2015/06/20 (Sat) 16:04
※最近、ブログは更新頻度低いですが、ツイッターはそこそこ頻繁に更新しています。よろしければ、上のボタンを押してフォローして下さい!日経ビジネス最新号(2015年6月20日)に載っていた、サブプライムローン危機やリーマンショックをその数年前から予測していたということで有名になった
ルービニ教授の記事 のご紹介です。
以下、タイトルと要約部分を引用した上で、ごく短く内容紹介をしておきます。 -----
「バブル崩壊への時限爆弾に注意」 ノリエリ・ルービニ
日経ビジネス2015年6月20日 p.126
金融危機以降の金融政策によって、先進国の金融市場が抱える大きな矛盾が顕在化しつつある。
マクロレベルでは量的緩和で過剰流動性が創出される一方、債券や株式市場の厚みは失われてきている。
現在の過剰流動性が株式や債券市場バブルをもたらしているだけに、放置すれば確実に崩壊の危機に向かう。
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以下、廣宮による内容紹介: ・現在は
過剰な金融緩和で株や債券が高値安定 している状況である。
・ショックが起きたとき、従来は大手銀行が「マーケットメーカー」として債券価格安定を担ってきたが、リーマンショック後規制が厳しくなり、そのようなことができなくなっている
(債券市場のマーケットメーカー不在) 。
・近年、
HTC HFT ※(コンピューターによる高速取引)が普及しており、これが価格追従型の取引を行うため、市場価格の振幅が増大されやすい。
※訂正です。HFT: High-frequency trading 高頻度取引。なんでHCTと書き写したのかはよく分かりません。何らかの生理的、生物学的要因としか言いようがないという具合です。すみませんでしたm(_ _)m。 ・近年、顧客からの解約指示があれば流動性低い商品についても、翌日にはどんな低価格でも売却してなければならない仕組みである
投資信託 が普及拡大していることによる、不安定化リスクが増大している。
・最近、
ドイツ国債の金利が0.1%以下だったものがいきなり0.8%まで上昇 したことなどは、上記の理由のようです。
・そして、
マクロでの過剰流動性と市場での非流動性のミスマッチがバブル崩壊の引き金を引くだろう 、とのことです。
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私が頻繁に引き合いに出している
国連報告書の説明 では、
金融における規制緩和 +金融緩和→金融不安定化 という理屈でしたが、
ルービニ教授によると、リーマンショック後の規制強化 が逆説的に市場の不安定化を招いており、今後もそれが大きなリスクとなりそう 、ということになります。
ちなみに、
アメリカのとある優秀な株式投資信託 (過去37年でMSCI World指数の30倍に対し、この投資信託は106倍になるという好運用成績) の日本版(野村証券で販売。但し手数料の違いで元のファンドとは運用成績は違って来る)の
月次レポート (2015年5月29日現在)から、
市況見通しに関するコメント を引用してみます:
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【今後の運用方針】
株式市場は高値圏での推移 が続いていますが、私たちが
世界経済に対し様々な懸念を有している という状況に大きな変化はありません。イエレンFRB議長は年内の利上げを示唆したものの、FRBがどの程度の時間をかけて金利水準を正常化させるかは不透明です。発言通り年内に利上げをしたとしても、利上げ幅が小幅にとどまれば、今後も緩和的な金融政策が継続することに変わりはないかもしれません。私たちは、
金利水準が正常化し、様々なリスク資産の価格が割安な水準まで調整することを期待します が、そうなるまでにはかなりの時間を要すると思われます。
このような状況下でも、
安全マージン(予期せぬ事態が生じても、回復不可能な損失を回避できるよう、十分に割安な水準で投資を行うこと)を重視 し、質の高い事業や希少な資産を有する企業に割安な水準で長期的に投資を行っていくという、私たちの運用方針に変更はありません。
株価水準が高いため、割安な会社を見つけることは困難 ですが、エネルギー関連企業など、エネルギー価格下落の結果、割安となっている企業には継続的に投資を行っています。市場全体の下落がなくとも、業種や個別企業特有の要因で割安となった企業には今後も投資を行ってまいります。
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上記ファンドはウォーレン・バフェット氏のような
バリュー投資(割安株投資) を行うファンドですが、
現在は「金利が低すぎることで、割安(適正な水準以下)の株を見つけるのは難しい」状況である というわけですね。つまり、
「今、まさにバブルっぽい」 てなわけです。
いま、株をお持ちの方は、「回復不可能な損失を回避できる」 ように手を打っておくのが無難かもしれません。 もう一つ、
リーマンショックの2008年も運用成績がプラス(但し、英ポンド建てで) となった、
イギリスの投信会社 が運用する、日本でもいくつかの証券会社で取り扱っているファンドの
月次レポート (基準日: 2015年5月29日)の
市況見通しコメント も参考までに:
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依然として金融市場に先行き不透明感 が残る中、運用においては、様々な状況に対応できるバランスの取れた資産配分を保つことが極めて重要であると考えます。どのような事が将来起きうるかを正確に予見することは大変難しいですが、世界的なデフレ傾向や低水準にある経済成長、国家財政にとって重圧となる水準まで積み上がった債務など、世界経済をとりまく状況に対しては、引き続き細心の注意を払ってまいります。さらに、
