に注力して成長率を高めるべきだと述べた。
ショイブレ氏はさらに、金融政策の余地も使い尽くされたと指摘。債務に依存して成長を押し上げる政策は経済の「ゾンビ化」につながるだけだと警告した。
同氏は上海でのコンファレンスで、「さらなる財政刺激策に関する議論は、目の前にある真の課題から注意をそらすだけだ」と説明。ドイツの政策当局としては「見通しへのリスクが現実化した場合の策として一部が主張しているG20の財政刺激パッケージには賛成しない」と述べた。
ショイブレ氏はまた、原油価格の下落が需要に「多大な」刺激を既に与えていると指摘。拡大的な財政政策は将来の危機の下地をつくる恐れがあると述べた。




というわけで、世界的な「アベノミクス・プラス」はこれだけでもなさそうです。

一応、中国がもっと財政出動します、金融緩和も、構造改革もやりますと、いわば「アベノミクス・プラス」実施を宣言(?)していますが…


中国には景気支援で金融政策面での余地がある-人民銀総裁
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O34V4U6TTDTF01.html
ブルームバーグ2016/02/26


周総裁は「引き続き進展を注視し、調整を適切に進める必要がある。下振れリスクの可能性に対処するため、中国にはまだ一定の金融政策の余地と複数の政策手段が残されている」と説明した上で、財政政策が一段と積極的になり、供給サイドの構造改革が引き続き焦点になるとも話した。





しかし、その積極財政も、世界全体の景気を押し上げることはなさそうです:


中国財政赤字の対GDP比、4%に上昇でも対応可能-中銀幹部ら
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O333K46JIJUS01.html
ブルームバーグ 2016/02/25

 (ブルームバーグ):中国政府が法人税減税を目指す中で、同国は財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を4%まで上昇させることができると、中国人民銀行(中央銀行)当局者が中国紙、経済日報のウェブサイトへの寄稿で指摘した。
人民銀調査統計局の盛松成局長らによると、政府債務は低水準で、経済成長は「比較的速い」上に国有資産を豊富に抱えており、中国にはより大きな国債増発能力がある。財政赤字が対GDP比4%に上昇したとしても、2025年末時点で債務の対GDP比は70%にまでに維持できるとしている。
国営の新華社通信が最近報じたところによれば、財政赤字の対GDP比は15年の2.3%から今年は上昇する可能性が高い。3月5日には全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕し、今年の経済計画や目標が審議、発表される見通し。




2015年の財政赤字GDP比2.3%から4%に上げられます、という程度です。

2015年の中国の名目GDPはIMFによると11.4兆ドル(1ドル=120円とすれば、1368兆円)と見積もられます。
GDP比4%まで上げられるということで、4-2.3=1.7%分、財政赤字を増やせると。

1368兆円×1.7%=23兆円

まあ、名目で仮に2016年のGDPがドル建てで6%増えるとしましょう(怪しいですが)。それでも、中国が増やせる財政赤字は24兆円に留まります。

世界全体の2015年の名目GDP(ドル)は73.5兆ドル(1ドル120円で8820兆円。それに対して24兆円の「積極財政」(8820兆円のわずか0.3%程度)があったとしても焼け石に水、シティのブイター氏らが言うところの「決定的な財政緩和への転換があるとは予測していない」という範囲内でしかないでしょう。

ドイツもない、中国もない。

日本や米国であるかというと、やはり政治的に難しいでしょう。

特にアメリカは議会で間違いなく「債務上限がー」で紛糾するのでほぼ不可能。

日本は、仮にできたとしても、20兆円とか30兆円でしょう。それもまた世界全体のGDPの0.3%程度でしかありませんが、それでも政治的には困難ではないかと思われます。





 世界的な『アベノミクス・プラス』。

 あって欲しいとも思うが、

 残念ながら、政治的にお預け、か?



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693:トルコとロシアの直接衝突がシリア国境のリスクを増大させている - まるで戦国時代そのものと言える、複雑怪奇な中東情勢について、ひとまず整理を試みます

2016/02/17 (Wed) 17:40
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「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:

ブルームバーグ(英語)で、目下の中東情勢について把握するのにちょうど良い記事がでてたので、大雑把に翻訳しておきます。そのあと、いくつかほかの記事を紹介しながら、複雑な中東情勢について、ひとまず整理してみたいと思います。


A Direct Turkey-Russia Clash Is Growing Risk on Syria Border
トルコとロシアの直接衝突がシリア国境のリスクを増大させている

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-16/a-direct-turkey-russia-clash-is-a-growing-risk-on-syria-border
by Selcan Hacaoglu, Bloomberg
February 17, 2016

There’s only one major group of combatants in the Syrian war that’s backed by both Russia and the U.S. -- and now Turkey is attacking it.
シリアではただ一つだけ、ロシアとアメリカの両方に支援されている有力な武装勢力が存在する。--そして現在、トルコがその勢力を攻撃している。

For a fourth day on Tuesday, Turkey unleashed its 155-millimeter heavy guns across the border with Syria. The targets were Kurdish forces, whose recent advance is a key part of the Russian plan to restore President Bashar al-Assad’s control over Syria.
(攻撃の?)4日目の火曜日、トルコはシリア国境越しに、155ミリの重砲を撃ち放った。標的はクルド人部隊だった。そのクルド人部隊の最近の進撃は、ロシアによる、アサド大統領のシリア支配回復プランの重要な要素となっている。

Syria’s five-year war has turned into a tangled web of proxy conflicts between global and regional powers, with a growing risk that some of them could clash directly. Right now the most dangerous flashpoint is between Russia and NATO member Turkey, which shot down a Russian plane in November. Since then tensions have steadily built as the Assad-Russia alliance -- with help from the Kurds -- threatens to surround Turkish-backed rebels in Aleppo, Syria’s biggest city.
シリアの5年にわたる内戦は、世界の主要国や地域大国の間の代理紛争の場となり、複雑な様相を呈している。その一部はいまや代理紛争ではなく、直接衝突となるリスクが増大しつつある。目下、最も危ういのがロシアと、NATO加盟国であるトルコの間の衝突だ。トルコは昨年11月、ロシアの戦闘機を撃墜した。それ以来、緊張は着実に確立されている。アサド-ロシア同盟はクルドの支援を受けつつ、トルコが支援する反乱軍をアレッポ(シリア第二の都市)に包囲しつつある。

“Both Russia and Turkey are looking to position for strategic advantage,” Tim Ash, head of emerging-market strategy at Nomura in London, said by e-mail on Monday. “The risk is of an actual Russo-Turkish military clash, which would then threaten to draw in NATO.”
「ロシアとトルコの双方とも、戦略的に有利な地位を模索している」と、野村(ロンドン)の新興市場戦略部長、ティム・アッシュ氏はいう。「現実的なロシア-トルコの軍事衝突のリスクは、いずれNATOを巻き込む恐れもある」

‘Accidental’ War
「偶発的」戦争
The irony is that even while Turkey faces off against NATO foe Russia, its policies are also putting it at odds with leaders of the Western coalition.
トルコがNATOの敵であるロシアと対立する一方、トルコの政策が西側同盟国の指導者らと一致していないのは、皮肉である。

The U.S. shares Turkey’s desire to halt the Assad advance, and its suspicion of Russian intentions. But on the subject of Syria’s Kurds, there’s a sharp difference.
米国は、アサドの進撃を止めたいというトルコの望みと、ロシア介入に対するトルコの懐疑を共有している。しかし、シリアのクルド人のこととなると、鋭い相違がある。

Turkey says the main Kurdish fighting unit, the YPG, is a terrorist group that’s in league with autonomy-seeking militants inside Turkey. The U.S. views the Syrian Kurds as a proven battlefield ally against Islamic State. Two weeks before Turkey started shelling them, President Barack Obama’s envoy for the coalition against Islamic State, Brett McGurk, was visiting YPG fighters in Syria to congratulate them.
トルコは、(シリアにおける)主たるクルド人武装勢力YPGをテロ組織だと言っている。YPGはトルコ国内で自治権確立を目指す武装勢力と連合している。アメリカはシリアのクルド人は対IS戦闘の同盟者として認めている。トルコが砲撃を開始する2週間前、オバマ大統領の対IS融資有志連合担当の特使、ブレット・カクガーク氏が、シリアでYPG戦闘員を訪問し、祝辞を述べている。

Turkey says its attacks on the Kurds were in retaliation for cross-border shooting, and most analysts say it’s unlikely to carry out a major incursion that would put its troops under Russian fire. But the risk of an “accidental” clash is increasing, according to Nihat Ali Ozcan at the Economic Policy Research Foundation in Ankara.
トルコは、クルド人への攻撃は、国境越しに撃ってきたことへの報復としている。ほとんどのアナリストは、トルコ軍が本格的に(シリアに)侵入してロシアと砲火を交えることは、ありそうにないと言っている。しかし、「偶発的」衝突のリスクは増大している、とアンカラ(トルコの首都)にある経済政策研究財団のNihat Ali Ozcan氏は言う。

