Author:廣宮孝信 ひろみやよしのぶ
工学修士(大阪大学)、都市情報学博士(名城大学)。
2009年、著書「国債を刷れ!」で「政府のみならず民間を合わせた国全体の連結貸借対照表(国家のバランスシート)」を世に送り出した経済評論家、"国家破綻セラピスト"です。
「アイスランドは財政黒字なのに破綻!」、「日本とドイツは『破綻』後50年で世界で最も繁栄した」--財政赤字や政府債務GDP比は、国家経済の本質的問題では全くありません!
モノは有限、カネは無限。国家・国民の永続的繁栄に必要なのは、国の借金を減らすとかそんなことでは全くなく、いかにモノを確保するか。モノを確保し続けるための技術投資こそがカギ。技術立国という言葉は伊達にあるわけではなく、カネとか国の借金はそのための手段、道具、方便に過ぎません。
このように「モノを中心に考える」ことで、国の借金に対する悲観的常識を根こそぎ打ち破り、将来への希望と展望を見出すための”物流中心主義”の経済観を展開しております。”技術立国・日本”が世界を救う!
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【IMF、日本に消費税を段階的に15%へ引き上げるよう要請】
ロイター 2011年 06月 17日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-21748320110616
ほへー
さて、その元となるIMFの文章を見てみますと
Raising the Consumption Tax in Japan: Why, When, How?
http://www.imf.org/external/pubs/ft/sdn/2011/sdn1113.pdf
その増税の目的は
Japan faces a difficult road in restoring its fiscal health.
With limited room to reduce non–social security expenditure and spending pressures from an aging society, new revenue measures must play a central role in a medium-term strategy to bring down Japan’s high level of public debt. (p.3)
社会保障以外の歳出削減の余地は限られており、かつ、社会保障費は高齢化で増加圧力があるため、中長期的な財政再建や財政健全化のためには、新しい歳入が必要不可欠(意訳)
ということで財政再建のための増税をIMFが要請!
なんだとー?
そんなナメたこと言いやがるんだったら…
1000億ドル(695億SDR、8兆円)の日本からIMFへの融資枠
IMF Standing Borrowing Arrangements
June 07, 2011
http://www.imf.org/external/np/exr/facts/gabnab.htm
(たぶん、麻生政権時の例の1000億ドル、当時のレートで10兆円、というやつがまだ残っている模様。あくまでも日本の貸付残高ではなく融資枠です。)
があります。
それと、
IMFに対する出資金133億SDR(220億ドル、1.7兆円)もありますね。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/10_hakusho/index_shiryo.html
(ODA白書 財務省)
ということで、
そんなに財政難だというなら、
「うちの国は財政難なので1000億ドルの融資枠は撤廃、220億ドルの出資金もすっぱり引き上げ、ということにしてやるぞ、この野郎!」
と言ってやろうかと思ったら…
あれ、ちょっと様子が違うぞ…
IMFの文章(p.2)にはこんな文言が
DISCLAIMER: This Staff Discussion Note represents the views of the authors and does not necessarily represent IMF views or IMF policy. The views expressed herein should be attributed to the authors and not to the IMF, its Executive Board, or its management. Staff Discussion Notes are published to elicit comments and to further debate.
このスタッフ討議ノートは著者らの見解を表すものであり、必ずしもIMFの見解やIMFの政策を表すものではない
おーい、ロイターさん。
どこが「IMFの要請」
なんじゃー!!!!!!!
これは、ロイターから日本政府の要請?
それとも、どうしても増税したい某省庁のロイターへの「要請」と書いてくれや、という要請??
まあ、それはさておき。
仮に日本のみならず、全ての政府が財政健全化を目標、というか実施したとしたら、この世界はどうなるでしょう?
つまり、全世界の政府の財政黒字化です。
いつも書いてあるように、
世界中の政府の財政赤字=世界中の民間部門の財政黒字
の関係があります。
これは、貨幣価値経済においては、どんな天変地異が起こっても、宇宙人がせめて来たとしても…仮に宇宙人がどこかの国のリーダーになったとしても、変わることのない原理原則です。
で、
世界中の政府が黒字化したとすると、当然のことながら世界中の民間部門の財政が赤字化します。
これが長期的に続くとします。
世界中の政府が累積黒字、つまり貯蓄を増やし続けます
世界中の民間部門が累積赤字、つまり借金を増やし続けます。
もはや民間部門は貯蓄するどころか、毎年のように借金を借金で返し、さらに借金を増やし続けるウルトラ自転車操業を続けることになります。
で、その民間にカネを貸すのは誰か?
現在のように民間部門が政府部門にカネを貸す。民間の貯蓄と政府の借金がそれぞれ増え続ける、のとは逆に
政府が民間にカネを貸し、政府の貯蓄と民間の借金がそれぞれ増え続ける、という変てこな世界になります。
これでは正に世紀末。YouはShock!!!
