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廣宮孝信 ひろみやよしのぶ

Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
 お問い合わせは当ブログのメールフォーム(下の方にあります)やコメント欄(内緒設定もご利用ください)や、ツイッターのダイレクトメッセージをご利用ください。

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252:「不良債権処理」で景気回復?

2009/03/24 (Tue) 00:18
さて、
前回予告していましたように、今回は

自己資本比率と不良債権のお話です。


銀行のBIS規制の自己資本比率の計算式は…


です。

ここで、

自己資本 = 基本的項目(純資産)+補完的項目+準補完的項目-控除項目
(自己資本の詳細は三菱東京UFJ銀行 参照)


リスクアセット = 貸付金などのリスクのある資産(かなり複雑な算式で計算)

ここでリスクアセットについては、
詳しくは金融庁資料参照ですが、

貸し出し先別に下記のようなウェイトを乗じて計算するそうです

国:0%
事業法人:(格付に応じ) 20%~150%又は一律100%
中小企業・個人:75%
住宅ローン:35 %
株式:100%

自己資本比率は大きい方が良い数字です。

8%以上なければ国際業務から撤退しなければならず、
4%以上なければ国内では営業できなくなってしまいます。

さて、ここで、不況到来という状況を考えましょう。

銀行の保有株が下落する…分子の自己資本が減って自己資本比率低下
             (細かいことを言うと、分母のリスクアセットも同じ金額減りますが、
              自己資本比率は間違いなく低下します)

業績の悪化による格付けの低下・・・掛け算するウェイトが大きくなる⇒リスクアセット増加⇒自己資本比率が低下

不良債権(返済が不能になった、または不能になる懸念のある債権)が増加⇒引当金の増加で自己資本が減る⇒自己資本比率が低下

など、とにもかくにも、放って置けば基本的には自己資本比率が低下してしまいます。

ここで、銀行はどんな行動を取るでしょうか?

もし、
増資が可能(つまり新株を発行して買い手が付く状態)であれば、
増資により純資産を増加させて分子の自己資本を増加させる。

でも、不況でなかなか増資もねえ(新株を発行するにも費用がいるし)
ということになると、

分母であるリスクアセットを小さくして、自己資本比率を必死で上げようとします(業務停止になりたくないので)。

さて、ここで例えばどうするでしょうか?

不良債権を下手に処理すると、引当金以上の損失(一応、確率計算でこれくらい回収不能=損が出るかと見積もっていた以上の損)が出て、分子の自己資本が減って自己資本比率がさらに低下しかねない
・・・
となると・・・

じゃあ、健全だけど、お金返してもらえそうなとこから、返してもらっちゃえ(=貸しはがし)

ということをやる動機付けが出てきますね。

たとえばウェイト75%の中小企業への貸付を回収(その個々の企業の規模が小さければ、銀行としてはあとのお付き合いとかを考えなくて良いので、大企業とは違って回収の対象にしやすい相手)、

そして、
ウェイト0%、つまりリスクアセットに含まれることがない、国債を買ってしまえ!

ということになります。

その結果として、貸しはがしに遭った中小企業が倒産したとしても、銀行の自己資本比率は減りません。

なぜなら、その中小企業が倒産するまえに、貸付を全額回収しているからです。


そんなこんなで、昨日書きました

不況⇒貸し倒れ増加⇒銀行の自己資本減少⇒自己資本比率低下
⇒自己資本比率低下を抑えるため、「リスクアセット」である民間企業や個人への貸し出しを縮小(貸し渋り、貸しはがし)⇒不況促進

という構図の出来上がりと相成ります。


さて、こんな状況で「不良債権を処理しろ!」と仮に政府が音頭を取ったとしたら、

景気は良くなるでしょうか?悪くなるでしょうか?