Once Friends
かつては友人だった

Turkey’s lira slid to a three-week low on Tuesday as the shelling fueled concerns of a wider conflict in Syria, where at least a quarter-million people have already died.
トルコの通貨リラは火曜日、3週ぶりの安値となった。(シリアのクルド人への)砲撃が、シリアにおける広範な衝突への懸念を加速させた。シリア(内戦)では既に、少なくとも25万人が死亡している。

The once-friendly relationship between Ankara and Moscow has deteriorated since Russia entered the Syrian war on Assad’s side last September. The rebels backed by Turkey and other U.S. allies, including Saudi Arabia, have been withering under Russian bombing that has helped Assad regain territory.
かつてのたトルコとロシアの友好関係は、昨年9月、ロシアがアサド側に立ってシリア内戦に介入して以来、悪化している。トルコや、サウジなどアメリカの同盟諸国が支援する反乱軍は、アサドの支配領域回復を支援するロシアの空爆で衰退しつつある。

For Turkish President Recep Tayyip Erdogan, two threats are unfolding simultaneously. In the short term, a Russian-backed Kurdish advance could cut supplies to the rebels that Turkey’s been backing for years, increasing the chance that Assad will recapture Aleppo and survive in power. That would be the latest blow to Erdogan’s policy in the Middle East, a region of growing economic importance for Turkey: he’s already lost allies in Egypt and Iraq.
トルコのエルドアン大統領にとって、二つの脅威が同時に展開した。短期的には、ロシアに支援されたクルド人の進撃により、トルコが何年ものあいだ支援してきた反乱軍への補給が断たれ得るということだ。それはアサドによるアレッポ奪還と権力温存の可能性を高める。それは、エルドアンの中東政策に新たな打撃を与えることになる。中東はトルコにとって経済的重要性が増大している地域であるが、エルドアンはすでに、エジプトとイラクの同盟者を失っている。

※エジプトは、シシ大統領の軍事クーデターで崩壊したムスリム同胞団のモルシ政権のこと(近年のトルコとエジプトの関係はこちら)。
イラクは…、現在のシーア派政権になる前のスンニ派政権、つまり、イラク戦争で滅亡したフセイン政権のことか?


In the longer term, Turkey is wary of territorial gains for the Syrian Kurds that could eventually deliver them a state of their own, and fuel similar aspirations among Turkey’s Kurdish minority. Erdogan says Russian airstrikes are allowing the Kurds to drive ethnic Turkmens and Arabs away from the border areas, deepening the refugee crisis.
長期的には、シリアのクルド人の支配領域拡大が、最終的にクルド人国家につながり、それがトルコ国内のクルド人を刺激し得ることを、トルコは懸念している。ロシアの空爆で、クルド人がトルクメン人やアラブ人を国境地帯から追い払い、難民危機を深刻化させているとエルドアンは言っている。


‘Reciprocal Restraint’
「相互抑制」

Like other U.S. allies in the region, Turkey has been pinning its hopes for a turnaround on Washington’s leadership. Turkey would definitely join a ground operation with its international partners to end the Syrian war, a Turkish official said at a briefing in Istanbul on Tuesday, speaking on condition of anonymity. The official ruled out a unilateral incursion by Saudi Arabia, which has made a similar offer of troops, or Turkey.
地域における他のアメリカの同盟諸国と同様、トルコはアメリカの指導層の方針転換に望みをつないでいる。トルコはシリア内戦を終結させるため、ほかの国々とともに地上作戦に参加すると、火曜日、イスタンブールでトルコ高官が明言している。その高官は、トルコと同じく地上軍派遣を提示しているサウジも、トルコも、一方的に(シリアに)侵入することはないとしている。

The U.S. appears to be backing diplomacy rather than military escalation, though the truce it brokered last week with Russia and other powers has run into trouble even before it was due to take effect. Obama told reporters on Tuesday that the cease-fire probably won’t work “if Russia continues indiscriminate bombing.”
アメリカは軍事活動の増大よりも、外交(による解決)を支持しているが、先週ロシアとほかの主要国とで合意した停戦は、それが効果を発揮する前に、むしろ困難に陥っている。オバマは火曜日、「もしロシアが無差別な空爆を続けるなら」停戦は恐らく機能しない、述べている。

The U.S. has acknowledged some of Turkey’s concerns. In a phone call with Turkish premier Ahmet Davutoglu, Vice President Joe Biden said efforts were being made “to discourage Syrian Kurdish forces from exploiting current circumstances to seize additional territory near the Turkish border,” the White House said on Sunday. But Biden also urged Turkey “to show reciprocal restraint by ceasing artillery strikes in the area.” Members of the UN Security Council expressed concern about the Turkish attacks at a meeting on Tuesday, the Associated Press reported.
アメリカは、トルコの懸念の一部については承認いている。トルコのダウトオール首相との電話会談でバイデン副大統領は、「シリアのクルド人勢力が、現在の状況を利用して、トルコ国境付近でこれ以上、支配領域を拡大しないように」する努力はなされていると話している。ホワイトハウスが日曜、明らかにした。しかしバイデンはトルコに対し、「その地域における砲撃を停止することにより、相互抑制の姿勢を示す」ように促した。国連安保理の参加国は、火曜日の会合においてトルコの攻撃につき懸念を表明したと、AP通信が報じている。

Russia has been carrying out military exercises in the Black Sea area that are “a signal to Turkey not to stage a provocation,” according to Igor Korotchenko, director of the Center for Analysis of World Arms Trade in Moscow.
ロシアは黒海において軍事演習を実施している。それは「トルコに対し、挑発行為を行わないようにというシグナル」であると、モスクワのthe Center for Analysis of World Arms Tradeの理事長(?)、イゴール・コロトチェンコ氏はいう。

‘Enough Forces’
「十分な軍事力」

“We have enough forces to bring Erdogan back to his senses if Turkey forces us to act militarily,” Korotchenko said.
Turkey’s actions on the border are defensive steps to avoid a war, Davutoglu said on Tuesday. A day earlier, he denied reports that Turkish troops had crossed into Syria.
「我々は、もしトルコが我々に軍事行動を取らせようとした場合、エルドアンに正気を取り戻させるのに十分な軍事力を持っている」とコロトチェンコはいう。
トルコの国境における行動は、戦争を避けるための防衛的な措置であると、ダウトオール首相は火曜日に述べた。その前日には、彼はトルコ軍が国境を越えてシリアに侵入したという報道を否定した。

All the rhetoric shows that, while the risk of a clash between major powers in Syria may be exaggerated, it’s “still real,” said Michael Gunter, author of several books on the Kurds and a professor of political science at Tennessee Tech University in Cookeville.
If Turkey takes further action to counter the Kurds and Russia, he said, “things could quickly escalate into a greater confrontation which nobody in their correct mind would want.”
シリアにおいて主要国が衝突するリスクは誇張されたものであるかも知れないが、それは「いまだ現実味がある」と、クルド人についてのいくつかの著作の著者であり、テネシー工科大学の政治科学の教授であるマイケル・グンター氏は言う。もしトルコがクルドとロシアに対して更なる行動に踏み込めば、「物事は急激にエスカレートして、誰もが理性では望まないような大きな対立となり得る」と彼は言う。

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さて、以下は、中東情勢を整理するための追加的な情報です。

クルドに関して、イスラエルの(極右の美人)法務大臣Ayelet Shaked アイエレット・シャクド氏が、先月、「クルド人国家建設を支援すべき」と述べています。RTの記事を抜粋翻訳:


‘Time to help them’: Israeli justice minister calls for independent Kurdish state
「彼らを助ける時だ」:イスラエル法務大臣、クルド人国家独立を訴える
https://www.rt.com/news/329518-israel-kurdish-state-calls/
RT, 20 Jan, 2016

“We must openly call for the establishment of a Kurdish state that separates Iran from Turkey, one which will be friendly towards Israel”
「我々は公に、イランやトルコから分離したクルド人国家建設を求めるべきだ。クルド人国家はイスラエルに対して友好的となるだろう」

The minister stressed that Israel should “promote steps that would correct the injustice that [made Kurds] the biggest nation without a state,” BasNews reported. She also emphasized that “the Kurds are an ancient people with thousands of years of history, and a democratic nation” – one that has “never attacked any other nation.”
イスラエルは「(クルド人という)国を持たない最大の民族に対する不正義を正す動きを促進」すべきであると強調した。彼女はまた、「クルド人は数千年の歴史を持つ人々であり、民主的な民族だ」、「他の国を攻撃したことがない民族だ」と強調した。

