2016/03/23 (Wed) 12:01
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『2016年、異次元大恐慌が始まる』
飛鳥新社 刊 好評発売中ちなみに、私自身が考えていたタイトルとオビの
原案はというと、
タイトル 原案:『世界大恐慌2.0 ――世界と日本を激変させる、歴史的大波涛』
オビ文言 原案:「資本主義でも、共産主義でも、民主主義でもない、異次元な新時代の幕開け」
というような、もう少し穏当(?)なものでありました。少なくとも
「大恐慌=この世の終わり」ではありません!※
「世界大恐慌2.0」というのは、次に起こりそうなのは
「1929年世界大恐慌のバージョンアップしたもの」になりそう、という意味合いです。
→なぜそうなるかというのは、経済的なカネ勘定の問題よりは、
政治的な権力構造の問題ではなかろうか、という仮説になります。
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さて、本題です:表題の件。
まずは以下に引用したブルームバーグの興味深いコラムをどうぞ:
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【インサイト】ECB債券購入、銀行のトレーディング事業に打撃必至https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-21/O48N7O6K50XT01Duncan Mavin
ブルームバーグ 2016年3月22日
欧州中央銀行(ECB)は量的緩和(QE)での月々の債券購入額を800億ユーロ(約10兆円)とこれまでの600億ユーロから増やすことや、銀行債以外の投資適格社債を購入対象に加える策を打ち出した。しかし、これが
ユーロ圏の投資銀行に打撃を与えることは必至だ。
ECBの措置が景気回復に役立つかどうかはまだ分からないが、
投資銀行の債券・通貨・商品(FICC)トレーディングデスクが苦労することだけは確実だ。
ECBはこれまでのQEを通じて既に、ユーロ圏の国債の相当部分を保有。それを社債にまで拡大しようというのだ。
バーンスティーン・リサーチ(ロンドン)のアナリスト、チランタン・バルア氏はユーロ圏の銀行債を除く投資適格社債市場の月次流動性を250億-350億ユーロと見積もる。仮に、ECBが購入増額分のうち100億ユーロを社債に回したとすると、ECBは流動性の約3割を吸い上げてしまうことになる。これは金融危機後一貫して収入が減っている
FICCトレーディング部門をさらに圧迫する。
理論的には、QEは合併・買収や株式の発行・売り出しなどを促すことで投資銀行業務の収入に寄与する。QEによって実際に景気がよくなれば銀行も恩恵を受ける。しかしFICCトレーディング収入への依存が依然として大きい銀行にとっては、あまり慰めにならない。HSBCホールディングスの見積もりによれば、
ドイツ銀行ではこれが投資銀行全体の収入の57%を占めている。 既にFICCトレーディング事業の縮小を決めている銀行は多いが、収入のさらなる急激な減少は全行の再編を難しくする。収入が想定以上のペースで減れば、計画しているコスト削減では追いつかなくなる。ECBの措置は欧州の成長を復活させるかもしれないが、域内の投資銀行の苦しみは増すばかりだ。
(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)
原題:
ECB’s Bond-Purchase Plan Promises Pain for FICC Trading: Gadfly(抜粋)
これを執筆したDuncan Mavin氏の経歴は、元の
英語版のほうに書いてありますが、
・元ウォール・ストリート・ジャーナル勤務
・公認会計士
・銀行業務や資金運用業務に従事経験
とのこと。
元の
英語版のほうでは、
ドイツ銀行、バークレイズ銀行、クレディ・スイス、UBSの固定収入(Fixed Income)における、債券・通貨・商品(FICC)トレーディングが占める割合のグラフが掲載されていますが、
ドイツ銀行 57%
バークレイズ銀行 43%
クレディ・スイス 36%
UBS 23%となっています。
ドイツ銀行は競合他社にくらべて、ECBの金融緩和で今後さらに減りそうなFICCへの依存度がかなり高いわけです。
元の
英語版記事では、その
FICCによる収入の世界的な銀行13行の合計額の推移グラフも掲載されているのですが、
2009年 1340億ドル
2015年 710億ドル
2016年推計 580億ドルのように
今年は09年の半分以下、昨年の2割減になりそうとのことです。
関連して、
先月、「『困難な』環境を理由に年内に4000人を削減する計画を加速させる考えを示していた」ばかりのクレディ・スイスは…
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クレディ・スイス、投資銀行の縮小を加速へ-関係者https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4GN2A6K50XS01ブルームバーグ 2016年3月23日
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ちなみに、
ドイツ銀行、バークレイズ銀行、クレディ・スイス、UBSの昨日の株価に基づくPBR(株価÷一株当たり簿価)はというと、
ドイツ銀行 0.34倍
バークレイズ 0.56倍
クレディ・スイス 0.64倍
UBS 1.11倍
となっています。