財政再建とか財政健全化がいつでもどこでも絶対的正義になってしまったとするというのは、これほどまでにおぞましい世界になるということです。
まあ、現実には世界中で武装蜂起、武力革命が起きて、結局は貯蓄を増やし続ける民間部門と借金を増やし続ける政府部門というあるべき世界に戻ることになるでしょうが。
ところで、ここで頭の中で貨幣価値経済を放棄し、物々交換経済の世界を考えてみましょう。
民間部門はみんな奴隷とします。農奴といっても良いかもしれません。
そして、政府部門は武装集団で民間部門を統治しています。
民間部門たる農奴はひたすら農産物を生産します。そして、政府部門たる武装集団はただただ受け取るだけです。まれに、外敵が攻めて来たときは追い払うというサービスを提供するかもしれませんが、「カネ」の代わりになる農産物は、政府部門はひたすら受け取るだけです。
政府部門は自分たちで食べきれる以上の農産物を受け取り、農奴を追い使って時には自分たちが住む豪邸を建築させるかも知れません。とにかく、貯蓄はたまる一方。
ところが、物々交換経済の世界では、不思議なことに、貯蓄が増え続ける部門がある一方で、借金が増え続ける部門が存在しなくても成り立ちます。
農奴も、政府部門がよほどあくどい、アコギな連中でなければ、豊作のときの余剰の農産物を貯めておくことが可能です。
しかし、この世界ではおカネはなく、よって、金融資産というものが存在せず、かつ、負債も存在していません。よって、金融純資産が差引きゼロですが、「金融純資産が差引きゼロ」というのは現在の経済制度でも全く同じです。
もちろん、現在の経済制度でも「モノ」自体は金融資産・負債の外に存在しています。
これについては
【株・不動産は純資産〔補足〕】
http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-entry-88.html
をご参照下さい。
現在の経済制度では、おカネは必ず負債です。日銀券は形式上、日本銀行の負債ですし、政府発行のコインも資金循環統計では形式上、日銀の負債となっています。また、通貨の主力である銀行預金もまた銀行の負債です。
そして、そのマネーの主力たる銀行預金という負債が増えるには、その相手方となるべき金融資産が増える必要があります。その金融資産は必ず政府または民間部門の負債(借入金や債券など)であります。
マネーの継続的増加(安定的増加)がなければ、経済成長はありません。それは必然的に政府または民間部門の負債が増え続けることを意味します。
政府が財政健全化を志向し、借金を減らすことを志向する中で経済成長が必要、というのであれば、これは民間部門が政府が借金を減らす以上に借金を増やし続けなければなりません。
財政健全化を叫ぶ人々は、ご自身が借金を増やし続ける自転車操業的な経済生活を死ぬまで続ける覚悟はあるのでしょうか?
もちろん、あなたのお子さんなどの法定相続人にも絶対にその借金を相続放棄させないという覚悟も必要です。相続放棄になれば借金がチャラになってしまい、マクロとして負債が減ってしまうからです。それくらいのことがなければ、政府の財政健全化はできませんが、それで良いのですね?国の借金を減らすというのはそういうことです。それだけのことをする覚悟はありますか?
あるいは、銀行があなたにひたすら貸し込み続けてくれるという自信はおありでしょうか?
民間部門の借金漬け生活が長続きしないのは、数年前にアメリカ人やアイスランド人が証明してくれていますが、それでもどうしてももう一度挑戦したいのでしょうか?
今の経済制度において、安定的に経済成長を続けるためには、政府が赤字を続け、借金を増やし続ける以外には基本的に道はありません。
それともう一つ、別の見方を提供しておきますと、税金というのはいわば、「民間部門の資産の、政府による合法的収奪」です。つまり、増税してくれ!と言っている人は「私の資産をもっと収奪してくれ!」と言っているようなものです。そんなに自分の資産をもっと収奪して欲しいのなら、勝手に政府に寄付してくれれば良いのであって、よそ様の懐にまで手を突っ込んで来んといて!と言って差し上げたい今日この頃です。
これがインフレでどうしようもない、というのなら増税すべきを声を大にして言いたいですが、今の日本は世界最高水準のデフレです。なんで、デフレ圧力である増税を、デフレのときにしろというのですかね?そんなにデフレで給料や年金が下がっていくのが大好きなのかしら?私にはさっぱり理解できません。
そういえば、昨日のNHKの夜9時のニュースで
増税は必要。このままだと国債が暴落したらどうたらこうたら
といっているどこかのアナリストか何かの人がいましたが。
聞きたいのですが、暴落ということは誰かが売り込まないとできませんね。
・誰が売り込むのでしょうか?具体的にどこの銀行や保険会社が、どれだけの金額を売りに出すのでしょうか?
・その銀行や保険会社は、満期まで待っていれば100で返ってくるものを、わざわざ途中で90とか80とかで売って損失を確定させる必要性がどこにあるのでしょうか?
・仮に売ったとして、その売却によって受け取った代金である日本円預金という銀行の負債の相手方としての金融資産は国債以外で何があてがわれることになるのでしょうか?日本円預金はどこまでも日本円預金として存在していますが。
・それで円安になったら、今は円高で困っているのだからちょうど良いのでは?円安になれば、対外純資産が円換算で増大し、かつ、輸出が伸びて経常黒字が大きくなり、経常黒字が大きくなれば必然的に政府の財政赤字も縮小しやすくなり、つまり財政が健全化しやすくなりますが、それは嫌ですか?
・その前にそもそも国債はほとんど全部円建てなので、日銀はいくらでも当座預金を増やして買い込めますが、それでどうやって暴落するのでしょうか?その原理を具体的に教えてください。
・アイスランドは08年に破綻する直前の年まで4年連続で政府は財政黒字、かつ、公的債務GDP比も50%台でしたが、なぜ破綻したのですか?政府が黒字化し、借金が減ったからといって破綻しない保障がどこにあるのですか?
http://blog.with2.net/in.php?751771
クリック、ありがとうございましたm(_ _)m
![]() | さらば、デフレ不況 -日本を救う最良の景気回復論― (2010/03/02) 廣宮 孝信 |
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財政黒字って、要するに政府が過剰貯蓄するようなものですね。
民間が過剰貯蓄で問題になっているのに、なんで政府まで過剰貯蓄しなければならないのか……。
2011/06/19 07:08 | シント #- URL [ 編集 ]