“The Kurdish people are a partner for the Israeli people,”
「クルドの人々はイスラエル人の仲間だ」

“We Kurds and Jews have a long history. We have common interests in trying to stop Daesh [Islamic State/IS, formerly ISIS/ISIL] and the Kurds are fighting ISIS with all their might.”
「我々クルド人とユダヤ人は、長い歴史を持っている。我々はダエシュ(IS)を止めるという共通の利害を持っている。そしてクルド人は彼らの全ての力を使ってISと戦っている」

“[The] Kurds are the only ones fighting ISIS as their highest priority.”
「クルド人は、最優先事項としてISと戦っている唯一の人々である」

Although there was always implicit support from the Israelis for a free Kurdish state, there are no official diplomatic ties between the two peoples. However, reports claim that visible business and military cooperation exists between Israel and the semi-autonomous Kurdish region in Iraq.
これまで、イスラエルからクルド人国家建設への暗黙のうちの支援は常にあったが、クルドとイスラエルの公的な外交関係はなかった。しかしながら、イスラエルとイラクのクルド人の半自治国とのあいだには、目に見える形で経済や軍事の協力が存在している、と言われている。

In 2014, Prime Minister Benjamin Netanyahu also advocated the creation of an independent Kurdistan.
2014年、ネタニヤフ首相もまた、クルド人国家の独立を提唱している。

Israel is also running out of friends, and some believe that calls for an independent Kurdistan are aimed at establishing at least one Muslim ally for the Jews.
イスラエルもまた、友好国を失いつつある。一部の人々は、イスラエルによるクルド人国家独立の提唱は、ユダヤ人にとって少なくとも一つのイスラム教国を設立することを狙いとするものだと考えている。

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なお、トルコとクルド人の関係は、少々入り組んでいます:








トルコ ←戦争中→ トルコやシリアのクルド人
トルコ ←友好関係→ イラクのクルド人

ということになります。

次に、トルコとイスラエルの関係は…















ということで、トルコとイスラエルの関係は良くありません。

但し、トルコとイスラエルは、イラクのクルド人と良好な関係、ということでは一致。

一方、イスラエルのヤアロン国防大臣が、「トルコがIS支援している」というロシアの従来からの主張で、アメリカが否定していたことを、思いっきり肯定したことで、イスラエルとロシアが急接近。

トルコとロシアも上述のようにかなり険悪。

という具合です。


あと、中東と言えば、

・イエメンの内戦(サウジとイランの代理戦争)

・パレスチナ問題

ですね。

全部書くと、それこそ収集が付かんような気がしてきたので、パレスチナについて少しだけ:















ちなみに、パレスチナに関して日本は…

アル・アイヤーム紙(パレスチナ)による安倍総理大臣インタビュー
2015年1月20日付
http://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/ip/page4_000931.html
外務省:平成27年1月26日
日本国総理大臣:パレスチナ国家建設を支持し,イスラエルに入植停止を促す




あと、イランに関しても少しだけ…



















以上を整理する、というのはなかなか困難な作業でありますが…

・対ISでは、国際社会も、中東も、ほぼ結束している。(トルコは微妙か?)

・クルド人に対しては、ロシアとアメリカ、イスラエルが一致して友好的であるが、トルコが徹底的に反発している(ただし、トルコはイラクのクルド人とは関係良好)。

・パレスチナ国家承認に関しては、国際社会がほぼ一致するが、イスラエルが徹底的に反発している(アメリカもパレスチナ国家は承認していないが、オバマ政権内部ではパレスチナ国家承認を検討する動きもあった)

・イランに関しては、イスラエルが死ぬほど警戒しており、イスラエルに配慮してか、アメリカもいつでもサイバー攻撃する準備をしていた。一方、何だかんだといってイランは西側を信用したことがなく、中国やロシアとの関係が深い。


要は、アメリカの今年の大統領選で、トランプ氏やサンダース氏(両氏ともイラク戦争は間違いだったと主張)のような内向き志向の政権が誕生するかどうか、アメリカの覇権がどれくらいのペースで退潮するかによって、中東情勢は大きく変わるものと思われます。

※なお、アメリカの覇権がどうなるか、ということは拙著『異次元大恐慌』の主要なテーマの一つであります。

※近いうちに来るかも知れない大暴落・大恐慌は、アメリカの覇権からの退座を伴うかもしれない、という意味でも『異次元大恐慌』となり得るのであります。



・但し、アメリカの覇権がどうなるかにかからわらず、ひとまず、ISは衰退に向かいそう

・ISが片付いたら、今度はクルド人問題とパレスチナ問題。イラン核問題も場合によってはまた持ち上がりそう。


○アメリカの覇権からの退座が進むと、

・イランが地域大国として台頭

・イスラエルはイランを抑えるために、必死でクルド人国家建設を支援。その際はロシアとも協力。

・トルコは、ロシア、イスラエル、クルドと向かい合わなければならない。アメリカが中東から引けば、NATOは頼りにならず、しぶしぶクルド人国家を認めざるを得ない(核を持たないトルコは、恐らく、そうせざるを得ない)

・イスラエルもまた、パレスチナ人国家を承認せざるを得ない。

・イランの大国化で、サウジもいつまでもイエメンでイランと戦っているわけにもいかず、イエメンの内戦も収束に向かう。


●アメリカの中東への関与が今後も続くなら…

・トルコがNATOの後ろ盾で、クルド人国家建設をとにかく可能な限り阻止しようとする

・イスラエルは、アメリカがイランを抑えることでクルド人国家建設にそこまで注力せずにすみ、また、パレスチナ人国家を認めずに済み、むしろ、パレスチナへのユダヤ人入植を推進する

・サウジも、アメリカがイランを抑えることで、イエメンでの内戦でイランと対立を続けることが可能となる

といった具合でしょうか。


あれ?

そうなると、アメリカが中東に関与し続けると却って中東の不安定さが増す、ということになってしまうか。

いや、それはそれで違うかも知れませんが、どうでしょうか…。


以上は、中東情勢を整理するための一つの考え方の例、くらいに思って頂ければ幸いです。




 まあ、ひとことで言えば、

 中東はまるで戦国時代そのもの

 ということか。


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692:プーチンに利益か:ローマ法王とロシア正教大主教の歴史的会談の政治的意義+サンダース氏とローマ法王、トランプ氏と正教会の意外なつながり

2016/02/11 (Thu) 22:22
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目次項目の一覧はこちら




さて、本題です:


先日ツイートしていた、ロシアRTの記事↓





に関して、ロイター(英語)が興味深い記事を出していたので紹介します。


というのは、

拙著『異次元大恐慌』で提示しました、ローマ帝国の流れを汲むローマ・カトリック教会(西ローマ帝国)と東方正教会(東ローマ帝国)を軸にした世界情勢分析にとって、かなり重要な裏付け材料

と考えるからです。


さて、そのロイターの記事の紹介に入る前に、

カトリックと日本の関係

について少し。


まず、否定的な側面を書くと、戦国時代、でしょうか。


秀吉や家康は、

「カトリックの布教→スペインやポルトガルの軍隊が来て植民地化」

というのを恐れて、カトリック、というかキリスト教を禁止しました。
(かなり大雑把な言い方ですが…)

徳川幕府は、欧州諸国の中で「交易のみ。キリスト教の布教なし」の条件を飲んだプロテスタントの国であるオランダとのみ交易関係を保持しました。



次に、肯定的な側面。


日本の敗戦後、GHQが靖国神社を焼却しようとしたのを、当時の駐日バチカン大使が思い止まらせた
(と思われる)、という話があります。

この話は以前、国際政治学者の藤井厳喜さんがラジオで話していたことで私は知ったのですが、国会図書館にも資料がありました。

『靖国神社とはなにか : 資料研究の視座からの序論』
著者 春山明哲
出版地 日本
出版社 国立国会図書館
出版年 2006-07
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000040-I000024371-00

から、関係箇所を引用しておきます:

 GHQ では、 靖国神社そのものの存廃が検討されていた。
 ブルノー・ビッテル神父 (カトリック教会東京大司教区麹町教会、 聖イグナチオ教会)の回想によれば、 大招魂祭の前の10月中旬、マッカーサー元帥からのメモが届いた。
 その内容は 「司令部の将校たちは靖国神社の焼却を主張している。 同神社焼却に、 キリスト教会は賛成か、 反対か、 すみやかに貴使節団の統一見解を提出されたい」 というものであった。
 駐日ローマ法王代表・バチカン公使代理のビッテルは「自然の法に基づいて考えると、 いかなる国家も、 その国家のために死んだ人びとに対して、敬意をはらう義務と権利があるといえる… (中略) …もし靖国神社を焼き払ったとすれば、 その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るであろう」 という意見を提出した。
 マッカーサーはのちに 「カトリック教会からあんな見解が出されるとは、 思いもよらないことだった」
と語ったという。