金融市場の各資産クラスにおいて、量的緩和による資金流入を背景に、本来のファンダメンタル価値とは切り離された相場展開 が見られる中、想定外の事象が起こりうる可能性が十分にある ことを踏まえ、当ファンドにおいては、資産の保全を最優先とすると同時に、リターン追求に向け、投資戦略に基づいたバランスの取れた資産配分を保つことに焦点を当て、慎重な姿勢で運用に取り組んでまいります。
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※今回紹介している投資信託につき、購入を推奨するものではありません ので、念のため(ルービニ教授の指摘している投資信託特有の「リスク」にも留意されたし)。 量的緩和相場にご用心、といったところでしょうか…。 http://blog.with2.net/in.php?751771 クリック、ありがとうございましたm(_ _)m
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今の世界経済が米国の利上げに耐えられるかどうかは兎も角、一応は非伝統的な前人未到の超緩和策が成功して(景気は順調に回復していき目下のところ米国経済は好調を維持)、今や利上げモードになりつつある米国の株式市場が、金融緩和中の日本と欧州の株式市場に比べて年初来パフォーマンスが悪いのは、年内の利上げ開始を織り込み始めたからなんでしょうか(ここから出遅れた米国株のキャッチUPが始まるとか、2007年と同じく中国株とともに大天井をつけたとか、まあ色々ですが)。
FF(フェデラル・ファンド)レート先物市場を見ると9月の利上げ確率はわかるということですが(同時期には郵政3社のIPOもありますが)、例えば前回の2004~2006年までの連続利上げ時には、しばらくは敬意を表してか(利上げが重しとなってか)株価は下げ基調となっていますが、その後は多少の浮き沈みはありますが株価は上昇に転じており、過去の経験則からするとほぼ100%に近い確率で(今回の利上げについては通常の経験則が当てはめられないとも言われてますが)、FFレートが段階的に(今回の利上げ幅は低く又ゆっくりとしたペースで)引き上げられることによって(インフレ率を見ながら2017~2018年までに3.25~4%の見込み)、最初はマーケットもギクシャクするものの(その最中に一時的なショックが起こると想定=買い場)、結論的には「米国の株は上がる」(金融相場から業績相場へ)という予想も多く(株価暴落懸念は利上げが一巡した後だとか)、また調整はあれど何らかのバブルが発生し崩壊するまで日米中等の株価は上昇を続けるとも見られており、今は大相場の中間地点との位置づけのもようです。
そう言えば、リーマンショック時にドル高円高相場(円独歩高)になった理由のひとつとして、(よく有事のドル買いと言われますが)当時は円キャリートレード(円を売ってドルを買いそのドルを売って他通貨・外国の証券等を買う)がグローバルに行われており、そのアンワインドが世界中で起こったため、(信用不安からドルLIBORは急上昇していきましたが)ドルストレートのドル円レートではドル全面高の中でも例外的にドル高(円安)にはならずに(ドル安)円高になった、というふうにも考えられるようで、その後はドルキャリートレードが主流となり、ドル円レートも他通貨と同様の動意となって75円近くまでドル安(円高)が進行した、ということもあるみたいですね。
リパトリエーションの影響か、ヘッジファンドの売り崩しの影響か、今またドル高の進行で新興国からの資本流出が懸念される昨今(ちょっと中国も大変なようで)、3つの衝撃ですか、IMF(国際通貨基金)や世界銀行も米利上げの先送りを提言してますが、先のFOMC(連邦公開市場委員会)では初回利上げ後どう反応するか様子を見て利上げペースも急がないと市場にコミュニケートしたようなんですが(外国為替市場はドル安で反応)、FRBが年内に着手する(12月説が優勢)利上げが引き金となって、アジア通貨危機からロシア財政危機等にかけて起こった危機の連鎖の再来や(当時もドル円レートは乱高下したようですが)、サブプライム問題からリーマンショックが起こり世界金融危機(世界同時不況)にまで至ったような、いわば最悪の事態(世界的な恐慌経済の再来)まで、一応は想定しておいた方が無難であると(先の廣宮さんの御指摘、そう言えば、今は1937年と同じ状況だと、レイ・ダリオ氏も警鐘を鳴らしていましたね)。
日本売りですか、日本株・日本国債・日本円が同時に暴落するという、いわゆるトリプル安が起これば、日本経済は大混乱になるでしょうが、不思議なことに自国で危機(たとえば大震災)が発生しても何故か円高になる事もあって、今の市場環境(たとえば株高ドル高・株安ドル安の傾向)からすると、アンワインドとなれば、メジャーなドルストレート(ユーロやポンドにスイスフランなど)は無論のこと、メタメタに売り込まれたマイナー(エキゾチック)通貨までもが、ドル高方向から一転してドル安方向へ振れると思われるので、ヘッジファンド等による円売り・日本株買いもあり、(鶏が先か卵が先か)日本株が暴落すると日本円が暴騰するイメージがあるのですが、廣宮さんは、想定される有事(世界的な株の暴落等)の際に(米国債の動きにも影響される)ドル円レートが(ドル高)円安の方向へ進む可能性についてはどう考えておられますか?また(日本のケースをグラフ化したトレンド分析は見たことがあるのですが)米国のマネタリーベース・マネーストック(マネーサプライ)・貨幣乗数(信用乗数)から見る米国の経済情勢はどう推測されるのでしょうか?
2015/06/22 08:19 | Mr.T #- URL [ 編集 ]