FICC依存度が高いほど割安(売り込まれている)という具合です。つまり、世界的な金融緩和の影響を受けやすい収益構造になっているほど、売り込まれているという格好です。
ドイツ銀のPBR 0.34倍というのは、株価が簿価=解散価値(いま会社を解散して残存資産を清算した場合の価値)の0.34倍ということになります。つまり、
解散価値の66%引きの値段でないと、誰もドイツ銀行の株を買わない状態であることを意味します。
Bigcharts.comで一株当たり利益(EPS)のデータを見てみますと、
ドイツ銀行はリーマンショック時、「ショック」の少し後になって初めて赤字決算になりました。危機直前まではむしろ増益でした。
一方、
今般は、リーマンショックのような明確な「ショック」がないにもかかわらず、すでに赤字に陥っています。

もっと言えば、
前回ショック直前期は、増益のなかで株価が下落していました。市場は、意外と冷静に分析していたということかも知れません。今回も市場は冷静に分析したうえでドイツ銀行を売り込んでいるのかも知れません。そう考えれば、
ドイツ銀行は現在、前回ショック時よりもヤバい状態なのかも知れませんね。
昨日か一昨日あたり、
横綱白鵬による「ダメ押し」が物議を醸していましたが、
ドイツ銀行に関してはムーディーズがダメ押し、いや、ダメ出しをしようとしているようです。
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ドイツ銀行を格下げ方向で見直し-ムーディーズ http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O4EQ7C6KLVRC01.htmlブルームバーグ 2016/03/22 05:57 JST
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もちろん、リーマンショック前に
訳の分からない金融商品にAAAの格付けを出していたような大手格付け機関が信用できるのかどうか、という問題はあります。
ちなみに、
ロシアはプーチン大統領肝煎りで独自の格付け機関を立ち上げました:それはそれとして、
上記の収益構造と金融緩和から受ける影響を考えれば、ムーディーズが「ドイツ銀、ヤバい」と判断して格下げしようとしていることは適切なものなのかも知れませんね。
昨年来、「中央銀行の中央銀行」というべき国際決済銀行BISが盛んに、金融緩和の限界を警告していましたが、ECBは意図的にドイツ銀行を追い詰めているのか、意図せずして追い詰めてしまっているのか…
さらには、昨日のベルギー首都ブリュッセルにおける
連続爆破テロを受け、
今後EUにおける人、物、カネの動きはますます制限を受けそうです。
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ブリュッセル孤立-テロで空港閉鎖、タリスやドイツ鉄道も運行停止https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4G0V06JIJUY01ブルームバーグ 2016年3月22日
22日の爆弾テロを受けてブリュッセルへの航空および鉄道の運行が停止され、ベルギーの首都は孤立状態になっている。
…
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さらには、このテロで
英国のEU離脱の可能性が高まったとの見方も…
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NY外為:ポンド下落、テロでEU脱退リスク強まる-円下落https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-03-22/O4FMXX6JIJUO01ブルームバーグ 2016年3月22日
22日のニューヨーク外国為替市場ではポンドが主要通貨の中で最も下げた。ブリュッセルでのテロ攻撃を受け、英国の欧州連合(EU)離脱「Brexit」支持派が勢いづくとの見方からポンド売りが膨らんだ。
…
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欧州のみならず、
中国もけっこうアレな感じです。
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中国か?
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http://www.mag2.com/p/money/6299
クライアン共同CEOが今年の黒字を見込んでいないと発言したことによって、戻り基調だったドイツ銀行の株価は、またもや急落となったようですが、同行はギリシャに関連したポジションをかなり持っているということで、ギリシャに何かあるとドイツ銀行は飛ぶかも知れない、というのは今でも言われている(思われている)ような感じでした。懸念は人それぞれと言われますが、本当のところは、実際よくわかりません。
日足のチャートからは、米株価指数やWTI原油先物などが、いわゆるダブルボトムを形成して、リバウンド傾向を強める形となっています(欧米ではカップ&ハンドルが好まれています)。少なくとも以前のようなリスクオフではなくなりました。為替市場におけるドル安も米株にとっては追い風となっているようです。そんな中、欧州の銀行株は再び軟調な地合いに変わったようで、単に利益や成長の問題で、再び下落傾向を強めているのならまだいいのですが、外からは窺い知ることの出来ない何かがあって、それが株価に織り込まれているようなら、ちょっと気味が悪いですよね(触らぬ神に祟りなし?)。
2016/03/24 16:23 | Mr.T #- URL [ 編集 ]