-----


バチカン駐日大使が日本に同情的であった(かも知れない)のは、そもそも第二次世界大戦において、イタリアが日本と同盟関係にあったことも関係があるのかも知れませんが、どうでしょうか。

しかし、どのような事情があるにせよ、

「いかなる国家も、 その国家のために死んだ人びとに対して、敬意をはらう義務と権利があるといえる… (中略) …もし靖国神社を焼き払ったとすれば、 その行為は米軍の歴史にとって不名誉きわまる汚点となって残るであろう」

というビッテル神父の言葉には、ただただ心を打たれるのみであります。


本日は建国記念日ということもあり、こういう話も書いてみました。


※あと、キリスト教は一神教で、多神教の日本とは違いが大きい、という見方もありますが、古代ローマ人はもともと多神教的な宗教観を持っていました。それが、ユダヤ教の分派と言えるキリスト教がローマ帝国に広まる中で、キリスト教がローマ帝国の国教となったわけです。
 私も宗教的な話はそこまで専門的に調べたわけではないので、かなり大雑把な話になってしまいますが、聞いたところによると一神教では通常、偶像崇拝というのがないそうです。
 ところが、カトリックでは教会にキリスト像やマリア像、つまり偶像が祀られています。また、マリア被昇天というように、聖母マリアも神に近い存在となっているため、この辺りは多神教的と言えるのかも知れません。ローマ人が元々、多神教であったのですから、ローマ帝国の国教となる際に、ローマ人が受け入れやすい形になっていたのではないかと推定します。
(ここは、もしかしたらトンチンカンなことを書いているのかも知れません。ゆえに、あくまでも「そうかも知れない」という話です)


さて、ではロイター記事のご紹介です。たぶん、日本語版では出ることのない記事と思われるので、ざっくりですが全訳しておきます:

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Putin may benefit from meeting of pope and patriarch
プーチン、法王と大主教の会談から利益を得そう

Feb 10, 2016
VATICAN CITY/MOSCOW | BY PHILIP PULLELLA AND MARIA TSVETKOVA, Reuters

A meeting between Pope Francis and Russia's Orthodox Patriarch Kirill on Friday could not happen without a green light from President Vladimir Putin, diplomats and analysts say, and he may be one the beneficiaries.
金曜日に予定されるフランシスコ法王とロシア正教会のキリル大主教の会談は、プーチン大統領の許可なしには起こりえなかったし、プーチンはこれで得をするうちの一人になるかも知れないと、外交官らやアナリストらは言う。

In a landmark step towards healing the 1,000-year-old rift between the Western and Eastern branches of Christianity, the two religious leaders will meet in Havana on the pope's way to Mexico.
1000年に及ぶ東西キリスト教会亀裂の癒しに向かう歴史的段階において、二人の宗教指導者は、法王のメキシコ訪問の途中で、キューバの首都ハバナで会談する。

"There is no doubt the Kremlin took part in making this decision," said Gleb Pavlovsky, a political analyst and former Kremlin adviser in Moscow. "Otherwise the meeting would not have happened."
「ロシア政府がこの会談の決定に関与したことに疑いはない」と政治アナリストで元ロシア政府顧問のバブロフスキはいう。「そうでなければ、この会談は起こり得なかった」

Putin has aligned himself closely with the Russian Orthodox Church (ROC), making Friday's two-hour private meeting not just a religious event but politically charged as well, especially when Russia is at odds with the West over Ukraine and Syria.
プーチンがロシア正教会と密接な関係にあることは、金曜の二人の内密の会談を単なる宗教イベントに留まらせず、政治的な意義を持たせることになる。現在は特に、ウクライナやシリアを巡ってロシアが西側と不和にある時であるのだから。

"Putin clearly sees the value of his relationship with the ROC and the ROC's relationship with the pope," said a diplomat who spoke on the condition of anonymity.
「プーチンは明らかに自らのロシア正教会との関係と、ロシア正教会と法王との関係に価値を見出している」と、匿名を条件にしたある外交官は言う。

"He understands the pope is a big player on the world stage and I think that he would be happy about having the possibility of using the improved relations between the Vatican and the ROC to get the Kremlin's view across to the Vatican," he said.
「プーチンは法王を世界の舞台における重要人物と理解している。彼は、バチカンとロシア正教会の関係改善を活用できる可能性を持つことを喜ぶことになるだろう」とその外交官は言う。

Alexander Volkov, Russian church spokesman, said that while a joint declaration will dwell on the Middle East's persecuted Christians, tensions between Russia and the West may be brought up in the talks.
ロシア正教会の広報担当者ボルコフは、共同宣言において、中東のキリスト教徒への迫害問題に重点が置かれるが、ロシアと西側との緊張に関しても話されるかも知れない、という。

"This is one of the burning issues and we can assume it will be reflected in the dialogue. It can't be ruled out," he said.
「これ(ロシアと西側との緊張)は差し迫った問題の一つであり、我々はそれが対話に反映されると想定できる。(その可能性は)排除できない」と彼は述べた。

DIFFERENT POPE, WARMER TIES
普通ではない法王、温かい関係


Relations between Moscow and the Vatican have improved steadily since the reign of Pope John Paul II, a Pole who had an inbred suspicion of Russia and who died in 2005. But Francis is an Argentinian with no historical baggage associated with the East-West divisions of Europe after World War Two.
ロシア政府とバチカンの関係は、ロシア系とも言われるヨハネ・パウロ二世以来、着実に改善している。フランシスコ法王はアルゼンチン人であり、二次大戦後の欧州の東西分裂と関連する歴史的重荷と無関係である。

In 2013, Moscow was pleased after Francis opposed a proposed U.S.-led military intervention in Syria, a key Russian ally.
2013年、フランシスコ法王が米国主導のシリア軍事介入に反対したことにつき、ロシア政府は好意的であった。シリアはロシアの主要な同盟国だ。

Last year, Catholics in Ukraine accused Francis of being soft with Moscow when he described violence in Eastern Ukraine as "fratricidal". They saw it as a product of foreign aggression.
昨年、ウクライナのカトリック教徒らは、フランシスコ法王がロシアに対して温和であることを非難した。フランシスコ法王は、ウクライナ東部での紛争を「同胞相(あい)争う」と表現したが、ウクライナのカトリック教徒らは「外国からの侵略の産物」と見なした。

One commentator said Francis' view was perhaps "blurred by ecumenical correctness" in the hopes of a meeting with Kirill.
ある論者は、フランシスコ法王の見解は、キリル大主教との会見を果たすための、「教会一致を目的にした政治的正しさのためのぼかし(意訳)」であったのかも知れないとする。

In an interview with Reuters, Cardinal Kurt Koch, head of the Vatican office for Christian unity, was non-committal when asked if the meeting could help Putin. "I think Putin agrees with the meeting, but I can't say more," he said.
ロイターの取材に対し、キリスト教間の一致を再築するための諸活動を行う機関のコッホ枢機卿は、この会談がプーチンを助けることになるか、言質を与えなかった。「私は、プーチン大統領は会談に賛成していると思うが、それ以上は言えない」と彼は述べた。

Russia's ambassador to the Vatican, Alexander Avdeyev, said the two Churches organised the meeting but that it could "help politicians and diplomats" with policy decisions.
ロシアの駐バチカン大使、アブデエフは、両教会が会談を企画したが、それは政治的決定のための「政治家や外交官の手助け」となり得る、と述べた。

"The two Churches clearly understood that all threats and challenges in the world threaten both of them and cooperation has to be stepped up to fight nationalism and terrorism," he told Reuters.
「二つの教会は、世界におけるすべての脅威と課題が両協会にとっても脅威であり、ナショナリズムやテロリズムとの戦いのために更なる協力が必要と理解していることは明らかだ」と彼はロイターに述べた。(廣宮注:ロシア大使は「ナショナリズムとの戦い」などと言いますが、ロシアは原油安や西側からの経済制裁による苦境を、まさしくナショナリズムで耐えているような気が…。まあ、いいか)

The meeting, which will put another historic notch on Francis' legacy, came after two years of secret contacts in Rome, Moscow and Havana, Vatican and diplomatic sources said.
フランシスコ法王にとってもう一つの歴史的業績となるこの会談は、2年に渡るローマ、モスクワ、ハバナの秘密裏の接触の結果であると、ある外交情報筋は言う。