とりあえず、
「処理」された側の企業は、従業員の大部分を解雇、ですね。

そうなると、単純に考えてその分個人消費は落ち込みます。

また、その企業も営業をしているときは、当然いろいろ経費を使っていたはずです(でなければ、経営が成り立たない!)ので、その分もお金が回らなくなる。

このように「処理」された会社が多数に上ると、当然景気悪化を加速します。
そうなると、上記のようなサイクルで、銀行はますます貸し渋り・貸しはがしを加速させ、
景気悪化はますます加速されことになります。

(ただ、幸運にも世界中が好景気で外需が旺盛であれば、景気悪化はキャンセルされますが…)


問題はそれだけに留まりません。

その「処理」された会社
または、
このような景気悪化サイクルの中で本来なら優良なのに、貸しはがしで倒産に追い込まれた会社が、

金儲けはイマイチだけど、技術はピカイチだったとしたらどうでしょう?

その技術、ノウハウがそれで断絶してしまったとしたら?

そのようなケースが多数にのぼれば、国の将来にとって多大な打撃となるでしょう。


「不良債権処理をすれば、効率の悪い企業が退場して、効率の良い企業だけが残り、社会全体の効率が上昇する」という説がありますが、

その「効率」というのが、たとえば、

単なる力関係を利用した下請け・孫請けへの厳しいコストダウン要求によって、費用を削減しただけの結果だとすれば?(最近は特に無茶なものは取り締まられるようになりましたね)

単に、人件費をカットした結果、収益性が上がっただけだったとしたら?

その厳しいコストダウン要求によって、せっかく技術を持っている会社がつぶれてしまい、技術立国を支えて来た多数の中小企業を摩滅させるだけ摩滅させているのだとすれば?

それが果たして、長期的国益にかなう事でしょうか?


以前、日経ビジネスの記事で、
大企業による厳しいコストダウン要求などにより、技術力のある中小企業がどんどん退場して行った結果、
今度は大手の製造業企業が頼るべき相手がいなくなって困り果てているケースもあった、というようなことを書いていたと記憶しています。


ちなみに、
麻生さんはホームページで、デフレ不況の中での不良債権処理について、
そこに○○○蔵という経済現場の解っていない人の、銀行の不良資産一掃策が追い打ちをかけました。
http://www.aso-taro.jp/lecture/kama/2007_3.html
と書いています。


「不良債権処理」って

その企業が本当に力のある企業かどうかではなくて、

「カネ返せねえやつは、指先一つで~、ダウンさー♪」(←クリスタルキング風に)

と言っているだけのことでしかないように思います。



逆に、不良債権処理はやらずに、景気対策してればどうだったでしょう?

技術力のある会社は、景気回復に伴いすぐに息を吹き返したでしょう。

そして、滞っていたお金の返済も、スムーズに行えるようになったでしょう。

そうなると、不良債権は不良債権でなくなるのです。

これこそが真っとうな経済対策であるように思います。間違いなく。

目下、政府はTVでCMまで打ってPRしている
中小企業緊急雇用安定助成金

○休業等
 休業手当相当額の4/5(上限あり)
 支給限度日数:3年間で300日(最初の1年間で200日分まで)
 教育訓練を行う場合は上記の金額に1人1日6,000円を加算

○出向
 出向元で負担した賃金の4/5(上限あり)
厚生労働省
のような「不良債権処理」とは全くの対極をなす雇用対策を打っています。

これは至極妥当な政策と言えると思いますが、いかがでしょうか?


#追記

今回の記事、まるで「大企業&銀行悪玉論」のようになっていたかもしれません。
すみません。本意はそういうことではありませんですm(_ _)m。
⇒補論をhttp://blogs.yahoo.co.jp/eishintradejp/13421929.html に書きました。


さて、

「不良債権処理をして、日本の製造業を底辺で支えるような技術力があっても、金儲けの効率が悪い、借りた金返せねえ企業は有無を言わさずぶっ潰し、仮にどんな「あくどい」経営をしていても金をきっちり返す金儲け効率のいい企業だけ生き残らせれば、景気回復だ~!」と主張している学者や政治家の方々がいまだにいたら、それこそまさに「YOUはSHOCK!」、と思われた方は、こちらのリンクのクリックを↓

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