Agreement was clinched last autumn but the ROC wanted to keep it under wraps for several more months, one Vatican source said.
(会談についての)合意は昨秋には整っていたが、ロシア正教会が数か月のあいだ、秘匿することを望んだと、あるバチカン情報源は言う。

The Russian Church had long accused Catholics of trying to convert people from Orthodoxy after the break-up of the Soviet Union in the early 1990s. The Vatican denied the charges and both sides say that issue has largely been resolved.
ロシア正教会は長らく、1990年代初頭のソ連崩壊以降においてカトリック教会が人々を正教から転向させようとしていた、と非難していた。バチカンはその非難を否定。そして、両教会はその問題の大部分は既に解決したとしている。

One sore point remains the fate of church properties that Soviet dictator Josef Stalin confiscated from Eastern Rite Catholics in Ukraine and gave to the Russian Orthodox there. After the fall of communism, Eastern Rite Catholics took back many church properties, mostly in western Ukraine.
一つの困難な未解決問題は、ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンがウクライナで東方典礼カトリック教会から没収してロシア正教会に与えた教会資産の扱いである。共産主義の瓦解後、東方典礼カトリック教会は多くの教会資産を取り戻したが、そのほとんどはウクライナ西部において、である。

The meeting was brokered by Cuban President Raul Castro, who hosted the pope in Cuba last year. The Vatican helped arrange the rapprochement between Cuba and the United States.
今回の会談は、昨年法王を招待したキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が仲介した。バチカンはキューバとアメリカの関係改善を手助けした。





というわけで、

カトリック - ロシア正教会(東方正教) - プーチン大統領

という線が見えてきたわけですが、前回

・プーチン大統領が米共和党の大統領候補者の一人、トランプ氏(プロテスタントの長老派教会の信徒)を絶賛

・米民主党の大統領候補者の一人、サンダース氏(ユダヤ教徒)が頻繁にカトリック法王の言葉を引用

ということを書きました。


これにより、

サンダース氏 - カトリック教会 - ロシア正教会(東方正教) - プーチン大統領 - トランプ氏 

というつながりが見えてくることになります。

ここで、サンダース氏トランプ氏の英語版Wikipediaの宗教の項目を見ると、かなり興味深い事実が示されています。


サンダース氏はユダヤ人の両親を持ち、ユダヤ教の躾けを受けて育っており、「ユダヤ人であることを誇りに思う」と述べています。しかし「必ずしも宗教的に、ではない」のであり、神は信じるが、宗教団体には「属していない」とのことです。
そして、実に興味深いことに、夫人がカトリック教徒であるとのことです。Wikipediaのその箇所を引用します:

Sanders's wife is Roman Catholic, and he has frequently expressed admiration for Pope Francis, saying that "the leader of the Catholic Church is raising profound issues. It is important that we listen to what he has said." Sanders has said he feels "very close" to Francis's economic teachings, describing him as "incredibly smart and brave".
サンダースの妻はローマ・カトリック教徒であり、彼は頻繁にフランシスコ法王への敬意を表明しており、「カトリック教会の指導者は深淵な問題を提起している。我々が彼の発言に耳を傾けることは重要である」と述べている。サンダースは、フランシスコ法王の教える経済に「極めて親しみ」を感じ、法王を「非常に賢明で勇敢」と評価している。




一方、トランプ氏。


トランプ氏は「私はプロテスタントだ。私は長老派の信徒だ」と言っています。
なお、長老派はカルヴィン派のプロテスタントの宗派です(と言えば、私の『異次元大恐慌』を読んだ方、あるいは、私の本の記述の原典であるマックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読んだことのある方は、ピンとくるものがあるでしょう)。

そして、
Trump has praised and maintains relationships with several prominent national evangelical and Christian leaders, including Tony Perkins and Ralph Reed. During his 2016 presidential campaign, he received a blessing from Greek Orthodox priest Emmanuel Lemelson.
トランプは、トニー・パーキンスやラルフ・リードを含む、何人かの福音派キリスト教指導者を称賛し、良好な関係を維持している。2016年大統領選においては、ギリシャ正教会の司祭、エマニュエル・レムルスからの祝福を受けている。
(英語版Wikipediaより引用)

とのことです。



というわけで、


サンダース氏(現カトリック法王を尊敬) - カトリック教会 - ロシア正教会(東方正教) - プーチン大統領 - トランプ氏(ギリシャ正教会の司祭から祝福受ける)

といったところです。



※今回のエントリーを読んだ後で、私の新著『異次元大恐慌』を読むと、かなり興味深く読んで頂けるのではないかと思います。



 まさに、『異次元』な新時代が来ようとしている、か?


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691:トランプとサンダースの“政治革命”:共通点は「TPP反対」「イラク戦争は間違い」「国民皆保険の再整備」「ウォール街に厳しい」。相違点は不法入国者の扱い、銃規制、それに「ユダヤ人とお友達」か「本人がユダヤ人」か

2016/02/10 (Wed) 18:29
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 好評発売中


ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら





さて、本題です:

ニューハンプシャー州の予備選挙、

民主党はサンダース氏、

共和党はトランプ氏が首位

となりました。


詳細はガーディアンでどうぞ。



まず、トランプ氏の「国家主権強化」姿勢について。

マスメディアの報道でほとんど取り上げられない、トランプ氏の移民改革に関する政策集の冒頭で、重要なことが書かれています:

1. A nation without borders is not a nation. There must be a wall across the southern border.
1.国境のない国は、国ではない。南国境(メキシコとの国境)には壁が必要である。

2. A nation without laws is not a nation. Laws passed in accordance with our Constitutional system of government must be enforced.
2.法律の無い国は、国ではない。憲法に合致して成立している法律は、政府が必ず適用しなければならない。

3. A nation that does not serve its own citizens is not a nation. Any immigration plan must improve jobs, wages and security for all Americans.
3.自国民に奉仕しない国は、国ではない。いかなる移民計画も、前米国民にとって、雇用、賃金、安全保障が改善されるものでなければならない。


国境に壁が本当に必要かどうかは別にして、上記の太字部分に、私は非常に共感を覚えます。

1.国境のない国は、国ではない。
2.法律の無い国は、国ではない。
3.自国民に奉仕しない国は、国ではない。


↑これは、非常に当たり前のことを言っているように感じるのは、私だけでしょうか。

トランプ氏の発言は、ときに過激になりがちですが、上記の方針から外れることはないように思われます(私が気づかないところでは、あるのかも知れませんが!)。

ちなみに、「国境に壁」という件につては、ハンガリーが「刃付き鉄条網フェンス」設置という形で、先に進んでいます:








さて、次にトランプさんとサンダースさんの共通点について


◎TPP反対


トランプ氏:TPPはひどい取引





サンダース氏:私はNAFTAもTPPも、常に強く反対してきた



サンダース氏:(TPP大筋合意で)ウォール街やほかの大企業がまた勝った。私は可能な限り全てのことをして、TPPを打倒する。




◎国民皆保険の再整備

トランプ氏:
In his 2000 book, The America We Deserve, Trump wrote, "We must have universal health care."
2000年に出版した彼の著書、The America We Deserveにおいて、「我々は国民皆保険を持つ必要がある」と述べている。

He suggested that this initiative be modeled after the Federal Employees Health Benefits Program, saying, "Our objective [should be] to make reforms for the moment and, longer term, to find an equivalent of the single-payer plan that is affordable, well-administered, and provides freedom of choice. Possible? The good news is, yes. There is already a system in place-the Federal Employees Health Benefits Program-that can act as a guide for all healthcare reform. It operates through a centralized agency that offers considerable range of choice. While this is a government program, it is also very much market-based."
彼は、この新たな取り組みは、連邦職員健康保険制度をモデルにする、として、「我々の改革は、当面、そして長期的に、一つの公的機関による保険制度( the single-payer plan )と等価のもので、誰の手にも届く、よく管理された、選択の自由を提供するものを目指すべきだ。 可能か? 可能である。既に実施されている連邦職員保険制度がある。この制度は全ての健康保険改革の指針となり得る。この制度では、集中型の機関において、かなりの範囲の選択肢を提供している。これは政府の制度である一方、かなりの度合いで市場原理に基づいている。」


サンダース氏:
At the second Democratic primary debate, on November 14, 2015, Sanders, when asked about the Affordable Care Act, said "I believe we've got to go further. I want to end the international embarrassment of the United States of America being the only major country on earth that doesn't guarantee health care to all people as a right, not a privilege. ..."
2015年11月14日、2回目の民主党予備選討論会で、皆保険制について「私はもっと進むべきと信じる。私は地球上の主要国で米国だけが人々の特権でなく、権利としての健康保険を保証していないという国際的に恥ずかしい状態を終わらせたいと思っている」。

(保険制度に関する両候補主張の出典:Ballotpedia



◎「イラク戦争は間違い」と主張












◎ウォール街に厳しい

トランプ氏:



サンダース氏:
サンダース氏については言うまでもないという気もしますが、彼は↓こんな発言も






次に、両氏の相違点:

◎不法入国者に対する態度

トランプ氏:厳しい
“I have a very hardline position, we have a country or we don't have a country. People that have come into our country illegally, they have to go. They have to come back into through a legal process. I want a strong border. I do want a wall. Walls do work, you just have to speak to the folks in Israel. Walls work if they're properly constructed. I know how to build, believe me, I know how to build. ... People can come into the country, we welcome people to come but they have to come in legally.”
「私はかなり強硬な立場である。我々は国を持つのか、それとも持たないのか、ということだ。不法に我々の国に入った人々は去らなければならない。彼らは、法に則った過程で戻って来なければならない。私は強固な国境を望む。私は壁を強く欲する。壁は役に立つ。イスラエル人に聞けばわかる。壁は、適切に建設すれば機能する。私はどう建設すればよいか知っている。…人々はこの国に来ることができる。我々は人々を歓迎するが、彼らは法に則って来なければならない。」


このトランプ氏の不法移民に対する強硬な姿勢に共感しているのが、長年、不法移民に厳しい姿勢で知られるアリゾナ州の名物保安官です:







サンダース氏:
一方、ユダヤ系のサンダース氏はやはり、移民全般に寛容です

Bernie Sanders released a statement on January 19, 2016, applauding the U.S. Supreme Court for deciding to review the constitutionality of President Obama’s executive actions on immigration. “ ... Clearly the best form of action is for Congress to pass comprehensive immigration reform to put undocumented people on a path toward citizenship. But if Congress fails to act, as president I would uphold and expand the president’s action,” Sanders said.
バーニー・サンダースは、オバマ大統領の移民に対する行動(一部不法移民の強制送還)につき、最高裁が憲法に基づく見直しを行う決定をしたことを称賛し、2016年1月19日に声明を発表し、「…明らかに、最善の行動は、連邦議会が包括的な移民改革を成立させ、不法滞在者に市民権への道を与えることである。しかし、もし議会がそれに失敗したなら、大統領として私は更なる行動を展開する」、と述べた。

(両氏の移民問題の主張の出典:Ballotpedia )



◎銃保有

トランプ氏:推進

合衆国憲法修正第2条で保障された銃を持つ権利を守り、再び偉大なアメリカを!

購入時のバックグラウンド・チェック(身元調査)など不要!
犯罪者はそんなチェックを受けるほどアホじゃない。彼らは友人や家族を通じて買うか、盗み取る。

運転免許同様、州別ではなく全国共通の銃携行ライセンスを!
正当防衛の権利は、自宅にいるときにだけあるのではない。だから私は、他の数千万のアメリカ人と同じく、銃を隠して携行する許可を持っている。州別の許可制では、この許可は特権になってしまう。自動車の運転免許と同じく、全50州で共通にすべきだ!

(トランプ氏のウェブサイト参照)


そんなトランプ氏なので、↓学生に「銃を持て!」と呼びかけたリバティ大学の学長、ファルウェルさんが彼を支持しています:








ちなみに、ファルウェルさんは、こんな人:







「銃を持て!奴らイスラム過激派が来やがったら、返り討ちにしてやるぜ!」という感じです。



サンダース氏:規制強化

We have to try to strengthen the instant background checks. Our goal as a nation…is to make sure that guns do not fall into the hands of people who should not have them. People who have criminal backgrounds, who are mentally ill. The federal government does have a very important role.
我々は身元調査の強化を試みるべきだ。我々の国としての目標は、確実に、犯罪歴のある人々や、精神疾患のある人々など、銃を持つべきでない人々の手に銃が渡らないようにすることだ。連邦政府は、極めて重要な役割を持っている。

(出典:Breitbart, "Bernie Sanders: Gun Control The Job of the Federal Government", 24 Jan 2016



◎「ユダヤ人とお友達」か「本人がユダヤ人」か

トランプ氏:今回の共和・民主両党の候補者のなかで、唯一、日常的にユダヤ人と接しており、また、孫にユダヤ教徒がいる、とロイター記事:





が、トランプ氏は、「イスラム教徒入国禁止」発言で、イスラエルから猛反発を受けます:
















その一方、トランプ氏はロシアのプーチン大統領から絶賛されています:







イスラエルに反対され、ロシアに支持されるトランプ氏…




サンダース氏:本人がユダヤ人
次に、サンダース氏は、実はユダヤ人そのものです





ユダヤ人で、恐らく、ユダヤ教徒のサンダース氏ですが、興味深いことにカトリック法王の発言をよく引用しています:








私の新著『異次元大恐慌』では、ローマ・カトリックと東方正教を、ローマ帝国からの流れと見て、国際情勢分析の主軸に据えました。
本当は、イスラエル/ユダヤ軸もあったほうが良いと思うので、これはまた近いうちに当ブログで補足しておきたいと思います。




両氏の人気:背景は政治不信

共和党の元下院議員(ニューヨーク選出)が、トランプ氏とサンダース氏の人気の高まりにつき、次のようなことを言っています:












「トランプ大統領」は日本にとって…

「メキシコ国境に壁」発言でヒスパニック票を取れそうにないトランプ氏にとっては、現状ではまだ、本選で民主党候補(サンダース氏であれ、クリントン氏であれ)に勝てるかどうかかなり、微妙です。各社調査で現状、トランプ氏はサンダース氏にもクリントン氏にも負けてます。もちろん、それもトランプ氏が共和党候補になった場合のことですが。

しかし今後、本選までに暴落・大恐慌があれば、昨年12月にバブル崩壊を「予言」しているトランプ氏が有利です:








但し、トランプ氏が大統領となった場合、日本にとっては厳しい面もあることを覚悟しておいたほうが良いでしょう:










 トランプ氏が大統領となれば、日本にとって厳しい面もある。
 しかし、それは彼が言っているような
 1.国境のない国は、国ではない。
 2.法律の無い国は、国ではない。
 3.自国民に奉仕しない国は、国ではない。
 という国家主権強化を日本が推進する好機ともなり得る、か?


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690:中国。カネはないが金はある、か?――知りたくなくとも、知っておいたほうが良いかも知れない、中国の金準備について

2016/02/09 (Tue) 17:05
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ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら




今回は、↑新著に書ききれなかった中国の金(ゴールド)の話です。

(新著では、最も重要な世界全体の公的金準備の動向については書きましたが、紙幅の制限もあり、中国限定の話は割愛しました)


さて、先に申し上げますと、今回のこのエントリーの話、読んでいて爽快になるような類の話ではないかも知れません。



しかし、『孫子』にあるように

「彼を知り、己を知れば、百戦あやうからず」

「彼を知らず、己を知れば、一勝一負す」

「彼を知らず、己を知らざれば、百戦ことごとくあやうし」

であります。

事実を事実として認識したうえで、いかに相手に負けぬようにするかが肝要というわけです。


ユングは、人間は放っておけば必ず優越感か劣等感に傾く、と言っています(我が家にある何冊かのユングの著書のどれかは忘れましたが、そう書いてあったと記憶しております)。

優越感も、劣等感も、事実誤認によって生じると私は考えています(これは前著で書きました)。

優越感は、自分以外の人を過小評価し、自分を過大評価するというように、事実を歪めて認識することで生じます。

劣等感は、自分以外の人を過大評価し、自分を過小評価するというように、これもまた事実を歪めて認識することで生じます。

要は、事実をできるだけ正確に把握することが肝要、ということになります。


嫌いであればこそ余計に、事実を可能な限り正確に把握しておくことが望ましい、と考える次第であります。

-----



一昨日(2月7日)、中国が今年1月、わずか1か月の間に1000億ドル(約12兆円)の外貨準備を失った、と欧米メディアが盛んに報じました。



例えばブルームバーグロイターです。


China's Foreign-Exchange Reserves Decline to $3.23 Trillion
中国の外貨準備、3.23兆ドルに減少

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-07/china-s-foreign-exchange-reserves-decline-to-3-23-trillion
Bloomberg, February 7, 2016


UPDATE 1-China FX reserves fall almost $100 bln to lowest since May 2012
中国外貨準備、ほぼ1000億ドル減少し、2012年5月以来の低水準に

http://uk.reuters.com/article/china-economy-reserves-idUKL3N15M037
Reuters, Feb 7, 2016


要は、中国からの資本流出でドル高元安の圧力が高まり、当局が元安を抑制するために、外貨準備(主にドル、米国債)を投げ売っている、というような話です。


一方で、ブルームバーグでもロイターでも、気になる記述があります(恐らく、多くの日本人があまり聞きたくもないようなお話です)


ブルームバーグ

China increased its gold hoard in January, raising its holdings to 57.18 million ounces at it looks to diversify its foreign-exchange stockpile.
中国は1月、金準備を5718万オンス(1778.5トン)に増加させた。外貨準備の多様化を図っているようだ。


ロイター
China's gold reserves rose to $63.57 billion at the end of January, from $60.19 billion at end-2015, the PBOC said.
They stood at 57.18 million fine troy ounces at the end of January, up from 56.66 million fine troy ounces in December.
人民銀行によると、中国の金準備は2015年末の601.9億ドルから635.7億ドルに増加した。
これは昨年12月の5666万オンス(1762.3トン)から1月末に5718万オンス(1778.5トン)に増加したことを意味する。



しかしながら1月の外貨準備の減少1000億ドルに比べて、金準備はたかだか34億ドルの増加に過ぎない、といえば確かにそうです。


というわけで、外貨準備を含む、人民銀行のバランスシートの項目別の増減(2015年1月→12月)を見てみましょう:



ScreenShot_20160209154052.png


一応、グラフも。

ScreenShot_20160209164354.png 

出典:中国人民銀行データから計算



昨年1月から12月にかけて、人民銀行の資産と負債は大雑把に言うと、

資産側:
・外貨準備(表中の「外貨」)が2.2兆元(38兆円)減少
・金準備が670億元(1.2兆円)増加

負債側:
・当座預金(表中の「その他預金金融機関預金」)が1.2兆元(21兆円)減少
・政府預金が1兆元(17.5兆円)減少

となります。





当座預金の21兆円減少は、マネタリーベースの減少、金融引き締めということになりますね。

もちろん、為替操作でドルを売り、元を一般市中銀行から買い戻す、ということでも元安の抑止となっているのでしょう。

ドル売り&元買い→買い戻した元を償却→マネタリーベース減で金融引き締め→金利上昇(?)→元安の抑止、ということでしょう。



一方、政府預金の17.5兆円減少は…。

資産側の「対政府債権」は変化なしですから、素直に読めば、外貨準備の減少の半分は、政府預金の引き出しとなっている、ということになります。

しかし、外貨準備は、通常は政府と中央銀行が保有する外貨建て資産の合計です。外貨準備が減り、政府預金が減っている、ということは、恐らく、政府から政府以外(民間、あるいは、国有企業)に渡っている、ということを意味します。

では、中央銀行→政府→政府以外に渡ったと思われる17.5兆円は何に使われたのでしょう?


恐らく、↓こういった目的でしょう






ギリシャ最大港民営化、中国国有海運の買収提案受け入れ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H03_R20C16A1EAF000/
日経新聞 2016/1/21


中国化工、シンジェンタ買収で当局承認得るためには
http://jp.wsj.com/articles/SB12572346946470444848304581519783260433052
ウォールストリート・ジャーナル 2016 年 2 月 4 日


シカゴ証取、中国の投資会社が買収
http://www.sankei.com/economy/news/160206/ecn1602060018-n1.html
産経新聞 2016.2.6


全世界の国境越えたM&A総額、中国企業主導で06年以来の高水準
http://jp.reuters.com/article/m-a-data-idJPKCN0VE18X
ロイター 2016年 02月 5日


少し上のほうの私のツイートの引用(ブルームバーグ記事参照)で

「利益より資源確保優先の姿勢だが株価下落は絶好の機会と捉える」

とあります。中国政府、習近平政権は経済はカネではなくモノが足りるかどうか、という経済の本質をよくよく分かっている(かも知れない)という認識を持って警戒すべきものと私は考えます。

「中国は崩壊する、だから大丈夫」というのでは、認識が少々甘過ぎるのではないか、というのが私の意見です。


最終的に中国の戦略が成功するかどうかは別です。


中国が転んで崩壊したならば、中国は日本にとって、まるで北アフリカや中東のように、難民問題の根源となり、脅威となるでしょう。

一方、中国の世界的買収作戦が奏功すれば、日本にとってやはり脅威となるでしょう。

どちらに転んでも、脅威であり、脅威の種類が変わる、というわけです。


さて、

仮に「中国の世界的買収作戦」が成功するとすれば、中国の狙いは、今後、世界的暴落やそれによって生じるかもしれない混乱期において、カネはどうでもよいのでモノを確保することを狙うものでしょう。

カネよりもモノ、です。

金準備をせっせと増やしているのもその一環と思われます。



そして近年の中国は、世界最大の産金国になっています:

Chinese gold production surges
中国の金産出量、急増

MineWeb, 12 August 2015
http://www.mineweb.com/articles-by-type/analysis/chinese-gold-production-surges/

昨年(2015年)は上半期で228トン算出したとのことで、単純には年間450トン程度かと思われます。


次に、

中国の需要は2013年の記録を更新?― ペイパーゴールドと現物ゴールド
http://goldnews.jp/column/ikemizu/entry-3944.html
池水 雄一 スタンダードバンク東京支店長 2015年11月20日

によると、
  • 上海黄金交易所(SGE)の現物引き出し量(11月2週までで2210トン)などから考えると、中国の2015年の金需要量は2600トン(全世界の金鉱山の産出量80%相当)となり、2013年を上回りそう
(中国の官民合わせた1年の需要が2600トンということで、公式の中国の金準備1700トンを上回ってしまってうことになります)

  • 現在ゴールドの価格はComex(米NYの商品取引所) での先物取引で決められているといっても過言ではありません。
 ただこれは現物を伴わないいわゆるペイパー取引であって、現物の数量をベースに考えると、200倍以上のレバレッジがかかった計算になります。 そのため、実際の現物がベースであるアジアと現物の伴わない、つまり価格だけの取引であるニューヨークのギャップは相当大きなものがあります。
 つまりComexからこれだけの現物の引き出しがあるということは、誰かが現物を集めているということになります。投資家のペイパーゴールドの売りによって、現物の価格も下がっており、アジア勢は逆にこの低い価格で買えるのでは、と活発にゴールドを買っているのです。
 このペイパーゴールドと現物ゴールドのギャップはどこかで訂正されるはずです。先物投資家の売りによって実需とはかけ離れた安い価格になっているとすれば、その是正はいつか必ず入ってくるはずです。」

とのことです。

で、昨年来下がり続けていた金価格が昨日、7か月ぶりに1オンス1200ドルを一時的ながら回復しました:





いざというとき、習近平政権が金準備を最大限活用するシナリオも想定されます。
正式な公的準備だけでなく、おそらく国有企業などでも密かに蓄えられている民間備蓄も、です(国有企業の外貨資産・金準備は、公的外貨準備には算入されません)。もしかすると中国当局は、墨俣の一夜城ばりに、いきなり膨大な公的金準備を発表する可能性もあります。



あと、中国の金準備に関しては、昨年6月の拙ブログもご参照ください:

中国、金本位制を検討中?――米投資情報サイトTheStreetでブルームバーグインテリジェンスの金属・鉱山調査部長「この動きは大勢を一変させ得る」
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-663.html
2015/06/27




日本では、日銀、年金基金(GPIF)、ゆうちょ銀行、簡保などが日本株を買いあさっている。
が、目的は株価維持だけでなく、
『異次元大恐慌』において外国資本から日本企業が買収される確率を、未然に減らしている、
という目的もあって欲しいと願う今日この頃


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689:資本主義の権化というべき、代表的超巨大金融機関、ゴールドマンサックスが資本主義に疑義

2016/02/04 (Thu) 16:07
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊


 2月4日 発売予定
※「配本2月4日」ということで、明日5日には店頭に並ぶのではないかと思います



ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。


目次項目の一覧はこちら





今回は、↑の新著で提示しています、

資本主義でも、共産主義でも、民主主義でも

 ない、異次元な新時代の幕開け」



に関連して、ブルームバーグ(英語)で興味深い記事があったので、そのご紹介です。



※なぜか、日本語版ではまだ、ないので、一応、大雑把に全訳しておきます。





Goldman Sachs Says It May Be Forced to Fundamentally Question How Capitalism Is Working
ゴールドマンサックスは、資本主義がいかに機能するかについて、根源的な疑義を持たざるを得なくなるかもしれない、と言っている

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-02-03/goldman-sachs-says-it-may-be-forced-to-fundamentally-question-how-capitalism-is-working

The profit margins debate could lead to an unsettling conclusion.
利益率についての議論は、落ち着きどころのない結論となりそうだ

February 3, 2016
Joe Weisenthal, Bloomberg


One of the most heated debates among investors is the question of whether corporate profit margins can maintain their elevated level, or whether they will inevitably revert to mean.
投資家の間で、もっとも熱している議論のひとつは、企業の利益率がその高い水準を維持できるかどうか、あるいは、それが平均的水準に回帰することが避けられないかどうか、についてのものだ。

Here's a quick look at S&P 500-stock index profit margins, for example, going back more than 25 years. They remain high by historical standards.
例として、過去25年超におけるS&P500株式指数の利益率を示す(記事本体のグラフ参照)。利益率は、これまでの基準からすれば、高いままである。

A new note from Goldman Sachs Group Inc. analysts led by Sumana Manohar looks at the bull and bear arguments for the profit margins debate.
スマナ・マノハールに率いられたゴールドマンサックスのアナリスト集団が公表した新しいノートには、利益率に関する強気と弱気の議論が見受けられる。

Manohar argued that profit margins have expanded, thanks to four key trends: strong commodities prices, emerging market cost arbitrage (companies making things more cheaply in emerging markets), demand growth from emerging markets, and improved corporate efficiency driven by the use of new technology. Continuing one of its major analytical themes of recent months, Goldman also noted that the market has rewarded companies that have undertaken mergers and share buybacks, as opposed to companies that have invested internally, further bolstering margins.
マノハールは、利益率は4つの主たるトレンドによって拡大してきたと主張する:
・強いコモディティー(商品・原材料)価格
・新興市場におけるコスト裁量取引(企業がモノをより安価な新興市場で製造)
・新興市場からの需要拡大
・新技術の利用による企業効率の改善

ゴールドマンサックスは、最近数か月の主要な分析テーマの一つを継続してきたが、市場から儲けを得て利益率を増強したのは、内部で投資をしていた企業ではなく、合併や自社株買いをしていた企業であった。
(廣宮注:恐らく、まじめに設備増強などの実物投資をしていた企業があまり儲かっておらず、株価がリーマンショック後において長期的上昇を始める前の時期に合併や自社株買いをしていた企業だけが、株価上昇の恩恵を受けている、というような意味と思われます)


So will profit margins inevitably roll over?
となれば、利益率が上昇から反転することは、避けられないのだろうか?

Goldman went through both sides of the argument. On the bull side, the bank said that ongoing consolidation in industries, cost deflation, and tighter purse strings help keep a floor under margins. Ultimately though, it found that the above trends, coupled with weak demand and general industrial overcapacity, mean that margins are likely to come down.
ゴールドマンサックスは両方の議論を展開した。
ひとつは、強気側である。ゴールドマンサックスは、継続的な産業の統合、コスト下落、財布のひもの引き締めが、利益率の底固めを助ける、としている。しかし最終的には、需要の弱さと全般的な産業の過剰生産能力を伴って、利益率が落ち込みそうであることを見出している。

But what if margins stay elevated? That too is possible, and its implications could be unsettling.
しかし、もし利益率が高い状態を続けたら? それもまたあり得るが、それが意味するところのものは、落ち着きどころのないものとなり得る。

Goldman wrote: "We are always wary of guiding for mean reversion. But, if we are wrong and high margins manage to endure for the next few years (particularly when global demand growth is below trend), there are broader questions to be asked about the efficacy of capitalism."
ゴールドマンサックスは、「我々は常に平均への回帰について警戒している。しかし、もし我々が間違っていて、高い利益率が(特に、世界的需要の伸びがトレンドを下回る中で)今後2、3年続くなら、そこには、資本主義の有効性に関する広範囲の疑義が生じることになる。

In other words, profit margins should naturally mean-revert and oscillate. The existence of fat margins should encourage new competitors and pricing cycles that cause those margins to erode; conversely, at the bottom of the cycle, low margins should lead to weaker players exiting the business and giving stronger companies more breathing space. If that cycle doesn't continue, something strange is taking place.
言い換えれば、利益率は自然に平均に回帰すべきであり、(上振れしたり下振れしたりという形で)振動すべきものである。高い利益率の存在は、新規の市場参加者の参入を促し、価格のサイクルがその利益率を侵食するはずである。逆に、価格サイクルが底にあるときは、低い利益率によって弱い市場参加者が退場させられ、強い企業により多くの生息余地が与えられなければならない。もしそのサイクルが継続しないのであれば、なにか奇妙なことが起こっている、ということになる。
(廣宮注:コモディティー価格が大幅に下落し、世界的に需要が減退し、モノの価格が下落しているのに、利益率が高いままというのは訳の分からん現象が起きている。というよりは、上のほうに書いてあったように、需要減退の中で、企業がモノを作って儲けるということではなく、合併や自社株買いなどの金融取引で儲けているという状況がなぜか延々と続いている、という訳が分からん現象が起きている。これは、資本主義の原理が働いていないということで、おかしなことだ。ということですかね)

Needless to say, it's not every day you see a major investment bank say it might have to start asking broader questions about capitalism itself.
言うまでもないが、資本主義そのものに広範囲の疑問を投げかけなければならない、などと大手投資銀行が言い始めるようなことは、毎日のように起きることではない。


-----



 ゴールドマンサックスという、

 資本主義の権化のような巨大投資銀行が

 資本主義に疑義を呈するとは驚いた!


 というか、

 金融屋が、ほかの業種の企業に

 『お前ら金融じゃなく、モノ作りで儲けろや!』

 と述べている(ように見える)ことについても、

 広範囲における疑義を呈するかも


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688:新著『異次元大恐慌』の目次です--「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」

2016/02/01 (Mon) 15:34
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※今回は、2年ぶり新著のご案内です。


 2月4日 発売予定


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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊




ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの原案はというと、

タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』

オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」


というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも「大恐慌=この世の終わり」ではありません!


「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。





では、以下に目次の項目を掲載します:


『2016年、異次元大恐慌が始まる』

目次

第1章 国家を危機に陥れる、「経済の根本はカネ」という誤解」

経済成長=実質GDPの増加=モノが増えること

カネの価値を支えるのはモノである

国の借金を支えるのも、カネではなくモノ

基本原理:政府の支出(赤字)は民間の収入(黒字)

応用原理:ある国の経常黒字 = 他の国の経常赤字

経常赤字:危険な香り

「政府の赤字」よりも「民間の赤字」が危ない

「対外債務」と「国内債務」と「通貨発行権で対応できる債務」

「経常赤字」+「通貨発行権で対応できない債務」:最悪の組み合わせ

「二重に安全」の日本、将来も安全でいるためには?


第2章 「国の借金」への過剰な恐怖で停滞する日本

国の借金問題の本当の弊害

世界一、政府支出を増やしてこなかった日本

本当の危機は「盛んに物資を作る」ための投資が増えていないこと

破綻とその後の回復

日本:敗戦直後「ハイパーインフレ」の実相

日本:敗戦とハイパーインフレからの復興

「国の借金」への恐怖:心理学的考察

「格差」を助長する「国の借金恐怖症」と「金融緩和依存症」

「国の借金」問題と税:「経済の安定化」と「格差の是正」

消費税の意義:国際的な租税回避防止の一環=国家主権の強化


第3章 「世界大恐慌2.0」前夜の世界経済


世界経済の現状:2015年秋時点、既に停滞もしくは景気後退入り

貿易:先進国は4年以上前に、新興国も1年以上前にピークアウト

電力量、貨物輸送量で見ると中国のみならず日米欧も景気後退

恐慌前夜:「世界的な量的緩和の限界」でも財政拡大しない各国政府

アベノミクスの限界:「異次元緩和」の数値的評価

世界的金融緩和で蝕まれた世界経済

過剰な「金融緩和」で貧乏人がより一層貧乏になったアメリカ


第4章 「世界大恐慌2.0」後の世界:想定シナリオ


「世界大恐慌2.0」に至る政治の潮流――800年ぶりの転換期

現在は800年の流れの転換期

米国覇権の凋落=民主主義・資本主義の退潮

米国覇権の凋落は「TPP」、「カトリック」、「タイの軍政」で占える

「権力構造大転換」の手段としての銀行破綻+ペイオフ

金本位制に向かう世界

中国。崩壊か?それとも中央集権強化か?

ロシア。帝国は復活するか?

欧州。移民問題で崩壊か?それとも軍事政権化か?

日本。戦後体制は一新されるか?


おわりに:「世界大恐慌2.0」後の経済――資本主義でも共産主義でもない「第三の道」




最後に、↓私が考案しました、ポップの案です

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『2016年、異次元大恐慌が始まる』

≪著者からのメッセージ≫

経済で最も重要なのは
1. カネではなくモノが足りているか
2. 貧富の格差が許容範囲内であるか
の2つだと、私は認識しています。

本書ではこの認識をベースに、
「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の到来」
という、類書とはかなり違った、独自の未来予測を提示しています。

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 大恐慌≠この世の終わり

 大恐慌=新時代の幕開け

 か!?


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